東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
Print ISSN : 2187-736X
8 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 堀江 孝太朗, 平川 仁尚, 江 啓発, 北村 亜希, 青山 温子
    2020 年 8 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 特定健康診査(特定健診)は、生活習慣病予防対策として保険者に義務付けられており、受診率を向上させる努力がなされている。しかし、公的医療保険において被扶養者となっている女性配偶者の受診率はなかなか向上していない。本研究の目的は、女性被扶養者の特定健康診査受診要因を明らかにすることである。

    方法 2018年2月に全国健康保険協会愛知支部が実施した特定健診受診者のうち、調査への協力が得られた女性被扶養者21名(40歳代10名、50歳代3名、60歳代6名、70-74歳2名)を対象とし、約30分間、受診動機、特定健診に対するイメージや要望等に関する半構造化面接を行った。面接内容を録音して、逐語録を作成し、テキストデータを質的内容分析により分析した。

    結果 受診行動に関連する要因として、次の7項目が抽出された。受診しやすい場所: 馴染みのある場所で健診を受けたいと望んでおり、小さい子どものいる者は、子どもの一時預かりサービスがあれば受診しやすいと考えていた。健康不安: 病気にかかっているかもしれないという危機感から、受診を決断していた。健診項目の説明:バリウム服用が身体に負担となる胃部X線検査を、特定健診の必須項目と勘違いして受診をためらっていた者がいた。かかりつけ医がいないこと: 定期的にかかりつけ医を受診しているのでわざわざ健診を受診する必要がないと考える者がいた。健診への信頼:血液検査の結果で異常なしと言われると安心する者がいた。心理的・経済的・時間的コストの低減: 健診申込みや受診は面倒くさいと考える者がいた。非正規雇用のパートタイム労働者として就労している者は、同じ職場の正規雇用労働者と比べて、健診を受けるという理由で休みを申請することをためらっていた。また、受診費用の負担を心配していた者もいた。周りからの働きかけ: 家族、友人、同僚など周囲の人々と健康について話したことがきっかけとなって受診した者がいた。

    結論 女性被扶養者が特定健診を受診するのに、育児、非正規雇用労働者の立場、かかりつけ医がいるという安心感、検査への不安と自己負担費用などが、妨げとなっていた。これらを軽減する支援が、育児、就労など女性のライフステージに応じて行われるべきである。

  • 太田 綾乃, 大野 和佳奈, 佐々木 彩乃, 瀬川 夕蘭, 田中 咲帆, 宮野 みのり, 宮本 梨央, 山内 千尋, 近藤 今子
    2020 年 8 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 小学校での給食時の食育に関する指導の実態を残菜量との関連も含め把握し,クラスの担当教諭と栄養教諭との連携による小学校での給食時における食育の一層の推進を図るための基礎資料を得る。

    方法 調査は平成30年9月に春日井市内小学校から選定した9校のクラスを担当する教諭計180人を対象に,自記式無記名で行った。分析は回答があった149人(回収率82.8%)を対象とした。単純集計以外に残菜の有無別の給食時の指導項目の「児童の習得」,「給食以外の取り組み」,「栄養教諭・栄養職員の関わりがある」およびマナーに関する具体的な指導項目の「児童の習得」の得点(各項目ありを1点とした合計点)をt検定,さらに,残菜減への雰囲気づくり,学級経営の給食重視,給食時の指導項目毎の「児童の習得」,「給食以外の取り組み」,「栄養教諭・栄養職員の関わりがある」,マナーに関する具体的な指導項目毎の「児童の習得」との関連をカイ二乗検定により検討した。

    結果 給食時の指導項目では「栄養のバランス」に対して,栄養教諭・栄養職員の関わりがある(69.1%),および関わり希望 (38.2%) が共に最も高かった。マナーに関する具体的な指導項目では「偏食をしない」に対して,栄養教諭・栄養職員の関わり希望が最も高かった(41.6%)。残菜なしの場合,有意に給食時の指導項目の「児童の習得得点」(残菜あり3.9,残菜なし5.0),「給食以外の取り組み得点」(2.4,3.5),「栄養教諭・栄養職員の関わりがある得点」(2.0,3.7) が高く,残菜減への雰囲気づくりに努め(36.3%,74.3%),学級経営の給食重視(51.8%,73.5%)をしていた。さらに,残菜なしの場合は,給食時の指導項目13項目中「児童の習得」では3項目,「給食以外の取り組み」では5項目,「栄養教諭・栄養職員の関わりがある」では7項目が,マナーに関する具体的な指導項目9項目中「児童の習得」で2項目が有意に良かった。

