日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
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試験法、バイオマーカー、パノミクス、農薬、環境
  • 根本 昌宏, 遠藤 泰, 小和田 淳子, 山本 隆弘, 平藤 雅彦, 齋藤 秀哉, 南 勝, 伊藤 善也
    セッションID: O-45
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】実験動物として汎用されるラットやモルモットなどは嘔吐を起こさない動物として知られており,嘔吐評価系としては通常用いられない.Protoveratrine-A(以下,PV-A)は強力な催吐性物質であり,マウスに対し空嘔吐(以下,retching)行動を起こすことが報告されている.そこで今回PV-Aの投与によるラットならびにマウスのretching行動の行動薬理学的解析ならびに電気生理学的評価を行い嘔吐評価系としての有用性を検討した.
    【方法】マウスならびにラットに対しPV-A を皮下投与し,その後60分まで行動解析を行った.さらにPV-A投与30分前に制吐薬としてNK1受容体拮抗薬のCP99,994もしくは5HT3/5HT4受容体拮抗薬のindisetronを併用し,同様にPV-A投与後60分まで行動解析を行った.電気生理学的評価としてラットのin vivo腹部求心性迷走神経活動に対するPV-Aの影響について検討した.
    【結果及び考察】PV-Aはラット,マウス共に用量依存的にretching行動を引き起こした.嘔吐様行動はretchingのみであり,胃の内容物が吐出するvomitingは高用量群でも発現しなかった.NK1受容体拮抗薬のCP99,994はPV-Aによるretchingを有意に抑制した.Substance-Pの作用するNK1受容体は中枢ならびに末梢において嘔吐発現に関係していると考えられている.今回確認されたPV-Aによるretching行動においてもsubstance-Pが関与していることが明らかになった.5HT3/5HT4受容体拮抗薬のindisetronはretching行動について抑制傾向を示したものの有意な差は見られなかった.PV-Aにより発現するラットならびにマウスのretching行動は,制吐性物質の評価に有用であると考えられた.
  • 五十嵐 良明, 山田 真生, 内野 正, 徳永 裕司
    セッションID: O-46
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Local lymph node assay (LLNA)原法では皮膚感作性物質によるリンパ節細胞の増殖活性を放射性物質(RI)の取り込み量で評価するが、代わりにブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込み量を指標として評価する代替法が開発され、現在、バリデーションが行われている。この非RI-LLNA法ではELISAによる吸光度の増加率(SI)を判定基準としているが、本研究では、ELISAにおいてプレートに入れる細胞数等の各種条件によってSI値が影響を受けるかどうか検討した。2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)及びα-ヘキシルけい皮酸アルデヒド (HCA)をマウスに塗布した後、BrdUを腹腔内注射し、耳介リンパ節を取り出してリンパ節重量を測定した。リンパ節細胞を遊離して、細胞数を血球計算盤で、細胞内ATP量をルシフェラーゼ発光法で、BrdU取り込み量をELISAで測定した。細胞数とATP量はほぼ同じSI値を示すが、BrdU法のSI値はこれより低い値を示し、感作性の陽性判定の基準値は低く設定する必要があった。ELISAにおける硫酸の添加の有無、及びブランクとして生理食塩水の残存量はSI値に影響しないものの、基質の反応時間は一定にすることが必要と思われた。吸光度は細胞数にほぼ相関して増加するが、ブランクとの差を得るには、プレートの各穴に1万個程度の細胞が必要であった。細胞数が少なくなるとブランクを差し引いた吸光度が急激に低下し、それに伴って試験群のSI値が上昇し、細胞数やATP量のSI値とは大きく異なった。したがって、対照群で一定レベルの吸光度値が得られるよう細胞数を調整することが、判定基準の確立には必要と思われた。同時に行った化学発光法での検討結果も合わせて報告する予定である。
  • 一瀬 豊日, 小山 倫浩, 松野 康二, 木長 健, Thi Thu Phuong PHAM, 山口 哲右, 川本 俊弘
    セッションID: O-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【背景】遺伝子多型による毒性の差を検討する簡易な毒性試験の手法は確定していない。しかしながら対象人口が大きく、毒性の差が予想される遺伝子および毒物も少なくない。エタノール中間代謝産物のアセトアルデヒドは主にアルデヒド脱水素酵素(ALDH)2が代謝する。日本人のおよそ半数はALDH2が不活性型であり、飲酒後フラッシング反応を示す。アセトアルデヒドは室内環境汚染物質の1つであるが、アセトアルデヒド全身曝露による毒性がALDH2不活性で異なるかは不明である。
    【目的】モデル動物であるAldh2-/-マウスを用いアセトアルデヒド急性曝露時においてALDH2活性の有無により毒性症状に差はないか急性全身曝露実験を行い評価した。
    【方法】Aldh2-/-および野生型マウス(Aldh2+/+)(各n=5)をアセトアルデヒド5000ppmの密閉容器に投入し 4時間全身曝露した。マウスの経過を観察とともに、曝露終了時の血中アセトアルデヒド濃度をHead space GC-MS法を用い測定した。
    【結果・考察】Aldh2+/+に比べAldh2-/-は呼吸数減少、活動低下など麻酔症状が強く現れた。血中アセトアルデヒド濃度はAldh2-/- が200μmole/g、Aldh2+/+が85μmole/gとAldh2+/+に比べAldh2-/-の血中アセトアルデヒド濃度が有意に高値であった。死亡数および毒性症状をOECD TG433の分類にあてはめると、アセトアルデヒド急性曝露は1クラスの差をしめす。ヒトにおいてもALDH2不活性型のヒトはと活性型のヒトと比べ、アセトアルデヒド全身曝露毒性が強く発現する可能性がある。
  • 坂口 和子, 鈴木 潤, 赤堀 文昭, 白井 明志
    セッションID: O-48
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】コプラナーPCBsの妊娠ラット曝露による影響を新生子ラットの血漿タンパク質の変動より検討し、Polychlorinated biphenyls (PCB)126の1WではAlbumin(Alb)の形状の質的変化、すなわちメルカプトアルブミンの出現、3WではPCB126およびPCB169でC3の明らかな増加が観察され、炎症性疾患を惹起したことをこれまでに報告した。今回は、この新生子ラットの低分子領域の血漿タンパク質の変動について検討した。【方法】妊娠ラットへPCB126を3μg/kg/dayおよびPCB169を30μg/kg/dayの用量で経口投与し、新生子ラットの生後1週齢(W)、3W、6Wおよび15Wの低分子領域血漿(1.5μL)タンパク質スポット(スポット)の動態変化をミクロ2次元電気泳動法(未変性-変性)ならびに質量分析により観察した。【結果】PCB投与の新生子ラット血漿の低分子量スポットの動態変化では、PCB169ではApolipoprotein E (ApoE)が1Wで減少、再び3Wで増加するが、PCB 126では6Wで増加が観察された。これらの変化からは、脂質代謝への影響が推察され、PCBsが出生後に乳汁を介して母親から次世代ラットへ移行することを示唆した。さらに、PCB169では15Wで、ApoE, tryptase inhibitor TRYPSIN C(TITC), retinol-binding protein(PRBP)のいずれのスポットも減少が観察された。これらの変化は、PCBs曝露による免疫能および脂質代謝の低下、加えてレチノールの枯渇を示唆した。
  • 大野 克利, 前島 秀樹, 東 幸雅, 山田 敏広
    セッションID: O-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的]食品中の素材、添加物、危害物質などの発がん性の有無と強弱を見極め製品から排除することは企業責任として大きな課題である。多段階発がんの発がんイニシエーションについては、ヒト細胞を用いた試験法(Ohno et al. Mutat. Res. 588)を開発し、数多くの食品添加物、食品危害物質を評価してきた。発がんプロモーションに関しては、形質転換試験など発がんプロモーターを検出できるIn vitro試験法が知られている。しかし、試験期間が長く、検体処理数に限界があり、顕微鏡観察による判定など操作が煩雑である。そこで、発がん性のリスク評価の一環として、ファーストスクリーニング法として適用可能な短期間で簡便な発がんプロモーター検出系の開発を目的とし、形質転換試験における発がんプロモーションのマーカー遺伝子の探索を実施したので報告する。 [方法] MCAでイニシエーション処理したBALB/c 3T3細胞に発がんプロモーターを添加し、36から72時間後に総RNAを抽出した。陰性対照は溶媒のみ、陽性対照はTPAを用いた。得られたRNAについてDNAマイクロアレイ(Affymetrix社GeneChip Mouse genome 430 2.0 Array)を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施した。また、遺伝子発現量とフォーカス数を比較検討した。 [結果] 作用メカニズムの異なる発がんプロモーター処理で共通して陰性対照に対し1.5倍以上の発現量を示した遺伝子群として、細胞周期関連遺伝子、細胞増殖関連遺伝子、がん関連遺伝子などを検出した。発がんプロモーション作用の無い物質では、これらの遺伝子発現量の増加は認められなかった。以上より、これらの遺伝子群は、発がんプロモーションを検出する形質転換試験におけるマーカー遺伝子として適用可能であり、これらを用いることにより、発がんプロモーターを短期間に検出できることが示唆された。
  • 山本 利憲, 山田 弘, 堀井 郁夫
    セッションID: O-50
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    従来,核磁気共鳴法(NMR)によるメタボノミクス解析では,主に尿及び血清を測定対象としてきた。しかしながら,これら体液中における内因性代謝物の変化は,生体内の様々な臓器毒性の結果であり,しばしばその特異性が問題とされてきた。そこで我々は,高分解能マジック角回転NMR法を応用し,臓器そのものメタボノミクス解析の実施を検討した。摘出臓器を静磁場に対してマジック角(54.74度)傾けて高速回転すると,核スピンが関わる双極子相互作用及び化学シフト異方性等を平均化することができる。この方法により,臓器中に含まれる様々な内因性代謝物の情報を直接得ることが可能となる。測定は,600MHz NMR分光計で,水及び高分子に由来する成分を消去するパルス系列を用いて実施した。回転速度は5kHz,測定温度は常温を採用した。まず,ラット肝臓を用いて測定中の臓器の安定性を検討した結果,測定開始後約4時間まで顕著なスペクトルの変化は認められなかった。次に,雄性ラットに,肝毒性を惹起するアセトアミノフェン(APAP)及び四塩化炭素(CTC)の毒性用量を経口投与し,投与後6及び24時間に採取した肝臓を用いて解析を実施した。主成分分析の結果,コントロール群の形成するクラスターに対して,APAP及びCTCともに明らかに異なるクラスターを形成した。PLS-DA解析の結果から,寄与している成分を特定すると,それらは,APAP投与群ではグルタチオンの減少,CTC投与群では脂質の顕著な増加などであった。これらの変化は,報告されている毒性発現メカニズム及び病理組織学的検査の結果と矛盾しないものであった。加えて,APAP投与後6時間においては,明らかな病理変化が認められていないにも関わらず,コントロール群と異なるプロファイルを示していた。以上のことから,本法を用いたメタボノミクス解析により,毒性メカニズム解析,毒性バイオマーカー探索,さらには毒性予測が可能となるものと推察された。
  • 石橋 弘志, 石田 晴菜, 松岡 宗和, 冨永 伸明, 有薗 幸司
    セッションID: O-51
