本誌ではすでに,通巻第200号特集号(1985.1)において坂本博氏による「国立国会図書館論」,通巻第250号特集号(1993.5)では石塚栄二氏による「国立国会図書館の課題」がそれぞれ取上げられている。前者は昭和50年代(1975-1985)が,後者では主として1980年代が対象である。もっとも前者は,初めての企画特集であったことによるものか,時として1948年の発足当初にまで言及する。本稿は上記2者の論考を継ぐもので,21世紀の初頭の時点で,20世紀最後の10年を回顧し,21世紀を展望するものである。なお,文献の調査には,『図書館学会年報』の「図書館学年次文献目録」および「図書館情報学文献目録」,『図書館雑誌』各号掲載の「図書館関係雑誌記事索引」,国立国会図書館編「雑誌記事索引」等を参考にした。ちなみに,次に述べる「五十年史資料編」は,同館関係文献目録(図書,雑誌,新聞記事)を収録の予定。国立国会図書館を全体的に理解し,調査する出発点として,当該「関係文献(図書)」が参考になるが,なかでも『国立国会図書館五十年史本編』(1999.3)を挙げたい。これは1998年が創立50年にあたることから編纂されたもので,「同資料編」は「本編」と異なりCD-ROM形態で2000年度末に刊行の予定である(入手可能時期は2001年度初か)。これも,資料・情報の電子化時代の到来を象徴している。もちろん,『国立国会図書館三十年史本編および資料編』(1979-80)の価値を減ずるものではない。というのは,「五十年史」は,創立当初の詳細については主として「三十年史」に譲り,記述の力点をそれ以後の館の展開に置くからである。したがって,コンピュータ導入とそれに伴う業務の機械化,さらに電子図書館化,急激な情報化社会の進展とそれに伴う多様な要求,そのための全面的な組織・施設の変革と対応が中心テーマとなる。以上の変化に対応する館の活動については,毎年衆・参両院議長に提出する『国立国会図書館年報』があり,その間の活動の詳細は,その都度最新情報の紹介,業務の分析・報告,論考などを載録する『国立国会図書館月報』(1961.4創刊)がある。また同月報12月号には年間索引があり,さらに「総索引」(1961-1977)および(1978-1994)が刊行されている。これにより,同館の具体的な活動内容を記した文献の調査は比較的容易である。そこで,「月報」掲載記事は,文献情報量が多いこと,そして「索引」が存在することから,この文献目録から除外した。最近の,特に1990年代に限定して国立国会図書館関係記事を眺めると,次の4つのキーワードに集約できる。(1)関西館,(2)国際子ども図書館,(3)電子図書館,(4)電子出版物の出現とそれに伴う納本制度の改革,そしてそれに深く関わる(5)図書館協力である。
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