東洋音楽研究
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2020 巻, 85 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • ―丸岡桂の仕事を中心に―
    上野 正章
    2020 年2020 巻85 号 p. 1-20
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     近代日本の音楽文化は外来音楽の浸透と日本古典音楽の衰微に特徴づけられるが、幾つか例外もあり、その最たるものが謡曲である。封建社会の崩壊の影響で一旦は下火になるが、明治後期から再び人気を集めて流行していった。普及の要因として言及されるのが、丸岡桂の出版した直シ入り謡本である。しかしながら、直シ入り謡本は、口伝えされてきたふしと異なり、師匠連は教授方法の変更が求められる。また、新規出版社の参入は既存の出版社のシェアを奪うことに繋がる。このため、直シ入り謡本は出版されたことはあっても、広く普及することは無かった。丸岡はどのように謡本を普及させたのだろうか。
     まず、編集プロセスを検討し、出版された謡本には観世流家元観世清廉の署名がなく、丸岡桂、観世清之、井上頼圀によって科学的にふしと詞章が校訂されたことを示す。ついで謡本の新聞広告を調査した後、老舗出版社の檜書店による訴訟を検討する。そして最後に改訂謡本別巻を吟味し、参考書として大量の情報に満ちていることを確認する。
     結論で示されるのは、丸岡は単に精緻に改訂された謡本を出版しただけではなく、謡曲の学習環境を構築したということである。また、学習環境のオーセンティシティーは謡曲の専門家によって科学的に校訂された謡本に基づいていた。なお、効果的な謡本の宣伝を試みた丸岡の印刷メディアの活用も併せて指摘する。
  • 吉岡 倫裕
    2020 年2020 巻85 号 p. 21-37
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿は、近代における真言声明を考察するものである。その中でも真言声明の一派である南山進流に焦点を当て論じていく。
     現在伝承されている進流声明は、同じ曲でもその音の動きは一定しておらず、どの声明家に師事したのかによって旋律が違い、合わないようになっている。これは、同じ博士(楽譜)を用いているのにもかかわらず起こっており、現代の真言僧を悩ませる問題となっている。
     現在伝承されている南山進流は、明治期に活躍された葦原寂照(あしはらじゃくしょう)によって命脈を保った。現在伝承している声明は、すべて葦原の下に属するものであり、葦原以外の声明血脈は途絶えてしまっている。その弟子達の伝が現在まで伝わり、節の分派を起こしている。百年前には一つしかなかった唱え方にもかかわらず、筆者まで四~五代の間に大きな変容を遂げている。
     本稿では、現在の分派の原点ともいえる葦原寂照の声明に最も近い唱え方を伝承している声明家の音源を探る。その理由は、肝心の葦原の音源が残っていないからである。その葦原に近い声明家の音源を分析することは、明治期以前の進流声明を探る大きな材料となる。また、それと他の音源を比較することによって、明治期以降の分派の様相を知ることが出来る。
     その声明家を探る方法は、葦原の書籍や、葦原が編纂した『明治改正魚山薗芥集(ぎょさんたいがいしゅう)』の注記と、音源が残っている声明家の音源を比較していく。また、各声明家の記録に残る発言や、声明への考えを考慮し、総合的に推定していく。
     現在伝承している南山進流声明全曲となると量が多くなりすぎるので、中心的な教則本として使用されてきた『魚山薗芥集』所載の曲に焦点を絞って考察していく。
     これ等の検証の結果、鈴木智辨が葦原の伝に最も近いことが解った。
  • 村山 佳寿子
    2020 年2020 巻85 号 p. 39-59
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     本研究は、箏曲のための点字記譜法の成立過程を明らかにするために、大正期に大阪市立盲学校において成立した箏曲を点字楽譜によって記すための解説書『点字箏譜解説』(大正一四年(一九二五)、大阪市立盲学校同窓会発行)について、その内容を検討し、同時代に東京盲学校で制定された記譜法との比較・考察を通して、その成立背景を検証することを目的とした。
     まず、点字の「墨字訳」に基づいて、『点字箏譜解説』の書誌情報や内容を検討した。『点字箏譜解説』は、盲人によって記された盲人のための、広くその内容が公となった初めての箏曲点字楽譜解説書であり、「万国共通の」五線譜のシステムに基づく点字楽譜によって箏曲を読み書きするためのもので、既に邦楽と洋楽の両方の知識を十分に持ち合わせている人を対象としていた。
