日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
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優秀研究発表 ポスター
  • 齋藤 和智, 竹之内 修, 西條 拓, 宮澤 正明, 坂口 斉
    セッションID: P-64
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    [背景、目的] 感作誘導期の重要な現象に着目した幾つかの代替法が開発されている。各代替法は、local lymph node assay(LLNA)やヒトでの感作性に対して、高い(80%以上)予測性を有することが示されているが、単一の代替法で感作性の有無を完全に予測することは困難である。我々はこれまでに、樹状細胞の活性化に着目したhuman Cell Line Activation Test (h-CLAT)、タンパク質と感作性物質の結合に着目したDirect Peptide Reactivity Assay (DPRA)、in silico systemであるDEREKを組み合わせた評価体系を構築し、LLNAに対する予測精度が向上することを示してきた1)。本検討では、上記3手法による評価体系(Integrated Testing Strategy、Tiered approach)を用いて、ヒトでの感作性の有無および感作強度に対する予測性を検証した。
    [方法] 本研究では、ヒトでの無影響濃度や症例頻度などの情報を基に、感作性の有無および強度が報告済み2)の計68物質を解析に用いた。なお、ヒトでの感作強度予測では、強度分類を3段階(strong、weak、non-sensitizing)として解析した。h-CLATについては、THP-1細胞に被験物質を24時間曝露した後にフローサイトメーターによって、細胞表面タンパク質CD86およびCD54の発現量を測定した。DPRAでは、システイン、リジンを含むモデルペプチドと被験物質を混合し、24時間後にHPLCを用いて、モデルペプチドの減少率を測定した。DEREKでは、被験物質の化学構造を代入しアラートの有無を確認した。
    [結果、考察] 68物質のヒトでの感作性の有無に対する一致率は、h-CLAT:85%、DPRA:75%、およびDEREK:82%であった。次に、各代替法の評価結果をスコア化し、総スコアから感作性を予測するIntegrated Testing Strategy (以下、ITS)、h-CLATとDPRAを段階的に組み合わせたTiered approach(以下、Tiered)の予測精度を検証した結果、一致率はITS:93%およびTiered:88%となり、いずれも試験法単独時に比べ良好な値を示した。また、各評価体系において偽陰性となった物質は、coumarin(LLNAで陰性)のみであった。さらに、ヒトにおける感作性強度に関しては、ITS:72%およびTiered:68%と良好な値を示した。本結果から、2つの評価体系のいずれにおいても、ヒトにおける感作性の有無および強度を精度良く予測できる可能性が示唆された。
    [謝辞]本研究は、日本化粧品工業連合会 動物実験代替専門委員会 感作性代替法ワーキンググループ 2012年度共同研究の成果の一部を引用させていただいております。この場を借りて御礼申し上げます。
    [参考文献] 1) 竹之内ら, 2012. 日本動物実験代替法学会第25回大会. 2) Basketter et al., 2013. ACDS.
  • 竹之内 修, 齋藤 和智, 西條 拓, 額田 祐子, 宮澤 正明, 坂口 斉
    セッションID: P-65
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    <背景・目的>これまで我々は、動物を用いた皮膚感作性試験法を代替するべく、樹状細胞の活性化に着目したin vitro皮膚感作性試験法human Cell Line Activation Test (h-CLAT)の開発、および予測精度の更なる向上を目指し、Direct Peptide Reactivity Assay (DPRA)との組み合わせによる評価体系の構築を行ってきた。しかしながら、試験溶媒に不溶のため試験に適用できない、もしくは培地や緩衝液中で油滴や析出を生じ偽陰性となる等、両試験法では正しく評価できない難水溶性物質(LogKow>3.5)の存在が明らかとなった。そこで我々は、動物試験と同様の曝露が可能である3次元培養ヒト皮膚モデルに着目し、感作性物質によるストレス関連遺伝子の発現量を指標とした試験法;Epidermal Sensitization Assay (EpiSensA)を開発してきた。本検討では、既存の代替法では適切に評価できない難水溶性物質の感作性をEpiSensAで評価可能か検討した。
    <方法>h-CLATおよびDPRAで適切に評価できない難水溶性物質を、3次元培養ヒト皮膚モデルLabcyteに曝露し、6時間後にRNAを回収し、cDNAを合成後Real-Time PCRによってストレス関連遺伝子(e.g. Activation Transcription Factor 3; ATF3、Heat Shock Protein A1A; HSPA1A)の発現量を測定した。また、被験物質を曝露した際の細胞生存率をLDH assayによって測定した。
    <結果>難水溶性の感作性物質であるclotrimazoleでは、無毒性となる濃度から、溶媒対照に対して30%程度の細胞毒性が認められる濃度において、ATF3やHSPA1Aなど、複数の遺伝子で4倍を超える発現上昇が認められた。また、dibutyl anilineにおいても4倍を超えるATF3の発現上昇が認められた。さらに、hexylcinnamic aldehydeでは、無毒性となる濃度において4倍以上のATF3の発現上昇が誘導された。一方、非感作性物質であるdibutyl phthalateでは、ストレス関連遺伝子の発現上昇は認められなかった。以上より、EpiSensAが既存代替法では評価が困難な難水溶性物質の評価に有用である可能性が見出された。今後、被験物質数を増やし、多様な化学物質の感作性評価への有用性を検証する予定である。
  • 有坂 宣彦, 横山 和正, 横井 亮平, 相馬 晋司, 田村 啓
    セッションID: P-66
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】皮膚感作性試験としてマウスを用いたLLNAが広く行われている。しかし,生物学的製剤等の異種蛋白についてヒト感作性評価として利用するのは適切でない可能性がある。一方,皮膚感作性試験の代替法として、ヒト単球由来細胞株THP-1細胞を利用するh-CLAT法の有用性が報告されているが、生物学的製剤等を評価した報告は現在までにされていない。そこで、生物学的製剤についてh-CLAT法を利用した感作性評価の可能性について検討した。【実験1】異種由来物質としてラットS9又は卵白アルブミン、同種由来物質としてヒトアルブミン又はスルホ化処理された免疫グロブリン(Ig)製剤について、それぞれh-CLAT法で評価した。異種由来物質はそれぞれ陽性を示した。ヒトアルブミンは陰性を示した。スルホ化処理されたIg製剤は、調製直後では陰性を示し、調製24時間後では陽性を示した。この結果は、スルホ基が外れることにより形成された凝集体に影響している可能性が考えられた。【実験2】スルホ化処理されたIg製剤に対して前処置として、37℃で24時間処理する方法又は凍結融解を繰り返す方法の2通りにより,人為的に凝集体を生成させた。凝集体濃度については,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。2通りの前処理法により生成した凝集体濃度は同程度であった。前処理後のIg製剤をh-CLAT法で評価した結果,凝集体濃度に依存して陽性を示した。【考察及びまとめ】生物学的製剤の感作性についてh-CLAT法により評価できる可能性を得た。また、凝集体濃度に関連して感作性を有する可能性が示唆された。
  • 竹下 潤一, 岸本 充生, 蒲生 昌志
    セッションID: P-67
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    ヒト健康や生態へのリスクが懸念される化学物質を具体的に指定し、他の物質に代替することを促す規制が欧米において近年導入されたり、提案されたりしている。そのため、OECDにおいても有害物質代替を議論するグループが設立された。しかし、代替物質とのリスク比較が義務づけられることはないために、物質代替によって実際にリスクが低減しているかどうかは実はよくわかっていない。物質代替の効果を議論するには、リスクトレードオフ解析が必要である。しかし、既存有害性情報は報告されているエンドポイントが揃っていなかったり、暴露期間が異なっていたりと均一ではなく、リスクトレードオフ解析にそぐわないケースが多い。そこで本研究では、化学物質の有害性評価において重要な役割を果たしている反復投与毒性試験について、エンドポイント毎の暴露期間のデータギャップ補完を目的とした有害性換算係数の検討を行った。化学物質管理の観点から、28日間亜急性毒性試験データ、90日間亜慢性試験データが比較的多く、また、肝臓、腎臓、血液、体重影響が主要なエンドポイントである。よって、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)で製造量や有害性などの観点から重要とされる第一種指定化学物質であり、NITE((独)製品評価技術基盤機構)初期リスク評価書で扱われている約150物質の有害性情報のうち、ラットを用いた経口投与試験データを用いて、4つのエンドポイントごとに亜急性毒性試験でのNOEL (mg/kg/day) と亜慢性毒性試験でのNOEL (mg/kg/day) の比の解析を行った。また、暴露期間の比較はAssessment factorの文脈で議論されることが多く、既存研究ではエンドポイントには着目せず議論されているため、各エンドポイントのNOEL比の分布と、エンドポイントを区別しない場合のNOEL比の分布の違いについての議論も行う。
  • 原ノ園 祐, 山際 慶典, 倉田 昌明, 根本 真吾, 厚見 育代, 榊 秀之
    セッションID: P-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    リン脂質症(Phospholipidosis: PLD)は、カチオン性と両親媒性を有する薬剤(Cationic-Amphiphilic-Drugs, CADs)により誘導され、リン脂質あるいはリン脂質との複合体が細胞内に蓄積し全身では高脂血症、網膜障害などを引き起こすことが知られている。PLDは物性値を用いたin silico 予測手法が報告されているが、これらの手法は親水性PLD誘発分子(Erythromycin 、Gentamycinなど)に対する予測能が十分ではなかった。そこで、これらの分子の検出を可能とする予測手法の開発を行った。既存の最塩基性酸解離定数及び水/オクタノール分配係数に加え、モル屈折率を新たに記述因子とする予測手法を考案し、データセット(陽性:19、陰性:19)に適用したところ、感度=94.7%、特異性=84.2%及び一致率=89.5%と既報と同等以上の予測能を示した。さらにこの予測手法は、既報では検出できなかった親水性PLD誘発分子の検出を可能とした。一方で、親水性に富む分子は点眼薬としての開発が期待されるが、PLDポテンシャルを有する分子を眼に高濃度暴露させたときの眼局所におけるPLDリスクは明確でない。そこでPLDを誘発することが知られているクロロキンを、眼に一次刺激を示さない濃度で日本白色種ウサギに1日3回、7日間あるいは14日間反復点眼投与したところ、透過型電子顕微鏡観察により角膜上皮細胞の細胞質内にラメラ構造が認められ、PLDが点眼投与によっても引き起こされることが示された。この結果は点眼薬開発におけるPLDリスク評価の意義を示すものと考えられた。以上の結果から、親水性PLD誘発化合物を検出可能な本in silico予測手法は、点眼薬開発におけるPLDリスク評価においても有用と考えられた。
一般演題 ポスター
  • 永山 隆, 西田 稔, 檜杖 昌則, 荻野 大和, 藤吉 正人, 橋場 雅道, 米田 保雄, 王鞍 孝子, 田牧 千裕, 小平 浩, 久田 ...
    セッションID: P-69
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    わが国で1999年9月~2013年3月に承認された医薬品393剤の副作用(AEs)について調査した。本発表では血圧上昇と血圧低下について報告する。AEs及び非臨床毒性(Tox)はそれぞれ添付文書及び承認申請資料の情報からそれぞれ集計・解析した。393剤中181剤(46.1%)に血圧上昇、131剤(33.3%)に血圧低下のAEsがみられた。95剤(24.2%)では両AEsがみられ、217剤(55.2%)ではいずれか一方のAEがみられた。AEsとToxの関連性を検討した結果、血圧上昇及び血圧低下のaccuracyはそれぞれ0.54及び0.58であった。低分子医薬品と高分子医薬品に分けて、AEsの発現頻度別にToxの関連性を検討した結果、低分子では血圧低下に発現頻度依存傾向がみられたが、血圧上昇では発現頻度の影響はみられず、高分子ではいずれも発現頻度の影響は明確ではなかった。薬効群別の解析の結果、多くの中枢神経系薬剤で血圧に対する影響がみられ、解熱消炎鎮痛剤及び合成麻薬の全薬剤、精神神経用剤の93.3%及び抗パーキンソン剤の83.3%で血圧上昇がみられた。抗パーキンソン剤及び合成麻薬の全薬剤、精神神経用剤の86.7%及び末梢神経系用薬の80.0%で血圧低下がみられた。作用機序を調査し、on-target、off-target等に分類した。血圧上昇及び血圧低下のいずれでも約半数の薬剤の作用機序は確定できず、血圧上昇及び血圧低下いずれもon-targetのみでなく、off-targetの機序も多数認められた。今回の調査結果から、多くの薬剤で血圧への影響がみられることが明らかとなった。新薬の開発においては、非臨床試験、臨床試験の各段階でAEs発現のリスクを更に効果的に検出する試みの充実が要求され、臨床現場においては、AEs発現を低減させる試みの実現や対策が求められる。
  • 荻野 大和, 橋場 雅道, 藤吉 正人, 檜杖 昌則, 永山 隆, 西田 稔, 米田 保雄, 王鞍 孝子, 小平 浩, 田牧 千裕, 久田 ...
