南根腐病はシマサルノコシカケ(Phellinus noxius)が引き起こす樹木病害で,熱帯・亜熱帯地域で深刻な問題となっている.本病による被害が発生した場合,罹病木とその根等の残渣を含む土壌を撤去する以外に防除方法はなく,低コストで簡便な防除法の開発が望まれている.そこで,クロルピクリンとダゾメットの2つの土壌くん蒸剤が本菌に与える影響について調査した.シマサルノコシカケ(南根腐病菌)を蔓延させた3樹種の枝を土壌中に埋め込み,くん蒸処理後に掘り出して菌を組織分離したところ,クロルピクリン処理区では本菌は分離されず,ダゾメット処理区では無処理区に比べて分離率が有意に低かった.さらに,施工時の作業性と安全性を確認するために,公園内の緑地でクロルピクリンと被覆資材としてガスバリア性フィルムを用いた土壌くん蒸処理を行ったところ,試験地(6.5 m×12 m)のくん蒸作業には5人の作業員で7時間を要した.また,くん蒸作業終了後から試験期間を通してフィルムの外側にクロルピクリンガスの漏出は認められず,処理11日後には土壌中およびフィルム内の空気からもガスは検出されなかった.ガスバリア性フィルムを使用して用法を正しく実施することで,事業規模でもガスの漏出なくクロルピクリンによる土壌くん蒸処理を行うことができることが分かった.
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