     次に、東京盲学校における記譜法を紹介した『訓盲箏譜入門』(点字版)との比較・考察を通して、『点字箏譜解説』の記譜法の特徴を明らかにした。ここから、『点字箏譜解説』による手法記号は、洋楽の記号の意味を全く持たない『訓盲箏譜入門』(点字版)とは異なり、箏曲の手法に洋楽の記号の意味を合致させようとしたものであることを確認した。
     続いて、『点字箏譜解説』の成立背景を検証したところ、大阪で行われた「新日本音楽大演奏会」での宮城道雄の演奏が関係しており、新日本音楽研究を目的として著者の川端米逸が東京へ長期出張した成果が、『点字箏譜解説』の公刊であることが分かった。また、川端は、東京出張に際して、宮城より直接「新箏曲」の教習を受けていたことから、著者である川端と、その記譜法を用いて作品を記した宮城には、直接の接点があったことも明らかになった。
     最後に、『点字箏譜解説』は、東京盲学校における大正と昭和の記譜法の変化の背景にある資料であり、箏曲のための点字記譜法が成立する中で、その変化の過程を知ることができる資料であると結論づけた。
  • ―コロムビア・ビクターを例に―
    曽村 みずき
    2020 年2020 巻85 号 p. 61-90
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿は、薩摩琵琶や筑前琵琶に代表される近代琵琶楽の昭和戦前期におけるSPレコードの発売状況調査から、当時近代琵琶楽がどのように享受されていたかを明らかにするものである。本研究では、国立国会図書館所蔵の各レコード会社の月報および総目録から、近代琵琶楽のSPレコード発売情報を網羅的に調査・抽出した。本稿では、欠号の少ないコロムビアおよび廉価盤のリーガルレコード、ビクターおよび廉価盤のビクタージュニアレコード、ビクター大衆盤、スターレコード、ビクターZ盤を対象とする。
     本論文では、大正期までの近代琵琶楽のレコード収録状況を概観したうえで、昭和戦前期の発売調査結果から、曲種・曲目・演奏者の三点に着目して分析した。さらに、本研究の対象時期に発売された近代琵琶楽の時局レコードを取り上げ、収録された題材・演奏者の傾向を考察した。
     レコード発売数より、大正初期までの錦心流宗家・永田錦心の人気から一転して、大正期半ばから昭和期にかけては筑前琵琶が広く享受されていった。一方で、近代琵琶楽のレコード収録曲には、曲種を問わず、薩摩・錦心流琵琶で人気となった楽曲・題材が選択された傾向がみられた。また琵琶演奏家には、レコード会社専属として収録を行った者もおり、さらに時局物を含むレコード収録に積極的に取り組むことで、自身の名前や演奏の普及に努め、音楽活動の場を拡大しようとした。
     昭和戦前期では、邦楽レコード発売開始当初から、琵琶のレコードは多く発売されたが、廉価盤創始とともに発売レーベルは次第に廉価盤へと移行し、発売数は減少していった。その一方で、新たな収録も行いながら、廉価盤からは昭和一〇年代前半まで一定数の発売があり、近代琵琶楽は昭和期以降に低迷期へと向かうものの、筑前琵琶を中心にこの時期も人気が続いていた。そして戦況が激化していく中で、人気を維持するための試みの一つとして、時局レコードを様々な題材で即時的に発売・収録する傾向が強まっていった。
  • 柘植 元一
    2020 年2020 巻85 号 p. 91-103
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     中東および内陸アジアの楽器の誕生にかかわる神話伝説の中に、ウード生成譚がある。その説話の主人公は『旧約聖書』創世記に登場するレメクである。いくつかのヴァージョンがあるが、アブドルカーディル・マラーギー(1356-1435)がペルシア語で書いた『ジャーメオル・アルハーン(音楽全書)』のエピローグに記された説話の骨子を下に示す。
     アダムの子孫でカインの子レメクがウードを創出した。レメクは晩年に生まれた一人息子を僅か五歳で失い嘆き悲しむ。遺骸を埋葬するに忍びず木の枝に吊したが、やがて崩れ落ちた。レメクは木片で亡き子を象り、その上に馬の尾毛を張って、ウードを作った。その弦を掻き鳴らしながら弔歌を吟じ慟哭した(別のヴァージョンでは、慟哭し続けた結果、視力を失った)。すなわち、ラマクはウードを考案し、これを奏でナウハ(哀傷歌)を歌う〔盲目の〕楽師の祖となった。
     ほぼ同じ楽器生成譚が、十九世紀半ばに中国新疆のホータンでモッラー・イスマトゥッラー・ムージズが書いた『楽師伝Tawārīkh-i Mūsīqīyūn』にも見える。ここでは、ノアの息子ヤペテにテユルクという息子がいて、その息子(つまり、ヤペテの孫)のハリズが主人公となっている。ハリズがタンブールやバルバトやウードを作って奏でた。ハリズは親族の葬儀でタンブールを爪弾き、弔歌を歌った。ハリズの子孫がヤルカンドとホータンに渡来して、この土地の民となった。
