岐阜県揖斐郡揖斐川町の太鼓踊りは、シナイ・バンバラ・ホロ(ホウロ)、大御幣等の背負いものを特徴とする地区やザイ・梵天を手に持って踊る地区と多彩であるが、その中心となるものは太鼓であり、それに笛と鉦が加わる合奏に、歌と踊りが華を添える。
揖斐川に沿う山間部の奥深くにある川上から、美濃地域の平野部までの一五地区に多くの太鼓踊りが伝わっており、共通する曲も多くある。
本稿では「綾の踊り」と「ザイフリ・梵天地区の音楽的特徴」について分析・解説する。
「綾」と名前に関する曲は一五地区のなかで一二地区に残っており、その中で「綾の踊り」が歌い踊られるのが八地区現存する。本稿では「イリハ」という始まりの曲、「ナカハ」の中心的な曲と小歌(小唄)について採譜し、比較した。音組織としては「綾の曲」は殆どが律のテトラコルド・律音階の構成である。民謡のテトラコルド・民謡音階は、山間部の地区に多く残っている。
「ザイフリ・梵天地区」では、太鼓踊りにザイフリおよび梵天という役が付く旧春日村の上ケ流、下ケ流、川合を対象に、踊り歌の構成を概観し、基本的な構成をもつ曲と地区特有の曲を分析することで、三地区の音楽的特徴を考察した。そして、下ケ流に伝承される「ハネ歌」と呼ばれる小歌の要素が、川合の踊り歌の中にもみられることを示した。
抄録全体を表示