東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
Print ISSN : 2187-736X
9 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 丹下 文恵, 平川 仁尚, 臼井 友乃, 北村 亜希, 江 啓発, Yupeng He, 青山 温子, 八谷 寛
    2021 年 9 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 運輸・運送事業所で働く職業ドライバーは中高年層男性が多く, 不規則交替制勤務や夜間業務などに従事しており, とくに中小事業所における労働環境はより厳しい。運転中の脳血管疾患・心疾患などによる事故は増加傾向にあり, 職業ドライバーの生活習慣病対策は喫緊の課題である。生活習慣病予防には食習慣改善が不可欠であるが, 中小事業所では健康栄養指導に関わる専門人材が不足している。本研究の目的は, 中小運輸・運送事業所の職業ドライバーの, 食習慣の実態と課題を質的分析により明らかにすることである。

    方法 2018年9月から2019年1月, 中小規模の運輸・運送事業所9社 (バス4社, タクシー2社, トラック3社) の健康管理者12名, ドライバー36名を対象とし, 個別または2-6人のグループに対して, 60分程度の半構造化インタビューを行った。録音記録を逐語的に文書化し, テキストデータをコンテンツ・アナリシス法により分析した。

    結果 質的分析により, 11カテゴリーが帰納的に抽出され, さらに以下の5テーマに概念化された: (1) 食事時間と場所の制約; (2) 食事への気遣い; (3) 食べすぎがちな仕事; (4) 食事を残す罪悪感; (5) 家族・健康管理者からの支援。テーマ・カテゴリーを意識および環境の側面から検討し, 食生活改善に無関心; 食べすぎがちな仕事; 食事を残す罪悪感; および食事時間と場所の制約は, 健康的な食習慣の阻害要因となっており, 少しでも健康的な食事の心がけ; および家族・健康管理者からの支援は, 促進要因となっていた。

    結論 中小事業所の職業ドライバーの食習慣改善には, 簡便な健康的な食品選択法の開発や, 本人の行動変容ステージ評価に基づいた個別指導の継続が有効であると考えられた。職業ドライバーの健康を支援する健康管理者の役割は大きく, 健康管理者が生活習慣病予防についての知識を深め, 外部機関と連携した取組みを進めることが必要と考えられた。

  • 岐阜県における後期高齢者健診(ぎふ・すこやか健診)のデータを用いて
    小島 ひとみ, 中塚 美帆, 小林 和成
    2021 年 9 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 岐阜県における後期高齢者医療制度被保険者のぎふ・すこやか健診(以下,健診)の特徴,及び健診の有用性を明らかにする。

    方法 岐阜県後期高齢者医療広域連合において,平成27年から平成29年までの3年間に蓄積された健康診査の結果169,216件分をデータベースとした。受診回数による比較をするため,平成27年度の健診受診時点の年齢が75歳以上の者53,662人(男性21,689人,女性31,973人)を分析の対象とした。健診受診者の基本属性,受診回数別に身長,体重,血圧,脂質検査,血糖検査,肝機能検査,問診項目等との比較検討を行った。次に,各種疾病の有無を目的変数として,性別に年齢を調整変数,受診回数を説明変数としたロジスティック回帰分析にてオッズ比を算出し,健診の有用性を検討した。

    結果 健診受診回数が増える程,血液データの代表値は基準値に近い傾向にあり,服薬や疾病罹患は管理できていた。生活習慣病の有無に対する受診回数のオッズ比は,男性の75歳以上85歳未満においては0.918(95%CI:0.852-0.989,p=0.024),糖尿病の有病に対する健診の受診回数のオッズ比は男女の75歳以上85歳未満,85歳以上おいて0.889(95%CI:0.842-0.989,p<0.001),0.898(95%CI:0.818-0.985,p=0.023),0.863(95%CI:0.822-0.906,p<0.001),0.914(95%CI:0.851-0.983,p=0.015)であった。

