東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
Print ISSN : 2187-736X
5 巻, 1 号
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  • 宮越 裕治, 井倉 一政, 松川 真葵, 大越 扶貴
    2017 年 5 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 精神保健プログラムを用いた集団指導を行い、介入を受けた中学生の意識を明らかにすることによって、今後より良いプログラムにしていくための基礎資料とすることを目的とした。

    方法 公立中学2年生186人に対して、精神保健プログラムを実施した。実施後ホームルームにて、無記名自記式質問紙を用いた調査を行った。調査内容は、「性別」、「プログラムを受講しての意識」、「プログラムを受講するまでの最近1 か月のストレス対処方法」、「今後実践していきたいストレス対処方法」で構成した。

    結果 精神保健プログラムを受講した調査対象者186人のうち174人から回答が得られた(回収率93.5%)。性別は男子84人(48.3%)、女子89人(51.1%)であった。

     精神保健プログラムの効果としては、60%以上の者が「ストレス解消法がわかった」「これからストレスの解消方法を実践していきたい」「成長するためにストレスも重要だとわかった」と答えていた。30%以下がそう思うと答えた項目は「ストレスについてもっと知りたい」「今日学習した内容をまわりの人に教えたい」「ストレスに対する自分の特徴がわかった」の3項目であった。また、プログラムを受講するまでの最近1か月のストレス対処方法と今後実践していきたいストレス対処方法の比較の結果では、「ストレッチをする」「体を動かす」「読書をする」「人に話を聞いてもらう」「呼吸を整える(深呼吸をする)」「身体を休める」の項目で、有意に増加し、「部活に参加する」「ゲームをする」「その他の対処をする」の項目で、有意に減少した。

    結論 公立中学校で中学2年生を対象に精神保健プログラムを実施することで、精神保健に関する生徒の理解度が向上することと、ストレス対処行動への意識が変化していることが示唆された。

  • 大嶽 麻衣, 磯村 薫里, 伊藤 瑞希, 夏目 彩香, 安江 紗希, 古畑 利子, 近藤 今子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 春日井市が行う離乳食教室に参加した母親の食生活,調理技術および離乳食に関する実態を把握し,離乳食教室をより効果的なものにするための基礎資料を得ることを目的とした。

    方法 平成27年8月から12月に春日井市が開催した計10回の離乳食教室に参加した生後4~5か月の乳児を第一子に持つ母親201人を対象に自記式質問紙調査を行い回答のあった195人(回収率97%)を分析対象とした。調査項目は,調理への嗜好および自信,調理技術8種類(以下,調理技術8種)個々の取得状況,調理技術8種の内6種に対応する料理6種類(以下,料理6種)の実施状況,調理加工済み食品の利用状況,朝食の喫食状況,食生活の満足度,離乳食に関する不安等についてである。単純集計以外に,調理技術の取得状況と料理6種の実施状況との関連,離乳食に関する不安,調理加工済み食品の利用状況,食生活の満足度等と調理技術全般の取得状況(調理技術8種個々の取得状況を集約した。)との関連,調理加工済み食品の利用状況等と食生活の満足度との関連についてPearsonのカイ2乗検定により分析した。

    結果 対象者の年代は,20代が3割,30代が6割であった。朝食を毎日は食べないは2割,調理が好きは7割であった。調理技術8種の取得状況は「ほうれん草のあく抜き(ゆでる)」,「茹でたじゃがいもをすりつぶす」は約9割と多く,「鰹や昆布からだしをとる」,「シラスの塩抜き」は順に約5割,約4割と少なかった。調理技術がある場合には対応する料理(例:豆腐の裏ごしと白和え)を作り,「ほうれん草のお浸し」,「ポテトサラダ」,「白和え」は有意であった。調理加工済み食品の利用割合が少ない,食生活に関する満足度が高い,離乳食に関しての不安が少ない場合に,調理技術全般の取得状況の高い割合が有意に多かった。また,調理加工済み食品の利用割合が低い場合に食生活に満足している割合が有意に高かった。