    セッションID: P-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    平成13~22年に承認された新有効成分含有医薬品のうち、抗腫瘍薬及びワクチン等を除く薬剤を対象に、5%以上の発現頻度の臨床副作用と非臨床毒性所見の相関性について調査した結果を第39回日本毒性学会にて報告した。同報告では発現数が多く、かつ非臨床試験よりその予測性が低い副作用として、筋・骨格の疼痛、発疹・湿疹・蕁麻疹、発熱等に加え、頭痛、疲労・倦怠感等の中枢神経系の副作用が挙げられている。今回の解析では、中枢神経系(体温異常を含む)の副作用の相関性の低さに着目し、安全性薬理試験成績(中枢神経系への影響)の網羅的な解析により、中枢神経系副作用と相関する非臨床所見がないか検討することとした。
    前回調査対象とした医薬品の副作用データに平成11、12及び23年に承認された医薬品の副作用データを追加した調査対象より中枢神経系副作用及び体温異常について抽出し、発現薬剤数が10以上の臨床副作用を解析の対象とした。解析時には、各臨床副作用をふらつき・めまい(33剤)、疲労・倦怠感(32剤)、悪寒・体温上昇・体温変動感・発熱・熱感(29剤)、傾眠・眠気(31剤)、頭痛(65剤)、不眠・不眠症・睡眠障害(22剤)の6つにグループ化し、各薬剤の安全性薬理試験の一般症状・行動に及ぼす影響、フォローアップ試験(自発運動能、運動協調性、睡眠誘発作用、体温など)における非臨床所見との相関性について網羅的な解析を実施した。また、安全性薬理試験で認められた個々の非臨床所見の解析に加え、毒性試験用語集(国立医薬品食品衛生研究所)の症状観察用語分類(行動、神経系等)を基にグループ化した非臨床所見についても解析を実施した。
    解析した臨床副作用について高頻度に認められる特定の非臨床所見は少なかったが、傾眠・眠気等、相関する非臨床所見が高頻度に認められたものもあった。また、大分類した非臨床所見との解析により認められた傾向についても報告する。
  • 王鞍 孝子, 田牧 千裕, 小平 浩, 橋場 雅道, 藤吉 正人, 檜杖 昌則, 永山 隆, 西田 稔, 荻野 大和, 米田 保雄, 久田 ...
    セッションID: P-71
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
     臨床副作用と非臨床毒性所見との相関性の解析は毒性試験の意義を明らかにし、予測困難な副作用を特定することが可能であることから、医薬品のヒトにおける安全性を考える上で重要である。近年、新薬におけるバイオ医薬品の割合は増加傾向にある。モノクローナル抗体は標的分子が明確であり、副作用の多くは標的分子を介した薬理作用に関連したものと想定されていたが、我々が実施した副作用と毒性所見の相関性解析では低分子医薬品と比較してバイオ医薬品における相関性は特に低いことが示された(J Toxicol Sci, 38: 581-598, 2013)。本研究ではその原因を明らかにするため、バイオ医薬品を対象に副作用と毒性所見との相関性を詳細に検討した。
     平成11~23年に新有効成分含有医薬品として本邦で承認されたバイオ医薬品22剤(モノクローナル抗体並びに受容体とのFc融合タンパク質)について、発現頻度が5%以上の副作用を対象として毒性所見との一致性を解析した。対象薬剤の薬理作用標的はTNFαおよびVEGFが最も多く、それ以外にEGFR、C5、CCR4、CD20、CD25、CD80/CD86、HER2、IgE、IL-12/IL-23、IL-1β、IL-6R、RANKLおよびTPORが含まれた。
     抽出された副作用(総数364)のうち、薬理作用(標的分子に依存する主たる薬理作用)に関連すると考えられる副作用が約1/4、薬理作用に関連しないと考えられる副作用が約1/2を占めた。副作用の約6%は投与部位反応に関連したものであった。副作用に一致する毒性所見は、薬理作用に関連した副作用では約1/4に認められたのに対し、薬理作用に関連しないと考えられる副作用では殆ど認められず、明確な差異があった。
  • 原田 拓真, Douglas J BALL, Thomas T KAWABATA, Christopher J BOWMAN, James ...
    セッションID: P-72
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    トファシチニブクエン酸塩は,本邦初のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有する経口投与が可能な低分子の関節リウマチに対する分子標的治療薬として発売されている。また,本薬はJAKファミリーに高い選択性を示し,JAK1およびJAK3の阻害によりIL-2,IL-4,IL-7,IL-9,IL-15およびIL-21などのサイトカイン受容体を介したシグナル伝達を阻害し,関節リウマチにおけるリンパ球の活性化,増殖および機能発現に関与する免疫反応を抑制する。また,JAK1に対する阻害作用によりIL-6やⅠ型IFNなど他の炎症誘発性サイトカインを介したシグナル伝達も抑制する。
    本薬のラットおよびサルにおける一般毒性試験では,循環血中のリンパ球数,ナチュラルキラー細胞数およびT細胞数の減少ならびにリンパ組織におけるリンパ球減少がみられ,JAK1およびJAK3阻害による免疫系および造血系への影響と考えられた。また,より高用量では赤血球パラメータの減少がみられ,JAK2阻害作用によると考えられた。これら免疫系や造血系への変化は休薬により回復または回復傾向を示した。
    生殖発生毒性試験では,他の免疫抑制薬と同様に,ラットおよびウサギで催奇形性がみられた。また,ラット2年間がん原性試験において,良性ライディッヒ細胞腫や悪性褐色脂肪腫の発生頻度の増加が認められたが,検討の結果,良性ライディッヒ細胞腫はJAK阻害によりライディッヒ細胞でのプロラクチンシグナル伝達が阻害され,LH受容体発現低下,テストステロン合成低下に伴う持続的LH刺激がライディッヒ細胞の増殖を促進させていることを裏付けるデータを得た。また,褐色脂肪腫についても, JAK阻害が褐色脂肪組織の増殖を亢進させ,また,本薬による交感神経刺激亢進が褐色脂肪組織の増殖に関与している可能性が示唆された。
  • Raymond DONNINGER, Hazel J CLAY, Gerhard F WEINBAUER
    セッションID: P-73
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    Biosimilars have emerged as one of the fastest-growing development opportunities in the biopharmaceutical sector. However, biosimilar development presents challenges at every level, from selection of a manufacturing platform, to analytical assays, demonstrating comparability, to in vivo testing, clinical testing, market access, and post-marketing surveillance.
    While the opportunity is immense, the risk involved with biosimilar development is still relatively high with large up-front investment required and possible failure of the drug during development stages. Biosimilars are molecules manufactured to emulate a marketed biologic drug in chemical composition and structure, and possess comparable pharmacologic activity, safety and efficacy. Unlike generic small molecule drugs, however, creating an exact copy of a therapeutic protein is impossible, as the manufacturing process is integral to the final drug product composition and by its nature can never be identical. As a result, regulatory agencies evaluate this category of biologics based on their level of similarity to, rather than the exact replication of, the innovator drug.
    This poster will present some of the challenges encountered during the development of a biosimilar compound and will highlight the critical factors encountered. Case studies will be presented that illustrate why a particular factor is critical and what the implication was of not paying sufficient attention to this factor.
  • 越智 幹記, 田中 祥之, 豊田 弘
    セッションID: P-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ニカルジピン塩酸塩注射液の静脈内投与によって発現する血管障害の誘発機序を明らかにすることを目的とし、ニカルジピン塩酸塩による正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)の細胞傷害メカニズムについて精査した。
    【方法】HMVEC にニカルジピン塩酸塩を暴露し、経時的な死細胞数増加を測定した。また、アポトーシスのマーカーとなる Caspase 3/7 活性及びオートファジーのマーカーとなる Monodansylcadaverine (MDC) を用いて細胞傷害メカニズムを精査し、オートファジー阻害剤存在下での細胞生存率の測定により、オートファジー阻害剤がニカルジピン塩酸塩誘発細胞傷害に与える影響を評価した。
    【結果・考察】ニカルジピン塩酸塩を暴露 30 分後に細胞内の小胞体増加が認められ、暴露後 3 から 6 時間にかけてオートファゴソーム染色試薬の MDC の蛍光強度が増加し、6 から 9 時間にかけて死細胞が増加した。一方、アポトーシスのマーカーとなる Caspase 3/7 の活性化は認められなかったため、ニカルジピン塩酸塩暴露による細胞傷害のメカニズムはオートファジー誘導によるものであると考えられた。オートファジー阻害剤である 3-methyladenine 存在下でニカルジピン塩酸塩を暴露したところ、ニカルジピン塩酸塩による細胞生存率の低下は著しく抑制された。以上の結果から、ニカルジピン塩酸塩によるヒト血管内皮細胞の細胞傷害の主要経路はオートファジーであり、オートファジーの阻害によりニカルジピン塩酸塩による細胞傷害を低減できると考えられる。
  • 藤本 和則, 横田 初枝, 松岡 俊樹, 鈴木 千春, 高崎 渉
    セッションID: P-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒト副腎皮質由来の培養細胞であるNCI-H295R(以下H295R)は、コレステロールからステロイドホルモンを生合成する能力を有しており、この培養細胞を用いて化合物のステロイドホルモン生合成への影響を評価する方法(H295R Steroidogenesis Assay)が2011年にOECDでガイドライン化された。今回、このOECDガイドラインに従い本評価系を構築し、モデル化合物を用いてそれらのステロイドホルモン生合成への影響を評価した。
    【方法】評価系の構築:適切な継代数のH295R細胞にpositive controlとしてデータの記載があるForskolinとProchlorazを48時間曝露し、その培養上清中のTestosterone(以下T)とEstradiol-17β(以下E2)の濃度ならびに細胞障害性を評価し、その結果をOECDガイドラインの評価基準と比較した。モデル化合物を用いた評価:ステロイドホルモン生合成に影響を与えることが報告されているAtrazine、DL-Aminoglutethimide、Letrozole、Molinate、Trilostaneを48時間曝露し、その培養上清中のTとE2濃度を評価した。
    【結果と考察】ForskolinによるTとE2の生合成亢進およびProchlorazによる生合成阻害の程度、ならびに溶媒対照におけるTとE2の生合成能は、一部を除き、OECDガイドラインの評価基準を満たしていた。また、モデル化合物曝露後のTとE2濃度の変化はそれぞれのメカニズムおよび既存のデータと一致していた。以上より、本評価系は構築され、また化合物のステロイドホルモン生合成への影響を培養細胞レベルで評価できる有効な方法であることが示された。
  • 五十嵐 芳暢, Johan T NYSTROM-PERSSON, 森田 瑞樹, 伊藤 真和吏, 中津 則之, 山田 弘, 水口 賢司
    セッションID: P-76
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    薬剤を動物や細胞に暴露して遺伝子の発現変化を網羅的に測定した遺伝子発現プロファイルは,遺伝子レベルの毒性発現メカニズムの解明や毒性予測に役立つ. 2002年度から10年間継続された官民共同トキシコゲノミクスプロジェクトで取得された70GBの遺伝子発現プロファイルと40TBの病理所見画像は,Open TG-GATEs (http://toxico.nibio.go.jp) で公開されている.しかしながら,70GBの遺伝子発現プロファイルは生データのまま公開されているため,計算機に精通した研究者でも,複雑なデータ構造を理解して正しく解析するには少なくない時間と労力が必要になる.