    結論 クラス担当教諭は栄養教諭・栄養職員に,偏食の改善や栄養のバランスおよび食文化に関する項目に関わることを求めていた。残菜がない場合は,給食時の指導項目の児童の習得,給食以外での取り組み,および栄養教諭・栄養職員の関わりがある,マナーに関する具体的な指導項目の児童の習得,残菜減への雰囲気づくり,学級経営の給食重視のいずれも良好であった。

  • 米倉 登美代, 中村 美詠子, 木村 雅芳, 尾島 俊之
    2020 年 8 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 地域で行なう減塩指導で活用するため,「24時間蓄尿体験会」で得られたデータを用いて,ナトリウム排泄量,カリウム排泄量および24時間蓄尿中ナトリウム/カリウム比率(mEq/mEq)(以下,ナトカリ比)を評価することを目的とした。

    方法 対象は,静岡県西部健康福祉センター職員および管内7市町職員および食生活推進員とし,2018年10月1日又は15日の提出にあわせ,起床後第2尿から,翌日の起床後第1尿まで24時間尿比例採集器(ユリンメート®を用いた1/50採尿)により採集(ナトリウム,カリウム,クレアチニン,尿一般検査)した尿および自記式食塩摂取量チェック票(「お塩のとりかたチェック票」)および問診票(性,年齢,自己申告の身体計測値,食塩摂取量に関する意識等)データを用いた観察研究(横断研究)を実施した。

    結果 女性74人(参加者89人中,除外基準該当者および男性を除く)の結果から,24時間蓄尿中ナトカリ比と年齢や体重との関連は見られなかった。減塩に対する意識の高い人のナトカリ比は(2.91)で,意識の低い人(3.87)より有意に低く,食塩排泄量が少ない人のナトカリ比は(2.59)で,食塩排泄量が多い人(3.51)より有意に低く,カリウム排泄量が多い人のナトカリ比は(2.54)で,カリウム排泄量が少ない人(3.65)より有意に低かった。

    結論 地域で行なう減塩指導においては,食塩摂取量を減らし,カリウム摂取量を増やすことを目指すが,ナトカリ比という客観的指標を活用することにより,より効果的な減塩指導が期待できる。

  • 大西 丈二, 進藤 信子
    2020 年 8 巻 1 号 p. 90-93
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 愛知県および三重県の各市町村が定め公表されている個人情報保護条例のうち,学術研究に関する条項の有無を把握するとともに,当該市町村における医学系学術研究の活動度との関連を明らかにする。

    方法 本研究は,愛知県および三重県内の全市町村を対象とし,各市町村の個人情報保護条例において,「研究」の語が含まれるか否かを調査した。2019年4月現在,全市町村において,個人情報保護条例がインターネットで確認することができ,本調査はすべてWEBから情報収集を行った。各市町村の学術発表については,医学中央雑誌(医学中央雑誌刊行会)に掲載されている,2018年に市町村職員によって報告された研究発表数を数えた。

    結果 個人情報保護条例の中に学術研究の語が含まれたのは,83自治体中58自治体(69.9%)であった。そのうち愛知県は54自治体のうち40自治体(74.1%),三重県は29自治体のうち18自治体(62.1%)であった(p = 0.187)。学術発表は,愛知県の市町村では平均0.44 ± 1.28件(平均±標準偏差,以下同),三重県では0.10 ± 0.31件であった(p = 0.068)。学術発表の件数は,学術研究に関する条項が有る自治体では平均0.34 ± 1.00件,無い自治体では0.28 ± 1.21件で,条項有無による有意な差はなかった(p = 0.800)。

    結論 愛知県および三重県の全市町村の個人情報保護条例において,学術研究に関する条項が有るのは69.9%であった。個人情報保護条例の有無によって,医学系学術研究発表数に有意な差は認められなかった。

  • 木村 薫, 石井 譲治, 片山 幸, 中村 保尚, 榛葉 玲奈, 山田 敬一, 明石 都美, 柴田 伸一郎
    2020 年 8 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 HIV(human immunodeficiency virus)感染の早期発見・早期治療のためにHIV検査,中でも受検者の利便性が高い即日検査の果たす役割は大きい。保健所等でおこなわれる即日検査ではスクリーニング検査にイムノクロマト(IC)法を原理とする迅速検査試薬が用いられるが,我が国のように感染率の低い集団においては陽性適中率が低くなることが問題となる。本研究では,HIV即日検査において迅速性を損なうことなく陽性適中率を上げることを目的とし,IC法による追加検査の有用性について,推奨法であるゼラチン粒子凝集(PA)法と比較検討した。