    結論 調理技術があることと料理の実施頻度や食生活の満足度には正の関連が認められた。調理技術がない場合に離乳食の作り方に不安を抱く者が多いことや母親の約2割に朝食欠食の習慣がみられたことから,離乳食教室では調理技術の取得や正しい食習慣の形成を目的とした教育が必要であると推察された。

  • 藤原 和美, 中村 智子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では地域在住高齢者のフレイルと認知機能、および生活習慣との関連について明らかにし、高齢者の健康づくりや予防の示唆を得ることを目的とした。

    方法 2011年8月に実施されたA町住民健康診断受診者を対象に、住民健診において運動器検診と認知機能検診を受けた受診者407名中、認知機能、10m歩行時間への参加拒否、および調査票の記入不備を除く291名中、前年との体重比較ができる114名を分析対象とした。フレイルと認知機能および生活習慣との関連性について検討した。フレイルの基準については、CHS(Cardiovascular Health Study)を基に、5つの基準のうち3つ以上に該当するものを「フレイル群」とし、1項目、または2項目該当は「プレフレイル群」、該当なしは「ノンフレイル群」として検証を行った。調査内容は、質問紙にて既往歴、健康意識・自覚症状、疼痛VAS、転倒歴、認知機能低下の自覚、生活習慣について回答を得た。認知機能検査および握力、10m歩行時間の測定を行った。本調査ではフレイルの対象者を認めなかったため「プレフレイル群」「ノンフレイル群」の2群間で前述の調査項目に記載した各変数との単変量解析を実施した。間隔・比率尺度の変数には対応のない検定、順序尺度の変数にはMann-WhitneyのU検定、名義尺度の変数にはχ2検定を用いた。またフレイル該当項目数との関連についてはPearsonの相関係数を用いて分析を行った。

    結果 「フレイル」は0名(0%)、「プレフレイル」は61名(53.5%)、「ノンフレイル」は53名(46.5%)であった。年齢は「プレフレイル群」70.8歳(SD = 6.8)、「ノンフレイル群」60.4歳(SD = 6.6)で有意な差を認めなかった。認知機能低下の自覚に関しては、「物をどこにしまったかわからなくなることが増えた」(= 0.001)、「人や物の名前を思い出せないことが増えた」(= 0.026)、「しなければならない約束を忘れてしまうことが増えた」(=0.007)、「新しいことを覚えるのに時間がかかるようになった」(= 0.016)、「標識や信号、注意書きなどに気づかず見落としてしまうことが増えた」(= 0.004)、「物事に取り組むときに、なかなか集中できなくなった」(= 0.002)、「本や新聞を読むのに時間がかかるようになった」(<0.001)、「物事を考えたり判断するのに時間がかかるようになった」(= 0.006)、「簡単に出来た家電などの機械の操作が、難しく感じられるようになった」(= 0.026)の8項目で2群間に有意差を認めた。認知機能検査項目では、情報処理速度および注意機能と実行系機能検査で有意差を認めた(p = 0.009)。また、生活習慣においては、スポーツ・運動の頻度、持続時間において有意な差を認めた。SF-36健康状態調査では「活力」、「社会的生活機能」、「日常役割機能」、「心の健康」の4尺度全てで有意な差を認め、フレイル該当項目数と下位尺度との関連では「活力」で有意な関連が認められた(r = -0.42, p < 0.001)。

    結論 本研究では地域住民のフレイルと認知機能および生活習慣との関連について「プレフレイル群」と「ノンフレイル群」で検討した。その結果、「プレフレイル群」で認知機能低下を自覚する症状が多く、認知機能低下とフレイルとの関連が認められた。フレイルの憎悪サイクルを予防するためにも、認知機能低下予防を同時に行っていく必要があることが示唆された。生活習慣では運動習慣のないことがフレイルと関連することが明らかとなった。今後、身体的および精神的なフレイル状態を把握した上で、適した運動内容などを検討し習慣化できる介入方法を検討していく必要性が示唆された。

