2012年8月,和歌山県のユーカリ栽培圃場に植栽されているユーカリ‘銀世界’(Eucalyptus pulverulenta)に葉枯れ症状が発生し,症状が進展したものでは,茎部まで枯死した個体が見いだされた.葉および茎の病斑部には分生子殻が多数形成され,その内部に形成された分生子を用いて,単胞子分離を行い,菌株を確立した.この分離株上に形成された分生子を用いて調製した分生子懸濁液を2種のユーカリ属植物の葉に無傷で接種したところ,原病徴を再現,病斑からは接種菌が再分離され,病原性が確認された.また,形態的特徴,rDNA ITS領域およびβチューブリン遺伝子の塩基配列よりPseudoplagiostoma eucalyptiと同定した.培養菌叢は15~35℃で生育し,適温は25~30℃であった.
殺虫剤の樹幹注入によるブナハバチ防除効果を明らかにするため,神奈川県厚木市と長野県塩尻市の苗畑に生育するブナ若木の樹幹に植物への浸透移行性が高いとされるジノテフランを展葉直前に注入し,成虫,卵および幼虫の死亡率を調査した.その結果,雌成虫による産卵は殺虫剤を注入しても妨げられなかった.しかし,葉への産下卵は大部分が孵化することなく黒変して死亡し,一部孵化した1齢幼虫もすべてが死亡した.注入木の枝葉で3~4齢幼虫を3日間室内飼育したところ,3齢幼虫はすべて死亡,4齢幼虫は大部分が死亡するか麻痺症状を示し,わずかの個体が終齢に達したが目立った葉の摂食は観察されなかった.殺虫剤の注入木において葉の変色,注入孔の閉鎖阻害,木部の極端な変色拡大などの可視傷害は観察されなかった.本手法はブナハバチに対する高い防除効果が認められ,現地のブナ成木へ適用できる可能性が示された.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら