ヒト以外の霊長類の遊動パターンと環境利用のあり方を理解するためには,森林環境の記述と食物の利用可能度の評価が決定的に重要である。ここでは,ガボンのロペ保護区のゴリラの生息地で行った方法について述べる。まず,総長4kmのトランセクトに沿って両側各5m内にある木のうち,胸高直径が10cm を越えるものをすべて同定し胸高直径を測った。その資料の分析によって,次の結果をえた。
(1) 森林構造の表示と示数。
a) 1 ha当たりの立ち木数と森林成熟度を示す木のサイズ分布のパターン。
b) 種の分布パターンを図式化した森林断面図。
c) 胸高直径から計算した1 ha当りの樹木基部面積。
(2)樹種の多様性示数。
a) 1 ha当りの種数。
b) 最優先種10種の相対バイオマスの比(樹木密度×樹木基部面積, m
2/ha) 。
(3) 食物利用可能度(果実量)の示数。
a) 1 ha当りの食物果樹種の数と,その成木(胸高直径が30cm を越えるもの,種によって修正)の割合。
b) 1 ha当りの同時に結実している樹木の平均個体数(phenology score)。
c) 果実量示数(Index of Fruit Abundance) として,すべての食物果樹種の[バイオマス(m
2 /ha) × phenology score] の和を計算し,その値をこの地域の果樹による食物生産量,または果実資源J利用可能度の指標とした。
これらの方法は簡便なものであり,調査地間の生息環境比較にも有効であると考えられる。
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