  • 小濱 絵美, 加藤 恵子, 水谷 恵里花, 加藤 美穂, 池田 倫子, 佐藤 生一
    2017 年 5 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 近年の労働環境改善に対する関心の高まりにより,労働実態調査が様々な分野で実施されているが,調理業務における調査報告は少ない。そこで,調理業務における疲労の現状把握を目的に調理業務従事者の疲労に関する調査を実施した。

    方法 愛知県および近郊の給食施設・委託給食会社に調査を依頼し,同意を得た調理業務従事者(女性92名)のうち,不備回答者を除く女性67名を調査対象とした。調査は平成27年9月~11月に実施した。対象者の基本属性については自記式質問紙調査を用いた。疲労度調査には,日本産業衛生学会産業疲労研究会の「自覚症しらべ」「疲労部位しらべ」を用い,勤務前後の疲労について調査した。勤務前後の比較はWilcoxonの符号順位検定を用いて行った。

    結果 調理業務で疲労度の高い作業は食器洗浄であり,疲労度の高い身体部位は腰部であった。調理業務による肉体的な疲労は勤務後に高まり,精神的な疲労(不安定感)の一部は勤務後に軽減した。身体部位別の疲労については首・両肩・腰部において慢性的な疲労がうかがえた。両膝下腿においては勤務前の疲労の訴えは少ないが勤務後に訴えが高まる特徴がみられた。

    結論 調理業務における疲労は,肉体的な疲労によるものが大きいと考えられた。身体部位別の疲労については首・両肩・腰において慢性疲労がうかがえ,調理業務における疲労蓄積は,首・両肩・腰部に大きいと推察された。また,両膝下腿についても調理業務における負担の大きい部位であることがうかがえた。調理業務における疲労は,対象者の基本属性や施設設備などの影響も考えられるため,各因子と疲労との関連についてさらに解析する必要がある。

  • 中島 正夫, 大島 千穂, 三田 有紀子, 續 順子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 若年女性の痩せ志向の改善に向け,小学生及び中学生を対象とした「保健」「家庭」等の教科書における「痩せ」に関連する記載内容を明らかにし,そのあり方について検討することである。

    方法 文部科学省教科書目録(平成27年4月)に掲載されている小学校用及び中学校用「保健」「家庭」等の教科書における,不必要・不適切な体重減量行動による健康障害や適正なボディイメージの形成などの「痩せ」に関連する記載内容を抽出し,そのあり方を検討する。

    結果 小学校3・4年生を対象とした教科書では,適正なボディイメージの形成について5冊中4冊で記載されていたが,不必要・不適切な体重減量行動による健康障害については2冊での総論的な記載にとどまった。小学校5・6年生を対象とした教科書では,不必要・不適切な体重減量行動による健康障害や適正なボディイメージの形成について記載されていたのは7冊中1冊のみであった。中学生を対象とした教科書では,7冊全てで不必要・不適切な体重減量行動による健康障害について記載されていたが,適正なボディイメージの形成については3冊での記載にとどまった。

    結論 若年女性の痩せ志向が大きな健康課題となっているにもかかわらず,学習指導要領や学習指導要領解説では一部の内容を除き「痩せ」について取り上げることが明記されていないため「保健」「家庭」等の教科書での記載は十分とは言えない状況にあると考えられた。特に思春期の始まりの時期にある小学校5・6年生を対象とした教科書で「痩せ」について記載しているものは極めて少なかったことから,この時期に「痩せ」に関する健康教育が十分行われていない可能性がある。児童生徒に対して,確実に「痩せ」に関する健康教育が行われるためには,不必要・不適切な体重減量行動による健康障害や適正なボディイメージの形成などについて,学習指導要領,少なくとも学習指導要領解説に明記し,教科書に記載されるようにすることが必要である。

