Tropics
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10 巻, 3 号
Diversity of Indonesian Insects: Perspectives from Populatlon Dynanics and Evolutionary Biology
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著論文
  • 片倉 晴雄, 中野 進, Sih KAHONO, Idrus ABBAS, 中村 浩二
    2001 年 10 巻 3 号 p. 325-352
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    1981 年から1998 年の聞にスマトラ,ジャワで確認された26 種のマダラテントウを列挙し, 斑紋パターンと雌雄生殖器を図示した。この26 種の内訳は, “Henosepilachna” 11 種, “Epilachna” 13 種, Afidenta1 種,所属不明種が1 種であった。各々の種の食草を示し, いくつかの自然史学的な項目について付記した。
  • 中野 進, 片倉 晴雄, Idrus ABBAS, Sih KAHONO, 中村 浩二
    2001 年 10 巻 3 号 p. 353-362
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    インドネシアと日本産の11 種のマダラテントウの産卵パターン(卵の数と産み方,産卵場所,卵の付着場所)を調べ,これまで報告されている10 種のマダラテントウの結果とあわせて検討を行った。合計21 種(“Henosepilachna” 12 種, “Epilachna” 8種, Afidenta 1種)のマダラテントウは卵数と産み方により,以下の2 グループに分かれた。すなわち“Henosepilachna”の12種とAfidenta の1種は全てが直立した卵を十数個から数十個,卵焼として食草の薬の裏に産みつける。一方,“Epilachna” 8 種の産卵パターンは多様であり,一個一個別々か,数個から十数個の卵をまとめて葉の表面に寝かせたり傾けて産卵するか,あるいは,食草の巻きひげのコイルの内側に付着させた。“Epilachna” は飼育条件下では二枚重ねのティッシュペーパーのせまい隙聞にも産卵した。これらの21 種には9種の農作物害虫が含まれるが,そのうち8 種は“Henosepilachna&rdquoである。“Henosepilachna&rdquo の多くの種の食草が重要作物を含むウリ科とナス科であることに加え,卵塊産卵であるために“Epilachna” と比較して単位時間あたりの産卵数が多いことが. “Henosepilachna&rdquoが頻繁に害虫をうみだしている理由の一つで、あると考えられる。
  • Sih KAHONO, 徳永 元子, 木村 正人, 中村 浩二, 片倉 晴雄
    2001 年 10 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    ニジュウヤホシテントウの熱帯,亜熱帯,温帯産個体群を用いて,休眠および高・低温ストレスに対する低抗性を比較した。熱帯個体群は休眠せず,温帯個体群は短日条件下で生殖休眠に入った。また,熱帯個体群の雌はもっとも短時間で成熟し,温帯個体群の雌は成熟にもっとも時間がかかった。さらに,熱帯個体群は高温,低温に対するほ抗性がもっとも弱く,温帯個体群はこれらのストレスにもっとも強かった。
  • 中野 進, 中村 浩二, Idrus ABBAS
    2001 年 10 巻 3 号 p. 369-377
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    スマトラ産の食植性テントウムシEpilachna pythoを実験室内で飼育して生存ー繁殖スケジュールを明らかにし,これまでに報告されている5 種のEpilachnaの結果と比較した。Epilachna pythoは海抜600m 以上の高地に分布する。ウリ科野草のTrichosanthes tricuspidata, T. ovigera, Gynostemma pentaphyllum, Mukia javanicaを主な食草とするが,まれにウリ科作物のSechium eduleでも採集される。卵から羽化までの発育日数は33.6 日,成虫の寿命はオス94.4 日,メス106.3 日であった。産卵前期間は25 .4日,産卵終了から死亡までの日数は3.6 日であった。1 メスあたり産卵数は609.9 であり,メスは産卵期間中一定のペースで産卵し続けた。内的自然増加率r は0.067 であった。これらのE. phythoの生活史特性は.やはり高地に分布し,ナス科の野草を広く利用するE. enneastictaとよく似ている。一方,これまでに調べられた4種の害虫と比べると,E. pytho は,1) 幼虫期間がより長く,2) 産卵前期がより長く,3) 産卵数はより少なく,4) より小さい内的自然増加率r と,より長い世代期間Tを持つことが明らかになった。
  • 伊藤 文紀, 山根 正気, 江口 克之, Woro A. NOERDJITO, Sih KAHONO, 辻 和希, 大河原 恭祐, 山内 克 ...