    我々はこのデータをよりオープンで使いやすくするために,トキシコゲノミクスデータの解析システムToxygatesを実装した.本システムでは,任意のエンドポイントによって群分けした化合物間において,発現差のある遺伝子をt検定などで抽出することができる.さらに,その結果から選択した任意の複数遺伝子を,時系列や用量変化に沿った発現変動パターンの類似性によってスコア化し,化合物を類似の遺伝子変動パターン順にランキングすることができる.この機能により同じような毒性発現メカニズムを持つ化合物候補を順位付けすることができる.また,トキシコゲノミクスデータのRDF (Resource Description Framework) 化を行い,ChEMBLやDrugBank,KEGG等の外部データベースとのSPARQLを介した統合を行った.このRDF化による統合によって,外部のデータベースを取り込むことなく,常に最新の外部データを参照できるようになった.さらに本システムでは,解析のどの段階からでもデータのダウンロードが可能である. Toxygatesはhttp://toxygates.nibio.go.jpを通して公開されている.
  • 高原 有香, 鬼無 悠, 高原 佑輔, 岡田 賢二, 村田 実希郎, 重山 昌人, 比知屋 寛之, 埴岡 伸光
    セッションID: P-77
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フタル酸ブチルベンジル(BBP)は、プラスチック可塑剤としてポリ塩化ビニルの柔軟性保持などの目的で広く使用されているが、in vivo及びin vitro試験系において哺乳動物に対して生殖・発生毒性や内分泌撹乱作用を示す可能性が示唆されている。BBPは、生体内でフタル酸モノブチル(MBP)及びフタル酸モノベンジル(MBzP)に加水分解され、これら代謝物は、親化合物のBBPよりも毒性が強いことも報告されている。本研究では、BBPの毒性発現機序を解明するための一環としてヒト、サル、イヌ、ラット及びマウスの肝ミクロゾームを用いたBBPのin vitro加水分解反応について検討した。
    【方法】BBPの加水分解活性は、BBP(5–1000 µM)をヒト、サル、イヌ、ラットあるいはマウスの肝ミクロゾーム(20 µg protein)と37°Cで20分間反応し、生成したMBP及びMBzPをHPLCによりそれぞれ定量することにより測定した。
    【結果・考察】いずれの動物種の肝ミクロゾームもBBPをMBP及びMBzPに加水分解した。MBP生成反応の速度論的挙動は、ヒト、イヌ及びマウス肝ミクロゾームではMichaelis-Menten式に、サル及びラット肝ミクロゾームでは正のアロステリック効果を示すHill式に従った。ヒトのKm及びVmax値は、それぞれ37.1 µM及び3.25 nmol/min/mg proteinであった。一方、MBzP生成反応は、ヒト、サル、イヌ、ラット及びマウスのいずれの肝ミクロゾームも正のアロステリック効果を示すHill式の速度論的挙動に従った。ヒトのS50及びVmax値は、それぞれ16.1 µM及び72.1 nmol/min/mg proteinであった。肝ミクロゾームによるBBPからモノフタル酸エステル体への加水分解反応のin vitroクリアランス値は、ヒト及びイヌではMBP < MBzPであり、サル、ラット及びマウスではMBP > MBzPであった。これらの結果より、ヒトにおけるBBPの加水分解反応の様相は、イヌと類似しているが、サル、ラット及びマウスとは大きな種差があることが示唆された。
  • 筧 麻友, 中山 翔太, 水川 葉月, 池中 良徳, 渡邊 研右, 坂本 健太郎, 和田 昭彦, 服部 薫, 田辺 信介, 野見山 桂, 石 ...
    セッションID: P-78
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】グルクロン酸抱合酵素(UGT)は、生体外異物代謝の第Ⅱ相抱合反応を担い、各動物の化学物質感受性決定に関与することが報告されている。食肉目ネコ亜目(Feliformia)では環境化学物質や薬物等の代謝に関与するUGT1A6の偽遺伝子化が報告されており、この偽遺伝子化に伴いアセトアミノフェン等の薬物の毒性作用が強いことが知られている。一方、食肉目に属する鰭脚類(Pinnipedia)では、環境化学物質の高濃度蓄積が報告されているが、感受性に関与するUGTについての研究はほとんど行われていない。そこで、鰭脚類を中心とした食肉目において、肝臓でのUGT活性の測定と系統解析を行った。
    【方法】食肉目に属するネコ(Felis catus)、イヌ(Canis familiaris)、鰭脚類であるトド(Eumetopias jubatus)、キタオットセイ(Callorhinus ursinus)、カスピカイアザラシ(Phoca caspica)及び対照としてラット(Rattus norvegicus)の肝臓ミクロソームを作成し、1-ヒドロキシピレン(UGT1A6、UGT1A7、UGT1A9)、アセトアミノフェン(UGT1A1、UGT1A6、UGT1A9)、セロトニン(UGT1A6)を基質としてUGT活性を測定した。また、NCBIのデータベースからUGT1A領域の系統解析およびシンテニー解析を行った。
    【結果及び考察】1-ヒドロキシピレン、アセトアミノフェン、セロトニンに対するUGT抱合活性を測定した結果、ラットに比べ食肉目では極めて低い活性を示した。また、系統解析及びシンテニー解析より、解析した全ての食肉目において、UGT1A分子種は特徴的な2遺伝子であるUSP40 とMROH2の間に保存されていることが明らかになった。さらに、食肉目は齧歯目に比べUGT1A領域が短く、UGT1A分子種数が少ないことが確認された。以上の結果から、鰭脚類を含めた食肉目はUGTによる異物代謝能が低く、環境化学物質に対する感受性が高い可能性が考えられた。
  • 芦野 隆, 伊藤 有香, 伯川 加菜絵, 沼澤 聡
    セッションID: P-79
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】近年、脱法ドラッグなどと称した違法薬物の乱用が社会問題となっている。流通している違法薬物の多くには、大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノールに類似した幻覚作用を示す合成カンナビノイドが含有されており、現在、合成カンナビノイドに多くみられるナフトイルインドール骨格を持つ化合物が包括的に規制されている。これらの化合物は、化学構造から中枢神経系への影響を推定し規制しているものの、その詳細な生体影響については明らかとされていない。本研究では、大麻に含有される主要カンナビノイドが薬物代謝酵素シトクロムP450 1A(Cyp1a)活性を阻害するとの報告があることから、基本骨格ナフトイルインドールおよび合成カンナビノイドによるCyp1a阻害作用について検討した。
    【方法】薬物は、(1H-indol-3-yl)(naphthalene-1-yl)methanoneおよび市買調査で入手した合成カンナビノイドJWH-019、MAM-2201、UR-144、AB-001、AM-1248、STS-135を用いた。Cyp1a活性は、ddY系雄性マウス肝から調製したミクロソーム画分を酵素源として、Methoxyresorufin O-demethylationを指標とした。
    【結果および考察】合成カンナビノイドの基本骨格である(1H-indol-3-yl)(naphthalene-1-yl)methanoneは、競合的にCyp1a活性を強く阻害し、その阻害定数Kiは0.74 µMであった。そこで次に各合成カンナビノイド(10 µM)によるCyp1a活性への影響を調べた。Naphthoylindole誘導体JWH-019およびMAM-2201は、Cyp1a活性をそれぞれ73.3%、64.4%に低下させ、アルキル側鎖が短くなるにつれて阻害作用が強まる傾向がみられた。また、Adamantyl誘導体AB-001、AM-1248、STS-135は、それぞれ92.3%、106.5%、67.6%とアミド結合を持つSTS-135にのみ阻害効果が認められ、Tetramethylcyclopropyl誘導体UR-144は79.5%に低下させた。以上の結果より、合成カンナビノイドの構造からCyp1a活性阻害作用が推測できることが示唆された。
  • 楢本 恭子, 加藤 真之, 市原 賢二
    セッションID: P-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的および方法】食品やサプリメントの中には、医薬品の代謝を阻害して効果を増強させることで、重篤な副作用を生じるものがある。サプリメントとして用いられているプロポリスについては、医薬品との相互作用に関する報告はない。本研究では、プロポリスサプリメントとして最も多く使用されているブラジル産グリーンプロポリスエタノール抽出物(EEBP)を用い、肝臓の薬物代謝酵素の活性に及ぼす影響を評価することを目的とした。EEBPは、薬物代謝酵素阻害の報告が多いフラボノイドをはじめとし、複数の成分を含む混合物である。そこで、EEBPとその主要成分について、医薬品の代謝に深く関わる薬物代謝酵素であるCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4に対する影響をin vitroで検討した。続いて、摂取目安量の約5倍量のEEBPをラットに経口投与して、in vitroで関与が疑われた成分の血中濃度を測定し、EEBPがin vivoで薬物代謝酵素を阻害する可能性を評価した。
    【結果】EEBPはヒト型のCYP 5分子種を濃度依存的に阻害することが確認され、artepillin C、kaempferide、dihydrokaempferide、isosakuranetinおよびkaempferolが関与成分として特定された。一方、血中濃度は5倍量に相当する投与においても、いずれの成分ともIC50値の1/33以下であった。以上の結果から、EEBPはin vitroでは薬物代謝酵素を濃度依存的に阻害するものの、その関与成分の血中濃度は阻害のみられる濃度には達しないことが確認された。
  • 西山 貴仁, 加倉井 直輝, 林 奈帆子, 栁田 裕美, 大沼 友和, 小倉 健一郎, 平塚 明
    セッションID: P-81
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】合成ビタミンKの一種であるメナジオン(MD; 2-methyl-1,4-naphthoquinone) は、酸化ストレス研究の毒性発現モデル評価化合物として用いられている。MDは細胞内求核剤とのアリル化及び酸化還元サイクルに伴い発生するreactive oxygen speciesによって細胞毒性を示す。一方でMDはNAD(P)H:quinone oxidoreductase (NQO) 1により、2電子還元を受けメナジオール(MDOH)に代謝され解毒されると考えられている。既に我々は、MDの解毒はNQO1による還元に続くUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)によるグルクロン酸抱合体生成が真の解毒経路であることを明らかにしている。本研究では、UGTの細胞質側に存在するC-末端アミノ酸領域がMDの解毒代謝に与える影響を解明することを目的とし、UGT1A6のC-末端アミノ酸残基変異体を作製し、MDから生成するMDOHのグルクロン酸抱合体生成能を検討した。 
    【方法】UGT1A6wild及びUGT1A6のC-末端アミノ酸残基を欠失させた変異体とC-末端に24個のアミノ酸残基を付加した変異体をSf9細胞中で発現させた。
    【結果及び考察】MDからNQO1による還元を受け生成するMDOHのグルクロン酸抱合活性を測定したところ、膜貫通ドメインから細胞質側に存在しているC-末端アミノ酸残基側まで及び膜貫通ドメインは保持しているもののC-末端アミノ酸残基側を欠失している変異体では酵素活性は認められなかった。膜貫通ドメインよりC-末端残基側を保持している変異体は活性が認められた。24アミノ酸残基が延長された変異体はUGT1A6wildと比較してMDOHグルクロン酸抱合活性は低かった。以上の結果から、UGT1A6の細胞質側に存在するC-末端アミノ酸残基はMDの解毒代謝に必須であることが明らかとなった。
  • 林 奈帆子, 西山 貴仁, 加倉井 直輝, 栁田 裕美, 大沼 友和, 小倉 健一郎, 平塚 明
    セッションID: P-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】NNKはニコチン由来のニトロソアミン類であり、ヒトにおける主要化学発癌物質の一つである。NNKはCYPにより代謝的活性化を受け、主に2種の活性代謝物α-hydroxymethylene NNKまたはα-hydroxymethyl NNK (4-(hydroxymethylnitrosoamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone, HO-methyl NNK)を生成する。既に我々は、NNKの組織特異的発癌性を明らかにする一環として、活性代謝物であるHO-methyl NNKのグルクロニド(HO-methyl NNK gluc)生成に着目し、その組織分布とNNKの組織特異的発癌性との関係について報告している。本研究ではNNKに対する発癌感受性が異なるA/J及びC57BL/6Jマウスの尿中におけるHO-methyl NNK gluc及び関連代謝物について検討することを目的とした。
    【方法】フェノバルビタール(PB)誘導及び非誘導(control)群のマウスに対しNNK (50 mg/kg)を腹腔内投与後、尿を採取しLC/MS/MS分析により各種代謝物の定量を行なった。
    【結果・考察】NNKによる発癌感受性の高い雌A/Jマウスは感受性の低いC57BL/6Jよりもcontrol群及びPB群共にHO-methyl NNK glucの尿中排泄量は高かった。一方で雄のHO-methyl NNK glucの尿中排泄量はcontrol及びPB群共にC57BL/6JがA/Jより高かった。興味深いことにHO-methyl NNKから非酵素的に生成される4-hydroxy-1-(3-pyridyl)-1-butanone (HPB)の尿中排泄量は雌雄ともにA/Jの方がC57BL/6Jより高かった。以上よりNNKの代謝には系統及び性差が認められ、体内動態の違いが発癌感受性の違いに関係している可能性が示唆された。
  • Gábor IMRE, Kitti SZABó, Zoltán NAGY, Viktória JUH ...
    セッションID: P-83
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    L-carnitine is required for many physiological roles as participating in β-oxidation. Human OCTN2 (organic cation/carnitine transporter 2; SLC22A5), and its rat ortholog Octn2 (rSlc22a5), are ubiquitously-expressed membrane proteins that are hypothesized to be sodium-dependent specific transporters of L-carnitine. Although not generally regarded as a drug transporter, its role in drug pharmacokinetics has been clearly shown, particularly in relation to renal excretion.
    Mildronate, is a carnitine congener which acts to inhibit fatty acid oxidation and has been shown to be transported by rat Octn2. However, characterization of kinetics of transport has not been described.
     Aims: To correlate transport properties of Octn2 and OCTN2 and investigate mildronate transport by Octn2/OCTN2 in particular. Identify and examine drugs inhibiting L-carnitine uptake, and to perform a species specificity analysis of the rat and human orthologs.
     Methods and results: Cellular uptake assays were performed using CHO-K1 cell lines stably overexpressing OCTN2 or Octn2 to examine species differences between the two transporters. Uptake of L-carnitine was quantitated using radiolabelled compound, whereas the detection of mildronate was carried out using HPLC-MS. Among others amiloride, imatinib, mildronate, omeprazole, quinine, quinidine and vincristine were used to examine their influence on L-carnitine uptake.
     Conclusion: ?Similarly to OCTN2, Octn2 also transports mildronate with high potency. However, L-carnitine was found to be a lower affinity substrate for Octn2 than for OCTN2. Furthermore, many pharmacologically important drugs were shown to affect L-carnitine transport by Octn2/OCTN2, although several differences between rat and the human orthologs were also observed.
  • 高木 信伍, 塩田 里佳, 三好 貴子, 松山 恵吾, 上野 元伸, 鳥井 幹則
    セッションID: P-84
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景】実験動物において直接ビリルビンや総胆汁酸の増加が認められた場合は胆汁うっ滞を疑う.軽度な場合は病理学的検査において胆汁うっ滞を支持する変化が認められないことが少なくないため血液検査の結果は毒性判断に重要である.一方で,ビリルビンや胆汁酸の輸送に関わるトランスポーターの欠失等によってこれらの項目が変動することが知られている.本研究では胆汁うっ滞に関連する血液検査値の変動について,化合物投与による変動の特徴及びその回復性を検証することを目的とした.
    【方法】雄性C57BL/6マウスに,胆汁うっ滞を引き起こすことが知られるcyclosporin A,rifampicin,α-naphthylisothiocyanate等の化合物を4日間反復経口投与した.最終投与後,6及び72時間に解剖し,得られた血漿を血液化学的検査及びLC/MSによる胆汁酸一斉分析に,肝臓を病理学的検査に供した.
    【結果】Cyclosporin A及びrifampicinは肝臓へのビリルビンの取り込みに関与するトランスポーターなどを阻害することが知られており,血中に化合物が残存する投与後6時間では胆汁うっ滞を示唆するビリルビン,総胆汁酸及び/または総コレステロールの増加が認められた.しかし,化合物がほぼ排泄された72時間後ではこれらの変化は正常値に戻り,病理学的検査においても肝臓に異常は認められなかった.なお,投与後6時間における胆汁酸成分の変動は化合物によって特徴的であった.
    【考察】肝取り込み/排泄トランスポーターを阻害する化合物の場合,化合物が血中に残存するときに見かけ上胆汁うっ滞を示唆する血液検査結果が得られるが,この変化には回復性があり,真の臓器障害を反映していないことが示された.また,器質的変化を示唆する変化を伴わないこのような変動はトランスポーターの阻害を疑う有用な情報になりうると考えられた.
  • 中川 俊人, 大辻 摩希子, 小枝 暁子, 楠元 久美子, 長尾 卓也, 小関 恵美子, 丸谷 小百合, 片木 淳, 王鞍 孝子, 鰐渕 英 ...
    セッションID: P-85
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     初代培養ヒト肝細胞は,医薬品開発における薬物代謝試験のgold standardとして認識されており,また,肝毒性評価にも有用な試験系として用いられる.しかし,従来の懸濁あるいは2次元平面培養では,肝臓本来の代謝機能の長期間維持が困難であった.すなわち,従来のin vitro試験法には,臨床では生成するクリアランスが小さい代謝経路の代謝物の生成予測が不充分である,代謝物に起因する毒性検出に高濃度の薬剤曝露を要するといった,必ずしも生体の反応を正確に反映できていないという問題点が顕在していた.そのため,上市後に多くの患者に使用されることにより初めて,薬物代謝に起因する重篤な肝障害が明らかとなり,その結果として市場から撤退する医薬品も認められ,患者に対する予期せぬ健康障害が根絶できていない.そこで,医薬品等の開発では,肝障害による健康被害と経済損失を回避すべく,長期間代謝機能を維持したヒト肝細胞培養系を用いた種々の薬物代謝・毒性評価への試みが精力的に検討されている.
     安全性評価研究会・スフェロイド分科会(クローズド・コンソーシアム)では,近年多く提案されている3次元in vitro評価法のひとつとしてCell-ableを用いたヒト肝細胞スフェロイドについて検討し,この試験系が第1相および第2相反応の薬物代謝酵素活性を長期間維持し,従来in vitro試験で確認困難とされていた代謝物を検出できる有望な試験系であることを報告した。今回、更にその有用性の確認と評価法の標準化を進めるべく,協力企業のクローズド・コンソーシアムで,スフェロイド培養法と従来の懸濁法および2次元平面培養法との、薬物代謝活性の比較検討を実施した.この検討結果を紹介し,スフェロイド培養法による薬物代謝評価法の有用性と今後の展望について考察する.
  • M. KERMORVAN, B. BOUAITA, F. ROSHCHINA, N. ROUGIER, R. LI, C. CHESNE
    セッションID: P-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    BACKGROUND: Cryopreserved hepatocytes are extensively used in drug industry today. However, comparing with cryopreserved human hepatocytes the single animal hepatocytes particularly rodent hepatocytes are limited on small size of batch regarding what is needed for setting up large scale study. In addition, animal hepatocytes are less resistant to isolation and cryopreservation process, with a significant alteration both at viability and plateability. Hence, the aim of the present study was designed to (i) to prepare freshly pooled hepatocytes from several small animals for making large size batch of pooled and cryopreserved rodent hepatocytes; (ii) to validate the pooled and cryopreserved rodent hepatocytes by comparing with fresh and cryopreserved hepatocytes from single animal. (iii) to characterize the post-thawing cell quality and pre-qualification of cryopreserved cells
    STUDY DESIGN AND METHODS: For producing large size batch, rat and mouse hepatocyte were isolated from several animals and pooled and then cryopreserved by using an optimized process in BPI. The post-thaw viability, yield and plateability as well as the functionality of cryopreserved hepatocytes were checked and compared with both fresh and small size batch of cryopreserved hepatocyte from single animal donor. The pooled cryopreserved hepatocytes were also pre-qualified according to application including prediction of metabolic clearance, evaluation of CYP induction and hepatocyte transporter uptake assays.
    RESULTS: We have developed an optimized technique for preparing and freezing of large size lot of pooled hepatocytes from multiple animal donors like rat and mice. They retain their fresh hepatocytes ability to attach to a collagen I coated matrix (post-thaw plateability), thereby permitting their use for long-term plated assay, such as induction and sandwich cultures. The comparison study shows that metabolism activity is comparable between the fresh and pooled cryopreserved hepatocytes. As well, a good lot-to-lot reproducibility was observed. Furthermore, some pre-qualified applications like induction or transport on cryopreserved pooled cells shown an acceptable inducibility of cytochrome P450 and efflux activity with sandwich-cultured hepatocytes.
    Conclusions: Our pooled cryopreserved hepatocytes from multi-animal donors and multi-animal species represent a good alternative for use of freshly isolated hepatocytes for drug studies.
  • 牟田 恭尭, 深見 達基, 中島 美紀
    セッションID: P-87
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】β遮断薬アセブトロールを服用した患者において、まれに皮疹や薬物誘発性ループスが発症し、その指標として血漿中の抗核抗体産生が評価される。アセブトロールは体内でジアセトロールへ変換されるが、どのような代謝反応を介しているか、またどの酵素がその反応を触媒しているか不明である。本研究ではアセブトロールの代謝反応が毒性発現に関わっている可能性を考え、代謝酵素の同定ならびに抗核抗体産生への代謝物の関与を明らかにすることを目的とした。
    【方法】ヒト肝ミクロソーム(HLM)等の組織画分や酵素発現系を用いてアセブトロール加水分解酵素活性およびアセトロールN -アセチル化酵素活性を測定した。雌性C57BL/6マウスにCyp誘導薬プレグネノロンカルボニトリル(PCN)、加水分解酵素阻害剤トリo-トリルホスフェート(TOTP)およびCyp阻害薬1-アミノベンゾトリアゾール(ABT)の併用投与条件下でアセブトロール(100 mg/kg/day)を30日間経口投与し、間接蛍光抗体法により血漿中抗核抗体産生を評価した。また、アセトロールとHLMまたはヒトCYP発現系を反応させ、LC-MS/MSを用いて毒性発現に関わる反応性代謝物を探索した。
    【結果および考察】アセブトロールはヒトCES2によりアセトロールへ、その後NAT2によりアセチル化されてジアセトロールへ代謝されることを明らかにした。マウスにアセブトロールを投与した際、血漿中に抗核抗体が認められる個体が現れ、PCNの併用投与により陽性個体数が増加した。一方、TOTPやABTの併用投与により減少したことから、アセトロールの酸化反応が抗核抗体産生に関わっていることが示唆された。HLMにおいてアセトロールから代謝されて生成したニトロソアセトロールが反応性代謝物と推定され、主にCYP2C19がその生成反応を触媒していることを明らかにした。
  • 白川 真帆, 田中 彩華, 関根 秀一, 伊藤 晃成
    セッションID: P-88
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    [目的]薬剤性肝障害(DILI)誘発薬物の多くで反応性代謝物(RMs)の生成がその発症・増悪に関わることが示唆されているが、RMsはその化学的不安定さから単離生成が困難であり、明確な毒性標的分子の同定にも至っていない。一方、米国FDAの定めるDILIリスクがBlack Box Warning(BBW)に分類される薬物の多くで、DILI発症機序にミトコンドリア(Mito)障害が関係していると言われている。ベンズブロマロン(Benz)はBBWに分類され、反応性の高い活性中間体を生成することも知られている。そこで本研究では、Benzをモデル化合物とし、RMsの単離生成を経ることなくMito毒性を評価可能な系の構築を試みた。 [方法] Sprague-Dawley系雄性ラット (6-7週令) の肝臓よりMitoを調製した。別個に、デキサメタゾン(Dex)で代謝酵素を誘導したラット肝から単離したミクロゾームとBenzをNADPH存在下で30分間代謝させた後にMitoを添加した。Mito毒性の評価は、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を指標とし、540nmの吸光度の経時的な低下により測定した。[結果] Dex誘導MSを用い、新規に構築した系においてBenzによるMPTを測定したところ、RMsの生成に依存すると思われる有意なMito毒性増強が観察された。一方、Dex誘導をかけていないラット肝MSでは毒性増強は認めなかった。さらに、反応後の容液をLC/MS/MSにて分析したところ、Benz由来の代謝物とみられるピークを確認することができた。以上より、本系を用いることでRMsの単離生成を経ることなくそのMito毒性有無について評価できる可能性が示された。
  • 出合 陽子, 田村 幸太朗, 西原 久美子, 宇波 明
    セッションID: P-89
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    We evaluated three kinds of human hepatocytes (HepG2 cells, HepaRG cells and primary human hepatocytes (PHH)) as materials for metabolite-induced hepatotoxicity testing, and developed assay methods for that. First, we conducted cytotoxicity tests in HepG2 cells, HepaRG cells and PHH using ATP as a cytotoxicity parameter. The three kinds of hepatocytes were treated with 16 compounds whose metabolites have been reported to be hepatotoxic. In order to judge whether observed cytotoxicities are caused by metabolites or parent compounds, cytochrome P450 inhibitor (1-aminobenzotriazole: ABT) or glutathione synthesis inhibitor (L-Buthionine-S, R-sulfoximine: BSO) was treated concomitantly with each compound. As results, toxicity of ticlopidine was reduced with ABT and that of cyclophosphamide was increased with BSO in HepaRG cells and PHH, but not in HepG2. These results indicate that the cytotoxicity tests using HepaRG cells and PHH could detect metabolite-induced toxicities, meanwhile it is considered that the assay method should be modified to improve detection sensitivity. To find indicators with higher sensitivity, we conducted comprehensive gene expression analysis in HepG2 and HepaRG cells treated with ticlopidine, cyclophosphamide and acetaminophen. As a result, we identified three gene biomarkers, heme oxigenase 1, p62 and sulfiredoxin 1. Changes in their expression levels were greater than those in ATP. The assay using human hepatocytes and these gene markers is useful for detection of metabolite-induced hepatotoxicity.
