糖尿病
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64 巻, 11 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 川井 紘一, 本橋 しのぶ, 調 進一郎, 石垣 泰, 岩本 正博, 金森 晃, 栗原 義夫, 山﨑 勝也, 前川 聡, 糖尿病データマネジ ...
    2021 年 64 巻 11 号 p. 537-546
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    糖尿病専門医療機関に3年以上定期通院し,薬物治療を受けている75歳未満2型患者21,217名中,最近1年間のA1cが毎回8.0 %以上・年平均値8.5 %以上患者(血糖コントロール慢性的不良群)が3.9 %,A1c最大値7.0 %未満・年平均値6.5 %未満患者(良好群)が14.0 %存在した.不良群は女性が多く,家族歴あり患者,インスリン治療患者が高率であり,細小血管症・心筋梗塞合併率が高かった.追跡調査では,1年後不良群から外れた改善群が39 %存在,非改善群との比較では,平均年齢が3歳高く,作用機序の異なる薬剤への変更と薬剤減量が多かった.主治医による不良原因は生活習慣に問題あり50 %以上,治療方針の不受容28 %,精神疾患合併15 %,現在の血糖コントロール状態の是認13 %,改善した要因は,薬物治療の順守(38 %)とA1c改善意欲であった.前向き研究による不良群への対応方法検討が今後の課題と考える.

  • 村上 雅子, 原 毅, 今井 昇
    2021 年 64 巻 11 号 p. 547-554
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    非肥満を含む日本人2型糖尿病で,デュラグルチド(以下DT)の有用性につき,実臨床での長期検討はまだ乏しく,投与後の臨床動態を前向きに観察研究した.血糖管理不十分な114名にDT 0.75 mg/週を開始し,中止例19名(16.7 %:消化器症状4名,改善離脱6名,不十分な食欲抑制効果9名)を除く48週間投与した95名(67.2±13.5歳)の臨床像を検討した.併用薬は変更増量を行わず,血糖低下時には減量した.DT投与により48週後にはBMI≧25の肥満群においてHbA1cは1.0 %,BMIは0.9 kg/m2低下した(p<0.01,p<0.05).一方BMI<25の非肥満群においてHbA1cは1.5 %と有意に低下したが(p<0.01),BMIには変化を認めなかった.消化器症状は稀で,DTは非肥満において有意な体重減少を伴う事無く,肥満群同様に血糖改善に有用で安全と考えられた.

症例報告
  • 宮城 調司, 角南 由紀子, 渋谷 淳, 山崎 英樹, 青木 由貴子, 青柳 守男, 樫山 麻子, 寺師 聖吾, 布村 眞季
    2021 年 64 巻 11 号 p. 555-560
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は50歳男性.46歳時に2型糖尿病と診断されたが,既に多発合併症あり,その後も治療中断を繰り返し血糖コントロールは不良であった.眼の奥の痛みを主訴に眼科・耳鼻咽喉科を受診し,副鼻腔炎の診断にて抗菌薬を開始したが改善なく入院となった.副鼻腔壊死組織の病理所見にて骨髄浸潤を伴う鼻脳型ムーコル症と診断した.リポソーマルアムホテリシンB投与開始とともに,鼻咽喉ファイバースコープ下で排膿・壊死組織除去を繰り返し治癒した.ムーコル症は,特異的な症状・所見に乏しく,診断が困難である上,血栓形成を伴う血管侵襲を特徴とすることから経過は急速で,予後不良といわれている.治療は,外科的切除および適切な抗真菌薬投与である.本症例は,血糖コントロールおよび外科的処置により,比較的限局した局所の感染制御が得られ,良好な経過を辿ったと考えられた.ムーコル症の予防・治療には糖尿病の管理が重要である.

委員会報告
  • 小川 渉, 荒木 栄一, 石垣 泰, 廣田 勇士, 前川 聡, 山内 敏正, 依藤 亨, 片桐 秀樹
    2021 年 64 巻 11 号 p. 561-568
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    本報告ではインスリン抵抗症の新たな疾患分類と診断基準を提唱する.インスリン抵抗症は,インスリン受容体またはその情報伝達に関わる分子の機能障害により高度のインスリン作用低下を呈する疾患と定義し,遺伝子異常によって起こる遺伝的インスリン抵抗症と,インスリン受容体に対する自己抗体によって起こるB型インスリン抵抗症の2型に分類する.遺伝的インスリン抵抗症にはインスリン受容体遺伝子異常によるA型インスリン抵抗症やDonohue/Rabson-Mendenhall症候群,PI3キナーゼ調節サブユニット遺伝子異常によるSHORT症候群,AktTBC1D4の遺伝子異常などによるものに加え,原因遺伝子が未同定のものも含む.B型インスリン抵抗症は,インスリン受容体に対する自己抗体により高度のインスリン作用低下を呈する疾患と定義され,受容体刺激性抗体によって低血糖のみを示す例はB型インスリン抵抗症には含めない.

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