     『楽師伝』の執筆に際してムージズが参照したという、ミール・ハーンド著の『清浄園Rawżat al-Ṣafā』の中で語られる説話の主人公はハザルである。ハザルはヤペテの八人の息子の一人で、アダムを始祖とする旧約的普遍史に関係づけられたテュルク・モンゴル諸部族誌に現れる人物である。『楽師伝』のハリズは、このハザルが変身したものに違いない。
     『楽師伝』はチャガタイ・トルコ語で書かれており、ウイグル・ムカームの歴史を語る最古の文献とされている。ここにはウイグル音楽史上で重要視される十七名の楽師が「音楽の聖者pīr」として選ばれ、彼らの人となりや業績が語られる。とりわけ、第十七楽聖のマリカ・アマーンニサーには、ウイグル音楽史上最重要人物として、多くの頁が割かれている。
     本稿はこの『楽師伝』の第一楽聖とされているハリズが、旧約的普遍史に位置づけられているハザルではないか、という閃きを書き留めた覚え書きである。
  • ―邦楽調査掛譜を基に―
    林 一行
    2020 年2020 巻85 号 p. 105-119
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
     新内節とは江戸時代中頃に成立した浄瑠璃の一派である。通常、浄瑠璃(語り手)一人と三味線奏者一人か二人で演奏され、語り手は物語を歌うように語ったり、話すように語ったりして表現する。筆者は新内節がどのように作曲されるものなのか疑問を抱いてきた。
     新内節を含む浄瑠璃は、基本的な流れが定型化した旋律、つまり「旋律型」が多く見られることが度々指摘されてきた。その旋律型の中には伝統的に名称がついたものが多くある。また、新内節の旋律の多くは七五一句の詞章に対応して演奏される旋律毎に一区切りであると筆者は考えている。
     そこで、旋律型を利用して七五一句の旋律を整理分類し名称付けを行っていくことで、新内節の音楽構造を単純化して表現できると考えられる。
     ただし、七五一句全てが定型化した旋律型はそれほどなく、七五一句の一部分が定型化した旋律型が多い。そのため、このような七五一句に満たない短い旋律型をどのように分析手法に組み込むかという点が課題になると考えた。
     この課題を解決するために、本研究では、邦楽調査掛五線譜を七五一句の旋律毎に区切り、四〇九句の旋律を抽出した。そしてそれらの旋律を比較考察し、①二度以上出現する定型化した旋律の抽出、②短い旋律型とその前後の旋律との関係、の二点を考察した。
     考察の結果、三一種二八三句の旋律型を抽出し、短い旋律型とその前後の旋律には常套的な組み合わせとその曲固有の組み合わせがあることを指摘した。
     これらの結果を利用して、旋律型名称と記号のみで新内節の音楽構造を単純化して捉えることができる手法の構築を進めた。
  • 根本 千聡
    2020 年2020 巻85 号 p. 121-133
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 遠藤 徹
    2020 年2020 巻85 号 p. 135-139
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 久万田 晋
    2020 年2020 巻85 号 p. 140-143
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 吉野 雪子
    2020 年2020 巻85 号 p. 144-147
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 平高 典子
    2020 年2020 巻85 号 p. 148-151
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 丸山 彩
    2020 年2020 巻85 号 p. 152-155
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 塩川 博義
    2020 年2020 巻85 号 p. 156-160
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 蒲生 郷昭
    2020 年2020 巻85 号 p. 161-162
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
  • 早稲田 みな子
    2020 年2020 巻85 号 p. 163-167
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2026/03/26
    ジャーナル フリー
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