  • ‐ 管理職の立場にある看護職へのインタビュー調査から ‐
    多次 淳一郎, 井倉 一政, 前山 和子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 保健所管内における保健医療福祉各分野に従事する看護職間の連携の実態と課題を明らかにすることを通じて,連携体制構築に向けた実践活動に活かせる知見を得る。

    方法 A県B保健所管内(人口約21万人,高齢化率29.9%)の保健医療福祉施設に従事する管理職の立場にある看護職12名を対象に,管内での看護職連携の現状と課題についてグループインタビューを実施した。実施時期は平成27年10月。インタビュー記録から看護職連携に関する語りが含まれる文節を抽出し,質的に分類・整理した。

    結果 41個のコードから19個のサブカテゴリー,9個のカテゴリーが生成された。B保健所管内では看護職連携の活動として【他分野の看護を相互に知る】【分野間での情報共有の実施と見直し】【病院看護師の在宅へのアウトリーチ】が行われているが,【看護職同士での関わりの少なさ】【他分野の看護を知る機会の少なさ】【他分野の看護に関する理解不足】が課題であり,今後,病院では【病院内連携と在宅へのアウトリーチ】,病院・地域共通で【他分野での看護を学ぶ機会】の設定と【既存の連携体制の把握と見直し】が必要であると認識されていた。

    結論 B保健所管内での看護職間連携の推進に向けた活動として,多分野での看護の実際と連携上の課題を共有する研修会や,管内での相互実地研修の必要性が示唆された。

  • 加藤 善士, 太田 充彦, 八谷 寛
    2017 年 5 巻 1 号 p. 102-110
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン(両立支援ガイドライン)」の認知,両立支援のための職場環境・労務管理体制の整備の実態,それらと事業場規模,事業場内産業保健スタッフ,過去の私傷病退職者・がん罹患者の有無との関連の探索。

    方法 某労働基準監督署管内の1,002事業場を対象に自記式質問紙調査を実施した。両立支援ガイドラインの認知割合,両立支援のための職場環境として啓発研修,相談・申出窓口,事業場内外の関係者間の情報交換の枠組みの有無,および,私傷病時に利用可能な労務管理制度として時差出勤,所定労働時間の短縮,時間単位の休暇,試し出勤,傷病・病気休暇の有無を調べ,事業場の規模による違いをコクラン・アーミテージ検定にて検定した。それらと事業場内産業保健スタッフ,および過去3年間に私傷病で退職した従業員・がんに罹患した従業員の有無との関連を調べ,Fisher正確確率検定で検定した。

    結果 266事業場から回答があり,回答率は27%であった。両立支援ガイドライン認知の割合は19%で,その割合は事業場規模が大きいほど高かった。啓発研修は7%,相談・申出窓口は38%,情報交換の枠組みは33%の事業場で行われており,事業場規模が大きいほどこの割合が高かった。従業員数50人未満の小規模事業場においては,事業場内産業保健スタッフのいる事業場で啓発研修(20%),相談・申出窓口(52%),情報交換の枠組み(48%)の実施割合が産業保健スタッフのいない事業場よりも高かった。両立支援のための各種労務管理制度の導入割合は1~3割で,時間単位の休暇および傷病休暇・病気休暇は,事業場規模が大きいほど導入割合が高かった。過去3年間に私傷病で退職した従業員・がんに罹患した従業員の有無と両立支援のための職場環境・労務管理制度の有意な関連はなかった。ガイドラインを認知していた事業場では,従業員数50~299人の中規模事業場では所定労働時間の短縮がより多く実施されていた。

    結論 両立支援ガイドライン認知の割合は低く,さらなる周知が望ましい。両立支援のための職場環境・労務管理制度の導入割合は一部先行研究よりも高く,事業場規模,産業保健スタッフの有無による違いを認めた。

  • 愛知県K市役所職員における検討
    安達 内美子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 111-120
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 名古屋市及びその周辺地域の食文化の一つである喫茶店のモーニングサービス(以下,MS)を勤労者はどのように利用しているのか,利用にあたって期待していることは何かを記述し,勤労者の「健康な食事」実践に係る食環境づくりを検討するための一資料とする。

