日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌
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62 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 松本 拓史, 山田 雄二
    2019 年 62 巻 p. 1-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    太陽光発電の導入が加速し,電力系統に与える影響が拡大している昨今,太陽光発電出力や関連する日射量予測のニーズが一層高まってきている.本研究では,日射量観測値を時間帯別・天気別に分けた場合に存在する滑らかな周期性トレンドに着目し,トレンドの推定値と気象庁の発表する天気概況予報を用いた日射量および太陽光発電出力の予測手法を提案する.まず,周期ダミー変数と天気概況実績値を説明変数とする一般化加法モデル(GAM)を構築し,晴,雨,曇などの天気概況シナリオに対する日射量,および太陽光発電出力の季節性トレンドを抽出する.さらに,実務等で用いられる天気概況の予測シナリオを,あたかもそのシナリオが実現するかのように直接代入する手法は, 予報が外れる場合の確率が考慮されないため予測値がバイアスをもつ可能性を指摘した上で, 天気概況予報に基づく各シナリオの実現確率(条件付期待値)を多項ロジットモデルによって推定する.これらを,GAMの季節性トレンドの推定値と組み合わせることで,日射量と出力の予測値を算出する新たな予測モデルを構築する.また,実データを用いて,先行研究における予測手法,および予測シナリオを直接代入した手法と比較し,本研究で提案する手法の予測誤差低減化における優位性を検証する.

  • バトボルド ボロルソフタ, 菊池 健太郎, 楠田 浩二
    2019 年 62 巻 p. 23-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    Campbell and Viceiraは,相対的危険回避度と異時点間代替弾力性を分離できるEpstein-Zin効用を持つ消費者が短期債と一定満期の長期物価連動債に投資する消費と投資の最適化問題を考察し,Hamilton-Jacobi-Bellman方程式に現れる非斉次項を対数線形近似することで近似解析解を導出している.本稿では,Epstein-Zin効用を持つ消費者の投資対象を全満期の物価連動債,株式指数等の主要指数に拡大し,これら証券の価格が潜在状態変数に従うと仮定して,消費と投資の最適化問題を考察する.我々は上記非斉次項の対数線形近似により近似解析解候補を導出し,近似最適投資が状態変数に依存することを示す.また,近似解析解候補は一般に複数存在することから,これら複数の解候補から最適解を識別するための条件を提示する.最後に,近似最適消費・富比率と近似最適投資比率の近似精度の簡便評価を行い,近似精度が総じて非常に高いことを確認する.

  • 三浦 英俊, 柏木 伸哉
    2019 年 62 巻 p. 54-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    自動車の経路は右折(右側通行の国では左折)を避けることによって,目的地までの時間短縮効果がありコスト削減になることが一般に知られている.素朴な疑問として,右折を避けることによる効用を明示的に示すことはできるのだろうか.この疑問を「都市内の交通が円滑となる自動車の経路とはどのようなものだろうか」と,全体最適の視点から一般的な問題としてとらえることとし,この問題を格子状道路網モデルにおける自動車の発車時刻のスケジューリングを用いて考察する.交差点を起点または終点とする移動需要を輸送する自動車を考えて,自動車の経路に最短経路を割り当てる.最短経路が複数ある場合は経路割り当てルールとして(1)左折,(2)右折,(3)外回り,(4)交差・合流最小化,を設定する.そして,道路網を走行する複数の自動車が交差点やリンクで相互に安全上適切な車間距離や時間差を保持し,かつ目的地まで停止することなく一定速度で移動する制約を与えて,全ての自動車の走行が完了するまでの時間が最短となるように発車時刻のスケジューリングを行う.スケジューリングによって得られる,最初の自動車が出発してから全ての自動車が停止するまでの時間を「移動完了時間」とし,これを評価値として経路割り当てルールを比較する.経路同士の交差および合流が多いほど移動完了時間が長くなることを明らかにし,とくに右折ルールは4つの経路割り当てルールのうちで移動完了時間が最も長くなることを示した.

  • バトボルド ボロルソフタ, 菊池 健太郎, 楠田 浩二
    2019 年 62 巻 p. 71-89
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    世界金融危機以降,想定する確率過程自体を特定できないナイトの不確実性を考慮した投資の頑健最適化の必要性に対する認識が高まっている.本稿では,Maenhoutにより提案されている「相似拡大的頑健効用」を有する投資家の消費と長期証券投資の最適化問題を,短期金利及びリスクの市場価格が状態変数に依存し,投資対象に全満期の物価連動債を含めた一般性の高い証券市場モデルで考察する.価値関数の従う偏微分方程式は非線形・非斉次方程式となり,閉じた解を持たないが,Campbell and Viceira,楠田の対数線形近似法を援用して近似解析解を導出する.近似最適投資は,相対的危険回避度に加え,ナイトの不確実性に対する投資家の忌避の度合を表す「相対的曖昧性回避度」に依存することを明らかにする.

  • 黒須 敦史, 宝崎 隆祐, 佐久間 大, 鵜飼 孝盛, 山田 修司
    2019 年 62 巻 p. 90-114
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    本論文の提案手法の重要な適用問題として,海上密輸行為の航空機による発見とその後の取締船による調査のプロセスを踏む密輸取締がある.従来研究では捜索者と捜索対象である目標との2人のプレイヤーしか参加しない捜索ゲームモデルがほとんどであったのに対し,この論文では,捜索者側が目標に対し捕捉者を派遣する新しいモデルを提案している.取り扱う捜索ゲームでは,捜索者は捕捉者を待機させるとともに,捜索時間に代表される捜索資源を捜索空間に投入して目標を発見しようとし,目標は捜索者からの発見・捕捉から逃避するように捜索空間を移動する.論文では,この捜索ゲームの均衡解の一般的な解法と,現実的範囲内で特殊化した状況のゲームに対する簡便化された解法の2つを提案し,最適な捕捉者の待機位置と最適捜索資源配分及び目標の最適移動について議論し,具体的な数値例を用いた分析を行っている.

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