ばね論文集
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1983 巻, 28 号
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  • 小曽根 敏夫, 横手 信久, 栗本 衛
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 1-5
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    破壊じん性試験は, ばね鋼の特に硬い領域におけるじん性を評価するうえで有効な手段となりつつある. 最近の自動車用懸架ばねに用いられるコイルばねでは, へたりを抑えるために硬くなる傾向にあるが, そのように硬くなった領域においては従来の衝撃試験では精度が低くなり, 適用が困難であった.
    本研究は, JISで規定されたばね鋼と, さらに代表的ばね鋼であるSUP 6とSUP 7にCrをはじめとする典型的添加元素を加えた実験ばね鋼について, 破壊じん性試験によるじん性評価を試みたものである. その結果, JIS規格ばね鋼では, Cr-V鋼であるSUP 10が最高の破壊じん性値を示したのに対し, SUP 9AとSUP 11Aは最低の値を示した. また最も多くSiを含むSUP 7にCrを添加した場合には, 破壊じん性値を急激に低下させることが明らかになった. さらにSiの影響としては, Si-Mn鋼におけるSi量を1.60-2.50%の間で変化させても破壊じん性値はほとんど変化しないことがわかった.
  • 綾田 倫彦, 東野 豊之, 井上 関次
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 6-13
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    金属の熱間成形において, 変形能及び変形抵抗を知ることは, 製造上, 不可欠である. それらは, 回復, あるいは再結晶による組織変化とも密接に関連していると思われる.
    日本鉄鋼協会においては, 1977年以来, 高温変形に関して系統的な研究がなされている. しかしながら, ばね鋼についての研究は, 極めて少ない.
    そこで, 本報告は, ばね鋼の室温から熱間に至る変形能及び変形抵抗を調査することを目的とするものである.
    この結果, 変形能及び変形抵抗は, 青熱脆性域とA3変能点直下で, 各々, 極大, 極小を示すことを明らかにした.
    また, ばね鋼の熱間変形抵抗式として, 志田の式が適用され得ることを明らかにした.
  • 第3報 腐食期間の影響
    元津 彰夫
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 14-22
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    腐食した試験片のねじり疲れ強さを調べるために, 筆者は二段二重繰返し変動ひずみ下で3か月, 6か月および12か月間腐食した0.84%Cを含有するピアノ線を用いてねじり疲れ試験を行った.
    得られた主な結論は次のように要約される.
    (1) 3%食塩水中で腐食したピアノ線の疲れ強さは空気中よりも非常に低い. 疲れ強さの減少の割合は3つの腐食期間の中で3か月間腐食した試験片が最も小さく, 12か月間腐食した試験片が最も大きい.
    (2) 直線被害則を用いて得た空気中での一段の変動ひずみ振幅下のねじり疲れ試験結果から, 腐食材の疲れ寿命の推定が可能である.
    (3) 試験結果を両対数目盛にプロットした時, ヒステリシスエネルギの総和と破壊までの繰返し数および変動ひずみ振幅の総和との間には直線関係が存在する.
  • 小泉 義明, 林 博昭, 下田 秀明
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 23-38
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    日本においては, ばね用ステンレス鋼線としてSUS 304-WPBが広く用いられている. 耐疲労性あるいは耐熱性が要求される特殊な用途ではSUS 631 JI-WPC (17-7PH) が適用されている. 近年 (1980年), 米国において, サブゼロ伸線法によって強化された高強度の新しいばね用ステンレス鋼線がASTM A 313規格にType 302 Class 2として加えられた.
    上記の各種ばね用ステンレス鋼線及びSUS 304 N2鋼によるばね用鋼線についての機械的性質, 疲れ特性, 耐食性などの比較試験を行なった. その結果, 耐熱性においてはサブゼロ伸線した線はSUS 304-WPBとSUS 631 JI-WPCの中間の特性をもっていた. 耐疲労性では, サブゼロ伸線した線はSUS 304-WPB及び一般のSUS 631 JI-WPCよりすぐれていた.
