観光学評論
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  • 観光列車「伊予灘ものがたり」を事例に
    藤田 知也
    2019 年 7 巻 2 号 p. 83-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    近年多くの観光列車が導入されており、観光列車は沿線地域の活性化に貢献するものと思われる。本稿は、旅行者の誘客に有益な観光列車の観光価値とその構造について観光要素論・言語学的視座から、それを備えた観光列車による旅行者数の増加を通じた地域経済への効果の大きさを経済波及効果の推計から捉えることで、観光列車の導入による地域経済への効果とその課題について明らかにするものである。
    本研究では運行開始後、高乗車率を維持している観光列車「伊予灘ものがたり」を事例とし、沿線住民が関わる「参加・交流」の要素を持つこと、観光列車のテーマを構成することが誘客力に寄与していることを示した。経済波及効果を推計し地域経済への効果の大きさを捉えたところ、先行研究と比較し効果は小さいことが明らかとなったが、沿線住民が観光価値に関与していることを踏まえると、運行頻度の増加は却って観光列車の価値を低下させる可能性がある。従って、観光列車の導入により地域経済に大きな効果をもたらすには観光列車の魅力を高めるだけでなく、域内での観光消費の増大に繋がる観光振興策や域外への漏出を低減させる産業政策を併せて実施することが重要となる。
  • 宿泊予約サイトのクチコミ分析に基づいて
    浜本 篤史
    2019 年 7 巻 2 号 p. 95-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、日本において生じている中国人観光客のマナー問題について、宿泊予約サイトのクチコミ・データを用いて、問題認識や不満等を分析した。具体的には、「楽天トラベル」における18宿泊施設に対するクチコミデータ914件(2007年1月~2016年12月)を分析対象とし、テキストマイニングツールであるKH Coderを用いて、頻出語のピックアップや共起ネットワーク分析、対応分析等をおこなった。その結果、日本人宿泊客にとってマナー問題が生起するシーンと具体的状況は、部屋(騒音)、大浴場(入浴方法)、朝食会場(混雑・騒音・食べ漁り・席取り)、フロント前(混雑)にほぼ集約されることが確認された。また時系列的には、この十年間で中国人旅行客のマナー問題に対するクチコミは大きく変化していない。対応策としては、騒音や入浴マナーについて宿泊施設が注意喚起すべきという意見がまず多く、フロアや朝食会場を分ける提案も一定程度みられた。ほかに、宿泊施設スタッフの疲弊がしばしば観察されていることも把握されたが、マナー問題の責任主体が中国人旅行者自身なのか宿泊施設にあるとみなされているのかは、認識変化の有無も含めて慎重に見極める必要性があることも示唆された。
  • 観光経験による態度形成過程を中心としたアプローチに向けて
    小原 満春
    2019 年 7 巻 2 号 p. 111-122
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は観光経験とライフスタイルの移住の意思決定に関する先行研究を検討し、これからの研究を展望し、今後あるべき方向性を提示することを目的とする。まず、先行研究の検討によって、ライフスタイル移住という概念が提示された背景を論じ、次いで過去の観光経験がライフスタイル移住の意思決定に影響を与えるという指摘に焦点を当てる。本稿で扱うライフスタイル移住は、一般的には、生活の質の向上や、自己実現のための自発的な移住と定義される。その源流はヨーロッパと北米において、退職後に快適な生活を求めて移住をする国際退職者移住にあり、こうした退職者の移住地選択は、過去の観光経験に影響されているという指摘がある。しかしながら、これらに類する既存文献を吟味すると、観光経験による移住を促進する要因や、動機についての研究蓄積はあるものの、観光経験が移住の意思決定に対してどのような影響を与えるのかについては、ほとんど研究がなされていない。そこで、観光行動研究における場所への態度に関する概念を移住の意思決定への援用可能性について検討した。その結果、観光経験によって場所への肯定的な態度が形成されると、それが移住する意図を形づくり、さらに移住が実行されるというプロセスを経るという仮説を立てることができる。
  • 消費税の記帳業務を事例として
    藤原 久嗣
    2019 年 7 巻 2 号 p. 123-133
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    シェアリングエコノミーが世界的に拡大する中、その1つとして民泊の普及が挙げられるが、法的側面での課題も多くその整備が急速に進められている。民泊事業は、一般的に事業性があるため記帳や申告義務が必要となるが、事業者の記帳等の業務負荷は大きく、消費税法の記帳業務を巡る争いも生じている。また、Airbnb等の民泊仲介サイトの利用にあたっては、キャッシュレス決済が前提となるが、キャッシュレスの発展は、実務の現場で生じている様々な課題の糸口を見出す可能性があると考える。
    本稿においては、民泊関連事業者が拡大する中で法制度的側面からの研究として、消費税法における記帳業務に論点を絞り議論することとする。
  • 演じられる文化の表象とリアリティ
    川森 博司
