目的 セルロースを有機溶媒に溶解し, これを, 湿式紡糸することにより, 従来, 工業的に製造されている再生セルロース繊維とは, 異なる物性をもつ新しい繊維製造の可能性を検討した.有機溶媒として, ジメチルホルムアミド/クロラール/ピリジン混合溶媒を使用し, 紡糸に適した溶媒組成, セルロース濃度を決定し, 種々の方法で湿式紡糸を試みた.得られた繊維のIR, X線回折パターン, tanδ-温度特性, 動的弾性率, 強伸度, 断面形状等を市販の再生セルロース繊維 (キュプラおよびレーヨン) と比較した.
結果 その結果得られた繊維は, 1) II型の結晶型をもつ完全再生セルロースである, 2) その結晶サイズは, 市販再生セルロースに比し, 約10Aぐらい大きい, 3) tanδ-温度特性曲線上, 280℃に新しいαa 吸収ピークを持ち, また, その動的弾性率が280℃以上で低下する等, その無定型領域の構造が, レーヨン, キュプラとは異なる, 4) 断面形状は, 真円に近いスキンーコアタイプであることなどが判明した.強伸度, 結晶配向性, 室温における動的弾性率は, 市販再生セルロース繊維, 特にキュプラと同程度であった.
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