Poly (P-phenylene terephthalamide) 繊維 (PPTA繊維) の微細構造の特徴を明らかにすることを目的とした.PPTA繊維の典型例としてKevla 49を中心に, (1) 屈折率の絶対値を決定し, (2) b, c軸の配向度を定量的に評価し, さらに, (3) 無定形領域内分子鎖の配向を評価するために, 主として干渉顕微鏡, 電子顕微鏡を使用した.干渉顕微鏡の結果を解析して, a, b, c軸方向の屈折率, nα, c≦1.579, nβ, c≦1.764, nγ, c≧2.13および無定形領域内部の分子鎖の鎖軸方向1およびそれに垂直方向の屈折率それぞれnγ, a≧2.13およびn (α+β) /2, a≦1.498を得た.Kevla 49については, (1) c軸の配向関数は繊維の周辺部で1.0, 中心部では0.6~0.8, (2) b軸は半径方向へ配向し, この配向関数は周辺部で0.8, 中心部で0.2~0.4, (3) 無定形領域内部の分子鎖の繊維軸方向への配向は周辺部で大きくなる, (4) 無緊張状態下にある分子鎖, tie分子鎖および伸びきり分子鎖で構成される無定形領域量 (体積分率) はそれぞれ0.10, 0.02, 0.17と推定される, (5) 凍結割断面には繊維軸方向に周期300~500nmの起伏状の層状構造と, 繊維軸に走行する幅10nmのミクロフィブリルが存在する, (6) 繊維軸方向に1μmの周期で屈折率の変動が起こる, ことが明らかとなった.実験結果 (1) ~ (6) から, PPTA繊維の微細構造モデルとして, 幅5~10nm, 長さ300~500nmのブロック状基本単位を繊維軸方向に連結させた微細構造モデル “フィブリル状ブロック構造モデル” を提案した.
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