糖尿病
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63 巻, 6 号
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特集
腸内細菌叢と生活習慣病
原著
病態・代謝異常・合併症
  • 藤川 慧, 畑 雅久, 清水 彩洋子, 藤田 洋平, 桂 央士, 馬屋原 豊
    2020 年 63 巻 6 号 p. 390-398
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    典型的な糖尿病腎症は微量アルブミン尿の出現を以て発症し顕性蛋白尿の出現に引き続き腎機能低下を来す.しかし実臨床においては顕性蛋白尿の出現なく腎機能低下を来す症例が存在するため,当センターでの現状を調査し腎機能低下に寄与する因子を検討した.2017年6月までの2年間で8回以上eGFRを測定した当センター通院中2型糖尿病患者1326例のeGFR slopeを計算し,-5 mL/min/1.73 m2/year未満の症例をRapid declinerとしたところ,全体の13.1 %,腎症1,2期症例(1106例)の10.8 %がRapid declinerであった.Rapid declinerとなる要因をロジスティック回帰分析で解析した結果,全症例および腎症1,2,3期に共通してベースラインのhemoglobin低値は有意な独立した危険因子であった.

症例報告
  • 井田 紗矢香, 武内 哲史郎, 渡邉 麻衣子, 奥田 昌也, 後藤 浩之, 田中 剛史
    2020 年 63 巻 6 号 p. 399-404
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性.糖尿病罹病期間26年の2型糖尿病でインスリン治療中であった.「認知機能低下による血糖コントロール悪化」としてかかりつけ医より糖尿病教育入院目的に当院紹介受診となった.入院時HbA1c 9.1 %であり認知機能低下も認めた.入院後,血液培養にてStreptococcus mitis陽性,心エコーにて大動脈弁と僧帽弁に疣贅を認め,CT・MRIにて腎梗塞,多発脳梗塞を認めた.感染性心内膜炎と診断し,ペニシリンGによる内科的治療と外科手術により軽快した.退院時,認知機能は改善し,血糖コントロールもHbA1c 7 %台で安定した.高齢糖尿病患者は重篤な感染症であっても,認知機能低下や血糖コントロール悪化といった非典型的な症状が主訴となることも多く,その背景に感染性心内膜炎のような重大な感染症の合併も考慮し精査すべきであると思われた.

委員会報告
  • 窪田 直人, 下田 誠也, 本田 佳子, 丸山 千寿子, 石田 均, 井上 達秀, 繪本 正憲, 田中 武兵, 中塔 辰明, 山口 宏, 横 ...
    2020 年 63 巻 6 号 p. 405-420
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    糖尿病治療の基本は食事療法であり,糖尿病の成因や病期,老若男女を問わず,すべての患者が対象となる.「糖尿病食事療法のための食品交換表」(以下:「食品交換表」)は,難しい食事療法を指導しやすく,患者が指示された栄養量に見合った食事を好みに応じて自由に献立できるよう作成され,時代ごとの食生活環境に合わせこれまでに7回の改訂が行われている.第7版の累計発行部数は90万部を超え,多くの患者やその家族,医師やメディカルスタッフに活用されてきた.しかし近年,食材の流通,加工,保存技術の目覚ましい発達や,中食・外食等の食の外部化,食文化の国際化に伴う料理の多国籍化などが進み,日本人一人一人を取り巻く食環境は大きく変化し多様化をみせている.このような食生活環境の変化は糖尿病患者の食事療法にも大きく影響しており,従来の「食品交換表」の利用を困難にしつつある.そこで本委員会では,より実践的な食事療法を行うために何が必要か,現状と課題を調査すべく,学術評議員と栄養士会員を対象としたアンケート調査を実施した.調査期間は2018年6月6日~7月8日,対象者は学術評議員701名,栄養士469名,日本糖尿病学会ホームページ「My Page」を利用し,341名より回答を得た(回答率29.1%).最も使用されていた「食品交換表―第7版」では「必ず使用する」「よく使用する」が6割であったのに対し,「食品交換表活用編―第2版」,「糖尿病腎症の食品交換表―第3版」では「あまり使用しない」「全く使用しない」が7割を超えていた.「食品交換表―第7版」が使用しにくい理由としては,①難易度が高く,限られた時間の中で患者の理解を得るのが難しい,②食事の実態や指導したい内容との間に乖離がある,③視覚に訴える媒体を中心に他の資料が使用されている,ことが挙げられた.一方で「食品交換法―第7版」のTable 1~Table 6の分類は使用頻度が高く,このグループ分けが広く浸透しており,認知度の高さが伺えた.糖尿病に対する知識や理解,食事療法に対する意欲が乏しく調理を行わない中食・外食利用者や,情報化社会の進展により誤った情報等に左右されやすい対象者に栄養指導を実施する場面が多いことが推察された.食環境が多様化し超高齢社会を迎える中,中食/外食にも配慮した今まで以上に簡便でわかりやすい指導媒体の開発が求められていると考えられる.

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