    方法 2010年1月,愛知県K市役所全職員966名に対し,健康とMSを含む食生活に関する質問紙調査を行った。同意が得られた878名のうち,MS利用の有無に関する質問に回答があった837名(男性246名,女性591名)について解析を行った。

    結果 調査時の前1年間,MSを定期的に利用している者(定期的利用群)は男性6.5%,女性5.1%,利用することはあるが,定期的に利用しているわけではない者(不定期利用群)は男性52.8%,女性52.1%,利用していない者(非利用群)は男性40.7%,女性42.8%だった。定期的利用群と不定期利用群では男女共にMSで主食,主菜,副菜がそろったメニューを食べている者が50%を超え,「家族」と利用する者の割合が最も高かった。その上,男性では「職場の仲間」「ひとり」で利用することがある者も少なくなかった。女性では「友人・隣人」と利用することがある者が多かった。MS利用の期待について,男女共に,食事づくりの効率・経済性を期待する「食事を作らなくてよい,料理しなくてよい,後片付けしなくてよい」を選択した者が多かった。加えて男性では,家庭的な雰囲気を期待する「新聞,雑誌などを読む,またはテレビなどを観ることができる」,自由な時間を期待する「時間をつぶすことができる」が多かった。女性では,コミュニケーションを期待する「友人など人と会うことができる」,安らぎを期待する「くつろぐことができる」が多かった。女性の非利用者でMSに関心のある者は,MS利用の期待が大きかった。

    結論 地域に根づいているMSを「健康な食事」の実践ができる身近な場として活用していくためには,現在利用している人々の期待に応えることに加えて,女性非利用者の期待に応えていくことが重要と考えられた。

  • 山崎 嘉久, 佐々木 渓円, 小澤 敬子, 加藤 直実, 中根 恵美子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 121-127
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
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    目的 乳幼児健康診査(以下,「乳幼児健診」とする。)後のフォローアップの現状を踏まえて,事業評価に向けたフォローアップの概念を検討すること。

    方法 フォローアップを「対象者の状況変化について,期間・時期を定めて確認する業務」と定義し,研究協力が得られた愛知県内20市町から得られた平成27年度のフォローアップ状況に関する記述からフォローアップ対象項目を抽出した。フォローアップの目的から,①疾病スクリーニング後の経過観察・結果確認,②発達状況の確認,③支援対象者の状況把握に分類し,フォローアップ項目ごとに,集計の有無とその活用状況を整理した。整理データを用いて協力市町と保健所の母子保健担当者等と討論し,フォローアップの概念について検討した。

    結果 協力市町から集約した158件の自由記述から,フォローアップ対象項目として23項目を抽出し,①疾病スクリーニング後の経過観察・結果確認10項目(48件),②発達状況の確認5項目(67件),③支援対象者の状況把握8項目(43件)に分類した。フォローアップ結果を集計していたのは158件中74件(46.8%),集計データを活用していたのは38件(24.1%)であった。

     事業評価に向けた検討では,フォローアップ業務を「健診後のフォローアップ」と「支援対象者のフォローアップ」に区別し,前者を①疾病のスクリーニング後の経過観察や医療機関受診後の結果を確認する業務,および②発達状況の確認や③支援の対象者に対して,乳幼児健診時点では受診や支援の対象ではないが「気になる状況」を確認する業務,後者を,②発達支援の対象者や③支援の対象者に,個別支援や支援事業を実施した後の状況変化を確認する業務とすることで,現場の状況を的確に評価できる可能性が示唆された。

    結論 乳幼児健診後のフォローアップを「対象者の状況変化について,期間・時期を定めて確認する業務」と定義し,フォローアップ業務を「健診後のフォローアップ」と「支援対象者のフォローアップ」に区別して集計することが,乳幼児健診の事業評価の標準化に必要である。