  • 国井 敏弘, 池田 昭, 武鎗 孝史
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 39-45
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    接点やはんだ付け性などの機能を併せ持った安価で多機能なばね材料の開発を目的として, りん青銅板にはんだを積層した材料を試作し, 接触抵抗やはんだ付け性及びクリープ特性について検討を行い次の結果を得た.
    (1) はんだ積層りん青銅板の接触抵抗とはんだ付け性は, 温度40℃, 相対湿度90% R. H. 温湿度試験後でもほとんど変化せず, きわめて良い結果が得られた.
    (2) 積層はんだ成分による接触抵抗とはんだ付け性の安定性については, Sn 65%, Pb 35%はんだの方がSn 90%, Pb 10%はんだより良好である.
    (3) はんだ積層りん青銅板のクリープ変化率は, りん青銅素材と比較するとやや大きい値を示す.
    (4) はんだ積層りん青銅板は接触片用材料として利用が期待できる.
  • 井上 関次
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 46-54
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    自動車の軽量化の一環として. スタビライザ (アンチロールバー) の中空化が始まっている. 本論文は中空スタビライザの設計に関するものである. 中空スタビライザに生じる応力分布の構成が実験的に求められ, 中実スタビライザにくらべて, 全く異なった応力構成をしていることが確認された. パイプ係数を適用することによって, 中空スタビライザの設計応力の予測が可能となった. また, 応力測定の実測値は有限要素法による計算値と良く一致することも確認された. ここで得られた設計法に基づいて, 疲労試験によって, 中空スタビライザに適切なパイプ材料について有益な実験結果も得られた.
  • 樋口 順一, 神谷 修二
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 55-59
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    車両の軽量化のため, 中空材を使用したスタビライザが実用化されている. 中空スタビライザは成形により, 曲げ部が偏平になるため, 実働応力が計算値より大きくなる. 本論文は, この実働応力を簡便に求める方法について述べたものである. 偏平の要因として, 曲げ半径, 板厚, パイプ外径を取り上げ曲げ度合を定義し, これより実働応力の予測が可能となり, 寿命予測, 最適材料選択が出来る様になった. さらに, 溶接ビード, ショットピーニング, 腐食による耐久性への影響についても明らかになった.
  • 小泉 義明, 下田 秀明, 斉藤 鉄夫
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 60-71
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文では, 疲れ試験また実際の使用中に疲労破壊した線ばねの疲労破面を電子顕微鏡により観察し特徴を述べた.
    ばね疲れ試験により破壊した弁ばね用シリコンクロム鋼線とピアノ線の疲労破壊起点部は次の3形態に分類された.
    (a) 疲労破壊の起点は形金属介在物でありフィシュアイが生じた破面形態
    (b) 疲労破壊起点部にせん断型初期き裂が存在する破面形態
    (c) 疲労破壊起点部に引張型初期き裂が生じた破面形態
    また実際の使用中に, 素面疵, フレッティング, ショットピーニング処理の不足, 脱炭, 腐食が原因して破壊した破面例の特徴について述べた.
  • 対馬 一憲, 久納 孝彦, 斉藤 邦茂
    1983 年 1983 巻 28 号 p. 72-80
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    内容を要約すると次のとうりである.
    1. 圧縮コイルばねの成形中の形状曲線を直線と円弧とからなると仮定すると, 解析結果と実験結果とがよく一致する.
    2. 1本ピンコイリングにおいては, D/dから大きくなるとワイヤガイドラインとワイヤガイド出口からコイリングピンまでのラインとのなす角はばね指数に無関係に一定となるので, コイリングピンの移動は, ワイヤガイドラインに対して一定の方向に行なうことが望ましい.
    3. コイリングピンを心金軸方向に沿って, 平行に動かすと, 必要なピッチづけが行なえる. しかも, ピッチづけを上述の方法で行なっても, 実験範囲内 (D/d=7-17) では, ばね指数D/dは変化しない.
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