    結論 後期高齢者の健診受診者の特徴は,健診の受診回数が多い者程,服薬や疾病罹患は管理できており,医療管理下にあっても継続的に健診を受けることの有用性が示された。

  • 地域への愛着・自然との共生意識に着目して
    中塚 美帆, 石原 多佳子, 纐纈 朋弥, 小林 和成
    2021 年 9 巻 1 号 p. 84-90
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では,先行研究の少ない,中山間地域に居住する高齢者を対象として,中山間地域のソーシャル・キャピタルの構成要素に成り得る「地域への愛着」や「自然との共生意識」に着目して主観的健康状態との関連を明らかにすることを目的とする。

    方法 岐阜県(A市),群馬県(B町)に住む公民館活動等に参加している65歳以上の高齢者を対象に無記名自記式質問紙による集合調査を実施し406人から回答を得た。一次分析は各調査項目の基本統計量を算出し,二次分析としてソーシャル・キャピタル(以下,SC)の各因子の構成項目の内的整合性の確認のため信頼性分析を行った。内的整合性を確認した上で,各項目が主観的健康状態に与える影響の程度を明らかにするために,年齢,性別,出身を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。分析は統計解析ソフトIBM SPSS statistics 27を用いた。なお,有意水準は5%(両側)とした。

    結果 調査対象者406人の平均年齢は75.1±5.9歳,性別は「男性」113人(27.8%),「女性」292人(71.9%)であった。主観的健康状態は「良い/まあ良い」209人(51.5%),「ふつう/あまり良くない/良くない」192人(47.3%)であった。主観的健康状態とSCの構成項目「地域に対する気持ちや態度」(オッズ比(以下,OR):1.102,95%信頼区間(以下,CI):1.040-1.167,P=0.001),「自然との関係性」(OR:1.207,95%CI:1.085-1.343,P=0.001)で正の関連性が認められた。「地域の人や近所の人との人間関係」(OR:0.997,95%CI:0.937-1.060,P=0.914),「地域内の関係性」(OR:0.888,95%CI:0.720-1.095,P=0.267),「政治意識」(OR:1.069,95%CI:0.869-1.315,P=0.529)では関連性は認められなかった。

    結論 中山間地域に居住する高齢者のSCの構成要素になり得る「地域への愛着」や「自然との共生意識」は主観的健康状態と良好な関連があることが示唆された。

  • 加藤 善士, 李 媛英, 松永 眞章, 八谷 寛, 太田 充彦
    2021 年 9 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 職域男性における加熱式タバコと朝食習慣・飲酒習慣の関連を探索すること。

    方法 2019年4月から6月の間に,労働安全衛生教育・THP研修を受講した異なる企業からの参加者(819人)に自記式質問紙調査を実施した。男性(679人)を分析対象として,朝食習慣(朝食欠食)・飲酒習慣(毎日飲酒)と喫煙習慣(タバコの種別),性別,年齢,業種,企業規模等との関連をカイ二乗検定で調べたのち,関連のあった項目を調整して,朝食習慣・毎日飲酒を目的変数,喫煙習慣を説明変数とする2項ロジステック回帰分析を行った。

    結果 対象者のうち40歳以上が63.5%,業種は製造業が75.4%,従業員数1,000人以上企業に所属する者が40.2%を占めた。現喫煙者は対象者の37.7%(加熱式タバコのみ10.2%,通常タバコのみ19.0%,両者併用が8.5%),朝食欠食者は31.8%,毎日飲酒している者は18.9%であった。朝食欠食の割合は通常タバコのみ,または加熱式タバコとの併用者でそれぞれ45.3%,43.1%と高く,次いで加熱式タバコのみの使用者で34.8%,非喫煙者で30.5%,過去喫煙者で19.6%であった (P<0.001)。朝食欠食の非喫煙者を基準としたオッズ比(年齢及び業種を調整)は通常タバコのみの使用で2.04(95%信頼区間:1.28–3.26)であった。毎日飲酒する者の割合は,通常タバコと加熱式タバコとの併用者で34.5%と最も高く,通常タバコのみで27.3%,加熱式タバコのみで26.1%と過去喫煙者の19.5%,非喫煙者の8.9%より高かった(P<0.001)。毎日飲酒の非喫煙者を基準としたオッズ比(年齢及び役職等を調整)は,通常タバコと加熱式タバコの併用で4.90(2.33–10.3),通常タバコのみの使用で3.54(1.93–6.50),加熱式タバコのみの使用で2.97(1.44–6.14)であった。

