目的 羊毛の防縮を目的とした樹脂加工において, プラズマ処理を行わない試料では樹脂量をかなり増加させなければ, 収縮を改善することは困難である.羊毛にプラズマ処理を行うと収縮率を減少できるが, さらに樹脂加工と併用すると, 非常に良好な防縮性が得られる.これは繊維に接着している樹脂が洗濯によって剥離, 脱落することが少なくなるためと考えられる.ここでは繊維に対する樹脂の接着状態が洗濯耐久性に影響すると考え, プラズマ処理によって接着の状態がどのように変化するかを光学および電子顕微鏡を用いて観察した.成果 前処理としてプラズマ処理を行ってから樹脂加工すると防縮性が大きく改善されるが, 光学および電子顕微鏡観察によって, 樹脂の接着状態が防縮性の向上に大きく影響することが分かった.プラズマ処理を行った後樹脂加工をした羊毛織物では, 樹脂が大きく塊らないため繊維間接着の各箇所の長さが小さくなることが分かった.接着箇所が点となることで繊維間接着部の洗濯に対する耐久性が向上し, 洗濯中に繊維間接着部の存在が単繊維の移動を抑制するため防縮性が向上するものと考えられる.また, 樹脂が大きく塊らず, 繊維表面に拡がり, 多くの箇所でスケールエッジを覆い隠している.さらに繊維表面に薄い樹脂の被膜層を形成することが分かった.羊毛繊維の表面を樹脂が覆うことによって洗濯中における繊維同志の接触が減少するとともに, さらにスケールエッジが滑らかになるためスケール間のかみ合いが大幅に減少したものと考えられる.
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