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    近年、新たな環境汚染物質として有機フッ素化合物 (PFOAやPFOS) が問題視されているが、それらの有力な汚染源の一つとしてフッ素テロマーアルコール (FTOHs) が注目されている。FTOHsの環境中における汚染実態に関する知見は蓄積されつつあるが、生物影響に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、in vitro試験系を用いてFTOHsのヒトおよびメダカエストロゲン受容体 (ER) の転写活性化に及ぼす影響を調査した。 試験物質として6:2 FTOH、8:2 FTOH、NFDH、PFOSおよびPFOAを、陽性対照物質として17β-エストラジオールを用いた。ヒトERs (hERαおよびhERβ) とメダカERα (medERα) の転写活性化能の測定は、既報に従い酵母two-hybrid法でおこなった。すなわち各ERsとcoactivator TIF2のタンパク質・タンパク質相互作用により評価した。 結果として、6:2 FTOH、8:2 FTOHおよびNFDHはhERsおよびmedERαを活性化した。しかし、PFOSおよびPFOAはいずれのERsも活性化しなかった。hERsの活性化は6:2 FTOH > NFDH > 8:2 FTOHの順に強く、hERαはhERβに比べ高い感受性を示した。一方、medERαの活性化は6:2 FTOH > 8:2 FTOH > NFDHの順に強く、hERsと比較すると明らかな種間差がみられた。FTOHsによるヒトおよびメダカエストロゲン受容体の活性化を明確に示したのは本研究が初めての報告である。以上のことから、ヒトおよびメダカERシグナル経路を介した潜在的内分泌撹乱性の可能性が示唆され、今後、in vivo試験系を用いてより詳細な生物影響を調査し、生体リスク評価を行うことが極めて重要である。
  • 佐藤 元啓, 北 加代子, 鈴木 俊英, 越智 崇文
    セッションID: O-52
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的]2003年に茨城県神栖町(現・神栖市)で起こったヒ素中毒事件では、地下水から主要な汚染物質としてジフェニルアルシン酸(DPAA)が検出された。すでに我々はDPAA処理ヒト細胞蛋白の網羅的解析により、特異的に発現の低下を示すタンパク質グルタミナーゼを明らかにした。グルタミナーゼは、興奮性神経伝達物質グルタミン酸の供給に関わる重要な酵素であり、その発現の異常は神栖町ヒ素中毒患者の中枢神経症状発現機構に関連して重要と思われる。神栖町井戸水中にはDPAAの他にビスジフェニルアルシンオキシド(BDPAO)およびフェニルアルソン酸(PAA)が検出されており、また付近の米よりフェニルメチルアルシン酸(PMAA)といったフェニルヒ素化合物が検出されている。そこで本研究では、フェニルヒ素化合物をはじめ種々のヒ素化合物が細胞内グルタミナーゼの発現および酵素活性に及ぼす影響について検討した。[方法]細胞生存率に殆ど影響を与えない濃度の各ヒ素化合物で処理したヒト肝癌由来HepG2細胞から細胞抽出液を調製し、細胞内のグルタミナーゼ活性の変化およびWestern blot法を用いてタンパクレベルの変動を観察した。[結果および考察]80%以上の細胞が生存する濃度のヒ素化合物で処理したHepG2細胞内のグルタミナーゼ活性およびタンパクレベルを測定したところ、DPAA,PMAA,PAAといった5価フェニルヒ素化合物処理による濃度依存的な活性並びにタンパクレベルの減少が認められた。一方3価のフェニルヒ素化合物であるBDPAOおよび3価の無機ヒ素(iAs(III))では、活性およびタンパクレベルには大きな変化が見られなかった。以上のことから、細胞内グルタミナーゼ活性およびタンパクレベルの減少は5価フェニルヒ素化合物に特異的であると推察される。
  • 藤原 泰之, 稲垣 孝行, 佐藤 雅彦, 鍜冶 利幸
    セッションID: O-53
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】環境汚染物質である無機ヒ素は動脈硬化症を含む血管病変発症の危険因子とされる。血管内皮細胞が産生するプロテオグリカンは,血管内腔の抗血栓性や傷害内皮の修復などに重要な役割を果たしている。我々は,亜ヒ酸が血管内皮細胞のプロテオグリカン合成を阻害することを見出した。今回,ヒ素と同族で血管内皮細胞に対して低毒性なビスマスが,亜ヒ酸の毒性を修飾する可能性を検討した。
    【方法】コンフルエントの培養ウシ大動脈内皮細胞を亜ヒ酸ナトリウム(2, 5, 10 μM)および硝酸ビスマス(5, 10, 20 μM)存在下,[35S]硫酸で24時間代謝標識し,細胞層と培地に蓄積した放射活性なプロテオグリカンを分析した。
    【結果および考察】血管内皮細胞において,亜ヒ酸は非特異的な細胞傷害を伴わずに細胞層と培地画分に蓄積したプロテオグリカンへの[35S]硫酸の取り込みを顕著に減少させた。ビスマスは,細胞層において[35S]硫酸の取り込みを僅かに減少させたが,培地では有意な変化は認められなかった。亜ヒ酸とビスマスが共存した場合,細胞層と培地の両画分において,亜ヒ酸による[35S]硫酸の取り込み阻害がビスマスによって濃度依存的に有意に軽減されることが示された。このような軽減作用は,亜鉛,マンガン,ニッケルおよびコバルトなどの重金属においては認められなかった。血管内皮細胞が産生した放射活性なプロテオグリカンをDEAE-Sephacel陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて分離したとき,亜ヒ酸はヘパラン硫酸プロテオグリカン画分およびコンドロイチン/デルマタン硫酸プロテオグリカン画分への[35S]硫酸の取り込みを共に阻害したが,ビスマスはそれらの阻害作用を有意に軽減させた。以上より,ビスマスが血管内皮細胞に対する亜ヒ酸のプロテオグリカン合成阻害作用を軽減する特異な無機イオンであることが示唆された。
  • 中浜 隆之, 菅野 裕一朗, 井上 義雄
    セッションID: O-54
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】乳がん治療剤であるタモキシフェンは、乳がん細胞では抗エストロゲン様作用を示すが、子宮ではエストロゲン作用を示し、副作用として子宮体がんのリスクが増加する。近年、aryl hydrocarbon receptor(AhR)はestrogen receptor(ER)のAF-1領域(AF-1)へ結合し、ER応答性遺伝子発現を修飾することが報告されている。このER-AhRクロストークをベースとしてより副作用の少ない乳がん治療効果のある化合物をスクリーニングすることを目標とした。本研究ではAF-1活性に着目し、まずAF-1活性検出系におけるAhR-ERクロストークについて調べ、この系の有用性について検討した。つぎにフラボノイド類を用いてスクリーニングを試みた。 【方法】AF1活性検出にはERαのAF-1領域をGAL4-DBDに融合させたタンパク質の発現ベクター(pBIND-AF-1)とレポーターベクター(pG5luc)を MCF-7またはCOS-7細胞にトランスフェクト後、ルシフェラーゼ活性を測定した。 【結果】AF-1活性へのAhRの影響については、AhR 単独では抑制的に作用し、AhR/Arnt では促進的に作用した。AhR/Arnt 存在下でAhR の転写活性化領域欠失ミュータントは抑制的に作用した。AhRリガンドについてAF-1活性を調べると、3-MC、3,4-DMF、α-NFでは活性化、β-NFでは抑制された。フラボノイド類については、myricetin、 rutin、luteolin、 phloretinでは活性上昇が認められ、kaempferolで活性抑制が認められた。フラボノイド類の乳がん細胞増殖への影響については、rutin、naringenin、phloretinでは増殖促進が認められ、kaempferolで増殖抑制が認められた。
  • 菅野 裕一朗, 高根 優介, 中浜 隆之, 井上 義雄
    セッションID: O-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的・背景】Aryl hydrocarbon receptor(AhR)はダイオキシンなどのリガンドによって活性化し、CYP1A1などの遺伝子プロモーター上に存在するXenobiotic response element(XRE)上に結合し標的遺伝子を活性化する。AhR repressor(AhRR)は、AhRと構造が類似しているが転写活性化能を持たないためXRE上でAhRと競合しAhRによる転写活性化を抑制するタンパク質として同定された。しかしながら、そのほかの機能に関してはほとんど明らかになっていない。そこで我々はヒト乳がん細胞にAhRRを過剰発現させた安定発現株を作成し、AhRRの機能を明らかにすることにした。AhRがEstrogen receptor(ER)とクロストークしERの機能を調節することが知られていることなどから、AhRRとERのクロストークの可能性について検討することにした。 【結果・考察】エストロゲンによる細胞増殖促進作用へのAhRRの影響を、MCF-7細胞とMCFRR4(AhRR過剰発現株)に17β-estradiol(E2)を添加し、細胞増殖をMTS アッセイにより評価した。MCF-7細胞ではE2による細胞増殖促進が観察できたが、MCFRR4ではE2による細胞増殖の促進は観察することができなかった。またAhRRはエストロゲン応答配列であるc38EREとC3-luciferaseの両方の活性を抑制した。また、免疫共沈降法によりERとAhRRの結合が確認された。これらの結果から、AhRRはERと結合し、ERを介した転写を抑制することによってMCF-7細胞の増殖を抑制している可能性が示唆された。本研究からAhRRにはAhRとXRE上で競合する“AhR repressor”としての機能に加えてERとの相互作用という新たな機能が存在することが示された。
一般演題(ポスター)
毒性発現機序
  • 森 大樹, 井口 綾子, 仁平 守俊, 石橋 弘志, 高良 真也, 武政 剛弘, 有薗 幸司
    セッションID: P-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    合成香料である合成ムスクは、洗濯洗剤、石鹸、化粧品等の家庭用品の芳香化合物として年間約5,000t生産されており、世界中で広く使用されている。欧米では新たな環境汚染物質として注目されており、近年の研究では、水環境、大気環境中での存在が確認され、ヒトの脂肪組織や母乳中からも検出が報告されている。これらの化合物は、脂溶性が高く生体内で加水分解されにくいため生体への生物濃縮性が憂慮される。本研究では、合成ムスク類である6-acetyl-1,1,2,4,4,7-hexamethyltetraline(AHTN)および1,2,4,6,7,8-hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethylcyclopenta-γ-2-benzopyran(HHCB)をヒト遺伝子と高い相同性があり、ヒトへの影響解析モデルとしても有用とされている土壌自活線虫C. elegansを用いた各種毒性試験法および新たに約80種のチトクロームP450(CYPs)遺伝子群をスポットした自作カスタムチップを用いて、DNAマイクロアレイによる発現変動遺伝子解析を行った。 実験には、野生型線虫を用い、AHTNおよびHHCBはDMSOに溶解して試験物質とした。溶媒対照群をDMSO0.1%として、同調・孵化させたL1幼虫を24時間曝露し、mRNAを抽出した。対照群をCy3、曝露群をCy5で蛍光標識し、CYP遺伝子群の発現変動解析を行った。対照群と比較して、変動倍率が2倍以上の遺伝子を誘導遺伝子とし、2分の1以下の遺伝子を抑制遺伝子とした。 AHTN、HHCB曝露後のCYP遺伝子群の発現変動解析を行った結果、AHTN、HHCBに共通してCYP14群およびCYP34群、CYP35群の発現誘導が確認された。一方、両化学物質曝露によるCYP遺伝子群の発現抑制は認められなかった。これらから、多環ムスク類はヒトへの曝露影響も憂慮されることから今後、詳細に検討する必要があると思われる。
  • 小林 大祐, 吉村 昭毅, 條野 敦史, 和田 啓爾
    セッションID: P-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】我々は4’-O-Methylpyridoxine (MPN)が銀杏中毒の原因物質であり、銀杏中毒患者の血中に高濃度のMPNが存在することを明らかにしている。昨年の年会では、ラットにMPNを投与すると血漿中Pyridoxal-5’-phosphate(PLP)濃度がわずかに減少し、Pyridoxal(PL)およびPyridoxic acid (PNA)濃度が増加することを報告した。本発表では銀杏中毒のメカニズム解明を目指して、ヒトでの血中VB6濃度におよぼすMPNの影響を明らかにすることを目的とした。
    【方法】銀杏中毒が疑われた患者からインフォームドコンセントをとり、中毒時の血中に存在するMPNおよび各種VB6誘導体の濃度を測定した。MPNおよび各種VB6誘導体[PLP, PL, Pyridoxine(PN), PNA]]の濃度は、semicarbazideによる誘導体化法を組み合わせた蛍光検出HPLC法により測定した。