  • ―ミニマム・リクワイアメンツ質問紙調査を活用した検討―
    若杉 早苗, 鈴木 知代, 仲村 秀子, 伊藤 純子, 川村 佐和子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 128-136
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 自治体保健師の健康危機管理実践能力 (以下、危機実践能力) の実態を調査し, 災害対応の経験の有無と災害看護や健康危機管理 (以下、災害看護等) を学習する機会の有無が, 危機実践能力の習得にどのように影響しているかを明らかにし, 保健師教育への示唆を得ることを目的とした。

    方法 A県内の35市町保健センターに所属する自治体保健師525名を対象とし, 郵送法による自記式質問紙調査を実施した。調査項目は, 全国保健師教育機関協議会が作成した, 卒業時までに必ず習得する最低限の技術として作成した, 保健師教育におけるミニマム・リクワイアメンツ1) (以下、MR) の5つの実践能力のうち, 「実践能力Ⅲ」の地域の健康危機管理能力〈個人・家族〉に着目し調査票を作成した。実践能力の3つの中項目に含まれる41の行動目標の到達度を「ほとんど難しい」「やや難しい」「だいたいできる」「とても良くできる」の4件法で回答を求めた。分析は, 危機実践能力に関する自己の到達度評価と「保健師組験年数」「災害対応の経験の有無」「災害看護等の学習経験の有無」との関連について実施した。本研究は聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得て実施した。

    結果 回答を得た253名 (回収率48.2%) のうち, 無回答又はデータの欠損の多かった2名を除く251名 (有効回答率99.2%) を分析対象とした。自治体保健師が「到達できている」と回答した危機実践能力の3中項目「1. 健康危機管理の体制を整え予防策を講じる判断能力」では, 11の行動目標のうち5項目 (45%), 「2. 健康危機発生時に対応する能力」では, 21行動目標のうち13項目 (61%), 「3. 健康危機発生後からの回復に対応する能力」では, 9行動目標のうち7項目 (77.7%) に「災害対応の経験」の有無との有意な関連が確認された。「災害看護等の学習経験の有無」は, 保健師学生時は41行動目標中3項目に, 保健師就業後は, 41項目中17項目に有意な関連を示した。

    結論 自治体保健師の危機実践能力に関する自己の到達度評価の高さは, 災害対応の経験あるいは災害看護等の学習経験を有することと有意な関連を示した。

  • 伊藤 尚子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 137-143
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
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    目的 分散居住地域の在日コリアン高齢者における、社会との結びつきと抑うつ傾向の関連を明らかにした。

    方法 東海地区に居住する在日コリアンで、研究参加の同意を得られた65歳以上の高齢者134名を対象とした。調査方法は、識字の問題がある場合でも対応が可能な個別訪問調査法とした。調査項目は、Geriatric Depression Scale 5(GDS-5)、基本的属性(性別、出生地、年齢、世帯構成、婚姻状況、治療中の疾患)、家族・親戚・友人との面会頻度や電話等での交流頻度、趣味を楽しむ頻度、外出頻度、近所つきあいの程度とした。GDS-5が2点以上を抑うつ傾向ありとして、上記項目と抑うつ傾向との関連を示しオッズ比と95%信頼区間を推定した。さらに、ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性別、出生地、治療中の疾患、婚姻状況を調整した調整オッズ比を推定した。

    結果 GDS-5による抑うつ傾向者が47.8%にみられた。抑うつ傾向者は、朝鮮半島で生まれ日本に移民した在日コリアン1世高齢者(65.6%)が、日本で生まれた在日コリアン2世高齢者(42.0%)に比較して有意に高かった(p=0.025)。年齢、性別、出生地、治療中の疾患と婚姻状況にかかわらず家族親戚と電話などの間接的なやり取りをする頻度(傾向性 p<0.01)、友人と直接会う頻度(傾向性 p<0.01)、友人と電話など間接的なやり取りをする頻度(傾向性p=0.07)、外出頻度(傾向性 p<0.01)、趣味を楽しむ機会(傾向性 p=0.02)が少ない群ほど抑うつ傾向の割合が有意に高くなる傾向がみられた。

