ばね論文集
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1986 巻, 31 号
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  • 山田 凱朗, 小新井 治朗, 川口 康信, 石上 修, 茨木 信彦
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 1-8
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    弁ばね用として広く用いられているSi-Cr鋼オイルテンパー線を用い疲労試験を行い, その破面観察, 疲労寿命と非金属介在物との関係およびSi-Cr鋼オイルテンパー線の欠陥感受性について調査を行った. その結果, 107回までの繰返し数で疲労破壊が起こらなくても, 108回まで試験すると疲労破壊が起こること, 比較的疲労寿命の長い場合には, せん断応力面に沿ってマイクロクラックが発生したのち, 主応力に対して垂直に疲労破壊が進むこと, 疲労寿命の向上には介在物のサイズを小さくすることが必要なことがわかった.
  • 横手 信久, 小曽根 敏夫, 新田 百男, 本間 達, 二沢 喬一郎
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 9-12
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    自動車の車体重量の軽減とばねの高度化により懸架コイルばねの線径は減少の傾向にある. その結果, 最近になって冷間成形ばねが注目を集めるようになってきている. しかし冷間成形コイルばねに用いることのできる材料は, 熱間成形用材料に比べ極めて少ないのが現状である.
    これまで冷間成形用に手に入る材料は, わずかSAE9254があるのみであった. しかしSAE9254は耐へたり性がよくないために高応力化ばねには実質的に適用できないという問題を有している.
    SAE9254自身はばね用オイルテンパー線として長い実績を有している. そしてこのSAE9254の耐へたり性を改善するための添加元素として, 今回V (バナジウム) を選択したが, それはVが材料の熱処理特性に直接影響を与えないので, SAE9254の熱処理技術をそのまま利用できるためである.
    Vの添加により, 耐へたり性と耐腐食ばね疲労の改善を実現することができたが, V添加の最も大きな効果はオーステナイト結晶粒度の微細化である. 結晶粒度はNo. 9.5からNo. 12へと著しく微細化されたが, これが25%の耐へたり性の向上と耐腐食ばね疲労の改善に繋ったものと考えられる.
  • 佐藤 雅志, 松本 幸夫, 斎藤 純幸, 森田 国樹
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 13-21
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    多くの研究者によりコイルばねの応力問題についての研究がなされている. しかし, 円形もしくは長方形断面以外の線を使ったコイルばねの応力解析についてはほとんどなされておらず, H. O. Fuchsによる卵形断面についての簡易設計式が提案されているに過ぎない.
    素線が任意断面のコイルばねの解析手法としては, 等角写像による方法, 有限要素法等が考えられるが, 前者では任意断面の写像関数の決定が困難であり, 後者は大形コンピュータと構造解析プログラムが必要となるのでコストの高い計算となる.
    本論文では, フーリエ展開境界値平均法による任意断面コイルばねの応力解析法と解析例とを示し, 実験結果と比較した. その結果, 本解析法によれば, 実用上充分な精度で任意断面コイルばねの応力解析ができることが確認された.
  • 高橋 邦弘, 中川 力, 水野 正夫
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 22-30
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 線材より成る各種のばねへの応用を考慮し, 一般の曲線棒の変形と強度に関する理論解析を行ったものである.
    一般の曲線棒をコッセラ連続体とみなし, 断面の主軸に関する曲率, 捩率の変化からひずみエネルギーを求め, 仮想仕事の原理によって, 基礎微分方程式および境界条件式を導出した. 解析に際して線形の範囲で理論を展開しており, 断面変形, せん断変形の影響は考慮していない.
    本理論の特徴は, 従来の材料力学に沿った解析であるため, 一般的な取扱いにもかかわらず, 比較的簡単な微分方程式が得られるところにある. 理論解析により基礎方程式として四階の四元連立常微分方程式が得られた. また解析例として, 曲がりはり, 捩れはりについての解析解が閉じた形で得られた.