    2001 年 10 巻 3 号 p. 379-404
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    インドネシア西ジャワ州ボゴール植物園のアリ相を次の7つの方法で調査した。(1)樹幹を歩行するアリの採集, (2) ふるいを用いたリター中のアリの採集, (3) ピットフォールトラップ, (4) 砂糖水ベイト,(5)タケ新芽上のアリ採集, (6) コロニー採集,及び(7)採餌アリの採集。1985 年と1990 年から1998 年までの調査で,東南アジア熱帯に分布する全ての亜科を含む216 種が採集された。1995 年と1997年に集中的な調査を実施したが, 1998 年にも未記録種が多少採集された。当地のアリ相を東南アジアのほかの地域の熱帯降雨林,ならびに西ジャワ州の低地林(ウジュンクロン国立公園,パンガンダラン国立公園)および山地林(ハリムン国立公園,ゲデ・パンゲラン国立公園)での調査結果と比較した。ボゴール植物園のアリ相は西ジャワ州の低地林のそれと似ていたが,山地林とは著しく異なっていた。またボゴール植物園で採集されたムカシアリ属2 種を新種として記載した。
  • 伊藤 文紀
    2001 年 10 巻 3 号 p. 405-407
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    フタフシアリ亜科の稀種Calyptomyrmex sp. のコロニーをインドネシア・商ジャワ州ボゴール植物園で採集し,その捕食習性を調査したところ,本種は節足動物卵に特殊化した捕食者であることが明らかになった。働きアリは節足動物卵とともにコロニー内のアリ幼虫に噛みつき血リンパを摂食した。一方,女王は節足動物卵はけっして食べず,もっぱら働きアりからの口移しによって栄養を得ていた。
  • 辻 和希, 大河原 恭祐, 伊藤 文紀
    2001 年 10 巻 3 号 p. 409-420
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    西ジャワ州ボゴール市のボゴール植物園内の林床にはダニと特殊な共生関係を結んでいるカドフシアリの1 種, Myrmecinasp.A が生息している。本種の巣の分布,巣間関係(敵対性) .ワーカーの産卵能力について実験,観察を行い,そのコロニー形態について調べた。植物園内に設置した10m × 10mコドラートによる巣の分布調査ではそのコドラート内に分布するアリ巣の約80%がMyrmecina sp. Aの巣であり,本種は局所的には優占種であった。さらにこれら巣群は以下の3 つの理由から多巣化した単一コロニーであることが示唆された。(1)本種ワーカーは他種であるシワアリTetramorillm sp.のワーカーに激しい攻撃行動を行ったのに対し,同種の異巣ワーカーには常に寛容な行動を示し敵対性は低かった。(2)巣の分布は均一ではなくむしろ集中していた。(3)本種のワーカーが同種の他巣に容易に入り込むことが標識再捕法実験によって示された。本種の女王は麹を欠失した無麹形態であるが,このような無麹女王種で多巣性が確認されたのはこれが最初の報告である。さらにまた本種ワーカーは雄卵生産能力が観察されたものの女王存在下では栄養卵のみを生産していた。我々はアリの多巣多女王性進化について,遺伝的,生態的,歴史的要因を考慮した仮説を提示した。種の侵入と局所的優占化に伴う個体群レベルでの瓶首効果,また既存種の生存の妨害が,アリ多巣多女王性進化と維持の要因となっていると思われる
  • 中村 浩二, Sih KAHONO, Nusyirwan HASAN, Idrus ABBAS, 中野 進, 小路 晋作, Ahsol HA ...