    結論 在日コリアン高齢者の精神的健康の保持増進のためには、在日コリアン高齢者が家族友人と交流を持つ機会を作ることや高齢者が近隣で社会活動を確保できる場所づくりが必要であることが示唆された。

  • 過疎地域での通所介護サービス調査結果の検討
    杉井 たつ子
    2017 年 5 巻 1 号 p. 144-150
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 地域で生活する高齢者の通所介護サービスに関するニーズと利用の実態を把握し,利用に影響する要因を分析する。

    方法 過疎地域のA町を対象地域に選定した。高齢者を対象とした質問紙による通所介護サービスの利用に関する意向調査と,施設を対象とした通所介護サービス施設の利用状況に関する聞き取り調査を実施した。両者の比較をとおして,高齢者の通所介護サービスの利用に影響する要因を分析した。

    結果 通所介護サービスの利用に関する意向について高齢者人口(2013.1現在)の5.5%に相当する地域在住高齢者187人から回答を得た。利用条件は,移動手段の確保が最も多く,通所可能な地域は町内と合併前の旧町内が多かった。

     通所介護サービスの利用者は町内4施設合計197人であり,女性が多く,後期高齢者が全利用者の92.9%を占めた。高齢者人口で見た利用率は5.8%であった。

     利用者の99.0%が送迎サービスを利用し,施設までの片道所要時間は平均10.4分であった。利用回数は,週3-4日が49.2%を占め,週4日以上利用した者の世帯は,単身世帯以外の利用者が有意に多かった。

    結論 通所介護サービスの利用者は移動時間が少ないほど多い傾向があり,地域在住高齢者の通所介護サービスの利用に関する意向と合致していた。また,ニーズが高いと予想される単身高齢者の利用が,その他世帯よりも低い状況であることが明らかとなった。

  • 英 礁子, 山崎 亨, 池田 若葉, 田島 和雄, 笽島 茂
    2017 年 5 巻 1 号 p. 151-160
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 わが国における合計特殊出生率は,近年上昇傾向にあるが,先進国の中では最低水準にある。また合計特殊出生率には地域格差が存在し,三重県内の市町間でも差が生じている。この要因を検討することは,今後迎える超高齢化社会や地域医療問題への対応を考える上で重要である。本研究では三重県の市町別に,合計特殊出生率の地域格差に関連する社会的要因について探索的に分析した。

    方法 三重県29市町を調査対象とし,国勢調査や人口動態統計,または公開されている2010年~2014年の行政情報を収集した。先行研究に基づき,人口・世帯,住居,労働,医療,福祉,経済・行政基盤に関連する26項目を社会的要因として抽出した。

     市町別にみた合計特殊出生率の違いを,地理情報分析支援システムMANDARAを用いて観察した。また経年推移を観察するため,同期間の合計特殊出生率と出生数総数の抽出を行い,各市町における5年間の平均合計特殊出生率と平均出生数,それらの標準偏差について算出の上,記述した。

     上記の社会的要因(2010年~2014年)を説明変数,合計特殊出生率(2014年)を目的変数として投入の上,ステップワイズ法にて重回帰分析を行った。解析にはSPSS ver.22.0およびSAS ver.9.4を使用し,両側検定5%を有意水準とした。

    結果 2014年の合計特殊出生率は伊勢志摩・東紀州地域で高く,北中勢・伊賀地域において低い傾向があり,地域格差が認められた。県の平均値は1.53(標準偏差0.24)であり,北勢にある木曽岬町で0.90と最小,東紀州にある御浜町で2.08と最大であった。

     重回帰分析の結果,第一次産業就業者比率,完全失業率において合計特殊出生率と正の関連を認め,一方女性の未婚率,保健師数,保健衛生費では合計特殊出生率と負の関連がみられた。