  • 浜野 俊雄, 佐藤 繁美
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 31-38
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    形状記憶合金を用いたコイルばね (SMAばね) は合金の特性上, 材料非線形, 温度依存性, ヒステリミス現象など通常のばねと異なった特性を示す. そのため, SMAばねの設計に通常のばねの設計式をそのまま適用することができない.
    本報では, SMAばねの力学的性質を通常のばねの支配方程式に即して検討し, SMA素線のねじり試験結果及びSMAばねの荷重試験結果を用いて設計を行うための設計式の導出を行った. また, コンピュータを援用したデータベースを基本とするSMAばねの設計システムを開発し, それによって, 作図による方法では困難であった動作過程での荷重特性や, ヒステリシス現象などの算出が可能になったことを示した.
  • 大森 宮次郎
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 39-46
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    Mn-Cr-Bばね鋼 (SUP 11A) を温度範囲880°-約720℃で50%までの厚さ減少で加工し, ただちにマルテンサイトに焼入れする改良オースフォームによって, 高い強度, 変わらない延性, 良好な衝撃特性および優れた疲労挙動がえられた. 電子顕徴鏡による観察結果は, 通常熱処理鋼には旧オーステナイト粒界に沿った破壊が部分的に生ずることを示した. しかし改良オースフォームした鋼は, そのような粒界破壊は全く起らず, 室温ではもちろん衝撃試験における零下温度でさえも粒内破壊を示した. マルテンサイトラスの微細化, マトリクス中の炭化物の形状, 配列や分布の改善および高温焼もどしで生成する微細なサブグレイン等が, 鋼の強じん化に有益な効果を与えるように思われた.
  • 軸対称品の温度, 組織の解析
    田中 達夫, 脇門 恵洋, 近藤 継男
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 47-53
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    鋼の焼入れ時には, 冷却の不均一性による熱応力と変態膨張による変態応力が発生し, 焼入れ後に歪, 焼割れなどの問題が発生する場合が多い. 特にばね用鋼の炭素量は0.5%以上と高いため, 変態応力による焼割れ発生の現象が起こりやすい. 本報告では, 熱処理時の応力, 歪発生の傾向を明確にする第1段階として, 鋼材丸棒の焼入れ時の温度変化を各種冷却条件に対して数値解析により求め, 温度勾配, 変態組織等を検討した. その結果を要約すると以下のようになる.
    (1) 鋼材の表面温度によって熱伝達率の大きく変化する冷却剤を用いた場合, 一時的に大きな温度勾配が発生する.
    (2) 表面での熱伝達率が大きく変化すると, 冷却速度も大きく変化し, 変化する温度は表面より中心の方が高くなる. その結果焼入性の劣る材料においては, 逆硬化現象が発生する可能性がある.
    (3) マルテンサイト変態温度域での冷却能の高い冷却剤を用いた場合, 場所により大きく変態の時期がずれる.
  • 平野 武, 猿楽 幸雄, 西川 昭彦, 浜野 俊雄
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 54-61
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    最近, 円筒コイルばねは高応力化に伴ってコイルの外径側を起点として折損したり, 疲れ寿命が従来仕様のばねに比べ短いなどの現象が現れている. これは, 高応力仕様のばねでは従来仕様のばねに比べピッチ角も大きく, ワールの式での対応が困難になってきたことを意味している.
    そこで, 本報では従来仕様のばねでは無視できたピッチ角を考慮して円筒コイルばねの解析を行い, ばね仕様と応力値との関係を明確にするとともに, 高応力化に伴い外径側の最大主応力が内径側より大きくなって行くことを示した. また, 最大主応力でS-N線図を評価すれば, 高応力仕様のばねの疲れ寿命も従来仕様のばねの疲れ試験結果から推定が可能であることを示した.
  • 河合 通文, 久納 孝彦, 対馬 一憲, 水野 正夫
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 62-67
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    一本ピンコイリングにおけるピッチツールのリフト量lpと成形されるコイルのピッチpとの関係について従来の理論解析を再検討し, また, 成形中の線材の立体的な変形形状及び工具との接触状況をしらべ, 従来の解析結果と実験結果のずれの原因について考察した.