    2001 年 10 巻 3 号 p. 427-448
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    1.インドネシア共和国スマトラ島とジャワ島の気候の異なる環境に定点観測地を設置し,食葉性テントウムシ類の長期個体群動態を,成虫の個体識別マーク法と卵,幼虫,踊の生命表作成を用いた3~7 日おきの定期センサス調査によって最長9 年間継続して調査した。
    2. 定点観測地は,スマトラ西部州のパダン(海岸低地の典型的な熱帯多雨林気候,年間降雨量は4000 ミリ以上,乾雨季の区別なし) ,スカラミ(海抜928 m の高地環境, 2917 mm) ,西ジャワ州のボゴール(海抜260 m ,熱帯多雨林気候帯の東端に位置する, 3850 mm ,通常明瞭な乾季はないが,時々強い干ばつがあるに東ジャワ州のプルウォダディ(海抜300 m , 2000~2500 mm, 6~ 8 月間の強い乾季あり)に設置し, 3 種の食葉性テントウ類,1)ナス科の半低木Solanum torvllm を食草とするこジュウヤホシテントウEpilachna vigintioctopunctata (ツル草Centrosema pubescens を食草とする個体群を含む), 2) E. enneasticta (食草はS. torvum), 3)キク科のツル草Mikania micrantha を食するEpilachna sp. 3 (aff. emarginata) を調査した。
    3. 個体数変動の特性(S. torvum 食のニジュウヤホシテントウを中心に述べる) (1)乾雨季が不明瞭なパダン,スカラミ,ポゴールでの結果。1)成虫数は時々大ピークを形成し,個体数の変動幅は大きい(パダンでは約290 倍に達した)。ピークへの個体数の増減は,それぞれ3~5 カ月ずっかけて徐々に生じた(3~4 世代にあたる)。2)卵,幼虫,踊の個体数変化はノコギリ状であり,generation cycle が生じた)。3)数百m~数km 離れた複数の個体群での成虫数の増減は,全般的に同調した。4)個体群サイズの変動と降雨量の消長との同調性は全般に低かった(ただしボゴールのE. sp. 3 では,降雨の増減と個体数変動の同調性が比較的高かった)。調査期間中に生じた非常に強い干ばつ(1982/1983 ,1997/1998 のエル・ニーニョなど)の際には,食草葉量が減少したが,個体数が急減するとは限らなかった。(2)強い乾季のあるプルウォダディでの結果。1)雨季~乾季初期にかけて個体数が増加した。その後,乾季が進むにつれて個体数は減少したが,乾季後半まで成虫は食草上にとどまり続けた。2)食草への産卵数は,成虫数の推移と一致した。メス成虫あたりの産卵数は,雨季の初期と乾季の中期にピークが見られた(前者が最大値)。
  • 西田 隆義, 中村 浩二, Woro A. NOERDJITO
    2001 年 10 巻 3 号 p. 449-461
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    インドネシア西ジャワ州にあるボゴール植物園にはイイギリ科の果実を専食するダイフウシホシカメムシ(Melamphaus faber) とさらにこれを専食するこシダホシカメムシ(Raxa nishidai) の孤立個体群が存在する。両種の個体群を1990年から1998年にかけての9年間,断続的に追跡した。両種ともに,雨期・乾期にかかわらず常に繁殖活動を行っていた。ダイフウシホシカメムシの個体群密度は孤立個体群にもかかわらずかなり安定しており,一方ニシダホシカメムシは非常な低密度にも関わらず調査期間中存続した。両種ともに移動能力はきわめて低く,かつ孤立個体群で、あったため移出や移入はないものと考えられた。ダイフウシホシカメムシ個体群の変動パタンは餌資源の変動パタンと非常にうまく同調していたが,一方,捕食者であるニシダホシカメムシはダイフウシホシカメムシの個体群動態にあまり影響を与えてはいなかった。すなわち,ダイフウシホシカメムシ個体群の変動は主に餌資源の変動によって規定されているものと考えられた。餌資源であるイイギリ科の種子の生産量は年により大きく変動したが,ダイフウシホシカメムシが実際に利用する地上に蓄積した種子量は比較的安定しており,これがダイフウシホシカメムシの個体群動態が安定している理由のーつと考えられた。
  • 曽田 貞滋, 中野 進, Nusyirwan HASAN, Ahsol HASYIM, SYAFRIL, 中村 浩二
