東洋音楽研究
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2018 巻, 83 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • ―ベトナム中部高原コントゥム省ダクヴォク村の事例から―
    柳沢 英輔, 桜井 真樹子, 櫻井 直樹
    2018 年2018 巻83 号 p. 1-24
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     本稿は、ベトナム中部高原の先住少数民族であるバナ族のゴング音楽の音階とその演奏形式について、民族学、音響学、音楽学の視点から明らかにするものである。バナ族は、儀礼・祭礼の際に打面が平らな平ゴングと打面中央に丸い突起のある瘤(こぶ)付きゴングの両方を用いる合奏を行う。本稿では、ダクヴォク村の「Ma Chay(葬礼)」と「Đâm Trâu(水牛供犠)」という2つの儀礼における演奏曲を分析事例として取り上げる。
     各ゴングの周波数スペクトルを分析した結果、平ゴングは第2部分音が基音で、第4部分音がその1オクターブ上にあり、こぶ付きゴングは第2部分音が基音でその1オクターブ下に第1部分音があることが分かった。バナ族のゴングセットにはタリア・ブロンとタリア・ブローンの2種類の音階が含まれている。また平ゴング2と7は2.0 倍に近い1次元振動の1オクターブの関係に、平ゴング1と6、4と9、5と10は2.06倍に近い2次元振動の1オクターブの関係になっており、2つの異なるオクターブが共存していることが明らかとなった。さらに平ゴング1と4、2と5、3と6、4と7、5と8、6と9、7と10が完全5度の関係にある。また平ゴング1と2、2と3、4と5、5と8、6と9の5組の組み合わせで多く和音を構成しているが、1と2、2と3、4と5の間には共通の部分音がない。
     ゴングの楽曲には旋律中心の曲(葬礼曲)とリズム中心の曲(水牛供犠曲)がある。前者は旋律の展開を曲の表現として重きをおいている。後者は旋律自体はそれほど複雑ではないが、たくさんの音が和音となって重なっているのと、太鼓のリズム・パターンによって形式が分かれている。またゴングの楽曲には形式があることが分かった。
  • 蒲生 郷昭
    2018 年2018 巻83 号 p. 25-37
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     元代中国の総合舞台芸術「元曲(雑劇)」が日本の能楽に影響を与えた、とする説が唱えられたことがある。今日では完全に否定されているが、能楽ないし日中文化交流の研究史に見るひとこまであった。本稿では、その説の発生から終焉までの経過をたどる。
     このことを最初に主張したのは、おそらく江戸時代中期の儒学者であり政治家でもあった新井白石である。宝永三年成立と考えられるその著『俳優考』において、元代のころ日中相互の人的交流が盛んだった、そのなかで田楽や猿楽の人たちが元曲にならって作詞し演技した、猿楽も元曲の形にならったものである、という見解を示した。やはり儒学者だった荻生徂徠や太宰春台も、同様のことを述べている。
     近代になって、重野安繹と小中村清矩が、それぞれにこの説の存在を指摘した。重野が消極的ながらも否定したのに対して、小中村は『俳優考』のその部分を引用するのみで肯定も否定もしていない。一九〇四年に発足した能楽文学研究会は、課題の第二として「比較研究」を設定し、そこに示した七項目の筆頭が「元劇支那雑劇との比較」だった。以後、肯定または否定の立場から、何人かの人がこの問題をめぐって発言することになる。
     最初に本格的に否定したのは津田左右吉で、一九一一年のことだった。能楽が元曲の影響を受けたことを示す証拠は存在しないという主張で、高野辰之がそれにつづく。ほかにも、その説の存在に言及さえしない、という態度によって、間接的に否定した人があった。代表は能勢朝次であり、一九三八年の『能楽源流考』で元曲影響説を完全に無視したのである。その後も、両者の関係を肯定する見解が述べられるいっぽうで、能勢と同じ態度をとる後継者が少なくなく、やがて一九六〇年ごろには、能楽の分野ではその説はほぼ完全に姿を消す。けれども音楽学分野では、なおしばらくはその残響、余韻がつづいた。
  • ―独立後の文化政策とワールド・ミュージックが与えた影響―
    古謝 麻耶子
    2018 年2018 巻83 号 p. 39-51
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     舞踊や寸劇などを伴いながら木琴ティンビラの大合奏を行うショピ民族の芸能ンゴドは、植民地時代より入植者から賞賛され、民族音楽学や人類学の分野などでも着目されてきた。一方、木琴一〜二台と三種の太鼓の演奏で踊られる芸能ンガランガの方は、ショピのコミュニティ内で盛んに踊られ、独立後のティンビラの演奏形態の多様化に直接影響しているにも関わらず、これまで研究対象とされてこなかった。
