樹木医学研究
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論文
  • 松永 佳子, 金澤 弓子, 田中 聡, 鈴木 貢次郎
    2024 年 28 巻 4 号 p. 173-180
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル 認証あり

    野外におけるポット実験により土壌改良剤を用いて異なる土壌物理性を設定し,スダジイとクスノキの成長量を比較した.大型プラスチックポットを用いて,山砂のみの対照区(C)と山砂に黒曜石パーライトを40%(体積比)混和した土壌改良区(EP)を設定し,2017年4月から41ヵ月間,生育量を測定した.その結果,両樹種ともにEPでは生育期間中Cよりも根元直径が大きい傾向があり,その傾向はクスノキよりもスダジイで著しかった.EPとCで樹高に明確な差はみられなかったが,一次枝長はスダジイEPでCより大きい傾向があり,一方でクスノキではEPとCの差はみられなかった.同様に葉数はスダジイEPでCよりも有意に多く,クスノキでは差がなかった.最終的な総乾物重量は,スダジイではCよりEPで大きい傾向があり,クスノキではEPとCの違いはなかった.スダジイでは対照区の成長が劣り,土壌改良区の葉数が有意に高まったが,クスノキでは処理による違いはなかった.土壌改良剤の効果は樹種によって異なり,植栽時の土壌物理性がその後の樹木の成長量に影響することが明らかになった.

  • 谷脇 徹
    2024 年 28 巻 4 号 p. 181-189
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル 認証あり

    ブナ成木への樹体影響と環境影響を抑えながら適切な時期にブナハバチを防除できるようにするため,ジノテフランの樹幹注入について,異なる注入時期(展葉前と展葉後)と注入間隔(周囲長で15 cmと25 cm間隔)による防除試験を行った.あわせて注入一年後の残効性を調べた(前年注入).卵への防除効果は展葉前(産卵前)注入のほうが展葉後(産卵後)注入,前年注入および対照区より有意に高かった.幼虫への防除効果は注入間隔の違いによる影響はあるものの展葉前並びに展葉後に注入した場合はどちらも前年注入および対照区より有意に高かった. 注入木の食害割合は注入間隔や注入時期にかかわらず,産下卵密度が高くても樹冠の10%以下に抑えられた.注入孔数を減らして樹体影響を抑えながらブナハバチへの高い防除効果を維持するには25 cm間隔での注入が適していると考えられた.防除効果は翌年まで持続しないため,ブナの葉を利用する昆虫への影響は施用年に限定された.

  • 外山 史也, 谷田 雅志, 大木 映里奈, 大島 優人, 田中 友希, 細川 昌泰
    2024 年 28 巻 4 号 p. 190-199
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル 認証あり

    ナラ枯れの早期発見には,被害地から離れた未被害地への飛び火的な被害への予測が重要である.2022年9~10月に山梨県富士川町東部において,ブナ科樹木に対するカシノナガキクイムシ(以下,カシナガ)による穿孔の広域的な空間パターンを現地調査した.3,478本の幹のうち,コナラ122本,クヌギ3本に穿孔が確認された.穿入木は,少なくとも6×6 km2以上の広い範囲で確認され,そのうち96%は,萎凋症状を呈していなかった.コナラが穿孔を受ける確率は,胸高直径が大きいほど,同一株の幹数が多いほど,標高が低いほど,半径100 mの範囲で地形が凸型であるほど,半径250 mの周囲に寄主木の林が多いほど,調査月が遅いほど,高い傾向にあった.一方,前年の被害地からの距離は,最適な予測モデルの変数として選択されなかった.カシナガ穿入後の枯死率が比較的低いブナ科樹種の分布域では,樹冠の変色という遠目からわかる徴候が観測される以前に,カシナガが広範囲に分布を拡げていることが示唆された.

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シリーズ:マツ材線虫病をめぐる今昔物語
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