    2001 年 10 巻 3 号 p. 463-472
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    インドネシア西スマトラ州ソロ地方(標高900~1000 m) の耕地において,1994 年8 月~1995 年9 月,1996 年3 月~1997 年8 月にピットフォールトラップを用いた地表性節足動物の個体数密度動態調査を行った。トラップ採集は2 週間ごとに3 個所で、行った。捕獲された節足動物のうち,アリ類の個体数が最も多く,ついでクモ類,直趨類,甲虫類,ハサミムシ類,等脚類が多かった。またミミズ類(環形動物)も多く捕獲された。この地域は,降雨に弱い季節性が認められる。いくつかの分類群では少雨期に個体数が多い傾向が見られたが,完全な季節的消長を示すものは見いだ、せなかった。ほとんどの分類群で,降雨の後には捕獲数が減少する傾向が認められた。捕獲個体数の変動パターンは3 つに分類でき,捕獲数が安定して多いもの(アリ,クモ,直麹,甲虫類) ,捕獲数が不規則に大きく変動するもの(等脚,ミミズ,ハサミムシ類) .低密度レベルでより小間隔の不規則な変動を示すもの(多足類,ゴキブリ,カメムシ,鱗麹類)が認められた。
  • 蒲田 直人, DAHELMI, ERNIWATI, 中村 浩二, Paul W. SCHAEFER
    2001 年 10 巻 3 号 p. 473-480
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    最近の研究により,マイマイガの性フェロモン成分である(+)-disparlure(+D)[(7R, 8S)-cis-7,8-epoxy-2-methyloctadecane)が,マイマイガばかりでなく, Lymantria 属の他の種によっても性フェロモンとして使われていることが明らかにされてきている。熱帯に棲息するLymantria 属の中にも+0 を性フェロモンとして利用しているものがいるのではないかと考えられたため, 1997 年8 月から1998 年8 月までの1 年間,インドネシアのスマトラ島パダンにあるAndalas 大学の演習林と,ジャワ島ボゴールにあるボゴール植物圏内に,マイマイガのフェロモントラップ(GMPT) を設置し,約1 週間間隔で捕獲された蛾を回収した。GMPT は,牛乳パックの4 側面に4 × 8 mm のスリットをそれぞれ2 つずつ空け, +D を500gg 渉み込ませたフェロモン剤(米国TRECE 社製)とDDDP 殺虫剤を中につるしたものである。ボゴール植物園では1個体も捕獲されなかったが, Andalas 大学の演習林では, Lymantria 属3 種の雄成虫が採集された。採集されたのは, L. singapura (捕獲個体数回個体,全捕獲個体数の80.9 %,以下同じ), L.b eatrix (13 個体,11.3%), L.narindra (9 個体, 7.8%)であった。トラッフ内部の化学成分(+D とDDDP) の有効期間は,L. singapura で6 ヶ月以上, L. beatrix で20 週以上, L. narindra で18 週以上と推定された。L. singapuraとL. beatrix では,約8-10 週間隔のピークが認められたが, L. narindra では捕獲個体数が少なく明瞭なピークは認められなかった。GMPT は熱帯の種でも,個体群動態のモニタリングに有効であることが確かめられたが,捕獲頭数の少ないL. beatrix とL. narindra については,より有効な合成フェロモン剤の開発が望まれる。
  • 坂井 睦哉, Atok SUBIAKTO, Sih KAHONO, 蒲田 直人, 中村 浩二
    2001 年 10 巻 3 号 p. 481-488
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    インドネシア国ポゴール市のインドネシア林業省試験場の苗畑において,挿し木から育成したShorea 属4穏の苗木から1年間で約300個体の鱗麹目幼虫を採集し,実験室で飼育した結果, 127 個体の成虫を得た。これらは, 11 科27 種からなり,ドクガ科のOlene inclusa とOrgyia postica が多かった。科単位ではドクガ科が圧倒的に多く,個体数の65 %を占めていた。植物の側から見ると,S. selanica とS. leprosulaは鱗麹目昆虫の個体数·種数がともにが多かったのに対し,S. pinango とS. javaniea は少なかった。その一方で,シジミチョウ科の未同定種はS. javaniea に特異的にみられたほか,ヤガ科のIschyja manilia もS. Javamea に多かった。
