東洋音楽研究
Online ISSN : 1884-0272
Print ISSN : 0039-3851
ISSN-L : 0039-3851
2019 巻, 84 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 日本における東南アジア芸術上演イベントの事例から
    福岡 まどか
    2019 年2019 巻84 号 p. 1-22
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     この論考は、日本における東南アジア芸術上演のイベントの事例をとおして、こんにちの芸術上演のあり方が他者表象から上演者や主催者を含む相互の対話や共同創作の場へと変化しつつある状況を考察したものである。一九八〇年代までは、日本における東南アジア芸術の上演は、宮廷芸術や古典芸術などの伝統的なジャンルに焦点を当てたものが比較的多かった。これらのイベントは、多くの人々が東南アジアの芸術について知り、アジアの隣人の文化について理解を深める機会であった。こうした傾向は近年少しずつ変化している。伝統的な芸術の様式美に焦点を当てるのみならず、現代芸術に焦点を当てるイベントも増え、また日本と東南アジアの芸術家たちの対話や共同創作のイベントが増えつつある。
     東南アジアの国々との国際交流が深まったことに加えて、この背景にはいくつかの要因が見られる。具体的には(一)新世代あるいはポスト伝統的芸術家の活躍、(二)現代芸術への関心の高まりの二点を指摘した。
     この論考では、二つの事例を挙げながら、対話や共同創作のあり方を検討した。
     第一の事例は、東京の座・高円寺におけるアジアの芸術家たちの実験的共同創作プロジェクト「ひとつの机とふたつの椅子」である。アジアの各国から芸術家たちが集まり、一週間から一〇日ほどの共同創作を行うイベントである。このプロジェクトは様々な文化的境界を超えて、実験的創作活動の場を創り出す試みである。
      第二の事例は、神戸・新長田における「下町芸術祭」と題するイベントの二〇一七年の事例である。インドネシアからコンテンポラリーダンスのグループが来日し、住民参加型のダンス創作と上演を行った。このイベントは、共同で新たなダンスの作品を創り出しそれを地域住民も交えて地域の商店街で上演することを通して、新長田という地域の活性化を目指す地域振興の芸術イベントの試みである。
     今後の研究課題として、共同創作や対話の場への積極的な参加と、イベント後の追跡調査の必要性を指摘した。
  • ―越境の音楽・民族・心性―
    上畑 史
    2019 年2019 巻84 号 p. 23-43
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     本稿は、一九九〇年代初頭にバルカン半島に位置するセルビア共和国で興隆した民俗調のポピュラー音楽「ターボフォーク」において、二〇〇〇年に入り顕著になる「バルカン」を理想化する楽曲を考察対象とし、こうした作品が生じた要因を、同国の音楽領域における地域と民族との関係、並びにその関係に変化をもたらしてきた社会状況に着目し、解明するものである。
     地域を理想化するという手法は、一九四〇年代以降、セルビアが一構成国だった多民族国家の旧ユーゴスラヴィア(一九四三〜九一年)において慣例化されてきた。結果的に、そのような地域主義は、民俗音楽における民族的帰属を明確化するとともに、多民族に跨って共有されてきた民俗音楽を周縁化することに繋がった。
     こうした前提を踏まえ、本稿の前半では、一九四〇年代から現代にかけて、セルビアの民俗調の大衆音楽/ポピュラー音楽に取り込まれてきた民俗音楽の地域的=民族的帰属が、「旧ユーゴスラヴィアの個々の地域・民族」、「旧ユーゴスラヴィアの複数の地域・民族」、「バルカンの複数の地域・民族」と変化していったこと、また「複数の地域・民族」的な音楽要素としては、旧ユーゴ時代のセルビアで周縁化されてきた、オリエンタル(トルコ/アラブ的)な音楽要素が採用されたことを明らかにしている。
     このように汎バルカン的な傾向を強めていく音楽面と同様に、二〇〇〇年以降のターボフォークの歌詞では、理想化された「バルカン」が登場するようになる。しかし、本稿の後半で論じるように、この「バルカン」とは、実際には「旧ユーゴスラヴィア」の代替物であり、民族紛争によって失われた同国への愛国的な心情が、望郷心(ノスタルジア)という形で投影された空間であることが、ターボフォーク業界関係者への聞き取り調査と、同音楽が生じた九〇年代以降のセルビア社会の激変および民衆の反応の観察によって判明した。
  • 根本 千聡