    2019 年 7 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    伝統芸能は、近代化のプロセスの中で再帰的に捉えなおされ、時間と空間を分離して、観光の場で演じられるようになってきた。本稿では、伝統芸能が観光の対象となっていく際の表象のあり方と、実際に観光の場で演じられる際の地元住民にとってのリアリティのあり方を検討し、観光の場において伝統芸能がどのような力をもっているかを観光客の経験のありようを軸に考察した。本来の場と観光の場を対立するものとして捉える見方については、今や地元住民が二つのリアリティを生きていると捉えるのが有効であることを示し、伝統芸能の観光がリピーターを生み出す仕組みについては、観光客の現地でのフロー体験がその要因となっている可能性を提示した。フロー体験は専門家のみが体験できるという議論があるが、伝統芸能に触れる体験は専門家のフロー体験と連続する側面をもっており、それがリピーターを生み出す仕組みを理解するためには「快楽(pleasure)」と「楽しみ(enjoyment)」を区別して考察する必要がある。「楽しみ」は積極的な注意の集中から生じるのであり、伝統芸能は特定の人々にとっては、そのような注意の集中を生み出す力をもっているのである。
  • 新潟県佐渡島の民俗芸能・鬼太鼓を通じた体験・交流プログラム
    鈴木 涼太郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 141-154
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、新潟県佐渡島の伝統芸能・鬼太鼓を事例に、民俗芸能を介した体験・交流プログラムにおける観光経験について考察する。佐渡島は全国的な知名度を誇る民謡・佐渡おけさや能、世界的太鼓集団「鼓童」の存在によって「芸能の島」とも称されている。そのなかで鬼太鼓は、全島の集落で広く伝承されている芸能であり、佐渡の観光宣伝の文脈では戦前から島を代表する伝統文化として位置づけられてきた。佐渡市高千地区では、毎年8月13日に「夏の彩典たかち芸能祭」というイベントが行われている。このイベントでは2009年より神奈川県の大学生が参加する芸能体験プログラムが行われており、学生たちは約1週間高千地区に滞在し、集落に伝わる鬼太鼓を学び芸能祭本番では伝承者とともに観衆に向けて披露する。このプログラムを対象に筆者が2009年以来行ってきたアクション・リサーチから明らかになったのは、民俗芸能という身体技法の習得をともなう交流プログラムにおいては、束の間の「師匠と弟子」の関係が構築されるということである。さらに参加学生が伝承者とともに鬼太鼓を披露して地域の人々や観光客に「観られる」側となる状況では、「地域文化観光」論で指摘されているような真摯な交流がもたらされ、観光者としての参加者が実存的真正性を経験することが可能になる。だが同時に重要なのは、そのような真正な経験が、このプログラムが管理された団体旅行であり、受け入れる地域と参加する学生にとって「一時的な楽しみ」であることによって支えられているという点である。
  • 「民謡おわらの街」八尾の事例から
    長尾 洋子
    2019 年 7 巻 2 号 p. 155-168
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    観光まちづくりや着地型観光の試みが蓄積され、コンテンツ・ツーリズムに期待が寄せられるなか、観光振興の鍵を握る要素として物語が大きく注目されている。物語は観光地のイメージ形成に寄与し、旅行や目的地選択の動機となり、観光経験を意味づけ豊かにするものであるが、近年、文化庁による「日本遺産」事業の創設等、物語の効果を積極的に観光政策や事業に組み込む動きが加速化している。伝統芸能は地域の物語の一部として発信され、ときには物語を伝えるメディアの役割を担うことがある。その際、どのような内容が発信されるかにとどまらず、誰が、どのように物語を維持し、あるいは育て、人びとに提供するのか、といった問題が浮上する。本論考は20世紀初頭に観光文化としての物語の基調を創出した富山県八尾町の民謡おわらを取り上げ、その歴史的展開の中から自律性や持続性にかかわる事象の分析を通じてマネジメント概念の可能性を示し、芸能を担い支える地域社会と物語、文化政策との関係を考察する。
  • 広島県域の事例から
    樹下 文隆
    2019 年 7 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者は2015年度まで県立広島大学に在職した。約20年の広島での勤務において、広島県域の様々な伝統芸能を見聞する機会を得ることができた。特に、2000年度県立大学重点研究事業「神楽の変容とその社会的基盤に関する研究」(研究代表者:米田雄介)、2006年度~2008年度文部科学省・現代的教育ニーズ支援取組プログラム(現代GP)「学生参加による世界遺産宮島の活性化――学生が宮島の魅力を再発見し、世界に発信する」(採択大学:県立広島大学)などの事業に参加できたこと、2012年度~2014年度科学研究費補助金挑戦的萌芽研究「日本文化における道教受容解明のための芸能に見る道教的要素の抽出」(研究代表者:樹下文隆)により、各地の伝統芸能を実地踏査できたことで、各地の伝統芸能の現状と存続のための取組状況を見ることができた。取組の中で、特に地域の学校が一定の役割を果たしている。
    伝統芸能保存の一翼を担う地域の学校、地域観光資源の開発に携わる大学の例は全国的に数多く報告されている。本論文では広島県域における取組の一端を紹介するとともに、地域の伝統芸能の保存に学校が果たす役割と問題、地域の伝統芸能を観光・教育資源として活用する方策について所存を述べる。
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