本研究は, たて方向の織物のひずみ硬化現象を呈示し, 検討している.この現象は, 織物の製造過程での可塑的な変形に由来しており, 織物の伸長応力― ひずみ曲線の形で, 通常たて糸方向での勾配がより大なこと, すなわち, 物理的に言えば, たて糸方向はより伸長しにくいということに直接反映している.織物の可塑的ひずみの異方性の影響の証明の一っとして, たて糸の断面積が, 同じ糸で作られている場合, よこ糸の断面積より通常小さくなっているということがある.可塑的ひずみの原理に基づき, 織物中の長手方向の糸の可塑的ひずみの計算を行った.その結果は, 統計的にみて, 織物中のたて糸はプラスの, または伸長可塑的ひずみを持ち, よこ糸はマイナスのひずみを持ち, それが織物中のたて糸をよこ糸より伸びにくくしていることを示している.また, たて, よこ糸方向間の可塑的ひずみの差は, △EMT, △WT並びに△RTと比例的な関係にあることが分かった.
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