Tropics
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2 巻, 4 号
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Preface
Regular papers
  • Caroline E.G. TUTIN, Michel FERNANDEZ
    1993 年 2 巻 4 号 p. 189-197
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    糞分析は野生の類人猿の食性を研究するうえで有用な方法であることが証明されてきた。特に,彩食行動のシステマティックな観察が困難な中央アフリカの密生した森林環境では,その有用性は著しい。ここでは,ゴリラとチンパンジーが同所的に生息するガボンのロペ保護区で発達させて使用している糞分析の方法と,データを数量化し分析するいくつかの方法の例を記述する。糞中にそれとわかる残存物ができない食物があることや,とりわけ葉や芽などの繊維性食物の種を糞から同定することが困難であるために,糞分析単独では食性を完全に明らかにすることはできない。しかし,標準化した方法で糞分析することによって,類人猿の食性の年間比較,種間比較,調査地間比較を可能にできる。
  • Elizabeth A. WILLIAMSON
    1993 年 2 巻 4 号 p. 199-208
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    ヒト以外の霊長類の遊動パターンと環境利用のあり方を理解するためには,森林環境の記述と食物の利用可能度の評価が決定的に重要である。ここでは,ガボンのロペ保護区のゴリラの生息地で行った方法について述べる。まず,総長4kmのトランセクトに沿って両側各5m内にある木のうち,胸高直径が10cm を越えるものをすべて同定し胸高直径を測った。その資料の分析によって,次の結果をえた。
    (1) 森林構造の表示と示数。
    a) 1 ha当たりの立ち木数と森林成熟度を示す木のサイズ分布のパターン。
    b) 種の分布パターンを図式化した森林断面図。
    c) 胸高直径から計算した1 ha当りの樹木基部面積。
    (2)樹種の多様性示数。
    a) 1 ha当りの種数。
    b) 最優先種10種の相対バイオマスの比(樹木密度×樹木基部面積, m2/ha) 。
    (3) 食物利用可能度(果実量)の示数。
    a) 1 ha当りの食物果樹種の数と,その成木(胸高直径が30cm を越えるもの,種によって修正)の割合。
    b) 1 ha当りの同時に結実している樹木の平均個体数(phenology score)。
    c) 果実量示数(Index of Fruit Abundance) として,すべての食物果樹種の[バイオマス(m2 /ha) × phenology score] の和を計算し,その値をこの地域の果樹による食物生産量,または果実資源J利用可能度の指標とした。
    これらの方法は簡便なものであり,調査地間の生息環境比較にも有効であると考えられる。
  • 山極 寿一, 湯本 貴和, 丸橋 珠樹, Ndunda MWANZA
    1993 年 2 巻 4 号 p. 209-218
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    ザイールのカフジーピエガ国立公園に生息するヒガシローランドゴリラの食性を分析するために,我々は長距離トランセクト法,糞分析,食痕の記録と追跡という3通りの方法を用いた。長距離トランセクト法は,出現頻度の低い植物の分布様式を明らかにでき,また,異なる植生タイプの植物の生息密度や種構成を記述するために有効な方法である。ゴリラの新しい糞に含まれている果実の種子や昆虫の破片からは,それらの食物の摂取量を計測でき,果実食や見虫食の季節変化や性,年齢による摂取量の違いを知ることができる。この糞分析に加えて,ゴリラの通過跡の新しい食痕を記録していくことによって,ゴリラの食物の構成を知ることができる。また,これらの3通りの方法をさまざまに組み合せて利用すれば,ゴリラの日々の遊動域と食物の分布や量の関係,ゴリラ,チンパンジー,ゾウによる種子散布,季節によるゴリラのエネルギー消費量や食物選択,そしてそれらの地域による違いを調べることができる。本論文では,これらの分析により得られた結呆のいくつかを紹介し,その有効性を検討した。
  • 三谷 雅純, 山極 寿一, Rufin Antoine OKO, Jean-Marie MOUTSAMBOTÉ, 湯本 貴和, ...
