Tropics
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3 巻, 2 号
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Regular papers
  • 中野 進, Idrus ABBAS
    1994 年 3 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    西スマトラに同所的に分布する4 種の針直性テントウムシの生殖的隔離を明らかにするため1) 食草選択, 2) 交尾選択, 3) 雌体内における異種精子の活性, 4) 異種間ベアーから得られた卵の孵化率を調べた。Epilachna vigintioctopunctata とE. enneasticta (以下Ev, Ee と略)は同じナス科の作物を好んだがE. septima とE. dodecastigma (Es, Ed と略)は異なるウリ科植物を好んだ。交尾選択実験では12 の組み合せのうち11 で完全あるいは強い行動的隔離がみられた。行動的隔離が不完全なEV, Es の雌とEsの雄の組み合せでは,種間交尾と種内交尾の割合が1対2 であった。しかし種間交尾をした雌の体内の精子は種内交尾のものより活性が低かった。同種間ベアーの卵の平均癖化率は65.9% だったが異種間ペアーでは0% だった。以上の結呆,食性の違い,極めてまれな種間交尾,異種精子の雌体内での活性低下,異種間ベアーの卵が鮮化しないことの組み合せにより4 種は完全に隔離されていると考えられる。ところで今回の実験で使用したEv, Ee, Es の食草
    ところで今回の実験で使用したEv, Ee, Es の食草のすべて,およびEd の食草の一部は比較的最近スマトラに導入されたものである。また我々が西スマトラで採集した上記以外のウリ科とナス科植物28 種の中には,スマトラ固有でEv,Ee, Es の食草になっているのものが見つかっていない。したがって現在の食草と4 種のEpilachna の関係ができたときにはすでに4 種間の生殖的隔離が存在していたと考えられる。
  • Ahsol HASYIM, Nusyirwan HASAN, SYAFRIL, HERLION, 中村 浩二
    1994 年 3 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    (1) バナナセセリは,幼虫がバナナの葉を摂食する害虫であり,インドネシアではときどき大発生する.スマトラ西部州に設置した環境条件の異なる7 調査地から,卵,幼虫,踊を採集し,実験室内で飼育して捕食寄生性のハチ類とハエ類(以下では寄生者と呼ぶ)を羽化させた.
    (2) 調査地には,インド洋岸の多雨地帯(Bandar Buat,海抜20m ,年間雨量5000 mm) ,弱い乾季がある内陸部(Sitiung,海抜100 m,年間雨量2800 mm) ,年間雨量が少なく強い乾季のある内陸部(Ranbatan,海抜500 m ,年間雨量1700 mm),湿潤な高地(Sukarami,海抜928 m,年間雨量2900 mm) を含む. Bandar Buat とSitiungでは2 年間(1990 年11 月から1992 年12月まで), Sukaramiでは1 年間(1991 年11 月から1992年12月まで), 1 - 2 週間に1 回ずつ定期採集し,その他の調査地では不定期に6-8 回調査した.
    (3) バナナセセリの一次寄生者としてとして6 科12種のハチ類[コマユバチ科(Braconidae,2 種) ,アシプトコバチ科(Chalcididae, 2 種),トピコバチ科(Encyrtidae, 2 種),ヒメコバチ科(Eulophidae, 2 種),コガネコバチ科(Pteromalidae, 1 種),ヒメパチ科(lchneumonidae,3 種)]と4 種のハエ類[ヤドリパエ科(Tachinidae, 2 種),ニクバエ科(Sarcophagidae , 1種,ノミバエ科(Phoridae, 1種)],二次寄生者として6 種のハチ類[コマユパチ科,アシプトコバチ科,ヒメバチ科,ヒメコバチ科の各1種とカタピロコバチ科(Eurytomidae) の2 種]を記録した. このうちBrachymeria lasus (アシブトコパチ科)は,一次および二次寄生者として記録された.
    (4) バナナセセリの発育段階ごとにみると,卵にはハチ4 種,幼虫にはハチ4 種とハエ3 種,踊にはハチ4 種とハエ1 種が寄生した.
    (5) 寄生者の調査地あたり種類数,寄生者の種類ごとの分布,寄生頻度,寄主1 個体あたり羽化数,産卵される寄主の発育段階についても報告した.
