ばね論文集
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1984 巻, 29 号
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  • 西畑 三樹男, 林部 芳彰, 阿部 昇平
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 1-5
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ベリリウム銅に, はんだを積層し, その機械的性質および耐食性について検討した。
    (1) 冷間加工したはんだ積層ベリリウム銅は, 表面および密着性は良好で耐食性もすぐれている。 引張強さ, 硬さ, ばね限界値は, はんだ無しのものよりもやや低下するが, 疲れ強さははんだの影響をうけない。
    (2) はんだ積層ベリリウム銅は, 300℃程度の熱処理を行なってもはんだは剥離しない。 一方, 機械的強度は310℃付近で, はんだ無しのものと同様最高値を示した。
  • 新倉 芳治, 川口 茂, 佐藤 繁美
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 6-11
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    形状記憶合金はエネルギー変換機能 (熱エネルギーから力学エネルギー) を有する機能材料として注目され, 応用開発が活発に行われており, 現在までにいくつかの形状記憶合金ばねの応用製品も見受けられる。
    近年, 形状記憶合金に関する系統的な研究がなされているが, 形状記憶合金ばねの特性に関する研究報告例はまだ非常に少ない。
    そこで, 本報告はTiNi形状記憶合金の材料としての最適熱処理条件を求め, 材料およびばねにおける特性から形状記憶あるいは超弾性としての使用可能範囲を検討することを目的とした。
    その結果, TiNi形状記憶合金の最適熱処理温度は, 変態点の温度ヒステリシスおよび回復力から500℃であることがわかった。 また, 材料の使用可能範囲は応力95kgf/mm2以下, 温度はMs点+115℃以下であり, ばねとしての使用可能範囲はせん断ひずみ3.7-6.0%以下, 温度はMs点+127℃以下であることがわかった。
  • 下関 正義, 早坂 善広
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 12-18
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    従来から, 重ね板ばねの解法に使用されてきた板端法は, 微少変形理論に立脚したものであるため, その適用範囲は線形解析に限られている。 しかし, 板ばねに関する現象には, 非線形なものが少なくない。 こうした問題を対象として, FEMのうちで最もシンプルなRBSM法を適用してみる。 とり上げる主なテーマは, トラックサスペンションの挙動とセッチングの二つである。 いずれにおいても実測値との良好な一致を示す。
  • 下関 正義, 早坂 善広
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 19-29
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    コイルばねなど空間曲線をその中心線にもつようなばねは多い。 しかし, ばねの設計式, 特に応力解析の方法はいまだ確立されておらず, 工業的にもいろいろな問題が表面化してきている。
    我々は, コイルばねの応力分布を解析するために, 空間曲がりはりの基礎式であるWittrickの式を適用し種々なタイプのコイルばねの応力解析を試みた。 なおこの一連の徴分方程式を解くのは難しいため, ある程度, 精度を犠牲にしても, 簡便かつ汎用的な差分法により定式化している。
    その結果, 研削座, 無研削座の解析において, 座巻部の境界条件並びに座金との接触状態の解明がなされた。 また本解析法の妥当性を実験的に験証できた。
  • 小山 博, 北村 朗, 丹下 彰
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 30-37
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    自動車の懸架ばねは, 軽量化ニーズによりますます高応力条件で使用されるようになってきている。 このためばね硬さも硬い側へと移行してきており, 従来より懸念されていた切欠き感受性の問題はいっそう重要なことがらとなっている。 本論文では高硬さ化にともなう切欠き感受性を定量化するためにSUP 7, 6およびSAE 9254の疲労き裂伝播特性の硬さによる影響を破壊力学的立場から調査したものである。