    【結果および考察】測定したすべての患者の血中からMPNが検出され、銀杏中に含まれるMPNによる中毒であると考えられた。ラットで観察されたように血中のPLおよびPNAが比較的高値を示し、PLP濃度は正常人で報告されている値と同程度または低値を示した。この結果について、以下の2つの可能性が考えられた。(1)MPNからPLが生成され、PLはさらにPNAに変換された。(2)MPNは、PLからPLPを生成するpyridoxal kinase活性を阻害するため、PLが増加し続いてPNAが生成した。血漿中VB6濃度は必ずしも組織中のVB6濃度と相関しないため、組織中ではさらにVB6欠乏状態にある可能性もあり、今後組織中VB6濃度へのMPNの影響の検討が必要であると思われる。
  • 佐藤 紀宏, 石黒 直樹, 大薮 正順, 前田 智司, 玉井 郁巳
    セッションID: P-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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     ゲフィチニブなど様々な薬物が間質性肺炎などの肺毒性を引き起こすことが知られているが、その発症機構は明確ではない。我々は肺サーファクタント成分の大部分を占め、肺機能を維持するために不可欠なホスファチジルコリン(PC)異常がその原因の一つではないかと考えた。PCは2型肺胞上皮(AT2)細胞で生合成され、肺胞内に分泌される。PC前駆体コリンの血液中から細胞内への供給がPC生合成の第一段階であるが、本検討ではまず、肺毒性を示す薬物がAT2細胞へのコリン供給に働くトランスポーターを阻害し、その結果肺サーファクタント異常が生じるという仮説を考えた。
     本仮説について、ヒト肺胞上皮細胞由来A549細胞および初代培養ラットAT2細胞を用いて検討を行った。まず、A549細胞およびラットAT2細胞でコリン取り込みに関与するトランスポーター分子の同定を試みた。両細胞でのコリン取り込み特徴は、既知コリントランスポーターの中でもcholine transporter-like protein (CTL)1に類似していた。また、CTL1阻害剤hemicholinum-3や、CTL1 siRNAはA549細胞におけるコリン取り込みを低下させた。更に、RT-PCRにより両細胞でCTL1の発現が確認された。以上より、AT2細胞でのコリン取り込みに働くトランスポーターはCTL1であることが示された。一方、A549細胞およびラットAT2細胞によるコリン取り込みは、ゲフィチニブなど数種の肺毒性を示す薬物により阻害された。さらに、ゲフィチニブは細胞外から供給されるコリンのPCへの組み込みを低下させた。
     以上より、PC生合成に関わるコリントランスポーター阻害が薬物の肺毒性の一因になりうることが示された。さらに、その他のPC生合成過程の阻害も薬物の毒性発現機構として関与することが考えられ、各過程への薬物の影響の検討が必要である。
  • 田口 恵子, Jonathan M. MAHER, 川谷 幸恵, 鈴木 隆史, 山本 雅之
    セッションID: P-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】転写因子Nrf2は親電子性物質などの刺激により細胞質から核へ移行・蓄積し、主に第II相解毒代謝酵素群の転写を活性化する。この活性化は、非刺激下においてNrf2と結合しているストレスセンサータンパク質Keap1によって制御されている。恒常的なNrf2活性化を示すKeap1ノックアウト (KO) マウスは離乳前に致死となり、その後の解析が不可能であった。そこで、当研究室において確立したKeap1ノックダウン (KD) マウスを用いて、肝毒性を示す解熱鎮痛剤アセトアミノフェン (APAP) の毒性発現抑制における恒常的なNrf2活性化の寄与を調べた。
    【方法】Keap1 KDマウス:Keap1flox/-を用いた。APAP投与:700 mg/kgを単回腹腔内投与した。抗酸化剤またはグルタチオン (GSH) 枯渇剤はAPAPと同時投与した。
    【結果および考察】Keap1 KDマウスは、成長遅延はみられるものの生殖可能な成獣に成長した。KDマウスでは主要臓器におけるKeap1タンパク質の発現減少がみられ、逆相関的にNrf2標的遺伝子であるNAD(P)H:キノン還元酵素1 (NQO1) の発現上昇がみられた。また、このKDマウス肝臓においてNrf2は恒常的に核蓄積していることを確認した。野生型マウスとKDマウスに致死量のAPAPを投与すると、KDマウスは全例48時間以上生存した。APAP投与後に野生型マウスでは総GSH量の減少がみられるが、KDマウスにおいては定常量に維持されていた。また、野生型におけるAPAP毒性は抗酸化剤NACによって防御できた。一方、GSH枯渇剤BSOとAPAPをKDマウスに同時投与すると、全例15時間以内に死亡した。以上より、APAPの毒性発現を抑制する機構として、恒常的なNrf2活性化による総GSH量の維持が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
  • 外山 喬士, 角 大悟, 新開 泰弘, 田口 恵子, 山本 雅之, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    <目的> メチル水銀(MeHg)は生体に取り込まれると、MeHg-システイン複合体となり血液脳関門や胎盤を通過し、水俣病に代表されるように脳や胎児に重篤な症状を与える事が知られている。しかしながらその解毒・排泄機構は明らかにされていない。一方、転写因子Nrf2は第二相解毒代謝酵素群を制御しており、有害金属等に応答し生体の解毒・排泄機構を促す事が報告されている。そこで本研究では、Nrf2がMeHgの解毒に関与するという仮定を基に、MeHgによるNrf2の活性化機構、及びNrf2またKeap1( Nrf2のネガティブ調節因子 )遺伝子のサイレンシングによるMeHg毒性毒性の変化を検討し、MeHgの解毒・排泄におけるNrf2の役割を明らかにする事を目的とした。本研究はMeHgに起因する様々なリスクをNrf2の活性化により予防医学的に軽減していくという展望を持つ。
    <方法> 細胞 : ヒト培養神経細胞(SH-SY5Y)を用いた。MeHgによるNrf2活性化の検討 : 抗Nrf2抗体によるウエスタンブロット及びルシフェラーゼアッセイ法によって検討した。細胞毒性 : MTT法で測定した。RNA干渉によるNrf2及びKeap1サイレンシング : リポフェクション法によりNrf2及びKeap1 siRNAを細胞導入した。
    <結果・考察> SH-SY5YにMeHgを曝露すると、Nrf2及びNrf2下流タンパク質の発現量が上昇した。さらにルシフェラーゼ法を用いた検討により、MeHgはNrf2結合配列の転写活性を上昇させた。MeHgによる細胞毒性は、Nrf2のサイレンシングにより上昇し、Keap1のサイレンシングにより減少した。これらの結果から、Nrf2はMeHgの解毒に重要である事が示唆される。現在、どのようなNrf2の下流タンパク質がMeHg毒性の軽減に関係するか検討中である。
  • 岩本 典子, 張 壁伊, 角 大悟, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    喘息などの慢性的な呼吸器炎症の特徴である粘液 (mucin) の異常分泌は、上皮成長因子受容体 (EGFR)を介したシグナル伝達経路によって制御されているMUC5ACの転写活性化によって引き起こされる。また喘息時の呼吸器上皮において重症度の度合いに依存してEGFRの発現が増加する。このように喘息様疾患にはEGFRの発現及び活性化が深く関与している。当研究室では、大気中微小粒子成分として見出された1,2-NQが、モルモットの気管組織のEGFRを活性化することから、1,2-NQによるEGFRの活性化が喘息様疾患の要因のひとつになりうる可能性を示唆してきた。そこで本研究では、1,2-NQによるEGFRシグナル伝達経路の活性化を肺上皮細胞(A549)を用いて検討した。
    1,2-NQをA549細胞に曝露した結果、EGFRの自己リン酸化が見られた。同条件下においてMEK1/2及びERK1/2の活性化も観察された。しかしながら、同様のMAPキナーゼであるp38及びJNK1/2の活性化は検出されなかった。1,2-NQによるMEK1/2、ERK1/2の活性化はEGFRの阻害剤 (PD153035) で有意に抑制されたことから、MEK/ERKの活性化はEGFR依存的であることが明らかとなった。1,2-NQはEGFRのリガンドであるEGFなどの通常のシグナルとは異なり遷延的にEGFR/MEK/ERKを活性化した。
    以上の結果より、1,2-NQは肺細胞においてERK1/2のシグナル伝達経路を特異的に活性化することが明らかとなった。EGFR依存的なERK1/2の活性化はMUC5ACの活性化を主に制御していることから、1,2-NQはEGFRシグナル伝達経路活性化を介してMUC5ACの転写活性化を促すことが考えられる。現在、1,2-NQによるMUC5ACの転写活性化に関して検討中である。
  • 角 大悟, 萬治 愛子, 新開 泰弘, 外山 喬士, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】ジフェニルアルシン酸(DPAsV)の生体影響としてめまい・立ちくらみなどの神経症状を呈することがわかっているが、その毒性発現に対する知見が乏しい。本研究では、DPAsVによる転写因子Nrf2活性化作用とアポトーシス様細胞死との関連性を検討した。
    【方法】細胞:マウス初代肝細胞を用いた。タンパク質発現量:ウエスタンブロット法を行った。アポトーシス:AnnexinVを用い、蛍光顕微鏡で検出した。
    【結果及び考察】DPAsVの曝露に対し転写因子Nrf2が活性化されるか検討したところ、24時間後から顕著にその活性化が認められた。それに伴い、Nrf2制御下にあるHO-1、γGCSLの発現は一過性に上昇していた。しかしながら、本来Nrf2の活性化に伴いその発現上昇が予想されるγGCSHの発現は、DPAsVの曝露により定常レベルより有意に減少していた。この条件下において、アポトーシスの指標であるカスパーゼ3の活性化が検出され、DPAsVを曝露しAnnexinVで染色したところ、アポトーシス様細胞死を示した。次にDPAsVによるγGCSHの発現減少の機序を調べるために、シクロヘキシミドを添加したところ、DPAsV単独曝露に比してγGCSHの発現はさらに減少したことから、翻訳後の分解が示唆された。さらにカスパーゼ3の阻害剤を用いたところ、DPAsVによるγGCSHの発現減少が抑制されたことから、DPAsVによりγGCSH はカスパーゼ3を介して分解される事が明らかとなった。これらの現象は、動物実験で認められるようなDPAsV長期摂取による肝臓傷害の手がかりとなるかもしれない。
  • 梶原 大介, Robert Graves, Stella Redpath, 大島 典子, 春日 卓郎
    セッションID: P-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    近年、生物学的に異なる様々な非小細胞性肺癌(NSCLC)において、上皮細胞成長因子(EGFR)遺伝子の変異と、EGFRのチロシンキナーゼドメイン(TKD)のインヒビターであるgefitinibの腫瘍感受性との相関が報告されている。それにより、EGFRへの変異を有するNSCLC患者にgefitinib を効果的に適用することが試みられている。しかし、gefitinib抵抗性の患者に対してはその進行を妨げる事はできない。
    そのような状況において、放射線療法は、gefitinibに対する抵抗性を示す患者へ代替療法となる大きな可能性を秘めており、既にNSCLCの治療法として使用されている。しかし、現在のところNSCLCのEGFR変異型と放射線感受性の関係は解っていない。もし、これを理解する事が出来れば、放射線治療をより効率的にgefitinib抵抗性の患者に対して適用することが出来るようになるかもしれない。しかし、この関係を明らかにするためには、多様なEGFR変異腫瘍株と放射線照射に伴う様々な表現系(特に細胞毒性パラメータ)を網羅的かつ複合的に定量評価する必要があり、複数のパラメータを一度に解析できる解析技術と高いスループットを必要とする。
    そこで本研究では、蛍光イメージングをベースにしたIN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare)によるHigh-Content Analysis技術を用いて、様々な時系列での19種のNSCLC変異体の放射線効果を定量的に分析した。 今回、10種の野生型NSCLC細胞株と、ミスセンス変異、もしくはin-frame deletion変異をEGFRに有する9種の変異株を用い、放射線照射時間、照射量の違いによる各細胞株の表現系変化を、生存率、DNA修復効率、細胞周期アレスト、小核形成、アポトーシスなどのパラメータを用いて定量的かつ複合的に評価した。
