睡眠障害と糖尿病には双方向性の関連がある.今回,糖尿病患者の睡眠の実態をアンケートにより調査した.当科外来を受診した糖尿病患者209例を対象に,3-Dimensional Sleep Scale(3DSS)を用いて睡眠の調査を行い,3DSSの結果を結果変数として各因子との関連を解析した.健常者と比較して糖尿病患者では,睡眠の質の点数が有意に低下していた.多変量解析の結果,睡眠の位相の点数は年齢との間に強い正の相関を認めた.睡眠の質の点数は,夜間頻尿を認める患者,不眠症治療薬を使用している患者,夜間に足がつる患者や女性において有意の低下を認めた.睡眠の量の点数は,HbA1cとの間に強い負の相関を認め,夜間に足がつる患者や女性においても有意の低下を認めた.糖尿病患者における睡眠障害の実態が明らかとなり,糖尿病性神経障害に対する対症療法,泌尿器科的介入などの多面的なアプローチが必要であると考える.
急性発症1型糖尿病の発症を契機に発見された異常ヘモグロビン症の1例を経験した.本症例では酵素法ではHbA1cを測定可能であったが,高速液体クロマトグラフィー法ではHbA1cの異常低値と異常ヘモグロビンによると考えられる異常ピークを認めた.精査の結果,異常ヘモグロビンHb Hoshida[β43 Glu(GAG)→Gln(CAG)]と判明した.Hb Hoshidaはヘモグロビンβ鎖の遺伝子異常に起因し,1978年本邦のIuchiらにより初めて報告された.糖尿病合併例は複数報告があるが,1型糖尿病を合併した例は本報告が初めてであり,異常ヘモグロビン症の合併により,急性発症1型糖尿病と劇症1型糖尿病の間で,病型診断に苦慮するケースも考えられ留意を要する.また外来診療では血糖コントロールの指標として,グリコアルブミンや間歇スキャン式持続血糖測定が有用と考えられる.