日本肝臓学会は,肝疾患の早期発見と治療のためにアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)> 30 U/Lを基準とする「奈良宣言2023」を発表した.糖尿病患者は特に脂肪肝の合併率が高いので,本研究では「奈良宣言2023」が提唱する基準に合致する2型糖尿病患者の割合を調査した.対象は2023年の1年間に,当院でALTを測定した2型糖尿病患者4,021例とした.その結果,ALT >30 U/Lの2型糖尿病患者は965例(24.0 %)に認められた.さらに,その中で消化器内科へのコンサルテーションが推奨される血小板数 < 20×104/μLまたはFIB-4 index ≧ 1.3の条件を満たす患者は614例(15.3 %)であった.このコンサルテーションが推奨される患者には,背景因子として男性および高齢者が多く含まれていた.
糖尿病腎症(腎症)による腎機能低下抑制や血液透析(HD)導入遅延を図るため,集団指導(腎症教室)と個別指導(外来経過観察)を行っている.本研究は腎症教室受講者の中でもHDに至った症例の特徴を明らかにすることを目的とした.2002~2010年の当院腎症教室受講者96例を対象に,ROC曲線から得られたカットオフ値(尿蛋白排泄量[UP]1.3 g/日,腎症教室半年前~受講時のeGFR変化率[ΔeGFR]-0.3 mL/min/1.73 m2/月)を用い4群に分類し,各群でHD例とHD非導入例の臨床的特徴を比較した.腎症教室時に既にUP 1.3 g/日以上の例はHD導入リスクが高く,導入までの期間が短かった.一方,UP 1.3 g/日未満の例でも,HD例はΔeGFRに関わらず1年後UPが多い傾向であった.集団教育参加者においても,UP変化量がHDに至るような病態変化に影響を及ぼすことが示唆された.
HNF1B-MODYは膵体尾部欠損症を伴うことがあり,成人では内因性インスリンが枯渇する症例から2型糖尿病として治療される症例まで多様な表現型を示す.一方,小児では1型糖尿病と診断されることが多く,2型糖尿病として治療された報告は稀である.症例は10歳男児で,軽度肥満を伴う2型糖尿病として治療されていたが,経口血糖降下薬使用後もHbA1cが悪化したため紹介受診となった.膵島関連自己抗体は陰性で,ケトーシスなく,グルカゴン負荷によるΔCPRにより明らかなインスリン分泌能低下は示されなかったが,急激な体重減少と血糖コントロールの悪化がありインスリン治療を要した.画像検査で膵体尾部欠損と右腎嚢胞が確認され,遺伝子検査でHNF1B-MODYと確定診断した.本疾患はインスリン分泌能低下が明確でない場合もあり,非典型的経過を辿る小児糖尿病例では再評価が重要である.