金融機関のファンドマネージャーやトレーダーなどが大量の株式を実際に売買する場合,その売買量が価格にインパクトを与えることになる.本研究では対象資産が1つで価格インパクト関数が線形関数の場合の最適執行戦略に関する議論を行う.まずはじめに,価格インパクト関数における確率変数が時系列的に独立の場合,動的計画法で求められた最適解が数理計画問題から得られる最適性条件を満たすことを確かある.そして,非負条件を含めた数理計画問題の定式化を示す.ただし,この数理計画問題は凸2次計画問題になるとは限らないので,線形価格インパクト関数の特徴を生かして,行列分解を行い,正定値符号行列となる条件を解析的に導く方法を示す.さらに,行列分解を利用して高速に解くための定式化の方法を示す.Huberman and Stanzl(2005)の線形インパクト関数を用いて数値分析を行う.7種類の価格インパクト係数の組み合わせを用いていくつかのパラメータに対する感度分析を行う.
抄録全体を表示