  • 熊谷 和善, 伊藤 和美, 河井 良太, 伊藤 志保, 社領 聡, 清沢 直樹, 古川 忠司, 矢本 敬, 寺西 宗広, 真鍋 淳
    セッションID: P-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】 Lipopolysaccharide (LPS)は動物モデルで,ある種の肝障害誘発薬剤の毒性発現の閾値を低下させることから,特異体質性肝障害に関与する要因に何らかの影響を与えると推察される。これまで,LPSラットモデルでサイトカインの変化を詳細に検索した報告はない。今回,評価報告のある2種の薬剤をこのモデルに投与し,生化学的,病理学的検査に加え,血清中サイトカインの変化を検索した。 【方法】10週齡の雄性F344ラットにLPS (1.0 x 104 EU/kg, i.v.)を投与し,その2時間後に生理食塩水,ranitidine (RA,30 mg/kg, i.v.)またはchlorpromazine (CP, 10 mg/kg, i.p.)を投与した (LPS/Saline,LPS/RA,LPS/CP群)。また,LPSを投与せずに生理食塩水,RAまたはCPを投与する群を設けた。生理食塩水,RAまたはCP投与後2,6,24時間に肝臓を採取した。全ての群に関して病理検査を行うと共に,血液化学検査および血清サイトカイン濃度測定を実施した。 【結果・考察】LPS/Saline群の一部で軽度なALT値上昇がみられたが,LPS/RAおよびLPS/CP群でALT値上昇が顕著であった。病理学的にLPS/RAおよびLPS/CP群で肝細胞微小壊死巣形成を特徴とする肝臓の障害性変化が投与後24時間に認められた。血清中フィブリノーゲン値はLPS/Saline群で投与後2および6時間に減少したが,LPS/RAおよびLPS/CP群でその減少の程度が増強された。また,LPS/Saline群でTNFα等の血清中の炎症性サイトカイン濃度が投与後2または6時間に増加したが, LPS/RAおよびLPS/CP群でIL-1β,IL-6,IFNγ等の炎症性サイトカインがLPS/Saline群で認められた増加レベルと比べ,より高値を示した。以上より,LPSラットモデルはLPSによる凝固系の亢進に加え,サイトカインの変動を介して薬剤の肝毒性の閾値を下げると推察され,血清サイトカイン濃度測定は本モデルによる特異体質性肝障害の検討に有用と考えられた。
  • 伊藤 和美, 熊谷 和善, 新野 訓代, 安藤 洋介, 清沢 直樹, 社領 聡, 古川 忠司, 矢本 敬, 寺西 宗広, 真鍋 淳
    セッションID: P-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】特異体質性肝障害のモデルとして知られているLPSラットモデルにおける肝障害の発症機序を解明することを目的として,LPSラットモデルにranitidine (RA)またはchlorpromazine (CP)を投与して肝障害を惹起,肝臓の網羅的遺伝子発現解析を行った。 【方法】10週齢の雄性F344ラットにLPS (1.0×104 EU/kg i.v.)を投与,2時間後にRA(30 mg/kg i.v,LPS/RA群),CP (10 mg/kg i.p,LPS/CP群)または生理食塩水 (i.v.,LPS/Saline群)を投与,あるいはLPSの前処置なしにRA (Saline/RA群)またはCP (Saline/CP群)を投与した。RA,CPまたは生理食塩水の投与後2時間と6時間に肝臓を採取,GeneChip RAE 230 2.0 (Affymetrix Inc.)による遺伝子発現解析を行った。 【結果・考察】LPS/RA群とLPS/CP群でALTが顕著に上昇したのに対し,LPS/Saline群ではALTは一部の個体でのみ軽度に上昇した。LPS/Saline群とLPS/RA群では2時間後より,LPS/CP群では6時間後より,好中球の浸潤を認めたが,Saline/RA群,Saline/CP群に変化はなかった。遺伝子発現解析では,LPS/Saline群,LPS/RA群およびLPS/CP群の変化は類似しており,Saline/RA群やSaline/CP群とは発現プロファイルが異なっていた。LPS/Saline群,LPS/RA群およびLPS/CP群では,tissue plasminogen activator等の血液凝固系関連遺伝子群の発現が増加するとともに,interleukin-1,interleukin-6等のサイトカイン関連遺伝子群およびcaspase 3,caspase 8等のアポトーシス関連遺伝子群とこれらの発現制御にかかわるToll-like receptor 2およびmyeloid differentiation primary response gene 88の発現増加が認められた。以上より,LPS前処置による肝障害の発症にはToll-like receptor活性化による炎症性サイトカインとアポトーシスの誘導が関与していることが示唆された。
  • 設楽 悦久, 安島 華子, 奥田 拓也, 堀江 利治
    セッションID: P-11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】薬剤によるミトコンドリア障害は、細胞障害の引き金となり、有害事象の原因の一つとなりうる。これまでに一部の非ステロイド性抗炎症薬、スタチン系高脂血症治療薬およびtroglitaozoneが、ミトコンドリアにおける透過性遷移(mitochondrial permeability transition; MPT)を引き起こすことが報告されている。一方で、一部の培養細胞株においてP-糖タンパク (P-gp)がミトコンドリアに局在していることが最近報告されており、これが薬剤性ミトコンドリア障害に影響する可能性が考えられる。実際に、troglitazoneによるMPTに対して、P-gp阻害剤であるketoconazoleやverapamilを添加したところ、効果を減弱した(奥田ら, 日本薬学会第127年会)。そこで、各種スタチンによるミトコンドリア障害を観察し、P-糖タンパク阻害剤の影響について検討を行った。【方法】ラット肝および心筋より調製したミトコンドリア画分に薬剤を加えたときの540 nmにおける吸光度の低下により、ミトコンドリア膨潤を評価した。【結果】各種スタチンにより、ラット肝および心筋から調製したミトコンドリアにおいて膨潤が観察された。その効果は、simvastatin, cerivastatinおよびfluvastatinが特に強く、lovastatinがそれに続き、atorvastatin, rosuvastatinおよびpravastatinでは非常に弱かった。この順序は、筋障害の程度の順序と類似していた。Simvastatinによる膨潤に対するP-gp阻害剤の影響を見たところ、MPT阻害剤にもなるcyclosporin Aで抑制されたものの、ketoconazoleやverapamilの効果は小さかった。これはtroglitazoneとは異なる結果であった。
  • 高橋 勉, 永沼 章
    セッションID: P-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    アドリアマイシン (ADM) は癌の化学療法に幅広く用いられているが、癌細胞の本薬剤に対する耐性獲得が問題となっている。我々はADM耐性獲得機構を明らかにするため、出芽酵母を用いてADM耐性に関わる遺伝子群の検索を行い、これまでに数種の新規耐性遺伝子の同定に成功している。その中の一つにAKL1があり、この遺伝子の高発現酵母はADMに対して顕著な耐性を示す。Akl1はその機能についての報告はほとんどないが、配列上の特徴からエンドサイトーシスや細胞骨格形成の制御に関与するArk/Prk kinase familyの一つと考えられている。そこで、Ark/Prk kinase family (Ark1、Prk1およびAkl1) の高発現がADM感受性に与える影響を調べたところ、Prk1とAkl1のみが高発現によって酵母にADM耐性を与えた。 Prk1はエンドサイトーシスや細胞骨格の形成に関わるSla1/Pan1/End3 complex中のSla1およびPan1をリン酸化することによって、本complexの解離を促すことが知られているが、Akl1高発現によるADM耐性獲得には本complex中のEnd3およびSla1の存在が必須であることが判明した。また、Akl1高発現がPrk1高発現と同様に、Sla1/Pan1/End3 complex中のPan1のリン酸化を促進し、エンドサイトーシスの異常を引き起こすことも明らかとなった。したがって、Akl1はリン酸化を介してSla1/Pan1/End3 complexの機能、すなわちエンドサイトーシス能、を低下させることによってADM毒性を軽減していると考えられる。また、ヒトArk/Prk kinase familyの一員であるAAK1を高発現させたヒト胎児腎由来HEK293 細胞がADM耐性を示すことも確認された。AAK1の高発現もエンドサイトーシスの低下を引き起こすことが知られていることから、酵母細胞のみならずヒト細胞においてもArk/Prk kinase familyがエンドサイト-シスの抑制を介してADMの毒性を軽減していると考えられる。
  • 関本 征史, 小島 美咲, 増井 俊充, 根本 清光, 出川 雅邦
    セッションID: P-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】ラットに硝酸鉛を投与すると、血中テストステロン量の低下や肝細胞増殖が起こることが知られている。一方、我々はこれまでに、マウスでは硝酸鉛投与による肝細胞増殖作用が起こらないことを見いだしており、テストステロン低下作用における種差の有無にも興味が持たれる。そこで、本研究では、硝酸鉛による血中テストステロン低下作用のラット-マウス間における種差の有無について検討した。
    【実験方法】7週齢雄性SDラットおよびddYマウスに硝酸鉛(100 µmol/kg, i.v)を投与し、経時的(0-72時間)に屠殺した。血中総テストステロン量はラジオイムノアッセイにより、また、精巣テストステロン合成酵素(CYP11A1, 3ß-HSD, CYP17)の遺伝子発現量をRT-PCR法によりそれぞれ測定した。
    【結果・考察】血中テストステロン量は、ラットでは硝酸鉛投与12時間後で最も低値となり、この低下は72時間後まで維持された。一方マウスでは、硝酸鉛投与による低下は認められなかった。精巣テストステロン合成酵素(CYP11A1, 3ß-HSD, CYP17)の遺伝子発現は、ラットでは各遺伝子とも硝酸鉛投与6-12時間後より72時間後まで有意な減少が認められた。逆にマウスでは、CYP11A1遺伝子の発現が硝酸鉛投与24-48時間後に増加し、他の遺伝子の発現には有意な変動は認められなかった。以上の結果より、硝酸鉛の血中テストステロン低下作用にはラット-マウス間で種差が見られること、さらに、この種差はテストステロン合成酵素の発現変動の差に起因することが示唆された。
  • 柘植 真治, 鷲塚 昌隆
    セッションID: P-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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     ミトコンドリア毒性は化合物の開発上障害となるため,その毒性機序を解明することは、毒性の重篤性の判断及び毒性回避という点で重要である。ここでは創薬段階におけるミトコンドリア毒性の検討方法について発表する.
     化合物Aは処理後1時間で細胞内ATPの枯渇が認められたが,その時点で膜障害は認められなかった.そこで,次にミトコンドリアにおけるATP合成の阻害について検討した.ATP合成阻害の機序には,電子伝達系阻害,FOF1-ATPase阻害,脱共役があり,さらに脱共役は,プロトノフォア,イオノフォア,PTP(Permeability Transition pore)開口にわけられる.まず,FOF1-ATPase阻害作用について検討した.単離したFOF1-ATPaseを化合物Aで処理したが,酵素阻害は認められなかった.次に,ミトコンドリアの膨潤について検討した. ATP合成阻害剤はいずれもミトコンドリアの膨潤を引き起こすが,PTP開口による膨潤は他の機序による膨潤より強く、単離ミトコンドリアにおける540nmの吸光度変化により検出できる.化合物Aではミトコンドリアの膨潤が認められ,代表的なPTP開口阻害剤であるATPおよびADPで阻害された.また,別のPTP開口阻害剤としてCyclosporin Aが一般的に用いられているが,化合物Aによるミトコンドリア膨潤はCyclosporin Aでは阻害されなかった.これらのことから,化合物Aによるミトコンドリア毒性はCyclosporin A 非感受性PTP開口によるものであると考えられる.
