デュラグルチドを新規導入した2型糖尿病患者74例を対象として,導入後の患者自己負担額の変化について検討した.導入前に注射製剤(インスリン,他のGLP-1受容体作動薬)を使用していた例においては,1月あたりの自己負担額の増加は自己負担率3割では1,704円,2割では564円,1割では688円(いずれも中央値)であった.注射製剤非使用例においては,同様に自己負担率3割では7,282円,2割では4,626円,1割では2,057円であった.デュラグルチド導入後に自己負担額が減少した例では,導入時のGLP-1RAの使用率が有意に高値であった.糖尿病治療薬の費用の増加量を従属変数とする多変量解析では,デュラグルチド導入による糖尿病治療薬剤関連費の増加が少ない患者像として,他のGLP-1RA使用例,インスリン使用例,HbA1cが高い例,罹患年数が短い例が抽出された.
2型糖尿病患者(40歳以上,薬物治療中)を対象として,食事療法の理解度ならびに栄養指導を受けた経験や教育入院経験などについて自記式質問紙調査(Web回答)を行ない,533名から回答を得た.理解度(20項目)は全般的に高い正答割合であったが,野菜の必要摂取量の知識不足,糖質制限の誤解なども示唆された.栄養指導を受けた経験があるのは約40 %であり,通院先としては病院・専門医クリニックが約半数,残りが一般開業医という内訳であった.一般開業医で治療を受けている患者は病院・専門医クリニックで治療を受けている患者に比べて,栄養指導経験の割合は低かった.体重・血糖管理状況を目的変数とするロジスティック回帰分析では,栄養指導の経験の有無は有意な説明変数ではなく,年齢,教育入院,夜間勤務の有無,カロリーと糖質との違いについての理解の有無が体重・血糖管理の不良リスクに関係していることが明らかになった.
2型糖尿病患者を対象に,無作為クロスオーバー試験により,野菜を複合料理の前に摂取した場合,複合料理の後に摂取した場合,及び複合料理を単独摂取した場合における食後の間質液グルコース値への影響についてFGMを用いて検討した.その結果,複合料理の摂取前に野菜を摂取した場合は,複合料理の摂取後に野菜を摂取した場合と比べ,食後の間質液グルコース値の変化量は,摂取開始後40~90分とIAUC 0-60min,IAUC 0-90min,IAUC 0-120minで有意に低く,また,複合料理を単独摂取した場合と比べ,摂取開始後40分,55~70分,IAUC 0-90minで有意に低かった.一方,複合料理の摂取後に野菜を摂取した場合と複合料理を単独摂取した場合で差を認めなかった.以上より,2型糖尿病患者が複合料理を摂取する際,複合料理の前に野菜を摂取することは食後血糖値の上昇を抑制させることが示された.
今回我々は内科クリニックで無散瞳眼底写真撮影と光干渉断層計を施行し,クラウドを用いて眼科医が読影するシステムを導入し,糖尿病初診患者と眼科受診を促しても受診しない再診患者に対して実施した.患者背景は全277例,初診122例,再診155例,罹患期間7.5±8.2年,HbA1c 8.0±2.1 %.全症例の35.7 %,初診29.0 %,再診45.1 %で所見を指摘され,網膜症9.0 %,黄斑浮腫3.6 %,緑内障20.2 %,白内障3.2 %で指摘された.所見を指摘された再診患者のうち90 %以上がその後眼科を受診した.このシステムの利点として(1)糖尿病診断時に急を要する眼科疾患を速やかに発見し眼科に紹介できる点,(2)眼科受診指示に従わない患者の眼底を評価し,受診行動を惹起できる点などが挙げられる.今後このような内科と眼科の連携により,眼科受診率の向上と糖尿病関連眼疾患の早期発見に繋がることを期待する.
糖尿病療養指導カードシステム(CS)は,療養指導における質の向上と均質化を目標とするツールである.急性期病院混合病棟において糖尿病教育入院プログラムにCSを導入したところ,病棟看護師の療養指導への意識向上と看護記録字数の有意な増加を認めた(p=0.005).CS導入後の教育入院における入院時と退院時のPAID(糖尿病問題領域質問票),SESD(自己効力感尺度)及びESESD(運動自己効力感尺度)を比較したところ,CS導入前と同様に,PAIDは有意な低下(p<0.001),SESD及びESESDは,各々有意な上昇(各々p<0.001)を示した.更に,各々の変化度(退院時総点―入院時総点)には,CS導入前と後で有意差を認めなかった.CSの導入は,急性期病院混合病棟における限られた専門スタッフという環境下においても,療養指導の充実,看護教育面及び教育入院における心理面の質の保持に有意義である.
大血管症やGLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬の使用がなく,BMIが25.0 kg/m2以上の肥満2型糖尿病患者105例を2008年度から5年間観察し,外来医療費の変化を体重変動との関係で検討した.外来医療費は体重減少群(n=56)で平均32.3万円/年から36.9万円/年,体重増加群で35.6万円/年から47.3万円/年と,いずれも有意な増額を示したが,その変化量(4.6万円/年vs. 11.7万円/年)は体重減少群で有意に低額であった.体重減少群では増加群に比べてHbA1cの悪化や処方された生活習慣病の治療薬剤数の上昇がみられず,外来医療費の変化量は生活習慣病の治療薬剤数の変化量と有意な正相関を示していた.以上より,肥満を有する2型糖尿病患者における非薬物的な体重の減少は,血糖コントロールの悪化や処方薬剤の増加を生じないことなどを通じて医療費の上昇を抑制し得ると思われた.