  • 大泉 久美子, 関根 秀一, 深貝 明子, 伊藤 晃成
    セッションID: P-90
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景・目的】胆汁うっ滞型薬剤誘発性肝障害は、胆汁酸の細胞外への排泄に関わる輸送体が薬物により阻害され、肝細胞内に蓄積することで引き起こされる。ヒト血清中には15種類以上の胆汁酸が存在するが、肝細胞内蓄積に伴う毒性発現に寄与する胆汁酸の同定には至っていない。そこで本研究ではサンドイッチ培養ラット肝細胞(rSCH)を用いて、胆汁酸排泄輸送体の阻害剤であるCyclosporinA(CsA)による各胆汁酸の細胞内蓄積と細胞毒性の増悪を評価することで、毒性発現に寄与する胆汁酸の同定とそれら胆汁酸の細胞外排泄に関わる胆管側(Bile salt export pump: Bsep)及び血管側 (Multidrug resistance associated protein 3/4: Mrp3/4)排泄輸送体の関与を明らかにすることを目的とした。【方法】当研究室での予備検討より、本研究に用いるCsA濃度を、胆管側排泄を阻害する10 µM、血管側も阻害する50 µMとした。rSCHに各濃度のCsA及び12種類の各胆汁酸(ヒト血清中濃度の30~1600倍)を24時間曝露し、細胞外に漏出したLDHを測定した。【結果・考察】12種類の胆汁酸のうちCsA 10 µM曝露時に毒性の増強がみられたものは、CDCA,DCA,GDCAの3種類であり、CsA 50 µM曝露では、これらに加えGCA,GCDCA,TLCAにおいて毒性の増強がみられた。一方でrSCHにおけるCsA曝露による肝細胞内の胆汁酸蓄積量は、検討した胆汁酸についてCsA濃度依存的な増加(1.5~14.7倍)がみられたことから、胆汁酸排泄輸送体阻害時の胆汁酸蓄積による肝細胞毒性には、CDCA,DCA,GDCAの寄与が大きいことが示唆された。また、CsA 50 µM曝露によりGCA,GCDCA,TLCAにおいて毒性の発現が見られることから、BsepだけでなくMrp3/4阻害もこれら胆汁酸の細胞内蓄積による毒性に寄与していることが示された。本研究結果は胆汁酸依存的毒性評価系による臨床毒性予測精度の改善や、臨床における胆汁うっ滞型薬剤誘発性肝障害発現のメカニズムを解明する上で有用な情報となることが期待される。
  • 関根 秀一, 菊田 奈津子, 江尻 洋子, 細田 雅也, 堀江 利治, 伊藤 晃成
    セッションID: P-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】臨床で見られる薬剤性肝障害(DILI)を非臨床試験において予測するため様々なアプローチがなされているものの、既存の実験法では十分に予測できておらず、DILIを前臨床試験段階で正確に評価する、生理的な肝臓に近い評価法が希求されている。肝細胞に特有の機能であるBile salt export pump (BSEP)による胆汁酸の胆汁中への排泄が薬物により阻害されると胆汁うっ滞型肝障害につながる。初代培養肝細胞は単離過程で極性が消失するため、現時点で胆汁排泄を評価可能なIn vitro試験系は限られている。マイクロメートルオーダーの規則的な凹凸の凹部に細胞塊(スフェロイド)を形成する3次元培養系であるスフェロイド培養系(MSCS)は、既存法に比べて薬物動態に関連する遺伝子の発現量が保たれた状態で長期培養可能となるなどの利点がある一方で、胆汁排泄機能や細胞毒性感受性に関する情報は少ない。そこで本研究では、マイクロ空間培養プレートにおいて薬物による胆汁酸排泄阻害による胆汁うっ滞型肝障害が評価可能となるかについて検討を行った。【方法】本検討では、BSEP阻害剤を含む26種の被験化合物(<50 µM)を用いた。Sprague-Dawley系雄性ラット(7-8W)の肝臓より単離した肝細胞をElplasia(R)「SQ 200 50G」に播種し5日間培養した。非毒性域の胆汁酸を被検薬物とともに肝細胞へ曝露(24時間)し培地中に漏出したLDHを胆汁酸依存性肝細胞毒性として測定した。【結果・考察】MSCSの胆汁酸排泄能を確認するため3H-Taurocholate(TCA)の排泄を既報のBiliary excretion index法により検討を行い、Cyclosporin A(CsA)によりTCAの毛細胆管スペースへの排泄が抑制されることを確認した。次に胆汁酸のみで細胞毒性を示さない濃度において、被検化合物による毒性を検討した結果、BSEPに対する阻害能が強力(IC50 <25 µM)な被検薬物(CsA, Ethinyl estradiol, Ritonavir, Glybenclamide, Ketoconazole, Simvastatin, Troglitazone)において、胆汁酸依存的な細胞毒性が見られた。以上のことから、BSEP阻害を伴う肝細胞障害のスクリーニング系としてMSCSが有用となる可能性が示された。
  • 竹村 晃典, 伊崎 彩, 関根 秀一, 伊藤 晃成
    セッションID: P-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】薬物性肝障害は稀に増悪し、回復に長期間要することが臨床上問題となっている。肝機能のうち特に胆汁排泄に関しては、肝細胞間に生じる毛細胆管網の形成・維持が重要である。我々は、sandwich cultured rat hepatocytes (SCRH)を用いたin vitro評価によりTroglitazone(Tro)が臨床濃度付近で毛細胆管伸長を強力に阻害することを見いだした。一方、Troは体内で大部分が硫酸抱合体(Tro-sul)に変換されることが知られている。そこで、今回in vitroで見いだされた作用がTroとTro-sulいずれによるものか明らかとすることを目的とした。
    【方法】SCRH培養2日目にTro及びTro-sulを暴露し、24時間後にアクチンと毛細胆管マーカーであるMrp2を免疫染色し、視野内で観察された毛細胆管長の合計を細胞数で除することで毛細胆管伸長を評価した。Tro暴露後に経時的に培地と細胞を回収し、TroおよびTro-sul濃度をLC-MSMSにより測定した。ラットより単離したミトコンドリアに対しTroおよびTro-sulを添加後の膨潤をモニタすることでミトコンドリア毒性を評価した。
    【結果・考察】Tro、Tro-sulともに同等の濃度依存性で毛細胆管伸長を阻害した。Troは添加直後から濃度が低下し、4時間までに添加した量の50%以上がTro-sulに変換され、24時間後まで安定に存在した。毛細胆管伸長にはミトコンドリア機能が重要であるとの報告が最近なされているため、TroとTro-sulによるミトコンドリアへの影響を検討した結果、いずれも同程度にミトコンドリア毒性を引き起こすことが示された。以上より、SCRHで観察されたTroによる毛細胆管伸長抑制には、Troから生じたTro-sulによるミトコンドリア毒性が主に関わると考えられた。
  • 伊崎 彩, 竹村 晃典, 関根 秀一, 伊藤 晃成
    セッションID: P-93
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】薬物性肝障害では肝機能の完全回復に長期間要する場合があり臨床上問題となっている。肝細胞間に生じる毛細胆管網は特に胆汁排泄機能発現に必須な構造と考えられる。これまでに、ラットサンドイッチ培養肝細胞(SCRH)における毛細胆管形成がTaurocholic acid(TCA)などの内因性胆汁酸により促進することが示されている。しかし、薬物がその構造の形成・維持に及ぼす影響については不明である。そこで本研究では肝障害、中でも胆汁鬱帯の成因の一つに毛細胆管形成阻害があると考え、肝障害を起こすことが知られている薬物の毛細胆管形成過程への影響を調べることを目的とした。
    【方法】胆汁酸や薬物の方向性輸送能を持つSCRHを用い培養2日目に薬物を暴露し24時間後に、毛細胆管形成の指標としてアクチンならびに膜蛋白質(Mrp2)を免疫染色し蛍光顕微鏡により観察し、毛細胆管形成を観察した。Image Jを用い胆管の長さを測り細胞数で除した値を用い毛細胆管形成を評価した。
    【結果・考察】肝障害を起こすことが報告されている薬物について検討を行ったところ、TroglitazoneやChlorpromazineなどいくつかでControlと比較し有意な胆管伸長阻害が見られた。特に阻害が顕著であったTroglitazoneでは、臨床最高血中濃度(6.4µM)と近接する濃度付近で強力な阻害が見られた。一方、Troglitazone に比べ毒性の低い同効薬であるRosiglitazone、Pioglitazoneでは臨床濃度付近で阻害は観察されず、Troglitazoneの重篤な肝障害発症に毛細胆管形成阻害が関与する可能性が示唆された。本評価方法は、胆汁鬱滞を引き起こす薬物の新たなスクリーニング系の一つとして有用と考えられる。
  • 高井 翔平, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】抗不整脈薬アミオダロン (AMD) は副作用として肝障害の発現頻度が高いことで知られており、ヒトCYP3A4により生成される主代謝物のデスエチルアミオダロン (DEA) が発症に関与すると考えられているが、これをin vivoで明らかにした例はない。本研究ではAMD誘導性肝障害モデルマウスを作出し、肝毒性発現メカニズムを明らかにすることを目的とした。
    【方法】8週齢の雄性Balb/cマウスにデキサメタゾン (DEX, 60 mg/kg, i.p.) を3日間反復投与し、最終投与24時間後にAMD (1000 mg/kg, p.o.) を単回投与した。AMD投与6および24時間後の血漿中ALT値、投与24時間後の血漿と肝臓中のAMDおよびDEA濃度を測定した。また、Cyp3a阻害剤であるケトコナゾール (KTZ)、 Cyp分子種非選択的阻害剤である1-アミノベンゾトリアゾール (ABT) またはクッパー細胞の枯渇剤であるGdCl3を併用投与した。さらに、肝臓中の炎症性因子のmRNA発現量、GSHとGSSG量、ATP量および血漿中トリグリセリド量の測定、肝細胞質中のcytochrome cとcleaved caspase-3の発現を解析した。
    【結果・考察】Cyp3aを誘導するDEXを前処理したAMD投与マウスにおいて血漿中ALT値は有意に高値を示した。KTZまたはABTを併用投与し、血漿と肝臓中のAMDおよびDEA濃度を測定した結果から、肝臓中へのDEAの貯留が肝毒性に関与することが示唆された。DEXを前処理したAMD投与マウスにGdCl3を併用投与したところ血漿中ALT値が有意に低下し、肝臓中GSH/GSSG比が有意に低下したことから、クッパー細胞を介した酸化ストレスの増強がAMD誘導性肝障害に関与することが示唆された。DEX前処理によりミトコンドリア毒性およびアポトーシス経路の活性化が認められ、これらによりAMDによる肝毒性が発現した可能性が示された。本検討はAMD誘導性肝障害マウスを作出し、代謝反応を介した毒性メカニズムを解析した初めての報告である。
  • 山浦 優, 神吉 将之, 井手 鉄哉, 森口 聡, 宇波 明, 宮前 陽一
    セッションID: P-95
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景および目的】肝細胞に特異的に高発現するmiR-122は,肝障害時の診断マーカーとして近年注目されている。これまでのマイクロRNA(miRNA)マーカー研究の多くは血清中miRNAの総量を定量(従来法)するものであるが,組織障害時にmiRNAがエクソソームに内包されて細胞から漏出するとの報告もあり,血清から単離したエクソソーム中のmiRNAを定量する方法(EXO法)の有用性も報告されてきている。本研究では,肝障害マーカーとしての血中miR-122について,EXO法の有用性について検証した。
    【方法】チオアセトアミド(15, 30 mg/kg),メタピリレン(100, 200 mg/kg)及びブロモベンゼン(75, 150 mg/kg)を雄性SDラットに単回経口投与し,6時間後に尾静脈より採血した。24時間後に剖検し,血清および肝臓を血液化学的検査及び病理組織学的検査に供した。従来法またはEXO法により血清中miR-122を定量した。
    【結果】チオアセトアミドの30 mg/kg群及びメタピリレンの100および200 mg/kg群では,ALTの増加,軽微または軽度の肝細胞壊死が認められた。一方,チオアセトアミド15 mg/kg群及びブロモベンゼンの75,150 mg/kg群では,軽微または軽度の肝細胞壊死が認められたが,ALTの増加は認められなかった。miR-122定量の結果,チオアセトアミド15 mg/kgおよびメタピリレン100 mg/kg群の投与後6時間においてEXO法のみで増加が認められた。一方,ブロモベンゼン75 mg/kg群の投与後24時間においては従来法でのみmiR-122の増加が認められたのに対し,150 mg/kg群では両方法で認められた。