    結論 職域男性では,通常タバコ,加熱式タバコ, その併用のいずれの喫煙も毎日飲酒と関連し,併用者で最も関連が強かった。朝食欠食は通常タバコの利用と関連した。喫煙習慣と朝食欠食・毎日飲酒の関連は利用するタバコの種類により異なる可能性がある。

  • 原 華代, 前野 真由美, 形岡 洋光, 岩﨑 圭介, 榎本 信雄
    2021 年 9 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 定住する外国人へ向けた効果的な情報提供のあり方を検討することを目的とした。

    方法 「外国人のための無料健康相談と検診会(以下,検診会)」における23年間の報告集に掲載されている内容をデータとし「受診者数」「検査項目」「広報活動」「この検診会をどこで知りましたか」の活動状況と情報提供手段を整理し単純集計した。さらに,静岡県中部地域における2020年Covid-19流行状況下(以下,Covid-19流行下)のオンライン相談会の報告と併せて効果的な情報提供のあり方を検討した。

    結果 静岡県中部地域で毎年1回開催されている「検診会」23年間の受診者総数は2,112人であった。受診者数の平均値(±標準偏差)は91.8(±31.9)人,検査項目で血液検査実施無しの2009,2010,2020年の平均受診者数は49人であった。広報活動では,チラシの配布・送付を毎年実施していた。「この検診会をどこで知りましたか」の項目は,2001年から2019年の期間のみアンケートにて回答を得た(複数回答)。2001年~2019年の受診者総数1,794人の内,アンケート回答者1,640人から得た結果は,「友人」が最も多く860人(52.4%),「その他」453人(27.6%),「職場」196人(12.0%)「マスコミ」186人(11.3%)であった。「その他」の内訳は,家族,知人,先輩,学校,教会,市役所,インターネットなどであった。2020年11月Covid-19流行下では,QRコードと電話から申込みを受けオンライン相談会を実施した。相談会当日は,パソコンを使用したビデオ通話の準備と,要望がある場合は医療通訳者もオンライン参加できるよう準備した。その結果,相談者は4人であり,4人全員が双方向型ビデオ通話ではなく電話を用いた相談であった。

    結論 検診会の23年間の活動について情報提供手段に着目し検討したところ,多くの受診者は友人などの周囲のコミュニティから情報を得ていたことが明らかになった。2020年11月,Covid-19流行下での健康相談会の開催を通して,これまで行ってきた紙媒体による情報提供手段から電子媒体やインターネットの利活用を検討する機会が生まれた。23年間の活動状況とオンライン相談会の状況を統合し検討した結果,今後在留外国人へ向けた効果的な情報提供のあり方として「友人・知人のつながり」と「ソーシャルメディア」を融合させることにより効果的で双方向のものに促進できる可能性が示唆された。

  • ―看護学生による地域住民を対象にした災害に関するアンケート調査―
    田中 健太郎, 阿部 誠人, 伊藤 颯希, 井上 歩柚, 纐纈 朋弥, 小林 和成
    2021 年 9 巻 1 号 p. 104-113
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は、地域住民の災害に関する認識等を明らかにし、地域の実情に応じた、継続的な社会貢献活動を行うための基礎資料を得ることを目的に調査研究を行った。