    2019 年2019 巻84 号 p. 45-65
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     本研究は、平安時代末から鎌倉時代にかけての「只拍子」と「楽拍子」の実態を解明することを目的とする。本論では、藤原孝道の楽書において、「只拍子」と「楽拍子」と併せて言及される「中拍子」と「早弾き」という語について扱った。
     第一項は本研究の概説となる。
     第二項、第三項では孝道の略歴と人物像について概観した後、孝道の著した楽書『残夜抄』と『雑秘別録』について言及した。この二書にのみ見られる「中拍子」という語は、「只拍子」や「楽拍子」と関係があり、さらに「早弾き」という奏法ともかかわりをもっていたことが記されている。また、大神基政女夕霧の流派によって演奏されていたことも述べられている。
     第四項から第六項にかけては、夕霧が笛と箏の演奏に通じていたことと、笛の経験に基づく特殊な箏の演奏を行なっていたこと、そしてその演奏法の実在が古楽譜の分析等から判明することについて述べた。箏譜『類箏治要』に載る「早様」の演奏法が夕霧流の「早弾き」に比定され、また、『基政笛譜』の演奏法とも合致することを検証した。
     第七項、第八項は、夕霧流の「早弾き」が「七言の楽」と呼ばれていたことを確認し、さらに「七言の楽」が、講式において唱えられていた極楽声歌と関係し得ることを指摘した。
     第九項はまとめとなる。本論の検証を通して、『類箏治要』の一部の演奏法が夕霧流の演奏法と合致することが確認された。夕霧流の演奏法である「中拍子」や「早弾き」は、「只拍子」、「楽拍子」と密接にかかわる奏法であるため、本論の成果から、これらの語の意味を解明する上での有益な情報を得ることが期待される。今後の課題としては、歌謡との関係をさらに調査することと、なぜ夕霧の演奏法が『類箏治要』にだけ残されているのかということを主眼に追跡調査を行ないたい。
  • ―岡本文弥著『新内曲符考』の考察と五線譜化―
    林 一行
    2019 年2019 巻84 号 p. 67-92
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     本論文は、浄瑠璃の一流派である新内節の音楽構造を解明するための手段として、「曲符」を用いた音楽分析が有効な手法であるということを示すものである。
     「曲符」とは、新内節演奏家、岡本文弥の著書『新内曲符考』(一九七二)で示された用語である。同書の中で曲符の定義は明確には行われてないが、扉表紙の記述からは概ね新内節の文字譜のことを指しているようにも読める。文字譜は音楽情報を記すために考案された文字のことであり、新内節においては正本(台本)にメモ書きのように書き込まれて、どの部分をどのように演奏するかについて記した。
     岡本文弥は『新内曲符考』において、江戸明治期に出版された正本を調べ、記入されている文字譜の示す意味を考察した上で、その演奏例を別売のカセットテープに録音して残した。本研究では、『新内曲符考』を新内節の音楽構造を解明するための重要資料であると捉え、『新内曲符考』の考察を行い、「曲符」の詳細な定義について再考した。
     考察の結果、岡本文弥は多数の文字譜の中でも、類型性のある旋律を示す文字譜だけを「曲符」と捉え重視し、その「曲符」を利用して新内節を音楽的に研究、説明しようとしていることがわかった。
     従来の文字譜は意味内容が時代によって異なるなど、明確な伝承が行われていないため、岡本文弥は文字譜の示す意味を限定したり、新しい名称の「曲符」を考案したりして、ひとつの「曲符」がひとつの旋律を指し示すように整理した。言い換えると「曲符」は旋律の名称とも言える。『新内曲符考』は「曲符」を利用した音楽分析の土台を作り上げた。
     筆者は、曲符の演奏例を五線譜に採譜した。そして「曲符」を用いた音楽分析の具体的な手法を考案した。その手法は、『新内曲符考』の記述を手がかりに、岡本文弥の演奏した曲符と対象の新内節の演奏とを比べて、曲符を当てはめていくというものである。
     この手法を用いることで、新内節の代表曲《若木仇名草》クドキの旋律について七割から九割程度、説明することができる。
  • 金城 厚
    2019 年2019 巻84 号 p. 93-107
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     〈かぎやで風節〉〈花風節〉〈稲まづん節〉は琉球古典音楽の代表曲として知られる。〈かぎやで風節〉は祝儀に欠かせぬめでたい曲であり、〈花風節〉は舞踊曲として人気が高く、遊女の哀しげなイメージが定着している。〈稲まづん節〉は重厚な曲調の豊作を祈る歌と見なされている。少なくとも伝承者からは、全く別の内容をもつ楽曲として認識されている。
