樹木医学研究
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15 巻, 4 号
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論文
  • 田中(小田) あゆみ, 野口 雄二郎, 梅林 利弘, 松村 愛美, 赤見 亜衣, 田中 憲蔵, 福田 健二
    2011 年 15 巻 4 号 p. 139-146
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2020/12/02
    ジャーナル フリー
    街路樹の梢端枯れ木における生理的・形態的特性を明らかにするため,東京大学柏キャンパス構内のカツラを対象に,健全木と梢端枯れ木における樹冠上部と下部の葉の水分生理特性,光合成・暗呼吸速度,および当年枝シュートの形態を調べた.その結果,梢端枯れ木は調査期間を通じて夜明け前水ポテンシャルが健全木より0.1 MPa程度低く,P-V曲線法で求めた原形質分離を起こす水ポテンシャルも低かった.葉の光合成速度は,展葉後から7月上旬まで健全木と梢端枯れ木の間に差が無かったが,7月下旬以降に梢端枯れ木で低下し始め,特に樹冠上部の葉で低下が著しかった.以上から,梢端枯れ木は健全木に比べ個体全体が慢性的な水ストレス下にあり,樹冠上部では夏季に強光・乾燥ストレスも加わって葉の生理機能が低下することが梢端枯れの要因と考えられた.さらに,梢端枯れ木では健全木に比べて当年枝シュートの葉面積が小さく,樹冠下部のシュート伸長量が著しく大きい特徴を示した.このことから,シュート形態特性は樹冠内の水ストレスを反映して変化し,街路樹の生育阻害要因や樹木医学的診断の指標の一つとなる可能性が考えられた.
  • 前田 雄一, 河合 隆行, 小山 敢
    2011 年 15 巻 4 号 p. 147-154
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2020/12/02
    ジャーナル フリー
    鳥取駅前の道路沿いに植栽されていたムクゲとハナミズキの生育状況の調査を行った.両樹種とも方位による健全度,着花状況やサイズに違いが認められた.また,総じて東向き個体に比べて西向き個体の生育が悪かった.特にハナミズキは東向き個体の枯死はみられなかったのに対し,西向き個体は77.8%が枯死していた.ハナミズキの年輪解析により,西向き個体は移植後の最初の成長期から成長停滞木や枯死木が発生したものと推測された.日照条件は西向きと東向きで異なり,西向きの日照時間が極端に短かった.日照時間の違いが植栽木の成績に影響したと考えられる.また調査木は,雪国特有の屋根付き歩道に位置していた.このため両樹種とも日陰となる歩道側の枝が貧弱であった.特にハナミズキはその傾向が顕著で,全ての個体で歩道側の枝が枯れ上がり枝の殆どが欠如していた.ムクゲとハナミズキの成績の違いは耐陰性の違いに起因すると考えられた.
短報
  • 喜多 智靖
    2011 年 15 巻 4 号 p. 155-158
    発行日: 2011/10/31
    公開日: 2020/12/02
    ジャーナル フリー
    海岸クロマツ林の地下部の健全性に関する指標の提案を目指して,異なる下層植生の海岸クロマツ林内での菌根の出現頻度の調査を行った.クロマツ林冠下,下層植生がほぼ見られないAタイプ,自然高500 mmまでの下層植生を主体としたBタイプ,1000 mm以上の下層植生から構成されるCタイプの3種類の林分に,各10ヶ所,合計30ヶ所の調査地点を設定した.各調査地点で,土壌サンプル (10 cm×10 cm×15 cm) 1個を採取した.土壌サンプルより抽出した5 mm以上の根の長さを測定し,その根に形成されていた棍棒型,二叉分枝型などの菌根の数を計測した.その結果,下層植生が侵入した海岸クロマツ林では,個々の根の長さは長くなる一方,土壌容積当たりの根の本数は減少した.土壌容積当たりの菌根密度・根長当たり菌根密度が下がる傾向も示された.下層植生が林内に侵入することで,菌根が減少し,海岸クロマツ林の健全度が低下している可能性がある.
速報
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