Tropics
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8 巻, 1+2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • K. SENTHILKUMAR, S. MANIA, A. ARUNKUMAR
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 1-16
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Rhizobium, Azospinllum, Azotobactorのような窒素固定細菌 と マメ科で優占種である Atylosia trinerviaにつく根粒 菌 および、リンを溶解する細菌、放線菌、真菌類の動態を、南インドの自然草原で焼けた場所と焼けていない場所で 2 年間に渡って調べた。窒素固定細菌とマメ科で優占種であるAtylosia tnnerviaにつく根粒菌の個体数は、焼けた部分で有意に増加した。リン溶解性の細菌と真菌類も、同様に地表火で有意に増加したが、放線菌 は変わらなかった。真菌類の 36 種で 3 カルシウム・リン酸を溶解する能力を持つことが記録された。個々の種ごとに場所ごとに個体群密度は変化した。焼けた場所は焼けなかった場所よりも有意に真菌類の密度が高かった。最も効率のよいリン溶解菌は Absidia ramosa, Gongronella butleii, Mortierella spinosa, Mucor racemosus, Rhizopus nigricans, R. stolonifer, R. oryzae, Aspergillus fumigatus, A. nidulans, A. niger, Thielavia terricola, Cheatomium lunasporiumであった。
  • 増永 二之, 久保田 大輔, Usher WILLIAM, 堀田 満, 新村 義昭, 若月 利之
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 17-30
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    インドネシア西 スマトラの熱帯雨 林 に設置された1 haの 生態調査用プロット内に自生する樹木のうち樹木の樹皮の分析を 15 元素 (S,K,ALCa,M&a,Si,Na,B,Cu,Fe,Mn,P,Sr, Zn)について行った。それらの分析結果 より,それぞれの元素について最も含有量の 低い下位 5% (この場合23樹木) を各元素の非集積性樹 木と定義した。これら非葉 樹木の分布と土壌養 性との関係を調べた。プロット内において K, Si, Na, B, Cu, Mn, P, Sr非 集積性樹木は集中的な,Al, Mg, Cl, FE非集積性樹木はランダムな,そしてS, Ca集積性樹木は規則的な分布を示した。いくつかの元素芽の集 積性 樹 木の分布パターンは土壌養 性に影響を受けているようであった。K, Al, Ca, Na, B, Cu, Mn, Sr, Zn集積性樹木はそれぞれの元素の土壌中可溶態 の低い部分に分布する傾向が認められた。しかし他の元素の 芽集 積性 樹 木の分布については土壌との間に明らかな関係は認められなかった。次に,樹木(集積性樹木と非集積性樹木)中の元素含有量と土壌中の養分濃度との関係を調べた。その結果K, Al, B, Mn, Srについて 1-10% の 危険率で正の相関が、Sに 5% の危 険率で負の相関が認められた。また,有意性 は認められなかったが,Mg, Si, Pは負の相関を,そしてCaとZnは正の 相関を示した。
  • 石塚 悟史, 田中 伸一, 櫻井 克年, 平井 英明, 廣谷 博史, 荻野 和彦, Hua Seng LEE, Joseph Jawa KE ...
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 31-44
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    熱帯諸国において,土壌荒廃地を修復するためには,残された自然林の状況を様々な角度から明らかにしておく必要がある。この報告は,マレーシア·サラワク州ランビル国立公園内に設けられた8haプロットにおいて実施され,野外においてプロット内の地形と土壌硬度及び野外土性の分布を調べ,植物の根の阻害が予想される十壌の マクロな分布を把握しようとするものである。さらに,8haプロット内の尾根部と谷部において,土壌水分と土壌温度のモニタリングをおこなった。同時に,より詳しく土壌の特徴を把握するために,尾根部と谷部で採取した十壌の理化学性を調べた。
    尾根部では,土層が厚く,表層でのみ有機物含量が高かった。土壌水分は著しく変動しており,土壌は期間を通じて乾いていた,谷部では,土壌水分は降雨の後でさえ比較的安定していた・谷部では,周囲から多くの水の供給を受けるため,細粒質画分と養分流亡が進んでいた。
    地形調査の結果から,プロット内の地形は大きく3つのエリアに分けられた。
    1) 急傾斜エリア: 土壌と植生は,土壌侵食や地滑りによってしばしば変化している可能性がある。土性はsandy loam, loamy sand, loamであった。レキ質が深さ20-40 cm付近の次層で見つかり,根の下層への伸長が困難であると考えられた。
    2) 緩傾斜エリア: 土壌と植生は長期間安定である。土性はlight clay, heavy clayであった。粘土物質が,有機物によって十壌が細分化され,また20 cm以深に集積していた。
    3) 尾根エリア: 土壌と植生は地形的には安定であるが,水分状況が他の地点とは異なっている。土性はclay loam, sandy clay loamであり,急傾斜エリアと緩傾斜エリアの中問的なレンジであった。土壌硬度の観点からの物理的な阻害は確認されなかった。しかし, 降雨の少ない期間には,土壌水分が不足するため,根の伸長を含め生育が遅くなる可能性があると推測された。
  • Sarayudh BUNYAVEJCHEWIN, James V. LAFRANKI, Pongsakorn PATTAPONG, 神崎 護 ...
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 45-60
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1990年12月から 1991年12月にかけて,タイのフェイ·カ·ケン野生生物保護区の季節常緑林に50 ha (500 m × 1,000 m) の調査区を設置した。調査区の設定にはセオドライトを使用し,水平距離20 m間隔の格子点を測量により設置した。測量に際して方位角,傾斜角の測定は反復して行い正確を期した。この測量により,調査区 は1,250個の20 m × 20 mのコドラートに分割され,さらに各コドラートは16個の5 m × 5 mのサブコドラートに細分割されている。測量データから各20 m × 20 m格子点の標高データマトリツクスを作成し,等高線図を作成した。さらに1,250個の20 m × 20 mコドラートのそれぞれについて,4すみの格子点の標高データを使って回帰平面を決定し,それをもとに標高,斜面方位,傾斜,地形凹凸度の 4 つの地形変量を求めた。これらの地形変量の数値によって,調査区内の地形パターンを適切に表現することができた。調査区のほとんどは斜面に覆われ,一部が急斜面や流路に覆われていた。地理情報システム(GIS)で用いられるセミバリオグラムを各地形変量に ついて作成し地形の均質性が保たれる距離を地形変量ごとに決定した。このようなセミバリオグラムを利用した解析結果は,種の分布の地形依存性などを研究するときのサンプリングデザインを決め,適切な調査図積面を決定する際に利用できる。
  • 櫻井 克年, 田中 伸一, 石塚 悟史, 神崎 護
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 61-80
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    東北タイにあるサケラート環境研究所(SERS) において土壌-植物間の関係を明らかにするために,2つの主要な森林タイプ,すなわち,乾性常緑林(DEF)と乾性落葉林(DDF)において土壌調査を行った。乾季に植被が存在することによる土壌·植生への保護効果を調べる目的で,1967年から防火措置が行われている乾性落葉林(FPDDF)も対象に加えた。土壌の硬度,断面形 態,物理性,化学性,鉱物性,などの解析の結果,SERS内の現在の植生は,森林に及んだインパクト(主に火災)の期間の長さに大きく左右されているようであった。もしDDFで防火措置が行われていなければ,表土からの有機物の流失によって十壌侵食は容易に起こる。土壌侵食の後には,土壌の粘土含量とそれに関わる性質,すなわち,保水カ,陽イオン交換容量,透水性などは,容易かつ速やかに劣化する。
    FPDDF内の土壌の種々の性質は,DDFとDEFの中間的な状況にあると考えられた。火災のインパクトが強いほど,土壌侵食はより強くなる。そこで,得られた結果を基に,現在の植生タイプの分布を説明するメカニズムを次のように考えた: 乾燥した低肥沃度の土壌では,一度DEFタイブの森林植生が壊されると容易には再生不能である。そのため,他のタイプの植生,すなわちDDFが現在,東北タイの至る所にみられるようになった。DDFにみられる極端に乾燥した土壌条件は,森林土壌の本質的な性質ではない。かつて存在した植被の除去によって創り出されるものである。防火措置の行われているDDFがそのことを示唆している。
  • 仲川 泰則, Savien PAMPASIT, Soontorng KHAMYONG, 武田 博清, 岩坪 五郎
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 81-92
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    著者らはタイ北部の丘陵常緑林における水質水文学的研究を行った。この森林の気候条件は雨季と乾季を伴う明瞭な降水量の季節バターンで特徴づけられる。1993年12月から1995年2月まで,降水,林内雨 ,流出水の水質が測定された。研究の行われた期間,3月から10月にわたる雨季に見られた年間降水量は2784 mmであった。年間林内雨量は2969 mmになり,これは林冠による雲霧の遮断によるものであろう。降水中と林内雨による元素フラックスは3月から5月の雨季の初期に高かった。この集水域からの森林流出水の元素濃度は他の熱帯の森林での報告値の低い範囲にあり,特に Ca2+,Mg2+, Cl- and NO3- にあてはまっていた。流出水中の SO42-, NO3-, NIH4+, Siは雨季 に低下し,乾 季に上昇した。これらのことはこの集水域からの元素の流出が少ないことを示す。
  • 仲川 泰則, 李 昌華, 岩坪 五郎
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 93-103
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    物質の収入,支出を中国南部の常緑広葉樹林で評価した。収入と支出は季節変化を示し,それらは水のフラックスと関連していた。水のフローが上昇する春季から初夏にかけて,物質の支出の増加が特に塩基性陽イオン,ケイ素,炭酸水素イオンにおいて見られた。集水域に蓄積した硫黄(723 eq/ha/y)は おそらく中国南西部の都市工業地域からの人為起源のものであろう。元素の内部循環を考慮すると,窒素は土壌に蓄積しているであろう(409 eq/ha/y)。カリウムは内部循環により流出が押さえられているであろう。ナトリウムはここでの生態系に強く保持されていない。マグネシウムは植物体内での保持量が大きいが,風化による生成も多い。カルシウムは大気からの収入が,支出の多さに寄与している。
  • Ayesha C. ERCELAWN, James V. L AFRANKIE, Shawn K. Y. LUM, Sing Kong LE ...
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 105-115
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    シンガポールのBukitTimahに残る孤立した100haの熱帯林内で樹木個体群動態の現状を評価するために,1993年と1995年に2ha永久調査区で直径1cm以上の樹木13,470本について調べた。そのデータから,直径1m以上のクラスへの新規加入個体について,既存の植物相との比較と,種間の加入率の比較を行い,短期間の変化に関する仮説を検定した。調査区全体での加入率は6.5%(年間2.6%)であったが,世界各地で報告されている加入率と類似した値である。新規加入個体の多様性は直径1-3cmクラスの集団よりもわずかだが多様性が高く,多様性が減少するという仮説は真実でないことが見いだされた。種を優占度·性型·散布型·成木の属する階層で区分すると,優占種がさらに優占するとか,雌雄異株の種が抑制されるとか,特定の階層種の個体数当たりの更新率が高い,といったことはなかった。二次林の種の侵入が成功する兆候はなく,林冠相にある二次林種の大部分が更新する様子がなかった。新規加入による生物学的に重要な唯一の変化は,散布理に関してみられた。生物に依存しない散布様式をもつ種群(フタバガキ科と非フタバガキ科の両方)の新規加入率は10%だが,生物に依存する散布様式をもつ種群では6.5%であった。しかし,大きな森林で得られている同様なデータから考えると,この高い加入率はこれらの種に一般的な性質かもしれない。一方,ニクズク科は,種数も個体数も多いが,シンガポールでは絶滅した動物によって主に散布される種群で,新規加入率は2.5%しかなく,孤立化していない森林の値よりずっと低かった。結論としては,最近150年間に半数以上の種が失われた鳥類と哺乳類の個体群とは対照的に,樹木の短期間の動態を調べた我々のデータは,Bukit Timahのほとんどの種が急速な減少傾向にあるという仮説を否定している。
  • 1998 年 8 巻 1+2 号 p. 117-118
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 市川 光雄
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 119-129
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Environmental revisionists see the local landscape as a product of centuries-long interaction between man and nature. Based on this standpoint, examined in this essay is the ecological and ideological relatioship of the Mbuti hunter-gatherers of the Congo Basin with the forest world. While human activities are generally thought to be destructive to the environment from a conventional Western viewpoint, an examination of the Mbuti case indicates that they also impose positive impacts on the forest environment. A preliminary analysis of their use of forest and its resources suggests that their habitation and activities in the forest may have contributed to the maintenance of the forest resource base, rather than deteriorating it, and that they comprise a part of a large recycling sysytem of the forest world. The “circulation in the forest”, or “continuity with the forest”, shown in the ecological sphere is also represented in their view of the forest. The Mbuti view the forest as a womb, as the place where they come from, and also as the place where they go after the death. Their hunting is not merely a foodprocuring activities, but also the process through which they confirm the continuity with the forest world. Such a life deeply incorporated into the forest ecosystem and the view of nature deriving from it show a marked contrast with the Western idea of the forest, which is based on dualistic opposition between man and nature.
  • 秋道 智彌
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 131-146
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    The Satawalese (Central Caroline Islands, Micronesia) conceptualization on the nature is described with special reference to the division of time, folk-orientation, folk-taxonomy, and taboo observances. Sidereal, lunar, and celestial movements and natural phenomenon such as the wind direction, precipitation, riping of breadfuit, and fish run are combined together to make the timereckoning and folk-orientation system of the island. Folk-taxonomy of marine life and the associated food observances as metaphors well reflect the maritime tradition of the people in which profound knowledge and marine lore are accumulated. Individual sets of these folk knowledge are examined as the hypothesized tripolar and circulation models. Land and sea are regarded as being opposed each other in terms of odour of the two areas but both regimes are neutral to the heavenly world. Odours related to human sex and female blood are also avoided by the supernatural beings controlling the land and the sea. These three domains figure a tripolar model of odour. Pwuupw has three meanings: triggerfish (Balistidae), the southern Cross (Crux) and the space allocation in the navigational knowledge of Pwuupwunapanap. The polysemic use of pwuupw suggests the integrated conception of nature as a circulation model between the sea and the heaven. The study of indigenous knowledge and cultural construction on the nature is also essential to an understanding about on-going degradation processes of the environment.
  • 長田 俊樹
    1998 年 8 巻 1+2 号 p. 147-151
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    The Munda people, who lives in the Chotanagpur plateau in eastern India, is a ricecultivator. This paper is to investigate the Munda’s view on Nature.
    I begin to discuss the concept of soul in Mundari, which is very complicated. In the correspondence to the word ‘soul’ in English, we have four words; e.g. ji, roa, raisi, wnbul. The words roa and raisi are used only for humanbeings, domesticated animals; i.e., cows and goats, and main crops; i.e., rices and finger millets. Further, I found the paratlelism between human’s or ancestoral soul and rice’s soul in the myths and rituals. This is an important idea to understand the Munda’s view on Nafire.
    Moreover, the Munda people prays God for successful rice cultivation in the agrarian rituds. These ue singbonga (Sun God), buru bonga (Mountain God) and ikir bonga (River God). All is belonging to the nature. It means that the rice-ancestor-nature complex can be found in the Munda microcosmos.
    ln conclusion it seems to me that the Munda culture also contains a typical feature of pan-Asian rice culture. We need a comparative study on Asian rice culture in this respect.
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