新合繊布の標準試料集を試料にして官能検査を行い, 薄起毛調, ドライタッチ調, ニューシルキー調, そ毛調の四つのグループに分類した.分類された新合繊布の触感覚の特徴が力学的計測の摩擦と圧縮から抽出できないかを目的に実験を行った.結果は次のようにまとめられる.(1) 薄起毛調とドライタッチ調のグループ間については, 摩擦係数の値から識別しやすいことが分かった.(2) グループ間およびグループ内の試料間の特徴抽出をする場合, 摩擦の接触端子形状, 触速度, 押圧力の測定因子に加えて, 評価のための因子, 例えば本研究では摩擦力の頻度分布曲線の平均値, 半値幅, 裾広がりの因子の選択が重要であることが分かった.(1) 端子形状ではライン状端子が表面の凹凸や織構造をとらえやすい. (2) 触速度の増減に対してドライタッチ調の試料の摩擦係数が大きな影響を受けた. (3) 押圧力w<6 (gwt) ではドライタッチ調の試料の摩擦係数は押圧力の影響を受けなかった. (4) 押圧力が増加するとすべての試料で摩擦係数が小さくなるとともに, 一定値に収束し表面の特徴をとらえられなくなる.また押圧力を軽減すると, 薄起毛調では摩擦係数の統計的な分散性が大きくなること, 逆にニューシルキー調では分散性が小さくなることの各グループの新合繊布固有な特徴が観測された. (5) 圧縮仕事量がニューシルキー調とそ毛調の差を抽出するのに有効であった.(3) 摩擦の平均値と頻度分布のピーク値の10%となる分布幅および圧縮仕事量と圧縮回復率を評価軸にとれば四つのグループの識別が行えることを示した.
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