    1993 年 2 巻 4 号 p. 219-229
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    コンゴ北部のンドキの森において,ニシローランドゴリラ個体群に(1)ライントランセクト法による密度推定と(2 )社会集団の再構成を試みた。約24km2の調査地に設定した調査用歩道の周辺には,ライントランセクト法によって1 km2 あたり4-5 頭のゴリラの存在が推定できた。高密度の下生えによる短い発見距離, 1 集団中のメンバーの発見可能性センサスコースが一部の植性をカバーできなかった点,そしてゴリラの空間的集中分布は,推定の結果に影響を与えたかもしれない。社会集団の再構成は,同じ個体群に7 社会集団と複数のソリタリーが存在することを示唆した。この森においては,幾種かの水性植物の供給が繊維質と蛋白質含量の多い食品として高いゴリラの密度を支えているのだろう。
  • Richard K. MALENKY, Richard WRANGHAM, Colin A. CHAPMAN, Evelyn Ono VIN ...
    1993 年 2 巻 4 号 p. 231-244
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    チンパンジーの生態と社会組織に関する多くの理論的課題に取り組む際に,食物の量の評価は決定的な重要性をもつ。しかし,生息地全体の食物の量を評価するために様々な方法が用いられており,調査地ごとに方法が異なるので,各調査地で得られた結果を基準化することなしに意味のある比較をすることはできない。
    ここでは,まず,ウガンダのキパレ森林で同時に3つの方法で果実の量を測定した結果を比較した。果実トラップ法による果実量推定は,フルーツ観察路に沿ってあるキーとなる果樹種の結実状態の観察による評価,および,システマテックなトランセクト・サンプリング法の結果のいずれとも相関しなかった。しかし,後二者の間には相関が見られた。
    つぎに, 3つの調査地で,互いに類似しているが同じではない方法をそれぞれ用いて草本性食物の量を測った結果を比較した。この分析の結果は,異なる方法で得られた結果を比較することの困難さを例証することとなった。これらを考慮して,今後,調査地間の比較可能性を高めていくための方法を提示した。
  • Melissa J. REMIS
    1993 年 2 巻 4 号 p. 245-255
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    中央アフリカ共和国,ザンガーサンガ密林保護区のパイーホクに生息するローランドゴリラの27ヶ月にわたる調査(1990.8-1992.11) で, 1231箇の巣が163箇所の泊場で発見された。これらの分析で得られた結果を,同地域の異なる時期の調査結果および他の地域の結果と比較して報告する。
    巣数の資料は, 1) 地域個体群の個体数や生息密度の推定と, 2) ゴリラ集団のサイズや構成,そしてそれらの変動を知るために直接観察の補助としてよくもちいられる。パイーホク調査地では,継続調査中に記録された巣(寝跡だけのものも含める)のうち,44% が巣としてなにもつくっていない寝跡だけのものであった。15% の泊場所においては,巣は全く作られていなかった。同じ地域できめの細かい巣跡のセンサスを行った結果では,巣無しの寝跡が30% を占めた。これらの結果は,巣無しの寝跡を0~10% の範囲と報告している他地域での調査結果と著しく異なる。
    泊場でどのような巣を作るかは,多分,適切な材料が泊場にあるかどうかに左右されよう。パイーホクでは,局地的植生,季節,巣を作る個体の数が,作られる巣のタイプに影響していることが示された。これらの要因は,また,営巣行動の地域間の変異の要因となっている可能性がある。ちゃんとした巣は50 日間以上もそれと確認できるが,糞とのセットで確認される巣無しの寝跡は,通常, 4 日間経過するとわからなくなる。したがって, 4 日間を過ぎた泊場の寝跡のカウントは一般に過少評価になり,場合によっては泊場さえ記録できないこともありうる。これらのことから,巣数調査の正確さは,地域,サンプルした場所の植生,そして季節によって変動すると考えられる。
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