日本では,樹高を切り下げて樹冠全体を縮小させる剪定方法が広く実施されているが,管理費の削減が求められている.本実験は,剪定方法が樹木へ及ぼす影響を調べるために,シラカシの6年生樹に,樹冠を縮小する剪定および上部を保持する剪定の2通りを行い,剪定後1年間の枝,葉,主軸,根系の成長を無剪定の個体と比較した.樹冠を縮小する剪定をされた個体では,早期に枝が萌芽して枝の成長が促進し,葉面積成長の増加およびLMA成長の低下,胸高幹周成長の低下が認められ,根端が枯死したことが示唆され,イラガ幼虫の大量加害をうけた個体もあった.上部を保持する剪定をされた個体では,葉面積成長の増加のみ認められた.しかしながら,主軸下部および根系の現存量には,2通りの方法で有意な差がなかった.この研究は,上部を保持する剪定が,樹冠を縮小する剪定よりも樹木へ及ぼす影響を緩和させ,剪定費用の低減,景観の評価および生育の保護に貢献できる結果を示した.
早期落葉または幹焼腐朽を起こしているヤマザクラの葉の生理・形態特性と衰退度の関係性を調査し,これらの障害が生育状況に与える影響について評価した.早期落葉木と幹焼腐朽木は衰退度の評価理由が違っても衰退度に差はなかった.葉面積あたりの葉重(LMA)は障害状況間で差が無く,葉の成熟にともない増加した.SPAD値は,早期落葉と幹焼腐朽ともに季節を通して健全木よりも低い値を示し,衰退度との間にも強い負の相関関係があった.光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm)は,早期落葉木と幹焼腐朽木ともに,葉が未成熟でSPAD値が低い春季にのみ低い値を示した.これらの結果は,早期落葉と幹焼腐朽は葉のクロロフィルへの資源分配が少ないことで,春季に光阻害を受けるが,その影響は葉の成熟にともない軽減されたことを示唆している.一方で,葉の生理・形態特性と衰退度の間に負の相関関係があり,樹高と幹周にも負の相関関係があることから,葉の機能の変化が生育状況にも影響を及ぼしていることが示唆された.
イチジク品種 ‘桝井ドーフィン’ と ‘サマーレッド’ におけるアザミウマ類による果実被害の発生状況と果実の形態について調査した.2018年から2021年までの収穫期(8~10月)および収穫期前未熟果(6~7月)におけるアザミウマ類による被害の割合は, ‘サマーレッド’が ‘桝井ドーフィン’ よりも少なかった.また,収穫期前の未熟果において, ‘桝井ドーフィン’ は ‘サマーレッド’ よりも果実内部に空洞を有する果実の割合が多い傾向であった.果頂部(ハト目)の開口の有無を目的変数に空洞径を説明変数としたロジスティック回帰分析の結果,両品種とも果実内部の空洞径の大きさが果頂部の開口率に有意に影響していた.そして,収穫期前の未熟果におけるアザミウマ類の被害について,決定木による機械学習的分類を行ったところ,新梢の下から7から9段目にかけて着果した果実において,内部に空洞を有する,あるいは果頂部が開口している場合,被害を受けやすいことがわかった.
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