     ミトコンドリア毒性を有するか否かは、今回検討したように,細胞内ATP残存率,FOF1-ATPase阻害,ミトコンドリア膨潤などを検討することで判断できる.
  • 小島 美咲, 芦野 隆, 吉田 武美, 岩倉 洋一郎, 出川 雅邦
    セッションID: P-15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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     硝酸鉛(LN)をラットに投与すると肝臓におけるTNF-αやIL-1βの産生量が増すこと、また、コレステロール生合成酵素(HMG-CoA reductase:HMGR)および代謝酵素(CYP7A1)の遺伝子発現が、それぞれ上昇および低下することを報告してきた(Toxicol. Lett., 154, 35, 2004)。一方、HMGRの遺伝子発現はTNF-αやIL-1βにより亢進すること、また逆にCYP7A1のそれは低下することが報告されており、LNによるこれら遺伝子の発現変動にもTNF-αやIL-1βの関与が考えられる。最近、我々はTNF-α欠損マウスを用いて、LNによるCYP7A1遺伝子の発現低下はTNF-α非依存的であることを示し、この発現低下にはIL-1βが関与している可能性を示した (Toxicol. Sci., 87(2), 537, 2005)。
     本研究では、IL-1α/IL-1β欠損BALB/cおよびTNF-α欠損C57BL/6Jマウスを用いて、LN 投与(100 μmol/kg, i.v.)による、肝臓でのCYP7A1およびHMGR遺伝子の発現変動をそれぞれ対応する野生型マウスと比較した。
     野生型マウス(BALB/cとC57BL/6J)では、LNの投与によりいずれにおいても 、投与12時間後に、CYP7A1遺伝子の発現低下とHMGR遺伝子の発現上昇が認められた。このCYP7A1遺伝子の発現低下は、TNF-α欠損マウスでも認められたが、IL-1α/IL-1β欠損マウスでは認められなかった。また逆に、野生型マウスで認められたLN投与によるHMGR遺伝子の発現上昇は、IL-1α/IL-1β欠損マウスでも認められたが、TNF-α欠損マウスでは認められなかった。以上のことから、LNによるCYP7A1遺伝子の発現低下にはIL-1が、HMGR遺伝子の発現上昇にはTNF-αが関与することが示唆された。
  • 廣田 泰, 上野 恵理子, 江口 真嗣, 大杉 史彦, 若園 博, 柳 浩由紀, Beatrix Blume, 阿瀬 善也
    セッションID: P-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    化合物Aのラットを用いた胚・胎児発生への影響に関する試験では,無眼球,小耳,上下顎の形態異常といった頭部顔面に特徴的な変化が異常胎児の多くに認められ,このほか曲尾や短尾といった尾の異常も認められた.これらの表現形はレチノイン酸の催奇形性と類似している点が多いことから,化合物Aの毒性ターゲット(主薬効とは異なるoff-targetへの作用)として,核内受容体・レチノイン酸レセプター(RAR)に対する作用が考えられた.そこでRARα,β,γを含め26種類のヒト核内受容体に対する作動性をレポーターアッセイにて検討した.その結果,化合物AはヒトRARα,βおよびγに対して弱いながらもアゴニスト活性を有しており,そのEC50値は1.5~5μg/mL(終濃度)であった.RAR以外に催奇形性に繋がり得る核内受容体への作用は認められなかった.また,ラットのRARに対する作用も検討したところ,ヒトRARと同様にアゴニスト活性を有していた.さらに,妊娠ラットに化合物Aの催奇形性発現用量を投与し胎児の血漿中濃度を測定したところ,Cmaxは117μg/mL,AUCは1577μg・h/mLであった.レチノイン酸をラットやマウスに投与すると,小眼球,無眼球,耳介形態異常,上下顎の形態異常,口蓋裂,曲尾,短尾といった化合物Aの催奇形性と類似した催奇形性が認められることが知られている.これらのことから,化合物AではRARアゴニスト作用のEC50値(1.5~5μg/mL)をはるかに上回る濃度が持続的にラット胎児に暴露された結果,催奇形性が発揮されたものと推察された.
  • 高松 裕樹, 松田 良樹, 宮田 昌明, 山添 康
    セッションID: P-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】 胆汁酸動態の調節を担う核内受容体、farnesoid X receptor (FXR)を欠損させたマウスにコール酸(CA)を投与すると胆汁鬱滞を伴う肝障害が認められる。しかし、野生型マウスにCAを投与しても肝障害に抵抗性を示す。これに肝内胆汁酸濃度の違いが関わると考えられるが詳細は明らかでない。このため、野生型マウスでCAにより肝障害を誘発するモデルが必要とされている。CAは腸内細菌による代謝を受けるため、腸内細菌に作用する抗生物質の処置はCAの体内動態を変動させると可能性がある。そこで、本研究では経口吸収型の抗生物質であるアンピシリン(ABPC)をCAに併用することで胆汁酸動態がどのように変動するか、また毒性とどのように関連するかを調べ、CA誘発肝障害の機序を知ることを目的とした。
    【方法】 C57BL/6N雄性マウスに1.0% CAに加えて臨床相当用量の0.025%から0.5%までのABPCを含む餌を6日間自由摂取させ、肝臓中の胆汁酸組成ならびに肝障害マーカーである血漿ALT活性を測定した。
    【結果】 予期されたようにABPCの併用はCA単独投与時に比べて肝臓中のタウロデオキシコール酸 (TDCA)濃度を減少させた。また、タウロコール酸(TCA)濃度が著しく上昇した。しかし、血漿ALT活性はむしろABPC併用群において著しく上昇した。CAあるいはABPC単独投与群では血漿ALT活性の有意な上昇は認められなかった。肝臓中のTCA濃度と血漿ALT活性によい相関性が認められた。肝臓中TCA濃度に対する血漿ALT活性の比をFXR欠損マウスにCAを投与したときのものと比較すると両者に差異は認められなかった。
    【結論】 野生型マウスにCAとABPCを併用すると肝臓中の胆汁酸濃度が上昇し、CA誘発肝障害が増強された。この肝障害増強の主たる要因は肝内TDCAではなくTCAであることが示唆された。また、野生型マウスとFXR欠損マウスの比較により、FXRの有無に関わらず、肝臓中のTCAがCA誘発肝障害のレベルを決定すると示唆された。
  • 富田 正文, 奥山 敏子, 勝山 博信, 日高 和夫, 渡辺 洋子, 西村 康光, 前田 恵, 大槻 剛巳
    セッションID: P-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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     除草剤パラコート(PQ)による肺障害ではPQ暴露後数日間(早期)にみられる”destructive phase”と数週間経過して(晩期)肺線維症に発展する”proliferative phase”が観察される。昨年我々が本会で発表したマウスのPQ肺モデルでも、投与後5~10日で死亡する個体,その後3週間まで生存を維持するが顕著な線維化が観察される個体が存在する。今回はPQ障害の早期に焦点をあて、PQによる遺伝子発現変化さらに血中サイトカインレベルの変化について検討した。
    方法:昨年同様,雄性C57BL/6JマウスのPQ肺モデルを用いた。PQ暴露後6, 24 h,5d に肺を摘出しRNAを調製した。cDNAを調製し,real-time PCRによって45遺伝子の経時的発現変化を検討した。一方,尾血管から経時的(1, 3, 6, 24 h & 5 d)に採血しCytometric Bead Array Systemで6種のサイトカイン血中レベルの変化を測定した。
    結果と考察: PQによる肺障害の発生機序に関与する候補遺伝子が数種示唆された。すなわち,6 hで2倍以上の有意な発現増加を示す遺伝子: Mt1, Mt2, Hmox1, Gcl, GR, IL-6, IL-13, Txn1, Fas, FasL, Lpin2, Mmp1a, Mmp12、および6 hから経時的に発現減少を示す遺伝子:Sfp-B, CAT, EC-SOD, GSTは,PQ障害早期の「初期マーカー」である可能性が高い。また5dのみに有意な増加を示す遺伝子:procollagen, Eln, Fin, Mmp9, Timp1および24 h以降に影響がみられるMmp3, Mmp8, VEGFAはPQ障害早期の「後期マーカー」である可能性が示唆された。一方,サイトカインはIL-6, IL-10, MCP-1などでPQによる有意な変化が認められ,肺障害の関与を強く示唆するものであった。
生殖発生幼若毒性
  • 小林 健一, 大谷 勝己, 久保田 久代, 宮川 宗之
    セッションID: P-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】ビスフェノールA はこれまでに弱いエストロジェン様作用を呈することが示唆されてきている。生殖発生毒性試験においてはビスフェノールAの低用量曝露における次世代への影響を示す報告がある一方、それらを否定する報告もされてきており議論が分かれている。本研究では、ビスフェノールAの曝露に伴う次世代産仔の生殖発生毒性をマウスにおいて検索する。【方法】妊娠マウス(C57BL/6J系統)(第0世代)の妊娠期6日から授乳期20日にかけて、ビスフェノールA(和光純薬製、純度 >99.6%)を各群0, 0.33, 3.3, 33 ppmの比較的低用量を混餌濃度にて自由摂取させ自然分娩させた。産仔は3週齢において離乳し、各群母体曝露時と同用量の混餌飼料を10週間、自由摂取をさせた後屠殺し、体重、体長、尾長、肛門生殖突起間距離、各臓器(肝、腎、心、脾、胸腺、精巣、精巣上体、子宮、卵巣)重量を測定した。【結果および考察】体重、体長、尾長、肛門生殖突起間距離、肝、腎、心、脾、胸腺、精巣、精巣上体、卵巣、子宮重量の測定した結果、曝露群は対照群と比べて用量依存的な差は検出されなかった。これらの結果は、妊娠期~成熟期における比較的低用量のビスフェノールA(0.33~33ppm)の混餌曝露は、次世代の発生・成長に対して明確な影響をおよぼさない可能性を示唆するが、更なる検索が必要である。現在、第1世代産仔の内分泌的動態、精子形成能および受胎能の解析を行ない、更に第2世代産仔の生殖および発生に対する影響についての検索を進めている。
  • 溝口 靖基, 遠藤 貴子, 佐野 絵麻, 水口 浩康, 福田 一弥, 石川 勉, 松岡 哲也, 浅野 裕三
    セッションID: P-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的] ヒトの周産期障害と凝固系パラメータの変動は密接な関連性を有している。同障害の発現機構を解明するモデル動物として、妊娠ウサギの凝固系パラメータが有用な指標になりうるかを検討するために、妊娠ステージにおける臨床検査値の生理的変動を非妊娠ウサギと比較した。 [方法] ウサギ(Kbl:NZW、5ないし7カ月齢、各採血時点8ないし10匹)を非妊娠及び妊娠動物の2群で構成し、妊娠動物は妊娠0、6、13、18、25及び28日に採血し、血液・血液化学検査を実施した。また、非妊娠動物は対照として、同時期に検査した。 [結果・考察] 非妊娠動物と比べ妊娠動物に特異的な推移として、血球系及び排泄系パラメータが胎児の器官形成期以降に減少し、体内の血漿量あるいは水分量増加に反映された。タンパク系、グルコース及びTGは胎児成長期に増減する2極性を示した。妊娠初期・中期に比べ、妊娠末期の凝固系パラメータに関して血小板数及びAT3の増加、APTTの延長並びにPTの短縮が見られた。ステロイドホルモンの供給源であるコレステロールは妊娠末期に減少したことから、分娩に関連するホルモン動態の変動と密接に結びついていると考えられた。[結論] 以上のように、妊娠ウサギの周産期では多くのパラメータが変動し、特に凝固系パラメータが周産期障害と関連した動態を示すことから、本障害の発現機構を解明するモデル動物となりうる可能性が示唆された。現在、エストラジオール及びプロゲステロンの血清中濃度を測定中である。
  • 山田 朱美, 本田 久美子, 樋口 剛史, 内田 秀臣, 川島 邦夫
    セッションID: P-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】近年,様々な物質により胎児が汚染されており,これによりアレルギー体質の子供(食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,じんま疹,気管支喘息,アレルギー性鼻炎など)が急増しているとの報告がある.我々は,胎児期の汚染が,出生後にどのような影響を及ぼすのか,アレルギー感受性の高いモルモット(ハートレー系)を使用して検索している.今回は手始めの実験として,その結果を紹介する.【方法】予め,卵白アルブミン(OVA)により感作された雌1例(感作モルモット)及び無処置の雌1例(非感作モルモット)をそれぞれ無処置の雄と交配させ,分娩を行った.感作モルモットのF1動物4例及び非感作モルモットのF1動物3例について,いずれも生後約3週齢でOVA(0.1 w/v%生理食塩液)を後肢静脈から1 mL/kgの容量で静脈内投与し,F1動物の全身的アナフィラキシー症状を以下の評点で観察した.-:変化なし.±:立毛,掻鼻,不安感.+:±にふるえ,くしゃみ,呼吸促進が加わる.++:+に排尿,排便,呼吸困難,歩行不安定が加わる.+++:++の症状が顕著でけいれん転倒するが死は免れる.++++:死亡.【結果及び考察】非感作モルモットのF1動物は何ら全身性アナフィラキシー反応を示さなかった.これに対し,感作モルモットのF1動物では,2例が+,1例が+++,1例が++++となり死亡に至った.即時型アレルギーと言われる上記症状は,細胞親和性抗体(主にIgE)が関与しており,これは遺伝する可能性を示唆する結果となった.