     本稿では、マプト市のショピ・コミュニティにおけるンガランガに焦点を当てその変容を追うことで、現代的なティンビラ演奏の展開について明らかにした。また、社会主義時代の文化政策やワールド・ミュージックの流行などの社会的な動向がショピのティンビラ音楽に与えた影響については、国立歌舞団の音楽監督を務めながら、ティンビラの演奏活動や創作活動で幅広く活躍したエドワルド・デュラオのライフヒストリーから考察していった。本稿からは以下のことが明らかになった。
     植民地時代に形成されたマプト市のショピ・コミュニティでは、ンゴドの楽団は一つしか結成されなかったのに対し、ンガランガ団は多数結成された。また、独立後の文化政策の影響で、舞台芸能としてのンガランガが楽器ティンビラとともに全国の舞踊劇団に普及していった。
     一九八〇年代後半ごろから、エドワルド・デュラオは、ンガランガの演奏を主体に海外のジャズミュージシャンとセッションを行うなどして、新たなティンビラの演奏形態を生み出していった。その試みはショピの若者の心をとらえ、新しい世代に引き継がれた。本来は複数形の木琴に対してのみ使われていた「ティンビラ」という語は、その演奏形態の多様化と普及によって、一台の木琴を指す際にも使われるようになった。ショピの奏者らの多くはティンビラが指すものが曖昧であることを利用して、ジャンルにとらわれない自由な表現を模索している。
  • 柘植 元一
    2018 年2018 巻83 号 p. 53-64
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     『カーブース・ナーマ』はズィヤール朝の王カイ・カーウースによって書かれたペルシア語の教訓書である。その第三十六章「楽師について」は十一世紀のペルシア音楽と楽師の実態を探る上で貴重な資料である。だが、今日広く流布している英訳とその和訳は、「楽師について」の記述を正確に伝えているかどうか疑わしい。それは単に音楽用語の誤訳にとどまらず、底本の選択にも問題がある。『カーブース・ナーマ』の原本は現存しないが、少なくとも五十二点の写本が存在する。本稿は現時点で入手可能な七点および三点の校訂本を、校合した結果の覚え書きである。
     写本および校訂本の間でとりわけ異同が甚だしいのは、聴衆の気質の四つのタイプ(多血質、胆汁質、粘液質、憂鬱質)に応じて、ウード(古式ウード)のいずれの弦を多く奏でれば効果的かを説いた箇所である。ここで問題となるのが、四弦の名称とその順序、および四気質との対応関係である。
     ファティヒ本(一二二七年、現存する最古の写本)、ライデン本(一三一九年)、大英博本①(一四五七)およびヒュスニュ・パシャ本(一六五〇)には、多血質―ドルード(ドグーナ)弦、胆汁質―ズィール弦、憂鬱質―セター弦、粘液質―バム弦とある。これらの古い写本の記述がおそらく原本の記述を踏襲していると推定される。レヴィ本に記された、多血質―バム、胆汁質―ズィール、憂鬱質―セターラ、粘液質―バムという記述は、比較的新しい写本に見られる誤記である。
     この比較対照から図らずもウードの古い弦名がほぼ明らかになった。すなわち、高音弦から順にズィール、ドルード(ドグーナ)、セター、バムと呼ばれていたと思われる。レヴィが自身の校合作業の結果、ライデン本が善本であることを認めながら、その正しい音楽用語の記述を自身の校訂本や英訳に反映させていないのは、きわめて不可解である。
  • 仲辻 真帆
    2018 年2018 巻83 号 p. 65-85
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     本稿は、『音楽研究』に掲載された作曲関連記事に着眼し、特に一九三〇年代の創作領域に照射したものである。『音楽研究』は、一九三五(昭和一〇)年から一九三八年にかけて出版された季刊雑誌である。共益商社書店から、全一二号が発行された。作曲や音楽評論をはじめとして各領域で様々な試行や議論がなされた一九三〇年代は、日本における西洋音楽史を考究するうえで重要な時期に相当し、なかでも『音楽研究』は当時の楽壇を如実に映し出すものとして注目に値する。本稿では、『音楽研究』所収の作曲関連記事を抽出して網羅的な一覧表を作成するとともに、諸論考を検討することで創作領域において何が問題となり、どのような取り組みがなされていたのかを明らかにする。
     『音楽研究』の特徴の一つとして、当時の最先端の作曲家に注目して研究を試みたことが挙げられる。P.ヒンデミット、A.シェーンベルク、B.バルトークらの作品や著述について、日本で研究が進んでいなかった一九三〇年代に訳出や考察が進められた。また、K.プリングスハイムが『音楽研究』に寄稿した文章は、「日本的作曲」を巡る論争において核心にふれる論考であったことも確認する。さらに、作曲家と声楽家の共通の課題である日本語の扱い方を検討した論考についても記述する。これまでほとんど知られてこなかった東京音楽学校における「国語発声法研究会」(音声研究部)での協議内容も『音楽研究』に掲載されており、『新訂尋常小学唱歌』を対象とした同会の研究成果についても述べる。
