東洋音楽研究
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2022 巻, 87 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 江戸文学を用いた音楽学的研究をめざして
    青木 慧
    2022 年2022 巻87 号 p. 1-23
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
     江戸期吉原遊廓は、当時の人々にとっての最大の社交場であり、流行を発信し続けた一大文化地であった。音楽も、吉原を支えた重要な側面の一つであるが、度重なる火災等に起因する史料的制約により、音楽学的研究は困難を極め、未解明な部分を多く残している。このような状況下において、江戸文学は吉原の音楽的実態を紐解く有益な史料となり得る。本稿は、洒落本と随筆という質の異なる二種の江戸文学を用い、それらにおける記述を音楽学的視点から検討し、吉原の音楽文化の様相を多角的に考察することを目的としている。
     本稿では、集客のための三味線音楽である「すががき」、年中行事として行われる正月の門付け芸である「大黒舞」、吉原内で奏される「音楽に対する批判」という三点の項目について、一七二〇年代から一八三〇年代までの洒落本と随筆より、両者の記述を相互的に補填し合いながら分析を行うことで明らかとなった実態を報告した。すががきについては、これまでの研究において三味線のみを使用した奏法が定説とされていたが、吉原開設直後、一時的に二種の歌詞が伴っていたことが判明した。大黒舞については、不明とされてきた吉原での大黒舞開始時期や隆盛期の特定を試み、同時に大黒舞に付随する歌詞の存在を明らかにした。音楽に対する批判にかんしては、洒落本・随筆共に、遊女の音楽的教養に対する批判として記述される場合が多いが、随筆では、遊女に限らない、より広範囲に視野を向けた音楽批判が見られ、それらは、吉原での音楽文化構築の背景を考察し得る重要な記述である。
     以上三点の調査結果は、吉原の音楽文化のごく一側面を示すものではあるが、吉原の音楽文化の全貌を掴む重要な一歩と言えよう。江戸文学を用いた音楽学的研究は、書誌学的整理や情報の体系化をはじめとした方法論的な課題も伴うが、同時に開拓の余地を多く残している。
  • 岩井智海の活動にみる宗教・教育・国家・音楽の相互接続ネットワーク
    ギラン マット
    2022 年2022 巻87 号 p. 25-45
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
     明治時代における日本への西洋音楽の導入は日本の仏教界の音楽文化に大きく影響を与えた。西洋音楽の様式、楽器、譜面、などを取り入れた仏教唱歌集が明治二二年を皮切りに次々と出版された。竹内淳有(一九七二)、山口篤子(二〇一九)などが指摘したように、これらには仏徳讃嘆、教化・布教などの目的があった。しかし、仏教に対する西洋音楽の影響は、仏教唱歌という新しいジャンルの成立をもたらしただけでなく、仏教と音楽の関係の再考察を促し、またその関係性は「宗教」「教育」「音楽」「国家」といった明治に新しく導入された概念と交錯した。本論文では、明治中期において仏教と音楽の関係がどのように論じられ構築されたのかを探り、社会の他の場所で生じていたディスコースにおいてどのように位置づけられていたかを考察する。特に、浄土宗の僧侶であった岩井智海(一八六三~一九四二)の活動と彼が明治二七年に出版した『仏教音楽論』を取り上げる。岩井が東京音楽学校に所属したこと、また神津仙三郎・伊澤修二などとの交流があったことが、彼の仏教音楽論に大きく影響したことを明らかにする。また、明治二二年の大日本帝国憲法の公布が刺激した「国体」の創立という文脈において仏教音楽論の位置づけを試みることも本論文の目的の一つである。David Smith(2014)などの研究を参考しながら、複数の団体や社会の動きに跨る岩井の活動を「相互接続ネットワーク」として捉えられることを提案する。
  • 西アジア・中央アジアの擦弦楽器の名称と構造
    柘植 元一
    2022 年2022 巻87 号 p. 47-60
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
     ギジャク(ギシャク、ギチャク)と呼ばれる擦弦楽器は、西アジアと中央アジアの各地に見られる。その大半は日本の胡弓や中国の二胡の仲間で、皮張りの共鳴胴を長い棹が貫通した構造をもち、弓で擦奏される。英語で「スパイク・フィドルspike fiddle」と総称される楽器である。
