糖尿病
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59 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
症例報告
  • 保坂 利男, 永瀬 惟, 澤井 梓, 石飛 実紀, 石本 麻衣, 近藤 健, 小沼 裕寿, 炭谷 由計, 田中 利明, 西田 進, 近藤 琢 ...
    2016 年 59 巻 6 号 p. 401-406
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    HbA1cは,多くの施設で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いた測定が使われている.HPLC法では,糖化異常ヘモグロビンは電気的変化でカラム溶出時間がHbA1cと違ってくるため,ほとんどの異常ヘモグロビン症例は血糖コントロールに比べHbA1c低値で発見される.今回,血糖値コントロール不良にもかかわらずHPLC法で測定したHbA1c値が低値と乖離を認めたアメリカ白人ハーフの1例を経験した.遺伝子解析の結果から,βグロビンのミスセンス変異のHb D-Los Angelesと診断した.異常HbD症は,以前は日本では存在しなかった稀な疾患であったが国際化により今後日本でも増えると推測される.該当糖尿病例では,HPLC法でHbA1cが偽性低値となる異常HbDの存在を念頭に置き,血糖コントロール,グリコアルブミン値なども含めて慎重に治療方針を評価する必要がある.
  • 大橋 忠将, 有山 ゆり, 早川 惠理, 長沢 美樹, 杉山 徹
    2016 年 59 巻 6 号 p. 407-413
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    49歳男性.鍼治療後14日で僧帽筋膿瘍,DKA(血糖値643 mg/dL,pH 6.916,総ケトン体20600 μmol/L)を生じ,意識障害で当院に救急搬送となった.抗菌薬投与,デブリードマン,局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)にて膿瘍の治療を行い,糖尿病に関しては強化インスリン療法で血糖管理した.感染及び血糖値改善後は基礎インスリン投与と経口血糖降下薬の併用療法(basal-supported oral therapy:BOT)に変更して血糖管理を継続した.もともと無治療の糖尿病(HbA1c 15.1 %)による易感染性があり,鍼治療を契機にして僧帽筋膿瘍,感染に伴うDKAを生じたと考えられた.管理不良の糖尿病の存在下では,鍼治療のような侵襲的医療行為により感染症が引き起こされる危険性があり,注意が必要である.
  • 村上 理恵, 鴫原 寿一, 内田 智之, 続 敬之, 中島 剛, 渥美 義仁
    2016 年 59 巻 6 号 p. 414-420
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    49歳,男性.2年前に近医にて2型糖尿病を指摘されたがその後通院を中断していた.来院2週間前に近医歯科で齲歯の診断で左上顎犬歯の抜歯治療を受けた.その後左眼瞼腫脹が出現し当院を受診した.HbA1c 15.3 %と血糖コントロールは不良であり,また画像検査では左眼窩蜂窩織炎,敗血症性肺塞栓症を認め,左の視力は0.1と低下していた.血液・喀痰・齲歯部膿培養からはK. Pneumoniaeが検出され,歯原眼窩蜂窩織炎から敗血症に進展したと考えられた.呼吸循環管理,インスリン持続投与による血糖管理,抗生剤加療を行い全身状態は改善し左眼の視力も1.2まで回復した.眼窩蜂窩織炎は失明のリスクが高く早期の診断治療が肝要となる.糖尿病患者におけるK. Pneumoniaeを起因菌とする歯原性眼窩蜂窩織炎の症例は今までに報告がなく,視力を回復しえた症例を経験したのでここに報告する.
  • 真山 大輔, 山口 祐司, 長尾 元嗣, 野上 茜, 服部 奈緒美, 稲垣 恭子, 中島 泰, 及川 眞一, 杉原 仁
    2016 年 59 巻 6 号 p. 421-428
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリア遺伝子3243A-G変異を呈するミトコンドリア糖尿病は遺伝子異常が同定された糖尿病の中では最も頻度が高い.低身長,やせの体型を呈し,糖尿病診断時年齢が比較的若年であり,糖尿病の母系遺伝を認め,感音性難聴等が合併する頻度が高いと言われているが,日常診療で見過ごされている例も少なくない.今回我々はミトコンドリア遺伝子3243A-G変異を呈したミトコンドリア糖尿病の3症例を経験した.その3症例は全て軽度~高度の感音性難聴の合併を認めたが,肥満の症例や糖尿病の母系遺伝が明らかではない症例があり,その臨床像は陽性,陰性所見が混在していた.ミトコンドリア糖尿病の臨床像は多彩ではあるが,糖尿病に加えて感音性難聴や難聴の家族歴を有している症例には,ミトコンドリア遺伝子変異の検査等の積極的な検索を行う事が望ましいと思われた.
  • 濱本 博美, 清水 一紀, 佐々木 元章
    2016 年 59 巻 6 号 p. 429-434
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    我々は妊娠成立と同時期に急性発症1型糖尿病を発症した2症例を経験した.症例1は10代女性,口渇,多飲が出現した数週後に妊娠が判明し,産科を受診.体重減少が著明で血液検査にてHbA1c 12.5 %,随時PG 790 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.症例2は30代女性,高血糖症状を訴えて内科を受診.HbA1c 10.1 %,随時PG 599 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.その3か月後に腹部膨満を契機に妊娠が判明.いずれの症例も,逆算すると妊娠成立と1型糖尿病の発症が同時期であり,またHLA DR9を有していた.妊娠に合併する1型糖尿病の多くは劇症1型で妊娠後期に集中するため,稀なケースと考えられる.妊娠悪阻とケトアシドーシスの症状は類似しているため,妊娠と1型糖尿病の診断には注意を要する.
  • 末丸 大悟, 丸山 潤, 石塚 高広, 橋田 哲, 中村 保子, 上原 豊
    2016 年 59 巻 6 号 p. 435-442
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    86歳女性.64歳で糖尿病と診断され,グリメピリド2 mg,ピオグリタゾン30 mg,シタグリプチン100 mgの内服で,HbA1c 12.4 %,BMIは17.3 kg/m2であった.入院4日前,血糖改善目的で前医よりグリメピリドとピオグリタゾンが中止され,ダパグリフロジン5 mgに変更された.繰り返す嘔吐,吐血のため当院に救急搬送された.来院時,血糖299 mg/dL,動脈血pH 7.093,HCO3 8.1 mmol/L,血中3-ヒドロキシ酪酸15420 μmol/Lで,糖尿病ケトアシドーシスと診断し,インスリン持続静注療法を開始した.尿中Cペプチドは2.2 μg/dayでインスリン分泌の著明な低下を認めた.入院当日,急性心筋梗塞を併発し,経皮的冠動脈形成術を行った.本症例の報告により,SGLT2阻害薬は病態を考慮し,適正に使用することが極めて重要であることを再度警鐘したい.
第89回日本糖尿病学会中部地方会
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