    方法 岐阜大学が立地する岐阜市黒野地区での市民運動会にて、看護学生による社会貢献活動の一環として地域住民を対象にした、災害に関するアンケート調査を実施した。調査対象者は、市民運動会に参加した20歳以上の地域住民であり、記載方法は無記名自記式調査票とした。調査項目は、「性別」「年齢」「職業」「同居家族の有無」「居住年数」などの基本情報に加え、「居住地域」「災害への意識」「災害への取り組み」「地域住民相互の助け合い・災害時要援護者」に関する内容とした。

    結果 アンケート調査票は221名の方から回収を行い、有効回答数は210名(男性:127名、女性:83名)であった。地域の特徴としては、「住民のつながりや助け合いがある」と回答した割合が46.2%であった。災害に関連する設問では、「高齢者等の支援方法を決める」と回答した人は男性で3.1%、女性で2.4%、「常備薬・内服薬」の準備状況については、男性で26.0%、女性で22.9%という結果であった。また、地域住民相互の助け合い・災害時要援護者に関する設問では、「地域の中心となるリーダーを養成する」が男性で29.9%、女性で27.7%、「地域で子どもへの防災教育への機会を増やす」が男性で27.6%、女性で31.3%という結果であった。

    結論 地域が持つ強みや、災害への意識や取り組みなど、地域の現状や課題を把握することが出来たことは、大きな意義があった。また、災害への備えや地域全体の防災力を高めていくための方策を、地域の実情に合わせて検討することが出来たことは、今後の社会貢献活動への応用にもつながる重要な基礎調査であった。

  • 若杉 早苗, 川村 佐和子
    2021 年 9 巻 1 号 p. 114-123
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 東日本大震災(多重災害)を受け,平時の行政機能が崩壊した被災直後の混乱期(災害フェーズ0・1期)において直面した, 保健師が平時の経験では対応しきれず困難と課題となった保健活動(以下, 困難と課題)を明らかにし, 災害時の保健活動に関する示唆を得ることを目的とする。

    方法 本研究は,地震,津波,福島第一原子力発電所の事故(以下,原発事故)の多重災害を受けた地域を調査対象とし, 行政機能が崩壊した被災直後の混乱期(発災後3日間以内)に,保健師が保健活動を行なう際に直面した, 困難な状況と課題について半構造化面接法による調査を行った。調査期間は, 2016年2月~2018年12月。全文の逐語録を意味ある文節ごと切片化し,コミュニティーの組織的機能DRC(Disaster Research Center Typology)類型1) 2)(以下, DRC類型)のタイプ別に分類した。平時にはやっていない新たに発生した業務:Emergent(Type4)に着目し,“困難と課題”を質的帰納的統合法により分析した。

    結果 多重災害を受けた6地域のうち3地域から調査協力を得た。研究参加者は女性保健師11名。経験年数は26.4年(10年~30年)。抽出された1018文節のうち,DRC類型Type4:Emergentは424文節(41.7%)。課題解決過程の“困難と課題“が155文節で36.6%,“保健活動”が269文節で63.4%であった。保健活動を行なうにあたり保健師が直面した“困難と課題”の内訳は, 「計画外避難所の対応」が287文節中75文節で26.1%, 「原発事故」が89文節中54文節で60.6%,「津波被害の対応」が48文節中26文節で54.2%であった。保健師が直面した困難と課題には, 津波被害の影響による低体温症や泥水の汚染対応,原発事故の発生による国の強制力のある避難指示に対する被災住民の不安と恐怖の広がりに対するストレス対応, 計画外避難所での崩壊した医療の再構築の難しさに直面するなど, 平時の業務では対応経験のなかった困難が確認された。保健活動の困難と課題は, 時間の経過とともに質や量が重層化し継続していたこと, 行政の指示命令が極めて少ない中で平時の経験や範囲を超えた先見性を求められ困難を感じていたことであった。

    結論 今後起こり得る大規模災害に備え危険回避能力を高めていく為にも,フィジカル・アセスメント等の看護技術(臨床判断)を含め,経験年数が少ない保健師でも何を優先して活動すべきか見定め, 先見性を持ち行動していけるような卒後教育や初学者教育の充実が必要である。