    方法 2014年9月~2018年10月に名古屋市保健所で定例的に実施されたHIV検査会で採血された21,347検体の内,PA法および現在国内で認可されている2種類のIC法(IC法-A,IC法-Bとする)のいずれかのスクリーニング検査で陽性となった218検体にそれとは異なるスクリーニング検査法で追加検査を実施し,結果の比較検討を行った。

    結果 スクリーニング検査PA法の陽性適中率はIC法-A,IC法-Bの追加検査により22.9%からそれぞれ90.5%,86.4%に上昇した。同じくIC法-Aの陽性適中率はPA法,IC法-Bの追加検査により45.1%からそれぞれ92.7%,91.1%,IC法-Bの陽性適中率はPA法およびIC法-Aの追加検査により36.4%からそれぞれ80.0%,66.7%に上昇した。追加検査間の有意差はなかった。

    結論 HIV即日検査においてIC法を原理とする迅速検査試薬を追加検査に用いることにより,迅速に,より陽性適中率の高い検査の実施が可能であることが示された。

  • 井倉 一政, 牛塲 裕治, 長谷川 真子, 齋藤 希望, 児玉 豊彦
    2020 年 8 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では中学3年生のストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルの関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 A市の公立B中学校の3年生を対象として、無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は、性別、ストレスコーピング特性簡易評価尺度ジュニア版(以下BSCP-J)、ソーシャルキャピタル尺度(以下SC)を用いた。下位尺度の関連の検討は、Spearmanの相関係数を算出した。すべての検定において、p<0.05を統計学的に有意差ありとした。調査期間は2016年10月であった。

    結果 質問紙は85人に配付し、76人から回答を得た(回収率89.4%)。BSCP-Jの下位尺度の得点は、「気分転換」がもっとも高く、次いで「積極的な問題解決」であった。SCの下位尺度の得点は、「社会的信頼」がもっとも高かった。「積極的な問題解決」、「解決のための相談」、「気分転換」、「発想の転換」の4項目は互いに有意な正の相関を示した(相関係数0.400~0.627)。また、残りの2項目である「他人に感情をぶつける」と「がまんと先送り」が有意な正の相関を示した(相関係数0.286)。また、「積極的な問題解決」と「発想の転換」は、「互恵性」、「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められ、「解決のための相談」は「互恵性」、「社会的信頼」と正の相関が認められた。また、「気分転換」は「社会的信頼」、「身近な社会規範の遵守」と正の相関が認められた。

    結論 ストレスコーピング特性とソーシャルキャピタルは多くの項目で正の相関が認められた。また、ソーシャルキャピタルを醸成することは、中学生がストレスに対処する力を養成することにつながる可能性が考えられた。

  • 中出 美代, 竹内 日登美, 井成 真由子, 服部 しげこ, 黒谷 万美子, 田中 秀吉, 川俣 美砂子, 原田 哲夫
    2020 年 8 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2020/07/11
    公開日: 2020/07/30
    ジャーナル フリー

    目的 内容やタイミングも含めた朝食習慣と,保育園児の睡眠習慣や生活リズム,育児での困りごとになる行動・心身の不調との関連について検討した。

    方法 2018年1月から2月に,保育園15園の園児とその保護者を対象に質問紙調査を実施して回答を得た (回収率68.5%)。質問紙には,Torsval&Åkerstedt (1980) 版朝型・夜型質問紙およびその乳幼児用改変版,食習慣,育児での困りごとになる幼児の行動や心身の不調に関する項目を含んだ。解析には,4-6歳児833名 (男417名,女416名) とその母親のデータを用いた。

    結果 毎日朝食を摂取する子どもは98.9%であったが,毎日定時に朝食を摂る子どもは63.5%,主食・主菜・副菜を揃えた栄養バランスの良い朝食を毎日摂る子どもは28.6%であった。良好な朝食習慣 (毎日定時に主食・主菜・副菜の揃った食事を摂る) をもつ子どもは22.2%で,そうでない子どもより,就寝時刻,起床時刻とも早かった他,その母親の起床時刻も早く,母子ともに朝型のリズムを示した。また,朝食習慣が良好な子どもでは,「いらいらする (機嫌が悪い)」,「気分にムラがある」,「食欲がない」,「便秘をする」,「朝,なかなか起きない」などの行動や不調がないものが多かった。

    結論 良好な朝食習慣は,子どもの朝型の生活リズムをもたらし,育児における困りごとを減少させる可能性が示唆された。また,保護者の生活の夜型化は,単品摂取の増加や時刻の不規則など朝食習慣の問題と関連することが示された。今後,保育園児の朝食の食育では規則的な摂取や朝食内容の向上に取り組むとともに,保護者自身の夜型化を是正することが必要である。

feedback
Top