    結果は以下のとおりである。
    (1) 疲労き裂伝播特性は3鋼種による差は小さく本調査の範囲内では硬さに大きく依存する。
    (2) 中間速度域の疲労き裂伝播速度は硬さの関数としてパリス則による定式化ができ, 硬いものほどき裂伝播速度は大きいことがわかった。
    (3) 下限界応力拡大係数範囲は硬さの増加とともに低下し切欠き感受性の増加がわかる。
    (4) 高速度域については調査していないが硬さの増加とともに破壊じん性値が低下することから硬くなるにつれ高速度域の疲労き裂伝播速度も大きくなると推定される。
    (5) 疲労破面様相は応力拡大係数範囲および硬さに大きく依存することがわかった。
  • 武藤 睦治, 田中 紘一, 迫田 秀一, 中村 正久, 甘粕 知一郎
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 38-47
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    重ね板ばねの疲れ寿命を低下させる要因の一つに, リーフ間の接触と繰返し曲げ応力に起因するフレッティング疲れがある。
    本研究では, 通常の疲れ試験機を用いたばね鋼小型試験片の共材およびスペーサ材 (デルリン) による簡便なフレッティング疲れ試験を行った。 その結果, 以下のことがわかった。
    (1) SUP9鋼の通常疲れおよびフレッティング疲れの疲れ限度は, それぞれ620MPaおよび320Hpaでありフレッティングによる疲れ限度および疲れ寿命の低下は著しい。
    (2) フレッティング疲れき裂の伝ぱ過程は, 接触表面で強い塑性変形の影響を受けて発生・伝ぱするデブリ状き裂, 接触による応力集中の影響を強く受け伝ぱする第1段階き裂, 応力集中の程度が低くなり第1段階き裂から次の第2段階き裂への遷移領域に相当する第1'段階き裂, および応力集中部から抜け出して伝ぱする第2段階き裂に特徴づけられる。
    (3) ブリッジ材が共材である場合の摩擦係数は, 相対すべり振幅にともない増大し, 約0.6近傍で飽和する傾向がある。
    (4) スペーサとしてブリッジ材にデルリンを挿入した場合の寿命改善は顕著で, 疲れ寿命は通常疲れの場合のそれにほぼ等しい。
  • 谷本 好則
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 48-57
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    近年電子機器などに使用される各種精密機能部品用ばねはより小型, 軽量化の要求があり, これによりばね用細線に対する強度向上の要求が強まっている。 従来より, これらの精密ばね材料は高弾性, 高疲労強度と共に, 良好な耐食性を必要としている。 ばね用ステンレス鋼線は, すぐれた耐食性, 耐熱性を持つもののピアノ線より降伏強さが低いことから, 一般にはばね許用応力の制限がなされている。 本報はSUS 304鋼を用い, 特殊な伸線方法により試作した高強度細径ばね用ステンレス鋼線について, SUS 304-WPB, ピアノ線SWP-Bと機械的性質, 疲れ特性, 耐食性などについて比較検討を行い次の結果を得た。
    (1) 引張強さはJIS規格ピアノ線B種相当である。
    (2) 低温焼なまし処理により, さらにばね特性の改善があった。
    (3) 疲れ限度, 耐へたり性能はSUS 304-WPBより大幅な向上が見られた。
  • 小曽根 敏夫, 加藤 英明, 岩田 守正
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 58-62
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    懸架ばねの腐食に起因する疲労は, 実際の場において比較的早期に剥離してしまう塗膜によっては十分に防ぐことができない。 塗膜に代るものとして, 金属の拡散浸透処理による強固な被膜をばね鋼表面に形成させ, 今回主にその耐腐食性能について調べた。 拡散浸透被膜は, 熱処理前のばね鋼に溶射被覆を行なった後, そのままの状態でオーステナイト域まで加熱する過程で短時間に形成される。 今回, 溶射材料としてAl及びNi-Alを用いた。
    このようにして得た拡散浸透被膜の厚さは約50μmで, いずれの場合も金属間化合物となっており, その硬さもAlの場合でHV 550, Ni-Alの場合でHV 600と高く, さらに腐食に対しても僅かに膜厚を減じる程度でピットを形成しないことがわかった。 さらに, 浸透被膜が50μm程度の場合には, 熱処理後のショットピーニングの効果をそのまま維持し, 疲れ特性を阻害しないことも明らかになった。
  • 斉藤 誠, 葛西 靖正, 水野 正志, 伊藤 幸生, 小山 博
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 63-69