  • 水田 明子, 岡本 玲子, 加藤 美保子, 尾島 俊之
    2021 年 9 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 保健師が行う在留外国人に対する保健指導の内容を明らかにする。

    方法 質的記述的研究方法を用いた。調査対象は静岡県の保健師8人で,4人ずつ2グループに分けて令和元年12月から令和2年1月フォーカスグループインタビュー調査を行った。逐語録から,保健師が外国人に対して行った保健指導に関する内容を含む最小単位を切片化し,共通する概念により抽象度を上げてコードを生成,さらにサブカテゴリー化,カテゴリー化を行い分析した。

    結果 研究対象者は全員女性で,年代は30代から50代,経験年数は14年から31年であった。所属は保健所3人,市町村4人,企業1人であった。220の切片,45のコード,15のサブカテゴリーと6のカテゴリーが生成された。保健師が行う外国人に対する保健指導の6つの概念は,【背景理解と生活状況の把握】【コミュニケーション】【個人の尊重】【関係性の構築】【保健指導の実施と評価】【支援体制の構築と政策化】であった。

    結論 保健師が行う外国人に対する保健指導は,外国人の【背景理解と生活状況の把握】から始まり,多様な方法を駆使して【コミュニケーション】を図り,異文化の理解と個別性の考慮により【個人を尊重】した公正な態度で接していた。継続的で共感的な関りによる【関係性の構築】,信頼できる身近な相談者となって【保健指導の実施と評価】を行い,さらには地域の関係者,関係機関との連携を図るために【支援体制の構築と政策化】が必要と考えていた。在留外国人の個別の健康問題だけでなく,地域の関係者,関係機関との連携による生活の保障を含めた包括的な支援が必要であることが示唆された。

  • 中出 美代, 川田 尚弘, 井成 真由子, 原田 哲夫, 杉山 由佳, 松島 佳子, 竹内 日登美
    2021 年 9 巻 1 号 p. 131-137
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 大学生アスリートを対象に,競技力によって食習慣や食意識,睡眠習慣など生活習慣の管理に差異が見られるかについて,競技力の異なるチームに属する学生の間で比較検討を行った。

    方法 2016年12月,大学生サッカー部部員を対象に自記式質問紙調査を実施し,18~23歳の111名 (男性) から回答を得た (回収率100%)。調査内容は,食習慣,食意識,健康感,睡眠習慣,朝型・夜型質問紙 (Torsval&Åkerstedt (1980) 版) などである。①朝食摂取頻度,食事の規則性 (②朝食・③夕食),主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度 (④朝食・⑤夕食),⑥睡眠時間,⑦概日タイプ度の7項目について,良好を1として合計点 (1~7点) を算出し生活管理能力得点とした。分析は,競技力の高いAチームと控えチーム (B,C,D) に分け,競技力による食習慣の乱れや食意識と睡眠習慣の差異について,χ2検定およびMann-Whitney U-testなどによって検討した。

    結果 食習慣では,競技力の高いAチームの方が朝食を定時にとる割合が有意に高く (p = 0.010),主食・主菜・副菜を揃えた食事をとる頻度も高かった。また食意識についても,競技力の高いチームの方が,食事状況や栄養摂取についての評価が高かった。平日の平均睡眠時間は,Aチームが7時間40分,控えチームが6時間52分と50分ほどの開きがあり (p < 0.001),睡眠時間の充足度もAチームの方が高かった。概日タイプ度では,Aチームの方が朝型の傾向を示した。生活管理能力得点の平均得点は,Aチーム4.20点 (公式試合のスターティングメンバーのみでは5.27点),控えチーム2.40点であった。生活管理能力得点と食意識,健康感の間で,生活管理ができているほど食意識が高く,かつ健康と感じているという有意な相関がみられた。

    結論 競技力の高いチームの方が総じて生活管理能力が高かった。食や健康に対する意識の高さが自己管理能力の高さにつながり,実際に健康感も高まると思われる。食意識を高めるような啓発活動と,基本的な食習慣・生活習慣の改善が,学生アスリートの競技力向上に有効である可能性が示唆された。

  • 小林 美奈子, 森田 久美子
    2021 年 9 巻 1 号 p. 138-145
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 本研究の目的は,地域在住の高齢女性の認知的ソーシャルキャピタルに影響する諸要因を検討することである.