     本稿では、『音楽研究』が重要な論考を掲載し、先駆的な役割を果たしていたことを論証する。そして、外国の主要な動向を吟味し、日本の社会状況に鑑みて音楽諸相を考察しようとした『音楽研究』掲載論考を通して、当時の課題や取り組みを具体的に提示する。
  • ―復興者と演奏レパートリーの観点から―
    三代 真理子
    2018 年2018 巻83 号 p. 87-100
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
     一七世紀以降、中東欧ユダヤ人社会で演奏されてきたクレズマー音楽は、二〇世紀半ばに一旦衰退したが、米国における一九七〇年代半ば以降の「復興」を経て、現在ではワールドミュージックの一ジャンルに発展している。本稿では、このクレズマー音楽の発展の契機となった「復興期」(一九七六年〜一九九〇年代中頃)に焦点を当て、そのプロセスと意義を考察する。
     クレズマー音楽の「復興」に関する先行研究は、復興現象の社会学的分析や、音楽家や演奏活動に関する個別的分析に留まっており復興期における音楽自体が変化したプロセスやその意義については十分に考察されていない。そこで本稿は、主要な六つの復興バンドとその主要メンバーの復興に対する考え方と演奏レパートリーを分析し、復興期の音楽的変容とその要因について考察し、復興のプロセスを明らかにした。演奏レパートリーについては復興期に各バンドが演奏した二七八曲を対象に分析した。
     その結果、クレズマー音楽の「復興」は、米国のフォークリバイバルの流れの中で、「自分たちの先祖の音楽」を発掘したユダヤ系アメリカ人の若者により始められ、そのプロセスは過去の音楽の伝統様式の発掘・再生と、再生された伝統様式に基く音楽創造と領域拡大という流れで進行した。また「イディッシュ性」と「コンサート音楽化」という二つの要因が音楽の変化を方向づけていることを明らかにした。前半期の復興は、ユダヤ・アイデンティティを主な動機とし、発掘したレコードの様式に則った忠実な演奏が再現された。後半期では、ダンス音楽であったクレズマー音楽の「コンサート音楽化」が明確に意識されるようになり、過去の演奏からクレズマーの伝統的様式を汲み出し、これを用いて新たな音楽の創造が試みられるようになった。そしてこの音楽創造において各バンドは他音楽ジャンルのリズムや和声の導入、電子楽器やワールドミュージックの要素の使用等、様々な方向性を生み出し、この動きが現代クレズマー音楽の多様性に繋がっていると考えられる。
  • 豊永 聡美
    2018 年2018 巻83 号 p. 101-105
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 茂手木 潔子
    2018 年2018 巻83 号 p. 106-111
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 蒲生 美津子
    2018 年2018 巻83 号 p. 112-116
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 水野 信男
    2018 年2018 巻83 号 p. 117-120
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 出口 実紀
    2018 年2018 巻83 号 p. 121-124
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 三島 暁子
    2018 年2018 巻83 号 p. 125-128
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 樋口 昭
    2018 年2018 巻83 号 p. 129-132
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 武内 恵美子
    2018 年2018 巻83 号 p. 133-136
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 森田 都紀
    2018 年2018 巻83 号 p. 137-139
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
  • 志村 哲
    2018 年2018 巻83 号 p. 140-142
    発行日: 2018/08/31
    公開日: 2026/05/22
    ジャーナル フリー
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