  • Jiangming MO, Sandra BROWN, Mingmao DING, Zhuping ZHANG
    1994 年 3 巻 2 号 p. 143-153
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    中国大陸南部広州市の近くのDinghushan Biosphere Reserve にある亜熱帯常緑広葉季節林の植生における窒素の分布,蓄積,同化について,主要な泊種の植物について調査した。窒素の総蓄積量は1021 kg/ha,総同化量は43 kg/ha/yr であったが,植物の構成器官,森林の階層,あるいは種類ごとに,その分布は不均等であった。樹木層は窒素の総蓄積量の97% ,年同化量の90% を占めているが,それらの半分以上は4 種の主要樹木種によっている。すべての種で植物器官ごとの窒素の蓄積量は,一般的に言えば葉>根>茎の順序になっていた。細い根の窒素蓄積量は,太い根と比較すると有意に多くなっていたし,枝では太さが大きくなるのと直線的に比例して窒素蓄積量は低下していた。地上部の平均窒素蓄積量はほかの熱帯や亜熱帯の森林のそれと比較すると,相対的に高い値が得られたので,窒素は生育の限定要因ではないことが示唆される。
  • James JARVIE, Balu PERUMAL
    1994 年 3 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    サラワクナト州(東マレーシア)ミリの近くのランビール国立公園での8 ヶ月に及ぶ野外調査で地域住民による森林樹木の利用についての概括的な調査を行うことができた。イバン族をともなっての野外調査と聞き取り調査によって植物の利用形態が明らかにされた。この報告は,科や属レベルで,木材,薪,果実,野菜,縄,武器,罠などに森林樹木がいかに利用されているかについてまとめたものである。森林樹木の利用についての伝統的な知識は急速に失われつつあり,都市近郊に残されている森林地帯での民族植物学的な詳細な調査を急いで進める必要がある。
  • 漂海民バジャウの定住化をめぐって
    長津 一史
    1994 年 3 巻 2 号 p. 169-188
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    Of the many topics related to the societies and peoples of Southeast Asia, greater attention needs to be paid to the socio-economic and socio-cultural changes of the maritime world. This paper deals with changes in the society of the Bajaus, who are, or used to be, known as sea nomads of the Sulu Sea. Changes in their traditional way of life are related to the abandonment of their boat-dwelling way of life. I shall use the word sedentarization to epitomize these changes. The primary concern of this paper is to examine the causes and effects of sedentarization. I focus upon the following factors as the main causes: I) the establishment of market centers and the penetration of a money economy; 2) the introduction of a new maritime product, namely, agar-agar or seaweed; and 3) technological innovations, such as cotton and, recently, nylon fishing nets and outboard engines. These factors cannot be discussed in isolation, nor can they all be treated as immediate causes of the sedentarization of the Bajaus. The interaction of these factors brought the 8ajaus to a land-dwelling way of life, which was accompanied by many changes. The following changes are considered to be related to their sedentarization: 1) abandonment of the nomadic life. 2) emergence of concentrated settlement patterns among Bajau communities, 3) social differentiation between rich and poor, 4) acceptance of Islam or Christianity, and 5) increased interest in occupations other than fishing. Focusing on these points associated with sedentarization, I discuss change and continuity in Bajau society.
Short communication
  • Ken OYAMA, Rodolfo DIRZO
    1994 年 3 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/08/31
    ジャーナル フリー
    ハムシ科の1 種Calyptocephala marginipennisの集団構造をメキシコ低地降雨林において調査した。この種は単食生の甲虫であり,雌雄異株のヤシ科のChamaedorea tepejilote の葉だけを食べる。葉脈に沿った割れ目状の特徴的な食痕は野外で容易に認識できる。この昆虫の集団構造・生存率・移住率を知るために,標識・再捕獲を24 日間実施した。総計219 個体を標識し,平均してその72% が再捕獲された。一日あたりの再捕獲率は31.4% から93.1% まで変異した。一日あたりの平均個体数は927.7個体,一日あたりの平均生存率は0.88 と推定された。これらの結果は先行研究の結呆とともに,C. marginipennisの食害がメキシコ,ロステユクストラスにおけるC. tepejiloteの生存・繁殖に少なからぬ影響を与えていることを示している。
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