     十四世紀の楽書『カンゾル・トハフ』に記述されているギシャクは、スパイク・フィドルである。そこにはギシャクの図が付されていて、弦を擦る用具はカマーンチェ(「小弓」を意味する)と記されている。この弓の名がやがて楽器名として用いられるようになった。十五世紀のアブドゥルカーディル・マラーギーは、楽器名としてカマーンチェとギジャクとイェクターイを並列的に記している。マラーギーのカマーンチェは、紛れもなく『カンゾル・トハフ』のギシャクである。だが、ギジャクについてマラーギーは、槽(共鳴胴)がカマーンチェのそれよりも大きいこと、二本の主奏弦と八本の共鳴弦をもつと述べているものの、楽器の構造については触れていない。マラーギーはギジャク図を付さなかったのでその形状は朦朧としている。先行研究はこの点について頓着してこなかった。
     本稿はマラーギーが述べたギジャクghizhakは、スパイク・フィドルではなく、ショート・フィドルshort [-necked] fiddle であったという試論を述べる。これは今日イランの東南部シースターンやバルーチェスターンのケイチャクqeychak(別名ソルードsorūd)の祖型である。ケイチャクはカマーンチャとは構造的に異なり、二本の主奏弦と八本の共鳴弦をもつ。ギシャク、ギジャク、ギチャク、ケイチャク、ゲイチャク等は同一の名称の変形であると考えられる。
  • 坂東 愛子
    2022 年2022 巻87 号 p. 61-73
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
     謡のヨワ吟・ツヨ吟における基本音階上の最高音域に甲グリという音がある。主に宝生流のヨワ吟および観世流のツヨ吟の演目で用いられ、その音高を伴うフシ扱いは高難度の技巧とされる。
     現行する観世流の謡本は、観世流大成版謡本、観世流参考謡本、梅若謡本があり、甲グリの箇所にはその補助記号が付加される。とりわけ梅若謡本において、甲グリを真ノ甲グリと草ノ甲グリに区別する特徴がある。この表記は、一九二一年から三三年間、観世流から独立し梅若流として活動した梅若六郎家独自の表記法である。
     本稿では、観世流の現行謡本の表記を比較したうえで、梅若家の真ノ甲グリと草ノ甲グリの謡い方を実例と併せて検討し、さらに〈鸚鵡小町〉の甲グリの扱いについても考察した。
     真ノ甲グリは、甲グリ音から短三度下げ、その音をスリ浮かせてから上音へ下げて謡われる。この段階的に下げる謡い方は、梅若家以外で謡われる甲グリの扱いと同等である。
     草ノ甲グリは、甲グリ音から直接、上音まで下げる謡い方であることが明らかになった。この下げ方は、近代から続く梅若家に残る独自の技巧といえる。
     また観世流のヨワ吟において唯一、〈鸚鵡小町〉で甲グリを用いるが、梅若謡本にはクリと表記される。現在の梅若家では、素謡で謡う場合のみクリ音で扱い、謡本の伝承が守られていた。その一方、能で謡われる際に流儀内で統一された甲グリ音よりさらに高く響かせて扱われる。これは流儀の謡い方に従いつつ独自の技巧が加えられたものである。
  • 田中 多佳子
    2022 年2022 巻87 号 p. 75-79
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 井上 春緒
    2022 年2022 巻87 号 p. 80-83
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 出口 実紀
    2022 年2022 巻87 号 p. 84-88
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 嶋 和彦
    2022 年2022 巻87 号 p. 89-93
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 久万田 晋
    2022 年2022 巻87 号 p. 95-97
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 井上 貴子
    2022 年2022 巻87 号 p. 98-100
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
  • 野川 美穂子
    2022 年2022 巻87 号 p. 101-103
    発行日: 2022/08/31
    公開日: 2026/03/06
    ジャーナル フリー
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