日本におけるサクラてんぐ巣病菌(
Taphrina wiesneri)の遺伝的多様性を明らかにするために,rDNA-IGS1領域のPCR-RFLP分析を行った.その結果,制限酵素
Hha Iにおいて,6種の切断パターンが認められた.
Acc II,
Dde I,
Hinf I,
Mbo I,
ScrF Iにおいても2~5種類の切断パターンが認められたものの,
Hha Iの切断パターンにより分けられた6グループをさらに分けることはできなかった.したがって,供試した111菌株は,A~Fの6種のIGS1タイプに分けられた.これらのうち,タイプA~Cの3種の菌株が優占しており,タイプAは全国的に分布が確認されたのに対して,タイプBは本州と四国から,タイプCは宮城県以南からのみ分布が確認された.他のタイプは1~3菌株のみに見られた.本病により多大な被害を受けているソメイヨシノからは,すべてのIGS1タイプの菌株が分離された.以上の結果から,IGS1タイプにより
T. wiesneriの地理的分布が異なることが示唆された.
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