    その結果, 以下の点が明らかにされた.
    1) コイルの成形過程及び成形中のコイルと工具の相対位置, 線材の機械的性質などを考慮して従来の解析を修正してもlppの間には近似的に直線関係が保たれ, この関係を表すグラフの切片は変化するが, 傾きはあまり変らない.
    2) ばね指数が大きくなると, 工具間で成形中の線材が弾性的に大きくたわみ, 理論解析で仮定した単純な変形様式から著しくずれるとともに, 工具との接触状態も変化する. したがって, 従来の理論及びその修正理論の適用は, ばね指数が小さく, ピッチツールのリフト量の小さい範囲に限られる.
  • 対馬 一憲, 久納 孝彦, 渡辺 健志, 辻岡 康, 水野 正夫, 折原 進
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 68-75
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本論文では, 切断砥石を用いてコイルを回転させて切断した際の, コイルばね座巻部の加工特性について記述している. それらの結果を要約すると以下のとおりである.
    1) コイルの回転は, 順回転・低回転数で行うと, より高い切込み送り速度での切断が可能となる.
    2) 砥石摩耗量は切込み送り速度の増加に伴い増大する. また, コイル回転数が高いほど, その割合は大きい.
    3) 切断されたコイルばねのコイル外側面の傾きは, 切込み送り速度の低速域 (f<10mm/min) では, JIS B2707の規格の2級以内に入る.
    4) 加工精度を重視する場合は, 切込み送り速度の低速域 (f<10mm/min) で, 厚い砥石の結合度を高くしてコイル回転数を30rpm以下にするとよい.
  • 薄板ばね強度委員会
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 76-112
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本委員会は薄板ばね強度に関する各種共同実験, データ蓄積等を行い, 薄板ばねの特性評価試験法を確立することを目的として5年間の活動を行ってきた.
    活動内容としては, 現在の市場において使用頻度の高い板厚及び将来動向を予測して板厚0.05mmについて検討を行い, その結果を述べるとともに評価試験法を提案している.
  • 非金属介在物評価法調査委員会報告
    西島 敏, 鈴木 栄三, 森井 惇雄, 小幡 智之, 内堀 勝之, 新倉 芳治, 二沢 喬一郎, 小新井 治朗, 伊藤 幸生
    1986 年 1986 巻 31 号 p. 113-138
    発行日: 1986/03/31
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    最近の高強度化したばね材料においては, 非金属介在物の適切な評価がその疲労強度の確保のために重要なファクターとなっている. 当委員会のアンケートを含む先の研究において, JISの顕微鏡試験法は製鋼段階での品質管理には用いられても, 疲労を考えたばね鋼の評価には十分有効とはいえないことがわかった.
    そこでばね鋼中の非金属介在物に適用可能な新しい評価法を考える際の共通基盤を得るために, 介在物レベルの異なる2つのSAE 9254系の鋼を用いて, 既存の各種検鏡法による比較評価の共同研究を行った. 結果は次のようにまとめられる.
    (1) JIS法は介在物の寸法把握ができず, またレベルが低いときには余り有効ではない.
    (2) いわゆるミシュラン法は介在物の量と寸法を評価でき, 作業の標準化によっては高検出力が期待できる.
    (3) ASTM-D法は単一の値が得られない点で難点があり, また測定時間も長いが, 比較評価性は高い.
    (4) ベカルト法は, ASTM法の重み付け評点化を計ったもので, 十分な標準化がなされれば有効なものになると思われるが, 現状では良く知られていない.
    (5) VDEh-M法でも単一の値は得られないが, 適切な評点付けを加え, かつ作業の簡単化を計ればその可能性はある.
    (6) 自動画像解析装置は現状ではばね材料のような高清浄度鋼に適用するには, ごみの識別法など, まだ幾つかの課題がある.
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