    【結論】EXO法によるmiR-122測定により,感度よく肝障害を検出しうる可能性が考えられたが,miR-122の分泌様式や血中動態に依存して,壊死の発生機序や測定タイミングなどにより測定感度が異なる可能性が示唆された。
  • 中津 則之, 五十嵐 芳暢, 青枝 大貴, 石井 健, 山田 弘
    セッションID: P-96
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     2002年に開始されたトキシコゲノミクスプロジェクトでは薬剤の安全性予測を目的として、肝遺伝子発現データベースを構築してきた。このデータベースは薬剤の安全性の予測だけではなく、その作用機序の解明等に寄与することが期待されている。本プロジェクトのラット投与試験において安楽死に使用する麻酔薬はジエチルエーテルに統一されてきた。一方、2006年に日本学術会議から発行された「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」によって、これまで日本国内で麻酔剤として広く使われてきたジエチルエーテルについては、その使用を控え、代替麻酔剤を使用することが推奨されて以降、当麻酔剤の使用が難しくなってきている。そこで麻酔薬の変更のための基礎データ取得を目的として、麻酔薬の違いによる遺伝子発現への影響を確認することとした。
    本研究では、代替麻酔薬候補としてイソフルランとペントバルビタールを検討した。上記2種とジエチルエーテルを含めた3種の麻酔薬で6週齢のSprague-Dawley系雄性SPFラット〔Crl:CD (SD)〕 (N=5)を処理した後、血液学・血液化学検査とともにRat Genome 230_2.0 Gene Chip (Affymetrix社)を用いて肝臓の遺伝子発現データを取得した。遺伝子発現データは正規化の後、Tukey honestly significant difference検定によって3群を比較した。その結果、遺伝子発現については、ジエチルエーテル群、イソフルラン群、ペントバルビタール群の順に群内のばらつきが少なく、イソフルランはジエチルエーテルに対して、ペントバルビタールよりも有意差のある遺伝子が少ないことが示唆された。
  • 二宮 真一, 長塚 伸一郎, 井手野 晃, 大原 利成, 島田 卓
    セッションID: P-97
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】重度の肝機能不全、および免疫不全を有するuPA/SCIDマウスにヒト肝実質細胞を移植することにより、肝臓の一部がヒト肝細胞によって置換されたヒト肝細胞キメラマウスが得られる。ヒト肝細胞による置換率が70%を超える高置換ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)においてはヒト薬物代謝酵素が高いレベルで発現しており、薬物投与後の代謝、排泄のパターンがげっ歯類型ではなくヒト型を示すことが知られている。したがって、PXBマウスはヒトにおける薬物体内動態を推定するためのモデル動物としてだけでなく、ヒト型の薬物代謝に起因する毒性の発現、特に肝毒性の発現を解析あるいは予測するために有用なモデル動物であると考えられる。今回、我々はコラーゲン分子の生理的な重合に関わるLysyl Osidase(LOX)遺伝子、および非生理的な重合に関わる酸化ストレス系遺伝子に着目し、PXBマウス肝臓におけるこれら遺伝子の発現に対する各種肝毒性薬物の影響を検討した。
    【方法】10-12週齢のPXBマウスにAcetaminophen、Diclofenac、Flutamideなど20種類の肝毒性薬物を比較的高いDose(LD50の約10%)で3日間連続経口投与した後、肝臓のTotal RNAを調製しAffymetrix社のHuman Genome U133 Plus 2.0アレイにより肝臓の遺伝子発現を測定した。
    【結果および考察】肝細胞壊死や炎症など比較的急性な毒性を示す薬物においてはLOXの発現が低下し、酸化ストレスにより誘導される遺伝子の発現が亢進する傾向が見られた。脂肪肝あるいは胆汁欝滞など比較的緩徐な毒性を示す薬物においては明確な傾向は認められなかった。肝線維化に関わる他の生物学的パスウェイとの関連性についても報告する。
  • 佐々木 永太, 飯田 あずみ, 常山 幸一, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-98
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】 抗てんかん薬カルバマゼピン (CBZ) は肝障害を引き起こすことが報告されている。我々は以前、Balb/cマウスに5日間CBZを経口投与することにより肝障害モデルを作出し、interleukin (IL)-17を初めとする免疫因子の肝障害発症への関与を報告した。本研究では、非臨床試験で頻用されるラットを用いてCBZ誘導性肝障害モデルを作出し、その発症機序においても免疫因子が関わっているか明らかにすることを目的とした。【材料/方法】 雄性F344ラットにCBZ 400 mg/kgを4日間経口投与し、5日目にCBZ 600 mg/kgを経口投与した。グルタチオン合成阻害剤であるl-buthionine-(S,R)-sulfoximine (BSO) はCBZ最終投与より2時間前に腹腔内投与した。また、肝臓中のkupffer細胞 (KC) を枯渇させるため、CBZ最終投与24時間前にgadolinium chloride (GdCl3) 10 mg/kgを静脈内投与した。CBZ最終投与3, 6および24時間後に血漿および肝臓を採取し、血漿中ALT値測定、肝病理組織検査、肝臓中カスパーゼ活性測定および免疫因子のmRNA発現量解析を行った。【結果/考察】 CBZ最終投与24時間後に顕著なALT値の上昇が認められ、小葉中心性の細胞壊死が認められた。また、肝臓中の炎症性サイトカイン (tumor necrosis factor (TNF)-α, IL-1β, およびIL-6) および抗炎症性サイトカイン (IL-10) mRNA発現量の上昇が認められた。これらのmRNA発現量の上昇はGdCl3により抑制され、同時に肝障害の程度も強く抑制された。一方で、T細胞分化マーカーのmRNA発現上昇は認められなかった。肝障害発症に伴い肝臓中カスパーゼ3活性の低下が認められたことから、アポトーシスは誘発されていないことが示唆された。以上より、F344ラットにおけるCBZ誘導性肝障害発症には主にKCを介した炎症性サイトカイン分泌が関与していることが示唆され、ラットにおいても免疫因子を介した薬物誘導性肝障害発症機序の解明が可能であることを明らかにした。
  • 西村 和彦, 平岡 真弘, 勝山 英明, 中川 博史, 松尾 三郎
    セッションID: P-99
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     Erythropoietin(EPO)は骨髄での赤血球産生を促進するホルモンであり、主に腎臓と肝臓で産生される。近年、EPOは様々な組織で細胞保護作用を持つことが報告され、種々の疾病の予防や治療へ利用が期待されている。EPO産生調節機序にはHypoxia inducible factor(HIF)が関与しており、低酸素状態は主要なEPO産生促進因子である。我々は低酸素状態に似た細胞状態がEPO産生促進作用を持つのではないかと考え、低酸素状態で変動する細胞内の酸化還元状態に着目した。低酸素状態では解糖が亢進し、細胞内の酸化還元状態は還元に傾く。そこで、代謝時に還元等量を産生する還元型基質であるソルビトールと乳酸のEPO産生への影響を検討した。HepG2細胞にソルビトール又は乳酸を添加して30分後に、NAD+、NADH、ATP量を、6時間後、EPO mRNA量及びEPO mRNA発現の調節因子hypoxia inducible factor(HIF)-1α量、および培養液中のEPO濃度を測定した。ソルビトールまたは乳酸の添加はATP量には影響しなかったが、細胞内NADH量は共に増加した。細胞内NAD+量はソルビトール添加でのみ増加したが、細胞の酸化還元状態はどちらの添加も還元に傾いた。ソルビトール添加6時間目ではEPO mRNA量、HIF-1α量、およびEPO濃度は増加したのに対して、乳酸添加では減少した。還元等量のミトコンドリアへの輸送を制限するaminooxyacetateの添加は乳酸によるEPO産生減少を防いだ。以上の結果から、ソルビトール代謝により産生する還元等量は細胞質内でのピルビン酸からの乳酸産生に利用されることがEPO産生の促進につながり、逆に乳酸代謝で産生する還元等量はミトコンドリアへ輸送されて代謝されることで、EPO産生の抑制につながっていると考えられた。
  • 富田 貴文, 岡村 早雄, 今野 芳浩
    セッションID: P-100
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】第40回日本毒性学会学術年会において、HepaRG細胞を使用したin vitro肝細胞毒性試験は、肝障害リスクを探索的に予測する評価系として有用であることを報告した。本評価系は、医薬品の研究開発において候補化合物の優先順位付け及びin vivo毒性試験で肝障害が認められた場合のメカニズム解析への活用が期待できる。今回、抗真菌剤を使用して本評価系で化合物の優先順位付けが可能か否かについて検討した。
    【方法】試験物質はケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール及びテルビナフィン塩酸塩を使用した。HepaRG細胞に試験物質を24時間処理後、主要な肝障害機序を反映する6種類のパラメータ(細胞生存率、グルタチオン量、Caspase 3/7活性、脂肪蓄積量、LDH漏出量、アルブミン分泌量)について測定した。
    【結果及び考察】HepaRG細胞では、肝細胞毒性はケトコナゾールで最も強く、次いでイトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、フルコナゾールの順であった。また、添付文書(FDA)で薬剤性肝障害リスクが黒枠警告のケトコナゾールでは、本評価系で脂肪蓄積を除く5つのパラメータで明らかな変動が認められ、強い毒性を示した。一方、ヒト臨床では肝障害はケトコナゾールで最も発現率が高く、次いでイトラコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、フルコナゾールの順であり、本評価系による化合物の順位付けと同様であった。したがって、医薬品の研究開発において、本評価系は化合物の優先順位付けとして活用が可能と考えられた。本評価系を創薬早期に活用し、薬剤性肝障害リスクが低い化合物を選択することにより、医薬品の研究開発の成功率が上がることが期待できる。
  • 楠元 久美子, 片木 淳, 長井 大地, 小枝 暁子, 長尾 卓也, 丸谷 小百合, 城村 友子, 王鞍 孝子, 松本 範人, 荻原 琢男, ...
    セッションID: P-101
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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     医薬品などの化学物質が生体に吸収された場合,肝臓は高い濃度で曝露されるとともに代謝を行う。このため非常に毒性が発現し易い臓器である。これまでも種々の動物を用い毒性の評価が試みられてきたが,種差の違いによりヒトにおける適切な毒性評価がなされなかった場合も確認されている。一方,ヒト肝細胞等を用いた評価系の検討も実施され,懸濁あるいは2次元平面培養したin vitro評価も実施されてきたが,長期間代謝能を維持した状態で培養することが難しい点などから,ヒト特有の毒性の検出も含め評価が不十分であった。そのため医薬品の中には,上市後,多くの患者に使用されることにより初めて重篤な肝障害が明らかとなり,その結果市場から撤退せざるを得ない場合や,予期せぬ健康障害が根絶できていない。そこで,医薬品等の開発では,肝障害による健康被害と経済損失を回避すべく,長期間代謝能を維持したヒト肝細胞培養系を用いた種々の毒性評価への試みが精力的に検討されている。
    これまで我々安全性評価研究会・スフェロイド分科会(クローズド・コンソーシアム)では,近年多く提案されている3次元in vitro評価法のひとつとしてヒト肝細胞スフェロイドを使用し,より早期に薬剤性肝障害の発生リスクを検出することをめざして,長期曝露による毒性評価を複数施設にて実施した。これまでに得られた有用性の確認と評価法の標準化を進めるべく,従来の2次元in vitro評価法と比較しつつ,協力企業のクローズド・コンソーシアムで検討を進めている。今回はこれら検討結果およびこれまでの活動成果を踏まえた進捗と今後の展望について,紹介する予定である。
  • A. BURBAN, N. ROUGIER, S. CAMUS, C. CHESNE, C. GUGUEN-GUILLOUZO, Y. OH ...