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    新テーパロッド加工法を開発し, プロトタイプマシンによる製造実験を行った。 本方式では, 金属材料の変形抵抗が温度および歪速度に依存することが加工原理となっている。 すなわち, 軸方向に温度分布をもたせた棒材を急速に引張ることにより, 各部分に温度に応じた伸びを生じさせ, 希望するテーパを形成せしめる方法である。 この加工法は, 高い寸法精度を与え, ほぼ100%に近い歩留りで, 生産速度が高く (1本当り20-25秒) かつ省エネルギーといったようないくつかの工業的に重要な要求を満たすものである。
    新加工法によって製造したテーパロッドについて, まず加工部分の特性を調査し, 次に最終製品としてのテーパコイルばねの特性についても調べた。 その結果
    1) 熱処理後の引張特性と疲れ強さは加工によって影響されない。
    2) 新加工法によるテーパロッドと従来の切削法によるテーパロッドから作られたコイルばねを比較した結果, 両者は同程度のばね特性, 疲れ寿命, へたり特性を有する。
  • 久納 孝彦, 対馬 一憲, 水野 正夫
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 70-73
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究はコイルばねの冷間成形における工具配置と製品形状に関する研究の一環として行なわれたもので, コイルピッチにおよぼすピッチツールのリフトおよびコイリングピンの面外変位の影響を理論と実験の両面より明らかにしたものである。 結果を要約すると,
    1) コイリングピンの面外変位はピッチツールのリフトよりピッチへの影響が大きい。
    2) コイリングピンの面外変位によるピッチづけの原因は線のねじれにあり, その定量的な評価が可能である。
    3) ピッチづけ解析には一般に弾・塑性解析が好ましい。
    4) 線と工具の接触状態が結果に大きく影響する。 となる。
  • 対馬 一憲, 久納 孝彦, 水野 正夫, 仲山 浩司, 折原 進
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 74-83
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文では, 切断といしを用いて連続冷間成形コイルを切断したときのコイル座巻部の加工特性について記述している。
    それらの結果を要約すると以下の通りである。
    1) 切込送り速度が増加すると, といし摩耗量が比例的に増加する。 又, といし摩耗量の最も少ないといしはA100Nである。
    2) 連続冷間成形コイルを切断すると, 研削焼け及びばりが発生するが, 熱処理およびショットピーニングを施すとこれらは消滅する。 これらの条件に最も適しているのはWA100Jである。
    3) コイル外側面の傾きはJIS B2707の2級以内に入り, WA100Jのといしを用いると, JIS B2707の1級以内に入るコイル数が増加する。
  • 耐熱用ばね材料調査委員会
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 84-114
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本委員会は高温域で使用される部品の安全設計向上のため耐熱ばね, およびその材料の製造, 使用, 性質に関する調査を行う目的で設置された。
    調査の第一段階として, わが国における耐熱ばねの現状把握のため, ばねメーカ, ユーザ, 材料メーカに対しアンケートを実施した。 アンケートの内容は, ばねの製造, 使用, ばね材料の製造, 問題点と対応策, 耐熱ばね・材料の将来動向などである。
    アンケート回答の解析の結果, 使用温度, 材質, 使用, 応力, ばねの形状, ロットの大きさ, 材料コスト, 設計寿命, 各種問題点などについて有用な情報が得られた。 これらの結果を総合し, 現在最も重要な課題は高温における設計データの収集・体系化であることが結論づけられた。
  • 懸架ばね腐食疲労試験委員会
    1984 年 1984 巻 29 号 p. 115-149
    発行日: 1984/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    自動車用懸架ばねの腐食疲労試験を各種試験条件下で行い, 市場回収ばねと比較検討を行った。 その結果塩水浸漬繰返し応力負荷, 大気中で締付放置の繰返し試験で市場の腐食状況を再現し, かつ試験期間を短縮できる試験条件を見出すことができた。
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