目的 運輸・運送事業所で働く職業ドライバーは中高年層男性が多く, 不規則交替制勤務や夜間業務などに従事しており, とくに中小事業所における労働環境はより厳しい。運転中の脳血管疾患・心疾患などによる事故は増加傾向にあり, 職業ドライバーの生活習慣病対策は喫緊の課題である。生活習慣病予防には食習慣改善が不可欠であるが, 中小事業所では健康栄養指導に関わる専門人材が不足している。本研究の目的は, 中小運輸・運送事業所の職業ドライバーの, 食習慣の実態と課題を質的分析により明らかにすることである。
方法 2018年9月から2019年1月, 中小規模の運輸・運送事業所9社 (バス4社, タクシー2社, トラック3社) の健康管理者12名, ドライバー36名を対象とし, 個別または2-6人のグループに対して, 60分程度の半構造化インタビューを行った。録音記録を逐語的に文書化し, テキストデータをコンテンツ・アナリシス法により分析した。
結果 質的分析により, 11カテゴリーが帰納的に抽出され, さらに以下の5テーマに概念化された: (1) 食事時間と場所の制約; (2) 食事への気遣い; (3) 食べすぎがちな仕事; (4) 食事を残す罪悪感; (5) 家族・健康管理者からの支援。テーマ・カテゴリーを意識および環境の側面から検討し, 食生活改善に無関心; 食べすぎがちな仕事; 食事を残す罪悪感; および食事時間と場所の制約は, 健康的な食習慣の阻害要因となっており, 少しでも健康的な食事の心がけ; および家族・健康管理者からの支援は, 促進要因となっていた。
結論 中小事業所の職業ドライバーの食習慣改善には, 簡便な健康的な食品選択法の開発や, 本人の行動変容ステージ評価に基づいた個別指導の継続が有効であると考えられた。職業ドライバーの健康を支援する健康管理者の役割は大きく, 健康管理者が生活習慣病予防についての知識を深め, 外部機関と連携した取組みを進めることが必要と考えられた。
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