  • 吉田 龍二, 池見 直起, 大田 泰史, 釜賀 英明, 島津 伸也, 川島 邦夫
    セッションID: P-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    我々は,ステロール合成阻害作用を有する化合物Xを妊娠13日の母動物に経口投与すると,胎児に口蓋裂が高頻度に発生することを先に報告した(第32回日本トキシコロジー学会)。今回,本化合物による口蓋裂発生の機序を解明する一環として,口蓋突起の形態変化を調べた。【実験1】妊娠13日(膣栓確認日=妊娠0日)の母動物(Crl:CD(SD))に本化合物を100 mg/kgの用量で単回経口投与し,妊娠14,15,16及び17日の胎児を帝王切開により得た。口蓋突起を含む頭部横断の切片を作製し,HE染色を施した標本を用いて,(1)口蓋突起の伸展率(口蓋突起中の動脈を基点として,口蓋突起の先端までの距離や左右の動脈間の距離),(2)口蓋動脈から上顎の神経までの距離,(3)口蓋動脈と上顎の神経との角度,(4)口蓋動脈から鼻腔側壁血管までの距離を計測した。【実験2】口蓋が癒合する妊娠16日から17日にかけてより詳細な形態的変化を検索するため,妊娠16日のAM9:00,PM1:00,PM5:00,PM9:00の帝王切開により得た胎児を用いて上記(1)~(4)の形態計測をおこなった。この実験2では,妊娠0のタイミングをより正確にするため,PM11:00から約1時間の間に交尾が確認された動物を用いた.【結果】投与群では,口蓋突起の構成細胞や間質に口蓋裂の発生に関連するような変化は認められなかった。形態計測では,口蓋突起組織の上方への移動が小さいために口蓋突起どうしの距離が短くならず,融合ができないことが示唆された。
  • 伊藤 健司, 上田 英典, 横山 英明, 伊藤 徳夫, 中西 剛, 田中 慶一
    セッションID: P-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    tributyltinやtriphenyltinなどの有機スズ化合物は、巻貝類の雌に雄の性徴発達を示すインポセックスを誘導することから、近年、ヒトを含む哺乳動物についてもその内分泌撹乱作用が懸念されてきた。最近我々は、これらの有機スズ化合物が、核内受容体retinoid X receptor (RXR)及びperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)γの強力なdual agonistであることを明らかにした。RXR、PPARγは胎児や胎盤の器官形成や分化にも大きく関与しているため、妊娠時に有機スズ化合物に暴露した場合、胎盤や胎児にもその影響が及ぶ可能性が考えられる。しかしながら、妊娠動物における有機スズ化合物の体内動態に関する報告は皆無であり、胎盤および胎児への移行性・滞留性についても未だ明らかとされていない。そこで本研究では、妊娠マウスにおけるtriphenyltin hydroxide (TPTOH) の体内動態について検討を行った。
    妊娠11.5日目のICRマウスに0.1MBq/0.45mg/kgの14C-TPTOHを腹腔内投与し、経日的に各臓器・糞尿を回収して、その放射活性を測定した。検討の結果、膵臓、肝臓、副腎、腎臓において高い放射活性が認められた。各臓器における放射活性は投与後1~6時間にピークに達した後経時的に減少し、投与後24時間で45%以上が糞尿排泄されることが明らかとなった。この結果より、TPTOHの体内半減期は約24時間である可能性が示唆された。一方で、胎児においては投与後6~144時間まで放射活性の減少がほとんど認められなかった。また、肝臓、胎盤及び胎児から脂溶性物質を抽出し、二次元TLCによって分画された放射活性物質について解析を行った。その結果、検出された放射活性物質はTPTOHの未変化体であり、その代謝物由来の放射活性はほとんど検出されなかった。これらの結果から、TPTOHは、胎盤を通過して胎児に移行した後は代謝、排泄されにくく、貯留する傾向を示すことが示唆された。
  • 福西 克弘, 澤田 和彦, 加島 政利, 坂田 ひろみ, 今井 統隆, 戸門 洋志, 福井 義浩, 永田 良一
    セッションID: P-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【はじめに】霊長類は系統発生学上、ヒトに最も近い実験動物であり、ヒトに類似した脳溝・脳回を形成する。しかし、発生過程におけるカニクイザル大脳外套形成に関する詳細な報告はない。本研究はカニクイザル胎仔における大脳皮質障害モデル作製の基礎検討として、脳溝・脳回の形成過程を明らかにすることを目的とした。 【材料及び方法】胎生70、80、90、100、110、120、130、140或は150日のカニクイザルの胎仔脳を深麻酔下で灌流固定して脳を摘出し、大脳の外側面、背側面、前面及び腹側面をデジタルカメラで撮影し、脳外套を観察した。本研究は株式会社新日本科学安全性研究所実験動物倫理委員会の承認を得て行った。 【結果及び結論】カニクイザル胎仔では外側溝が胎生70日に現れ、胎生80から90日にかけ頭頂後頭溝、中心溝および後頭前切痕が出現し、前頭葉、頭頂葉、側頭葉および後頭葉の4葉を明瞭に区分した。胎生120日までに前頭眼窩野を除く各部で脳回形成に関与する一次脳溝が出現した。すなわち、胎生90日には上側頭溝が、胎生100日には弓状溝、頭頂間溝、月状溝および下後頭溝が、胎生110日には主溝、胎生120日には後頭側頭溝、前中側頭溝および後中心上窩が出現した。これらの一次脳溝の形成に伴い胎生90日に上側頭回が、胎生100日に中心前回、縁上回および角回が、胎生120日に下側頭回、中側頭回、中心後回、上頭頂葉、中前頭回、上前頭回、下前頭回および下後頭回が発現した。胎生130日以降は主に脳回形成に関与しない小溝および窩みが出現した。このように、カニクイザル一次脳溝の形成順序はヒトと同様であった。  以上より、カニクイザル胎仔大脳における脳溝、脳回の形成時期および形成順序が明らかとなり、大脳発達障害モデルを作製するに当たって重要な基礎データを得ることができた。
  • 下郡 望, 川村 祐司, 庄司 陽子, 鈴木 幸吉, 黒沢 亨
    セッションID: P-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】幼若ラットを毒性試験に用いる上でその特徴を知ることは重要である。我々は、胃粘膜に対して刺激性を有するタウロコール酸(TC)を用いて、ラットの胃粘膜防御機能の週齢差(2週齢と8週齢)について検討し、幼若(2週齢)ラットの特徴を明らかにした(第33回大会報告)。今回は、TC経口投与時の全身状態への影響について検討したので報告する。【結果】幼若(2週齢)ラットにTC 10 mmol/kgを経口投与したところ、投与後1hrから胃液量の増加および腺胃部粘膜上皮の壊死・脱落がみられ、投与後4hrから6hrまで持続・増悪する傾向が認められた。これらに対応するように、徐々に体温低下やヘマトクリット値の上昇が発現し、さらに投与後4hrに血液中Kの上昇がみられ、投与後6hrに血液pHの低下が認められると共に死亡例も観察された。成熟(8週齢)ラットでは、幼若ラットと同様に投与後1hrから6hrまで持続的に胃液量の増加がみられ、体重当りの胃液量も幼若ラットと差がなかったが、体温低下はみられず、血液検査でもほとんど変化はなかった。【考察】幼若ラットでは、TCによる胃粘膜刺激への適応反応として胃液分泌(水分の体外漏出)が亢進し、それに伴って血漿量が減少した結果、全身状態の悪化(アシドーシス等)に進展し死に至ったと考えられた。一方、成熟ラットでは、TC投与により幼若ラットと同程度の胃液分泌が発現しても血液濃縮はほとんどみられず、全身循環の維持能力が高いため全身状態の悪化には至らないと推察された。以上、2週齢の幼若ラットは胃粘膜障害に起因した全身状態への影響を受けやすく、成熟ラットより脆弱であると考えられた。
  • 江馬 眞, 原 洋明, 松本 真理子, 広瀬 明彦, 鎌田 栄一
    セッションID: P-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    食品添加物として使われているpolysorbate 80 (PS80)のラットにおける発生神経毒性をOECD試験ガイドライン・ドラフトに準拠して実施した。ラットの妊娠0日から分娩後21日まで、0, 0.018, 0.13, 1.0または7.5%のPS80 (0, 0.04, 0.25, 1.86, or 16.78 ml/kg bw/day)を含む飲水を自由摂取させた。妊娠ラットは自然分娩させ、児は21日に離乳させた。妊娠中及び授乳中の母ラットの体重は7.5%投与群で有意に低かった。繁殖指標へのPS80投与に関連した影響は認められなかった。児の生後14-15日、 17-18日、 20-21日、 33-37日及び60-66日の20時、2時、8時及び14時に測定した自発運動量にはPS80投与の影響はみられなかった。耳介開展、毛生及び切歯萌出等の発育指標、性成熟、正向反射、負の走地性、瞳孔反射、耳介反射、疼痛反応、空中正向反射にはPS80投与の影響は観察されなかった。条件回避反応については、生後23-27日の検査において7.5%投与群の雌雄の児で回避反応率の低下がみられたが、生後60-67日の検査ではいずれのPS80投与群にも投与の影響は認められなかった。離乳前及び離乳後の児体重は7.5%投与群の雌雄で対照群に比べて有意に低かった。生後22日及び70日の雌雄の児の主要器官重量にPS80投与の影響はみられず、脳、脊髄及び座骨神経の病理組織学的所見にもPS80投与の影響は観察されなかった。以上の結果から、ラットの妊娠中及び授乳中にPS80を含む飲水を与えたとき、母体及び児の体重低下を引き起こす7.5%投与群において一過性の条件回避反応率の低下が惹起されることが明らかになった。本実験におけるNOAELは1.0% (1.86 ml/kg bw/day)と考えられた。
  • 田山 邦昭, 藤谷 知子, 安藤 弘, 久保 喜一, 小縣 昭夫, 上村 尚
    セッションID: P-27
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はマウスの精子数・運動性を計測するため、粒子分析装置(CDA-500)と精子分析機(SQA-IIC)を用いた簡単・安価で再現性の高い方法を確立した(Reprod Toxicol 2006)。今回、精子数減少・形態異常を起こすことが知られているdiethylstilbestrol (DES)をマウスへ投与し、本法による検討を行った。さらに、CDA-500は電気抵抗方式により、粒子数だけでなく体積や体積相当径の粒度分布曲線表示やそれらのパラメータ算出が可能であるため、どのパラメータが形態異常マーカーとして有用であるかを調べた。【方法】投与:DESはDMSOに溶かし 0(対照), 1, 10, 100μg/kg/日の用量で哺乳期雄性マウス(Crj:CD-1)に出生1日目より2週間皮下投与し、離乳後13週齢で検査した。測定:D-MEM中で細切・押し潰し法により精巣上体尾部精子の浮遊液を作製した。粒子(精子)数を計測し濃度を一定に調整後、37℃、30分培養し、運動性と再度精子数を計測した。なお体積表示パラメータにはMEAN(粒子体積の平均値)、PEAK(粒度分布がピークになる場所の体積)、MEDI(粒子体積の中央値)、H-W(半値幅)等がある。【結果・考察】DESの投与量に比例して精子数・運動性低下や形態変化と共に、粒度分布曲線波形が対照群と異なるものが出現した。これは機器の検出領域内で抵抗値変化を起こす体積変化がみられるためで、曲線波形の異なるものは形態異常を多く伴っていた。さらに体積表示パラメータではPEAKが、体積相当径表示パラメータではMODAL(モード径:粒度分布がピークになるところの体積相当径)が、形態異常を反映した差がみられた。無処置群のPEAKあるいはMODALについて比較したところ、ほとんど差は見られなかった。以上より、本法の有用性が確認されると同時に、粒子分析装置における粒度分布曲線パラメータのPEAKあるいはMODALは、マウス精子形態異常のマーカーとして有用であると考える。
  • 難波江 恭子, 河部 真弓, 市原 敏夫, 今井 則夫, 中島 弘尚, 戸田 庸介, 玉野 静光, 白井 智之
    セッションID: P-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    携帯電話等で用いられる電磁波の頭部への局所的暴露による、妊娠ラットの生殖機能および胚・胎児発生に対する影響を検討する目的で、妊娠ラットの頭部に器官形成期である妊娠7日から17日まで1.95GHz電磁波(脳平均SAR=0.67および2.0 W/kg)を照射し、胎児の検査を行った。