    セッションID: P-102
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    Hepatic cell lines are widely used by pharmaceutical companies and have a key role in drug research and development. However, their relevance as hepatic models is mostly dependent on the banking of the initial cells which is also the first source for distribution of cells with highly stable properties.
    Our aim was to set up a new strategy based on reprogramming towards stem cells of the parental HepaRG cell line, allowing establishment of a new indefinite source for differentiated HepaRG cells. We then used the “stem cell like” “Hepa-SC” to reconvert them into hepatic and other differentiation lineages.
    As the first step, stem-like Hepa-SC cells were obtained by submitting parental progenitors to mechanical forces induced by shape constraint which favoured occurrence of stemness properties, including self-renewal, plasticity and pluripotentiality. These cells were subsequently stabilized by epigenetic factors able to modulate the methylation/acetylation status, and they were expanded to produce the master and working banks.
    In a second step, we successfully demonstrated that Hepa-SC cells from the banks were able to lose their stem-like status and retrieve the hepatic lineage. This strategy has led us to obtain new cell lines called “Hepa-RP” which rapidly recover the unique characteristics of the parental cells, including a bipotent progenitor stage corresponding to a proliferative stage, and a differentiation stage leading to the organization of mature hepatocyte colonies with a polarized accumulation of F-actin at the biliary poles. Further analyses have revealed that Hepa-RP cells: i)- grow faster than HepaRG cells; ii)- express high levels of drug metabolism enzymes such as CYP3A4, as well as the glycolytic enzyme, aldolase B, and hepatic lipid metabolism enzymes such as APOA1, APOB, and APOC; iii)- exhibit functional transporter expression e.g. the canalicular MRP2 s efflux of the fluorescent MRP2-substrate, CDFA. Finally, incubation with specific substrates of CYP2B6, CYP3A4 and CYP1A2 has confirmed that the levels of these enzymes are the same in both Hepa-RP and HepaRG cells. By contrast, as expected, an analysis of Hepa-SC cells showed that these stem-like cells do not express any liver markers but expressed stem markers including OCT3/4 and Sox17.
    In conclusion, we succeeded in producing stem-like cells, Hepa-SC, which constitutes an indefinite source for establishing new Hepa-RP cell lines that preserve all main hepatic characteristics of the parental HepaRG cell line. This technology ensures the sustainability unlimited supply of this robust and valuable cell line for use in ADME and toxicology assays.
  • 岩崎 登, 杉山 慶樹, 中川 博史, 西村 和彦, 松尾 三郎
    セッションID: P-103
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    細胞はER-stressに対しUPR-apoptosisを活性化するが、時に同じeIF2α-ATF4経路を介しautophagyも活性化する。apoptosisとautophagyの発現はATF4下流のCHOP発現の有無で選別されることを既に報告した。しかし、autophagyを選択する時、細胞がATF4の発現増加を保ち、CHOP発現を抑制している機構はまだ不明である。本研究では、apoptosisまたはautophagyを誘導する種々のER-stressを用いて、eIF2α-ATF4経路をフィードバック機構で調節するGADD34のapoptosisとautophagy選択における役割を検討した。【方法】HepG2細胞に3種類のER-stress 誘導剤(autophagyのみを導くNaF、 autophagyと遅れて apoptosis導くTunicamycin [Tu]とapoptosisのみを導くthapsigargin [Tg])を処置し導いたapoptosis やautophagy の発現変化と、ER-stress sensorの経時的signal変化(0~10hr)をwestern blotting で調べ、さらにGADD34-siRNAを用いたGADD34発現抑制の上記変化に対する影響を調べた。なおHank’s液(HBSS)での飢餓培養をER-stressの対象とした。【結果】飢餓培養とは異なり、NaF、TuやTgはER-stress sensorのPERK経路を活性化したが、NaFはCHOPを発現しなかった。また、Ire1経路はTuやTgとは異なりNaFでは活性化されなかった。autophagyを活性化したNaFとTu処置細胞でのGADD34発現抑制はautophagosome形成を両薬剤でさらに増強し、apoptosisをTuで強く増加させた。 ATF4 mRNA発現は両薬剤で増加したが、CHOP発現はTuでのみ有意に増加した。【考察と結論】GADD34の発現抑制がTuによるCHOP発現とapoptosisの誘導を増強・早められたことから、GADD34はPERK経路で負のフィードバック作用を示しCHOP発現を抑えてapoptosisを抑制することが示された。一方、GADD34の発現抑制下でもNaFではCHOP発現を導かないことから、apoptosisとautophagyの選別にかかわるCHOPの発現抑制はGADD34以外の別の因子の関与が示唆された。
  • 中西 康晴, 中村 稚加, 岩崎 一秀, 鵜藤 雅裕, 山崎 浩史, 宇野 泰広
    セッションID: P-104
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景と目的】カニクイザルは進化系統樹においてヒトに近いため,安全性試験,薬物動態試験等の非臨床試験に用いられている。医薬品を経口投与した後に初回通過効果が惹起されると,血中濃度推移が非線形を示し,予期せぬ副作用発現の原因となる可能性がある。初回通過効果には,小腸および肝臓における薬物代謝酵素が関与しており,ヒトにおいて,チトクロームP450(CYP)およびUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)が,多くの薬物の代謝に関与していることが報告されている。カニクイザルの小腸および肝臓におけるCYP活性に関して報告されているが,UGT活性に関する情報は少ない。本報告では,カニクイザルの小腸UGT活性について性差,産地差および部位差について検討した。
    【方法】カンボジア産カニクイザル(3-4歳齢,雌雄各20匹,計40匹)および中国産カニクイザル(5-8歳齢,雄7匹)の小腸ミクロソームを酵素源とした。β-エストラジオールの3位および17位グルクロン酸抱合体の濃度をradio-HPLCにより,7-ヒドロキシクマリンのグルクロン酸抱合体の濃度をHPLC-UVにより測定した。産地差はカンボジアおよび中国で繁殖したカニクイザルで比較した。小腸部位におけるUGT活性は,十二指腸および空腸から回腸までを6等分した7箇所で比較した。
    【結果および考察】カンボジア産カニクイザルにおいて,β-エストラジオールの3位および17位におけるUGT活性,ならびに7-ヒドロキシクマリンのUGT活性における雌雄間の比率は,それぞれ1.0,1.0および1.1であり,明らかな性差はみられなかった。カンボジア産および中国産カニクイザルのUGT活性における比率は,それぞれ1.2,1.2および1.0であり,明らかな産地差はみられなかった。小腸部位では,何れのUGT活性も十二指腸から空腸にかけて上昇する傾向を示し,空腸から回腸にかけて減少する傾向が観察された。これらの結果を,カニクイザルに経口投与した医薬品の安全性や薬物動態を評価する上で活用する。
  • 内野 博志, 藤島 純子, 福岡 香織, 上栗 晃, 朝日 隆之, 岩切 哲平, 田淵 秀剛, 薮内 かおり, 中間 和浩, 茶谷 文雄, ...
    セッションID: P-105
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【背景】薬剤誘発性の腎障害を評価するためのバイオマーカー(BM)として血清中の尿素窒素(UN)とクレアチニン(CRN)が用いられている.これらが異常値を示すのは腎機能低下後であり,より早期に腎障害を検出できるBMが必要である.今回,尿中BMとして蛋白,アルブミン(ALB),β2-マイクログロブリン(B2M),クラステリン(CLU)およびシスタチンC(CysC)について検討した.【方法】カニクイザル雄3匹(計9匹)に近位尿細管のS1およびS2部位を障害するゲンタマイシン(GM)の40?mg/kg/日を1週間皮下,S3部位を障害するシスプラチン(CSP)の3?mg/kgを単回静脈内,糸球体を障害するピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)の60?mg/kgを単回静脈内投与し,投与0,3および6日目に尿(2時間新鮮尿および16時間蓄尿)を,また,投与1,4および7日目(剖検日)に血清を採取した.自動分析装置を用いて血清中のUNとCRN,尿中の蛋白,ALBおよびB2MならびにELISA法でCLUとCysCを測定した.【結果】GM群では投与0日目の新鮮尿で蛋白,ALBおよびB2Mの増加,投与6日目では全項目に最大の増加がみられた.UNとCRNは投与7日目のみに増加がみられた.腎臓の病理組織学的検査では尿細管に好塩基性変化,変性・壊死,硝子円柱,硝子滴および単核細胞浸潤がみられた.CSP群の新鮮尿では投与0日目に蛋白およびALBの増加が,6日目にはB2MとCLUに最大の増加が,UNとCRNは投与4日目から増加がみられた.尿細管に好塩基性変化,細胞性/硝子性円柱,単核細胞浸潤がみられたが,GM群でみられた変性・壊死や硝子滴はなかった.PAN群では投与0日目の新鮮尿と蓄尿でそれぞれALBとCLUの軽度な増加がみられたが,病理組織学的変化はなかった.【結論】尿中BMは血清中のUNやCRNよりも早い時期に変化を示した.各腎障害惹起物質の作用部位は異なるが,サルにおける腎障害の早期検出には,自動分析装置を用いた尿中ALBの測定が有用と考えられた.
  • 吉川 哲也, 平山 知子, 加納 佳恵, 松下 大輔, 寺下 直子, 伴 昌明, 出口 芳樹, 山本 隆, 鮫島 秀暢, 永田 良一
    セッションID: P-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】カニクイザルを用いた毒性試験では通常3~7歳の動物を使用するが,近年幼若動物を用いた毒性評価も行われるようになってきた.しかしカニクイザルでの毒性試験においては成熟動物に比べ幼若動物の背景値は不足しており,心電図検査において発育による変化を詳細に検討した報告は少ない.そこで当研究所で実施した幼若カニクイザルを用いた毒性試験の馴化期間中の心電図測定値を集計し,成熟動物の背景値との比較を行った.【材料・方法】2010~2012年の2年間に実施した毒性試験での中国産カニクイザルの3歳未満の幼若動物(0歳:37例,1歳:41例,2歳:31例)および成熟動物(3~7歳:761例)を対象とした.心電図は動物用心電計(カーディサニーα6000AX-D,フクダ エム・イー工業)を介して,ECG Processor(SP2000,ソフトロン)で測定し,第II誘導の8秒間の連続波形を加算平均させた波形を用いて,心拍数(bpm),PR間隔(ms),QRS時間(ms),QT間隔(ms)およびQTc(Bazettの式で補正)を解析した.なお測定は覚醒・拘束下[0,1,および2歳齢]あるいは塩酸ケタミンによる麻酔下[3,6および12カ月齢]にて測定し,データの集計は測定条件毎に行った.【結果・考察】覚醒・拘束下での測定では,成熟動物と比べ1歳齢でPR間隔とQRS時間が低値を示した.QRS時間は成長に伴い成熟動物の値に近づいていったがPR時間は3歳齢まで低値のままであった.心拍数,QTおよびQTcは幼若動物と成熟動物に差はなかった.麻酔下での測定では,成熟動物と比べ3,6,12カ月齢でPR間隔とQRS時間の低値および心拍数の高値がみられたが,月齢差はなかった.QTcは3カ月齢で高値を示したが,6カ月齢以降では成熟動物と同程度の値となった.今回の結果からカニクイザルの心電図における幼若動物と成熟動物の違いが明らかとなった.