  • 木村 正人, 平井 喜幸
    2001 年 10 巻 3 号 p. 489-495
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    カザリショウジョウパエのオスは交尾のためアサガオの花になわばりを形成する。今回, 我々はスカラミ(インドネシア・スマトラ島)において本種の日周期活動となわばり制について調べた。スカラミでは,アサガオの花の寿命は約半日でほぼ日の出時に開き、午後から夕方にかけてしぼむ。本種はオス,メスともしぼんだ花内で夜を過ごし,翌日,朝から夕方にかけ出ていく。一方,新しく開いた花の上の個体数は,朝から夕方にかけ増加する。新しく聞いた花において,オスは,午前中は普通なわばりを保持しているが,午後,花上の個体数が増えてくると,なわばりを守ることができなくなる。新しく開いた花においてなわばりを保持しているオスとしぼんだ花に留まっているオスを朝に採集し,その体サイズを比べたところ,前者の方が大きかった。このことは,大型のオスはなわばり争いに有利であり,新しく開いた花になわばりを保持するため,より早くしぼんだ花を離れることを示している。実際,大型のオスの方がなわばり争いに有利であることが,室内実験により示された。一方,メスにおいては,体サイズと日周期活動にはなんら関係が見られなかった。夕方には,オス,メスともほとんど活動せず,花上に静止していた。メスは朝から夕方にかけ,その日に開いた花にのみ産卵する。花間の卵の分布はほぼランダムであった。
  • 高久 元
    2001 年 10 巻 3 号 p. 497-507
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    著者がインドネシア共和国スマトラ島西スマトラ州で行った調査およびこれまでのスマトラ島での記録に基づき,スマトラ島産コガネムシ科甲虫に見られるハエダニ科2 属7 種を記録した。各種に関して標徴,ハビタット,分布を記述するとともに,種までの検索表を付記した。7 積の中には,新種1 種(Macrocheles sukaramiensis) およびスマトラ島初記録種3 種(M. oigru, M.kraepelini, Holostaspella berlesei)が含まれており,新種に関しては,西スマトラ州産コガネムシ科甲虫Catharsius molossus の体表上から得られた材料に基づいて詳細な記載がなされた。
短報
  • 大河原 恭祐
    2001 年 10 巻 3 号 p. 421-425
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/01/31
    ジャーナル フリー
    熱帯域に分布する木本植物の多くは晴乳類や鳥類を種子散布者として利用し,報酬として種子に栄養価の高い果実を備えている。しかしそれら果実を伴った種子は高密度に分布するアリともまた複雑な関係を持っている。西ジャワ州のポゴール植物園において鳥散布種であるシマセンダン属の1 種Dysoxylum alliaceum の種子とその近隣に生息している2 種の軍隊アリ,サスライアリの1 種印刷Dorylus lavigantusとヨコヅナアリの1 種Pheidologeton affinis との関係を野外観察と実験によって調べた。特にこれらのアリ種が種子の生存率と発芽率に及ぼす影響に着目した。地表に種子を置いた観察では種子100個の内,71 個(71.0%)が2 種のアリによって地面に埋められ,その果肉(ariI)が食べられていた。しかしその種子のほとんどは生存していた。プラスチックの網を使って実験的にアリの埋土を妨げると,配置した全ての種子は果肉部分からカビに感染して死亡した。また果肉をつけたままの種子群と除去した種子群を地面に植えて発芽率を比較したところ,果肉を除去した種子はしなかった種子よりも高い生存率と発芽率を示した。これらのことから2 種の軍隊アリは埋土と果肉の除去によってD. alliaceum の種子の生存,発芽率を上げているものと思われる。
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