    妊娠ラットを妊娠7日から17日まで保定器に入れ、電磁波暴露箱内(暗条件下)で1日1.5時間、1回照射を行った。対照群として保定器に入れるのみの偽暴露群および保定器に入れない無処置対照群を設けた。妊娠ラットは妊娠期間中、毎日体重および摂餌量を測定し、妊娠20日にエーテル麻酔下にて安楽死後、帝王切開を行った。帝王切開時に肉眼的病理学検査を行い、妊娠黄体数、着床痕数、生存胎児数、胚・胎児死亡数を調べた。生存胎児は性別判定、胎盤重量測定、胎児重量測定および外表観察を実施し、さらに内臓検査および骨格検査を実施した。
    照射期間中、妊娠ラットの一般状態、体重および摂餌量いずれにおいても異常は認められず、肉眼的病理学検査においても電磁波暴露の影響は認められなかった。帝王切開時の検査において、生存胎児数は無処置対照群と比較して偽暴露群で有意に多かったが、偽暴露群と電磁波照射群との間に差は認められず、電磁波暴露の影響はないと考えられた。また、妊娠黄体数、着床痕数、胚・胎児死亡率、生存胎児性比、生存胎児体重、生存胎児胎盤重量および生存胎児外表異常率いずれにおいても電磁波暴露の影響は認められなかった。さらに、胎児の内臓検査および骨格検査(骨化進行度を含む)においても電磁波暴露の影響は認められなかった。
    以上、携帯電話等で用いられる電磁波(1.95GHz電磁波)の妊娠ラットの頭部への局所的暴露による、生殖機能(妊娠維持)および胚・胎児発生に対する影響を検討した結果、電磁波暴露の影響は見られなかった。
  • 浦底 嘉仲, He Xi Jun, 江畑 知憲, 鷹野 正生, 中島 弘貴, 石本 友美, 木下 雄一, 髙嶋 恵美, 木村 ...
    セッションID: P-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [緒言]ヒトでは妊娠に伴い各種の生理学的パラメータが変動することが知られているが、ラットについての報告は少ない。我々は、SD系ラットの妊娠経過に伴う各種パラメータの変動を血液凝固系を中心に検索し、過去の報告や他の動物種と比較した。 [方法]13~16週齢のCrl:CD(SD)ラットの妊娠7、13、17及び20日に10又は11匹の動物を用いてエーテル麻酔下で腹大動脈から採血し各種の検査を実施し、肝臓CytochromeP450含量を測定した。また、妊娠13及び19日に凝固系関連遺伝子についてマイクロアレイ解析を実施した。対照動物としては同週齡の未交尾動物を用いた。 [結果]血液及び血液化学検査では、妊娠の経過に伴い、貧血傾向、ALP、Glucose、Na、Cl、Ca、TP、Albuminの低下、WBC、LDH、CPK、TG、PLの上昇がみられた。血小板、Fibrinogen は増加し、APTTは延長した。AT-IIIの変動は明らかでなかったが、トロンボテストでは凝固が促進した。凝固系関連遺伝子の発現は妊娠19日に増加した。なお、肝臓重量は増加したが、肝内CytochromeP450量は妊娠17日以降低下した。 [考察]妊娠の経過に伴う各種パラメータの変動は過去のラットでの報告と概ね一致した。一方、ウサギとの比較では種差が存在することが示唆された。また、周産期における凝固系関連遺伝子の発現が確認され、血液凝固パラメータの多くは凝固を促進する方向に変動した。なお、本実験の肝内CytochromeP450の低下は妊娠13日以降の肝内CYP isozymes蛋白の発現低下(He et al., Exp. Mol. Pathol.,79, 224-228, 2005) と関連しているかと思われる。
  • 田中 豊人, 高橋 省, 大石 眞之, 小縣 昭夫
    セッションID: P-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】以前の研究 (Food Chem. Toxicol. 44 (2006) 179-187) において次世代の雄幼若マウスの探査行動に抑制的な影響を示した食用黄色4号について3世代毒性試験を行い、マウスの行動発達に及ぼす影響の再現性の有無について検討する。 【方法】食用黄色4号を混餌法によりCD1マウスに0(対照群)、0.05%、0.15%、0.45%となるように調製してF0世代の5週齢からF2世代の9週齢までの3世代にわたって投与して、マウスの行動発達に及ぼす影響について検討した。 【結果】F1世代の授乳期における雄仔マウスの7日齢時遊泳試験の方向が用量依存的に促進され、雌仔マウスの7日齢時正向反射が用量依存的に抑制された。また、F2世代の授乳期における雄仔マウスの7日齢時遊泳試験の方向が高濃度投与群で促進され、雄仔マウスの14日齢時嗅覚性指向反応における所要時間が用量依存的に短縮された。さらに、探査行動についてはF1世代の雄幼若マウスの移動時間・総移動距離・平均移動距離・方向回転数が用量依存的に抑制される傾向が見られた。さらにF2世代の雄幼若マウスでは総移動距離・平均移動距離・平均移動速度が用量依存的に抑制される傾向が見られ、雄成体マウスでは動作回数・総移動距離・平均移動距離・平均移動速度・立ち上がり回数が用量依存的に抑制される傾向が見られた。 【まとめ】今回の実験により食用黄色4号の投与がマウスの探査行動に及ぼす抑制的な影響について再現性が確認でき、F2世代においてはF1世代では影響が見られなかった雄成体マウスでも探査行動に抑制的な影響が見られた。
変異原性
  • 橋本 和之, 高崎 渉, 真鍋 淳, 佐藤 至, 津田 修治
    セッションID: P-31
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】DNA損傷における加齢の影響を評価するため,若齢(9週齢)および加齢(20ヶ月齢)F344ラットを用いて自然発症および化学物質誘発DNA損傷について検討し,生体機能とDNA損傷との関連を考察した。【方法】DNA損傷の評価にはコメットアッセイ(pH 9,12.1,13)および8-OH-dGアッセイを用い,肝臓と腎臓を標的とした。DNA損傷を誘発する化学物質として,メチルメタンスルフォネート(MMS,80 mg/kg)あるいはN-ニトロソジエチルアミン(DEN,160 mg/kg)を使用した。生体機能は血液化学的検査で評価した。【結果・考察】加齢ラットの肝臓と腎臓において,DNA損傷(pH 13)および8-OH-dGは増加し,pH 9および12.1におけるDNA損傷が増加しなかったことから,アルカリ脆弱部位と8-OH-dGが加齢ラットにおいて蓄積していると考えられた。MMSを投与した若齢および加齢ラットの肝臓および腎臓のDNA損傷は,投与3および24時間後でpH 12.1および13処理でともに増加したが,加齢ラットでのDNA 損傷の程度は小さく,投与3時間後に対する24時間後のDNA 損傷の減少は小さかった。DEN投与は若齢ラットの肝臓および腎臓におけるDNA 損傷をpH 12.1および13処理で増加させたが(3および24時間後とも),加齢ラットでは投与24時間後の腎臓においてDNA損傷をpH 12.1および13処理で増加させたのみであった。また,生化学パラメータの検討では,加齢ラットにおいてAST,ALT,T.BIL,総コレステロール,総タンパク,グロブリン,クレアチニン,Clは増加し,ALP,A/G,無機リンおよびKは減少した。これらのパラメーターはpH 13のDNA 損傷や8-OH-dGと連動していた。これらの結果から,加齢ラットではDNA修復能が低下している一方で,代謝活性化酵素の減弱によるDNA損傷誘発が抑えられていることが示唆された。さらに,加齢に伴う自然発症的DNA損傷の蓄積は生体機能に影響を与える可能性が示唆された。
  • 山中 妙子, 川口 恵未, 井上 達生, 門田 利人, 佐々木 有
    セッションID: P-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Acellular comet assayとはComet assayの変法の一つであり、細胞lysingの後に変異原処理をするものである。Lysing後の細胞を標的とするため、通常のComet assayで検出できるDNA損傷から、修復などの細胞機能によって派生したDNA損傷と初期損傷の減衰を除いた「真の初期損傷」のみを検出できる。Acellular comet assayと一般的なComet assay (Regular Comet assay)の結果を比較することで、Comet assayの結果に対する「真の初期損傷」の寄与量の解明を試みた。Regular Comet assayではWTK1細胞を各変異原で2ないし24時間処理し、直ちにComet assayの標本を作製した。Acellular Comet assayでは変異原無処理のWTK1細胞を用いて定法によって作製したComet Assayの標本に対して1時間以上のlysing処理を施し、各変異原で2時間処理した後、アルカリ下(pH12およびpH13)で電気泳動した。pH12ではDNA鎖切断(SSB)だけが、pH13ではSSB及びアルカリ脆弱部位が検出される。ENU、MNUではAcellular Cometの検出感度が高いだけでなくpH13とpH12の双方で陽性結果が得られた。一方Regular Comet assayではpH13でのみ陽性であった。これら変異原によって「真の初期損傷」としてのSSBが誘発されているが、Regular Comet assayではpH13でのみ陽性であったことから、SSBが誘発されていても、SSBは標本作製までの修復によって消失し、一般的なComet assayでは標本作製までの修復によって派生したアルカリ脆弱部位を検出していることが示唆された。UVCと4NQOではRegular Cometで陽性、Acellular Cometで陰性であった。よって、UVCと4NQOによるComet assayの陽性反応には細胞機能の寄与が大きいことが示唆された。
発がん性
  • 熊倉 由佳, 小林 康子, 武藤 朋子, 金井 好克, 遠藤 仁, 和久井 信
    セッションID: P-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl (PCB126)は煙突の煤煙や固定廃棄部・土壌中に高濃度に分布し、また他のダイオキシン類に比べ生物濃縮性が高いことが知られている。さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため、次世代への影響が示唆されている。近年大腸がんや胃がんの罹患率は非常に高いが、世界中でのがんでの死因は肺がんがトップであることが知られている。特に女性に比べ男性での発生率が高いことも知られている。我々はPCB126胎生期暴露が、次世代・雌ラットにおいてN-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine 誘発肺がんの雌雄差にいかなる影響をおよぼすかについて検討した。【方法】SD(slc)ラット妊娠13-19日目までPCB126を7.5ug/kg/day(7.5ug群)、250ng/kg/day(250ng群)、2.5ng/kg/day(2.5ng群)連日経口投与を行い、対照群として同量のCorn oilを与えた。出生後、8週齢にN-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine 2,000ppmを8週間連続飲水投与後、33週齢で安楽死後剖検した。【結果】全群の肺組織において過形成、腺腫、腺癌、腺扁平上皮癌が認められた。雌雄差においては雄の方が雌に比べ早期に斃死が認められた。得られた組織からWestern blotting解析によるCYP1A1およびCYP1B1での発現ではPCB投与群での高発現が認められ、N-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine投与での発現が有意に増加を示していた。【総括】本検討から、N-nitrobis (2-hydroxypropyl) amine誘発ラット肺がんの生物学的特性が胎生期PCB126暴露によって影響を受け、さらに雌雄差での影響にも関わることが示唆された。
  • 西村 次平, 出羽 康明, 六車 雅子, 金 美蘭, 三枝 由紀恵, 川合 正臣, 高畠 正義, 松本 明, 安野 弘修, 三森 国敏