  • 和田 聰, 佐々木 豊, 根岸 剛, 小林 大礎, 黒滝 哲郎, 大西 康之, 平塚 秀明
    セッションID: P-107
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】 
    硝子体内投与は,網膜局所での高濃度の薬物暴露を目的とした投与経路であり,加齢性黄斑変性などの網膜疾患に対する治療薬では一般的に使用されている。これらの薬剤の前臨床試験では,黄斑を有するなどヒトと類似した眼球構造を有するカニクイザルを用いることが多い。しかし,カニクイザルの硝子体内投与に関する基礎的なデータについては,報告は極めて少ない。今回,カニクイザルの硝子体への最大投与可能量について検討を行ったため,詳細を報告する。
    【方法】
    実験1:物理的に投与可能な最大液量を確認するため,カニクイザルの硝子体に墨汁(50,75及び100μL)を投与し,投与部位からの漏れが無いかを検討した。また前房水(50 μL)を吸引後に墨汁(100μL)を投与した場合についても検討した。
    実験2:眼球の障害を引き起こさない最大投与液量を確認するため,カニクイザルの硝子体に生理食塩液(50及び75μL)を,また前房水(50 μL)吸引後に生理食塩液(100 μL)を投与した。投与前,投与後1,4,7及び14日にスリットランプおよび倒像鏡を用いた眼科学的検査,網膜電位図検査(ISCEV ERG),眼圧測定を,投与後15日に剖検を実施した。また眼球についてのHE染色標本を作製し,病理組織学的検査を実施した。
    【結果】
    実験1: 硝子体内の投与液量が100 μLの場合は,投与部位から投与液の漏出が見られたが,75及び50 μL投与では漏出は見られなかった。
    実験2:眼圧の上昇が50 μL及び75μLで認められ,それぞれ最大40 mmHg(約5分間)および70 mmHg(約15分間)を示した.しかしながら,一過性の変化であり,いずれの検査においても網膜への影響を示唆する変化は認められなかった.一方,前房水吸引後に投与した個体では,前房水吸引後に一過性の眼圧低下が認められたものの,網膜への影響を示唆する変化は認められなかった.
    【考察】カニクイザルの硝子体への最大投与可能量は75 μLであり,前房水(50 μL)を吸引した場合は100 μLまで投与可能であった.いずれの投与方法でも網膜への影響はないものと考えられた。
  • 平嶋 昂, 落合 陽介, 坂井 勝彦, 和田 聰, 大西 康之, 平塚 秀明
    セッションID: P-108
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】医薬品開発において、カニクイザルにおける中枢神経系、特に運動性や行動変化に及ぼす影響の評価は,主に機能観察総合評価法(FOB法)に従って実施される。しかし、カニクイザルの場合、観察者に対する警戒心により運動性や行動異常がマスクされる可能性があり,観察者間で評価が異なる恐れがある。我々は、薬剤の影響による運動性や行動変化に及ぼす影響を間接的かつ客観的に評価するためのツールとして、携帯歩行計「見守りゲイト」に着目し、その有用性について検討した。
    【方法】見守りゲイトは、内蔵された3軸加速度センサーにより動作に伴って生じた加速度を記録するデバイスである。今回,見守りゲイトをカニクイザルの背中に背負わせ、中枢神経作用薬であるメタンフェタミンおよび抑制薬であるジアゼパムを投与し、約24時間の活動量および歩行パターンの変化について記録・評価した。
    【結果・考察】
    メタンフェタミンおよびジアゼパム投与後24時間の活動量は、媒体投与後24時間の活動量と比較し、それぞれ約7倍および約1/14倍を示した。ジアゼパム投与時の歩行パターンや動作を詳細に解析すると、投与後約1時間より歩調リズムが低下し、約2~3時間において歩行動作の抑制および座位状態における前後へのふらつきが認められた。また、投与後約4~9時間では歩行時の左右へのよろめきが観察された。投与後約4時間前後の歩行を詳細に解析すると、左右のステップの加速度変化に規則性がなく、加速度変化も小さいことから一歩の踏み出しに力が入っていないことが推測された。以上のことから、見守りゲイトは,カニクイザルの運動性や行動変化を客観的に評価するツールとなり得る可能性が示唆された。
  • Satoru ONEDA, Narine LALAYEVA, Rebecca WATSON, Nathan YEE, Norbert MAK ...
    セッションID: P-109
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    Humoral Immunity and Lymphocyte Immunophenotyping Control Background Data in Mainland
    Lymphocyte immunophenotyping (LIP) of peripheral blood and T-cell dependent antibody response (TDAR) data from Mainland (ML, China and Cambodia) and Indonesian Island (IL) cynomolgus monkey infants (from 1 to 12-month old, the control groups from 10 to 14 pre and postnatal development studies) were retrospectively analyzed and compared for use as historical background data.
    Blood samples for LIP were collected throughout the postnatal period and analyzed for total CD3+ T cells, CD3+CD4+ Helper T cells, CD3+CD8+ Cytotoxic T cells, CD3-CD20+ B cells, and CD3-CD16+ or CD3-CD159a+ Natural Killer (NK) cells. To evaluate TDAR, keyhole limpet hemocyanin (KLH) was injected twice into the infants, and primary and secondary IgM and IgG levels in serum were measured by ELISA.
    IL monkeys had higher absolute counts and relative percentages of NK cell populations, and lower circulating B cell numbers when compared to ML monkeys. IgM elevated rapidly after the 1st and 2nd KLH doses, with peak IgM concentrations in IL 24-27% lower than that observed in ML. IgG elevated gradually after the 1st dose and increased rapidly after the 2nd challenge. The highest IgG levels after primary KLH challenge in IL was 24% lower than ML. After the 2nd KLH dose, the highest IgG in IL was 39% higher than ML. The trends of IgM and IgG responses were similar between IL and ML.
    In conclusion, there were distinct differences in NK and B-cell populations and IgM/IgG responses between infants of ML and IL origin, suggesting origin-specific differences in lymphocyte development and function.
  • Roy FORSTER, Caroline BOUCHEZ, Frederic GERVAIS, Renaud FLEURANCE, Ber ...
    セッションID: P-110
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    Although a T-dependent antibody response (TDAR) assay is generally recommended as the first-line immune function assay in nonclinical immunotoxicity evaluation, second-line assays such as delayed-type hypersensitivity (DTH) to measure cell-mediated responses can provide helpful additional information. In this study, male Cynomolgus monkeys were injected intramuscularly either once or twice with 1 mg Keyhole Limpet Hemocyanin (KLH) or twice with a commercially available tetanus vaccine (40 IU tetanus toxoid + 0.06 mg aluminum hydroxide). All animals were subsequently challenged by intradermal injections of the same antigen or aluminum hydroxide after 4, 6 and 8 weeks. Clinical reactions at the injection sites were scored 24, 48 and 72 h post challenge. Skin biopsies were taken on completion of the observation period after each challenge for standard histological examination and immunolabeling using CD3 (T lymphocytes), CD19 (B lymphocytes) and CD68 (macrophages) antibodies. Tetanus toxoid induced stronger clinical reactions than KLH, whereas aluminum hydroxide induced no clinical reaction. Perivascular mononuclear cell infiltrates, a histopathological finding consistent with a DTH reaction, were seen after all challenges with tetanus toxoid or KLH, but not with aluminum hydroxide. Immunohistochemistry evidenced the presence of T lymphocytes and macrophages within these infiltrates. These results suggest that tetanus toxoid adjuvanted with aluminum hydroxide can induce a consistent DTH response for use as a model of cell-mediated response in Cynomolgus monkeys.
  • 赤川 唯, 遠藤 和守, 根岸 剛, 田向 祐介, 山田 直明, 和田 聰, 石井 宏幸, 大西 康之, 平塚 秀明
    セッションID: P-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    欧米ではミニブタは実験動物として広く普及しており、前臨床試験においてもイヌおよびサルと並ぶ第三の非げっ歯類として使用されている。一方、本邦でのミニブタの使用率は少数であるが、欧米の研究に刺激され、その有用性が見直されてきている。Göttingen系ミニブタは医薬品の前臨床試験で最も使用されている品種であり、国内ではデンマーク産ミニブタしか入手できなかったが、昨年度から国内の生産が始まった。今回、国内産とデンマーク産のGöttingen系ミニブタを用いて、安全性試験における各種検査データを比較検討したため、詳細を報告する。
    【方法】
    国内産およびデンマーク産ミニブタ(入荷時3~4ヵ月齢、雌雄)を用いて、体重測定、各月齢で血液及び血液生化学的検査(無麻酔下)、尿検査を、また定期的に眼検査、心電図測定(保定式およびホルター)、血圧測定および体温測定を実施した。試験終了時に剖検を行い、臓器重量測定および病理学的検査を実施した。
    【結果・考察】
    体重の増加はいずれの産地でも月に1kg前後であった。血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、眼科学的検査、心電図測定、血圧測定および体温測定において、国内産とデンマーク産に明らかな差は認められなかった。また、デンマーク産ミニブタに特徴的な心拍数変動(ヒトの入室でも変動しないが、給餌による興奮は4時間ほど戻らない)は国内産ミニブタでも同様の傾向を示した。さらに、本会にて現在実施中である病理学的検査結果の詳細について報告する。
  • 長瀬 孝彦, 久保田 友成, 鈴木 信介, 今泉 隆人, 安藤 次郎, 加藤 英男, 太田 隆雄
    セッションID: P-112
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
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    【目的】今回、我々は当施設で実施した一般毒性試験における血液及び血液生化学的検査値を集積し、採血条件が検査値に及ぼす影響について比較検討した。【方法】2010~2013年に実施した試験のうち、6~10カ月齢の雄性Göttingen minipigの各検査値を採血条件別(覚醒下、麻酔下及びカニュレーション採血)に集積した。【結果】血液検査:覚醒下採血では麻酔下及びカニュレーション採血と比べてRBC、HGB、HCTの高値とPLTの低値がみられた。カニュレーション採血では、覚醒下及び無麻酔下採血と比べてFbgの高値がみられた。血液生化学的検査:覚醒下採血では麻酔下及びカニュレーション採血と比べてALP、Kの高値が、麻酔下採血と比べてUN、Creの低値がみられた。また、覚醒下及び麻酔下採血ではカニュレーション採血と比べてCKの高値がみられ、そのばらつきも大きかった。【まとめ】採血方法により検査値に相違がみられた。すなわち、最も生理的安静状態に近いカニュレーション採血と比べて、麻酔下採血では針の刺入の影響(血液生化学検査)がみられ、これに加えて覚醒下採血では動物の保定による影響と採血時の体動による影響(血液学的検査)が認められた。このような採血方法による検査値への影響は、ミニブタの採血時の体動及び保定の影響が大きいことが判明したが、一般毒性試験では多くの場合、覚醒下で実施されている。我々は、覚醒下採血による検査値への影響を軽減する目的で、ハンドリングよる馴化方法について検討しており、ハンドリング馴化を実施していない検査値との比較検討についても報告する予定である。
  • 鈴木 勇司, 佐藤 貯雄, 鈴木 信介, 清水 憲次, 豊吉 亨, 太田 隆雄
    セッションID: P-113
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/26
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】近年、ミニブタを実験動物として使用できる環境が整いつつあり、安全性、薬理、医療機器等の多方面にわたってその有用性が検討されている。しかし、心電図解析上の特徴等に関する研究はまだ十分に行われているとは言えない。今回、一般毒性試験や安全性薬理試験等のための背景データとして1.吊り下げ保定による心電図測定・解析に関する基礎データ及び2.無麻酔無拘束下での連続心電図を収集し、ビーグル犬と比較した。【方法1】ミニブタ(Göttingen雄60例、雌50例)を保定幕に吊り下げ固定した状態で動物用心電計を用いて標準四肢誘導を記録した。第Ⅱ誘導を用いて心拍数、PR間隔、QRS時間、QT間隔、補正QTの算出及び心電図波形の分類を行い、ビーグル犬と比較した。【結果1】標準四肢誘導では心臓の電気軸が陰性側に傾いており、また第Ⅱ誘導におけるQRS波形では大きいS波(rS型、RS型)が多く観察された。イヌで特徴的に観察される呼吸性不整脈は、ミニブタでは少数例で僅かに観察された。また、イヌで観察されている房室ブロックや期外収縮は観察されなかった。【方法2】ミニブタ(Göttingen雄20例、雌6例)に測定装置を装着・埋植し、連続24時間の無麻酔無拘束下での心電図を記録した。記録された波形から心拍数、PR間隔、QRS時間、QT間隔、補正QTを算出し、不整脈(房室ブロック、期外収縮等)の発生の有無を確認した。また、観察者の入退室や観察行為に対する反応性についても検討した。【結果2】24時間の観察中、1例で第Ⅱ度房室ブロックが頻回観察された。その他の動物でも、不整脈が1回~数回観察される例も見られたが、ビーグル犬で報告されている発生数よりも少ないものであった。心拍数等の日内リズムはビーグル犬ほど明確ではなかった。また、入退室等の観察者に対する心拍数の反応性はビーグル犬に比べて少なかった。
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