    結論 三重県においては人口規模や財政力が小さく,農林漁業の産業構成割合が高い市町ほど合計特殊出生率が高い傾向である可能性が示唆された。また,晩婚化,晩産化の進行,女性の社会参加や高学歴化といった社会的背景が合計特殊出生率の低下に影響している可能性が示唆された。

     より有用な分析結果を得るためには,出生・死亡だけではなく,転入,転出といった社会的な人口移動を含めた指標を解析する必要があると考えられる。さらに,今回の生態学的研究で得られた要因についての仮説を基に,既婚者を含め適齢期の男女を対象として,出産をアウトカムとした個人レベルでの縦断的な分析を行う必要性が示唆された。

  • 実施状況と接種方針の比較
    佐々木 渓円, 浅井 洋代, 山本 由美子, 小澤 敬子, 山崎 嘉久
    2017 年 5 巻 1 号 p. 161-169
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 任意接種で予防可能な感染症対策に資するため,定期接種委託医療機関における任意接種の実施状況と接種方針について調査した。

    方法 平成25年に愛知県内の定期接種委託医療機関2632施設を対象とした自記式質問紙調査を行い,820施設から回答を得た。すべての項目に回答した診療所649施設を対象とし,B型肝炎,ムンプス,水痘およびロタウイルスワクチンについて,その実施状況と接種方針(接種推奨度,必要性など)を調査した。接種推奨度は,「子どもの家族から接種をすべきかどうかの相談があった時に接種を勧めますか」とする質問文に対する,5段階のリッカートスケールで定義した。

    結果 B型肝炎(268施設,38.0%)とロタウイルス(253施設,35.9%)ワクチンの実施率は,ムンプス(399施設,56.6%)や水痘(398施設,56.5%)ワクチンと比較して低値であった。ムンプス,水痘およびロタウイルスワクチンの公費助成がされていた6自治体の医療機関では,これらの接種実施率が有意に高かった。また,ロタウイルスワクチンについては,医療機関における接種推奨度の高さと公費助成との関連が認められた。内科のみを標榜する施設と比較すると,小児科のみを標榜する施設では,すべてのワクチンの実施率および接種推奨度が高く,ムンプスおよび水痘ワクチンの早期接種や合併症予防のために接種が必要とする方針が多かった。

    結論 定期接種委託医療機関における任意接種の実施率,接種推奨度および必要性に関する方針は,公費助成や標榜科と関連があった。特に,小児科標榜施設は,任意接種の実施率が高いだけでなく,その必要性を保護者に示し,接種を推奨する情報源になる可能性が示された。

  • 原岡 智子, 中村 寿子, 尾島 俊之
    2017 年 5 巻 1 号 p. 170-174
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 将来看護職となる看護学生の災害被災地での公衆衛生支援活動に対する認識を明らかにすることを目的とする。

    方法 A大学看護学科の2014年度3年生82名、2015年度3年生67名の計149名を対象に2014年と2015年の6月に災害時公衆衛生支援活動に関する自記式質問紙調査を行なった。調査項目は、巨大地震等に対する看護学生の認識と、将来看護職として被災地での被災者のための公衆衛生支援活動に対する認識としての被災地での公衆衛生支援活動への希望と支援活動のために"できていればよいこと"であり、それぞれについて記述統計学的分析を行った。

    結果 巨大地震に多少関心がある、本県への人的・物的被害が多少あると思う、また自然災害による本県の被害発生は多少あると思うが最も多かった。将来看護職として被災地での公衆衛生支援活動を希望するものは99.2%であり、活動希望率の平均は77.2%であった。さらに、被災地での公衆衛生支援活動のために"できていればよいこと"と思う内容は、感染症対策の評価・対応、必要な情報の収集・提供などであった。

    結論 看護学生の巨大地震や自然災害への認識、将来看護職としての災害被災地での公衆支援活動に対する認識が明らかになった。

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