     文学史の研究によれば、この三曲は文学史上、航海安全祈願の琉歌を共有してきた。現在〈花風節〉の歌詞として遊女の哀切を表現していると信じられている歌詞は、歴史的には〈稲まづん節〉の歌詞として多用されてきたことが指摘されている。筆者もすでに、音楽学の観点から、この三曲の歌唱旋律がよく似た旋律の概形を持っているので、同じ系譜に属する可能性があることを指摘したことがある。
     今回は、三線が奏する旋律に着目し、独自の分析方法で並列させて比較した。その結果、〈花風節〉は〈かぎやで風節〉に装飾的な細かい音やシンコペーション・リズムを加えて(中国音楽でいう加花)作られた変奏曲であること、さらに〈花風節〉の音価をすべて2倍に引き延ばして(中国音楽でいう放慢)作られた変奏曲が〈稲まづん節〉であることを明らかにした。
     以上の分析とこれまでの文学史研究の成果とを総合すると、標題の三曲は、放慢加花の関係で結ばれる同系の変奏曲であって、そのために、互いに航海安全を祈る歌詞を共有して、場に応じた歌詞選択によって歌われていたと考えられる。
     また、放慢加花という中国の音楽理論が琉球音楽の分析的研究に有益であることが明らかになったので、今後も中国音楽の影響という観点から琉球古典音楽を研究していく必要がある。
     〈花風節〉は、近代に創作されて大ヒットした舞踊作品の影響で哀しい曲のように誤解されているが、本来は航海安全を予祝する楽曲であった。文学史的・音楽学的研究にもとづいて、楽曲理解を見直していく必要がある。
  • 鈴木 由喜子, 樋口 昭
    2019 年2019 巻84 号 p. 109-122
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
     本稿は、岐阜県揖斐郡揖斐川町に伝承されている太鼓踊(一五地区一六カ所)の音楽を収集し、広域に分布した祭礼の音楽を、背負いもの(シナイ・ホウロ・ホロ・バンバラ・大御幣など)ごとに比較検討し、その関連性を考察する足掛かりとするものである。
     鈴木は太鼓踊の概略と特徴を述べ、太鼓踊の歌の冒頭を二タイプに分類し、他の地域との関連性を眺めた。本稿では掲載できなかったので、今後、囃子と踊歌を採譜分析した結果を発表するつもりであるが、殆どの旋律が民謡音階で構成されている。
     樋口は「まりのおどり」の詞章から揖斐川町のなかでの位置づけと、各地に伝承されている「まりのおどり」との関連性を比較検討した。
     この演目は、関西圏を中心に広く演じられている風流踊の形式である三部分形式(いりは・なかは・では)で構成される。注目点は「なかは」の詞章が有節形式であることにある。
     この形式は、揖斐川町の太鼓踊では、複数ある形式のなかのひとつにすぎないが、関西圏では主流の形式である。揖斐川町の太鼓踊の演目に、この関西圏型三部分形式の太鼓踊の演目の伝承があることは、揖斐川町を太鼓踊における関西型三部分形式の東限の地であると位置付けることが可能となろう。
     また、歌われる風流踊歌は、一七世紀の近世声楽様式形成研究にも、貴重な示唆を与えてくれる可能性をもっている。
  • ―『カンゾル・トハフKanz al-tuḥaf』第四講の訳注と諸写本の校異―
    柘植 元一
    2019 年2019 巻84 号 p. 123-136
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 徹
    2019 年2019 巻84 号 p. 137-148
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
  • 三浦 裕子
    2019 年2019 巻84 号 p. 149-153
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
  • 酒井 健太郎
    2019 年2019 巻84 号 p. 154-157
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
  • 中村 仁美
    2019 年2019 巻84 号 p. 158-160
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
  • 長嶺 亮子
    2019 年2019 巻84 号 p. 161-163
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top