    セッションID: P-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】我々は、現在までにPPARαアゴニストであるFenofibrate(FF)のラット肝発がんメカニズムに酸化ストレスが関与する可能性を見出している。今回、酸化ストレスとの関与を更に詳細に検討するため、FFを用いたラット二段階肝発がんモデルに対し抗酸化剤N-acetylcysteine(NAC)を併用投与した時の修飾作用を検討した。【方法】雄性F344 ラットにDEN単回腹腔内投与し、その2週後からFF 3000ppmを投与開始しその後16週間混餌投与を行った。FF投与開始1週後には2/3肝部分切除を、その1週後から0あるいは3000ppmのNAC飲水投与を開始した。得られた肝臓に対し、H.E.検査、免疫染色(抗Ki-67抗体)、酵素活性測定(CAT; CPT; FAOS; Catalase; SOD)、Real time RT-PCRを行うと共に、肝抽出ミクロソームを用いたin vitro ROS測定を行った。【結果及び考察】体重、摂餌量、肝重量、酵素活性、肝抽出ミクロソームを用いたin vitro ROS測定においてはNAC併用の影響は認められなかった。一方、Real-time RT-PCRでは、NAC併用により脂肪酸代謝(Cyp2b15)及び抗酸化酵素関連遺伝子(Gpx2)の発現上昇、細胞周期/アポトーシス関連遺伝子(Tp53)の発現低下が認められた。細胞増殖活性においてはNAC併用により上昇傾向が認められたが、有意差は認められなかった。病理組織学的検査では両群ともにhepatocellular altered fociが認められたが、その数に差はなかった。以上の結果より、本試験条件下では、NACはFF誘発肝発がんプロモーションに対して抑制作用を示さないものと推察された。
  • 小林 康子, 熊倉 由香, 武藤 朋子, 横尾 清文, 遠藤 仁, 金井 好克, 和久井 信
    セッションID: P-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    ダイオキシン類による汚染は現在地球規模で広がっているが、そのうち3,3’,4,4’,5-pentachlorobiphenyl (PCB126)は水・堆積物・魚・野生動物、およびヒトの脂肪組織・ミルクならびに血清を含む地球の生態系のほとんどすべての構成要素に汚染物質として検出されている、また他のダイオキシン類に比べその生物濃縮性が高いことが知られている。さらに、胎盤・授乳を介して次世代に移行するため次世代への影響が示唆されている。我々はPCB126胎生期暴露が、次世代ラットにおけるN-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)誘発膀胱癌へいかなる影響をおよぼすかについて検討を行った。SD(Slc)ラット妊娠13~19日目までPCB126を7.5ug/kg/day、250ng/kg/day、2.5ng/kg/day、0g/kg/day連日経口投与を行った。出生後、8週齢から10週間0.05%BBNを連続飲水投与後、18週後に安楽死後剖検を行った。膀胱発癌率はPCB126暴露群と対照群の間で有意な差は認められなかった。しかし、免疫組織化学的検討からPCNA、Cyclin D1等の腫瘍細胞での発現は、対照群と比較してPCB126暴露群で有意に増加していた。さらに、他の腫瘍関連因子の発現の検討から、BBN誘発ラット膀胱癌の生物学的特性が胎生期PCB126暴露によって影響を受けることが示唆された。
  • LK Earl, I Taylor, S Cook, JF Thomas
    セッションID: P-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    Environmental enrichment (EE) in the laboratory context is the process of improving the conditions of animal housing to provide stimulation. In this laboratory there is frequent review and improvement of the environmental conditions of laboratory animals while ensuring the scientific objectives of studies are met. In the last few years, in addition to wood chip bedding, aspen wood blocks for chewing have been provided for rats in this laboratory. The incidence of spontaneous tumours in control animals is used to interpret findings in treated animals in carcinogenicity studies. Therefore relevant and well-controlled historical background data are vital to the interpretation of findings. In order to determine the impact of EE items on spontaneous tumour incidence, a preliminary comparison was performed. Common spontaneous tumour incidences (>5%) from multiple housed (single supplier) Han Wistar rat 2-year carcinogenicity studies where EE was provided (n = 4) were compared with those without EE (n = 7) by Student’s t-tests. In studies with EE there was no statistical difference in the incidence of tumours in males or females from those without. In this preliminary investigation there was no impact of EE on tumour incidence. As more data become available a further investigation will be undertaken to determine the impact of EE on rat and mouse tumour incidences.
  • 金 美蘭, 松本 明, 出羽 康明, 西村 次平, 三枝 由紀恵, 三森 国敏
    セッションID: P-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】昨年の第33回日本学術年会で、私共は、Troglitazone(PPARγアゴニスト)のrasH2マウスにおける6ヶ月間混餌投与実験を行い、雌の6000 ppm投与群において血管系腫瘍の増加傾向が認められ、rasH2マウスがTroglitazoneに対して軽度の発がん感受性を示すことを報告した。そこで、Troglitazoneの脾臓における血管系腫瘍誘発機序を明らかにするために以下の二段階発がん試験を行った。【方法】7週齢の雌rasH2マウスにウレタンを2回腹腔内投与(1000 mg/kg)し、投与1日後から0 ppmないし6000 ppmのTroglitazoneを16週間混餌投与した。解剖時には、脾臓重量を測定し、遺伝子発現解析用試料として脾臓腫瘍の一部を採取した。また、脾臓の病理組織学的検索や免疫組織学的検索を実施した。【結果】ウレタン単独群の4例とTroglitazone 6000 ppm群の6例が実験期間中に死亡した。重量測定では、Troglitazone投与群の脾臓重量に有意な増加は認められなかった。組織学的には、ウレタン単独群とtroglitazone投与群の全例で、脾臓の血管肉腫が認められたが、その発現頻度に有意な差は認められなかった。PCNAによる免疫組織学的染色では、Troglitazone投与群の脾臓血管肉腫においてPCNA陽性細胞数がウレタン単独群に比べて増加傾向を示した。血管肉腫についての遺伝子発現解析では、Troglitazone 投与群でras/MapKの活性化血管新生関連遺伝子や細胞周期、細胞増殖関連の遺伝子などの増加傾向が見られたが、ウレタン単独群との間に有意な差は認められなかった。以上のことから、TroglitazoneはrasH2マウスの脾臓血管肉腫に対して明らかな腫瘍修飾作用を示さないことが示唆された。
  • 出羽 康明, 西村 次平, 六車 雅子, 金 美蘭, 三枝 由紀恵, 高畠 正義, 松本 明, 安野 弘修, 田崎 雅子, 岡村 俊也, 梅 ...
    セッションID: P-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】我々は昨年の本学会において、ラット非遺伝毒性発がん物質である動物用駆虫薬oxfendazole(OX)を反復投与した肝では、酸化ストレス応答性の遺伝子発現変動が惹起されることを報告した。今回、OXの発がん機序における酸化ストレスの関与を詳細に検討するため、肝二段階発がんモデルを用いて実験を行なった。【方法】6週齢の雄性F344ラットにDENを単回腹腔内投与し、投与2週後からOX(500ないし0ppm)を6週間混餌投与した。OX投与1週後には2/3肝部分切除を施した。採取した肝臓についてGST-P陽性細胞巣の定量解析を行なった。さらに、代謝・酸化ストレス関連遺伝子の発現解析についてreal-time RT-PCR法により測定すると共に、脂質過酸化レベル(TBARS法)、酸化DNA損傷レベル(8-OHdG; HPLC-ECD法)、単離肝ミクロソームからの活性酸素種(ROS)産生レベル(H2DCFDA)をそれぞれ測定した。細胞増殖活性については、PCNA免疫染色による陽性細胞数の計測により評価した。【結果】OX投与により肝重量及びGST-P陽性細胞数の有意な増加が認められた。代謝・酸化ストレス関連遺伝子については、第一相薬物代謝酵素(Cyp1a1Cyp1a2)に加え、酸化ストレス応答性転写因子Nrf2により発現調節されることが知られている抗酸化遺伝子を含む第二相系薬物代謝酵素(Nqo1Gpx2AfarYc2Gstm1)の各遺伝子において有意な発現増加が認められた。さらにTBARS、8-OHdGレベル並びに単離肝ミクロソームからのROS産生はいずれも有意な増加を示した。加えて、OX投与によりPCNA陽性細胞数の有意な増加が認められた。【考察】OXによる肝発がん促進機序には、その代謝過程で生じる酸化ストレス並びに細胞増殖の亢進が関与している可能性が示唆された。
  • 髙信 健司, 上垣外 智之, 佐々木 俊明, 鈴木 正明, 片桐 卓, 野口 忠, 伊川 直樹, 長野 嘉介, 福島 昭治
    セッションID: P-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的]当センターでは1984年以来、F344ラットを用いた発がん性試験を継続的に実施している。発がん性試験における長期飼育に関する背景データについて検討したところ、1995年3月より後に導入した動物で体重増加の抑制が認められたので報告する。[動物]F344/DuCrlCrljラット(日本チャールス・リバー(株)厚木飼育センター)を4週齢で雌雄各220匹以上のロットで導入し、2週間の検疫・馴化の後、104週間の試験に供した。動物数は各試験(雄46試験,雌42試験)における対照群(50匹/試験)で、総数が雄2300匹、雌2100匹である。[飼育条件]バリアー区域の飼育室内(経口試験)及びチャンバー内(吸入試験)で、温湿度23±2℃及び50±20%、γ線滅菌飼料CRF1(オリエンタル酵母工業(株))及び紫外線滅菌の市水の自由摂取により単飼育した。[観察及び測定]一般状態の観察は毎日行い、体重及び摂餌量は18週齢までは毎週、以降は4週毎に測定した。[結果及び考察]体重が最大となる84週齢時点で、1995年3月以前とそれより後に導入した動物を比較すると、それより後に導入した動物は、平均体重が雄で約10%(480gから430g)、雌で約12%(310gから270g)減少していた。また、摂餌量は全期間を通じて雌雄とも若干の減少が認められた。試験終了時の生存率は雄で若干の上昇傾向が認められた。1995年3月より後に導入されたラットは体重増加の明らかな抑制が認められ、原因の一つとして摂餌量の減少が推察された。
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