    方法 A県B町保健センターで行われている健康教室に参加している,60歳以上の活動的な女性を対象に, 無記名自記式の調査を実施した。調査項目は,基本属性,生活習慣,睡眠満足度,健康関連QOL(SF-8の下位尺度8項目)の他,高齢者版スピリチュアリティ健康尺度(下位尺度6項目)を独立変数として加え測定した。従属変数は藤田らの認知的ソーシャルキャピタル5項目の総得点とした。分析はステップワイズ法による重回帰分析を行った。

    結果 152人を郵送配布し129人(回収率:84.9%)が回収され,欠損値がない105通(有効回答率:69.1%)を分析対象とした。平均年齢73.1歳であった。笑う頻度,睡眠満足度,スピリチュアリティ下位尺度のよりどころ,SF-8の下位尺度の心の健康スコアはソーシャルキャピタルスコアと正の関連があり,主観的健康感,日常役割機能(精神)は負の関連があった。

    結論 ソーシャルキャピタルに関連する要因として,睡眠の満足度,日常で笑う機会,人生の困難を乗り越えてきた心の支えとなる「よりどころ」を強く感じていることが認められた。主観的健康感, 精神的日常役割機能がソーシャルキャピタルと負の関連を示した。

  • -保健師が認識している実践能力の分析から-
    小西 真人, 小西 亜紀奈, 小林 和成, 石原 多佳子
    2021 年 9 巻 1 号 p. 146-154
    発行日: 2021/07/03
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー

    目的 新任期保健師が身に付けるべき実践能力の認識の構成を明らかにすることである。

    方法 全国の自治体の保健師経験年数5年未満の新任期保健師926名を対象に,無記名自記式質問紙による個別郵送法を実施し,163名から回答を得た。調査項目は基本的属性,及び厚生労働省等が提示するガイドラインを参考に,組織人,個人・家族・小グループ,集団・地域,施策化,健康危機管理,自己管理と自己啓発の6カテゴリー83項目とした。分析は単純集計,及び天井効果・床効果,相関係数・偏相関係数を確認した上で,固有値が1以上のガットマン・カイザー基準,及び研究仮説に基づく6因子に固定した因子分析(主因子法・プロマックス回転)により新任期保健師の実践能力の認識の構成を検討した。

    結果 有効回答数162名を分析対象とした。調査対象者の年齢は27.40±3.89歳,性別は「女性」154名(95.6%),職種は「保健部門」が125名(77.2%)と最も多かった。項目分析により83項目から55項目を抽出し因子分析を行った結果,6因子は全て固有値が1以上で妥当な因子構造を確認することができた。6因子は〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕・〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕・〔健康危機管理をする力〕・〔個人・家族への支援と社会資源を活用する力〕・〔行政職,保健師としての基礎力〕・〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕と命名した。因子間相関では〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕と〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕で高い正の相関(r=.705),〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕は〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕を除く全ての因子と弱い正の相関(r=.291~.056)が確認された。Cronbachのα係数は項目全体で.972,各因子で.943~.781と高い値を示し,内的整合性は担保されていた。

    考察 新任期に身に付けることができる能力として〔行政職,保健師としての基礎力〕・〔個人・家族への支援と社会資源を活用する力〕がある一方,〔地域の組織化,ネットワーク化とその運営する力〕・〔個人・家族・小グループの課題解決のための事業化する力〕は実地による経験が必要である可能性が推察された。また,〔健康危機管理をする力〕・〔活動に研究成果を活用,研究開発する力〕については実地による経験から身に付けることが困難であると推察された。

feedback
Top