Tropics
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9 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 佐藤 利幸, Saw Leng Guan, 古川 昭雄
    原稿種別: 原著論文
    2000 年 9 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    狭い立方区(5m × 5m × 5m) で確認できるシダ植物の種数を基準にして,熱帯マレーシアから亜熱帯の台湾と琉球,暖温帯の本州,および冷温帯の北海道など,異なる気候帯におけるシダ植物の多様度を測定した。25 の立方区に含まれるシダ植物の積算種数(ガンマ多様性)は,暖温帯で55 種,亜熱帯で30 種,冷温帯で20 種,熱帯低地で10 種である。マレーシアクアラルンプール周辺に限って生育場所ごとの40 立方区の積算種数は,セマンコックの熱帯自然林内で26 種と最大であり,オイルヤシ人工林では12 種と最小である。立方区あたりの平均種数で示したアルファ多様度は自然林で6.5と最大であり, 10 年経過したギャップで2.4 と最小である。環境異質性を反映するとされる立方区間のベータ多様度(ガンマ/アルフア)はパソの10 年経過した森林ギャップで7.0 と最大を示し,オイルヤシ人工林の2.0 が最小で、あった。調査範囲を10m × I0m × 10m 立方区20 個以上あるいは20m × 20m × 20m 立方区5 個以上に拡大すると,はじめて自然林のシダ植物種数が人工林や人為撹乱地域より上回る。樹木や昆虫で顕著な高い多様性が知られる熱帯低地林ではあるが,シダ植物に関しては数ヘクタール程度の狭い範囲では,温帯林のほうがはるかに高い多様性をもつことが示された。すなわち,熱帯林におけるシダ植物多様性を維持するためにはかなり広域(数平方キロメートル以上)の自然林を保つ必要があろう。
  • Herwint SIMBOLON, 山田 俊弘, 鈴木 英治
    原稿種別: 原著論文
    2000 年 9 巻 2 号 p. 91-102
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    西カリマンタンのブルイ山にある1-ha の継続調査区で、トウダイグサ科Elateriospermum tapas の空間分布,生存率および成長速度を調べた。この調査区にトウダイグサ科は直径4.8 em 以上の樹木が254 個体, 35種あったが,その中でE. tapas がもっとも多かった。結実の多かった1993 年には,落下した種子の44%)が発芽した。翌年にはほとんど新規発芽がなく, 1995 年にはわずかに発芽した。直径分布は逆J 字型で,連続的な更新が起きている可能性を示唆している。調査区内の空間分布は集中していた。小さな実生の生存率は,大きな実生より小さかった。生存率は,実生密度や森林構造に関連した変数と相関がなかった。実生と稚樹の高さの成長率は,高さの増加につれて双曲線的に減少した。また,ギャッフ内の方が閉鎖林冠下よりも成長率が高かった。この高さの成長率と成木の直径成長率は,光環境や森林構造に関連した変数と相闘がなかった。
  • 西村 貴司, 鈴木 英治
    原稿種別: 原著論文
    2000 年 9 巻 2 号 p. 103-116
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    ショウガ科草本の空間分布と種間の分布相関を,西ジャワに位置するハリムン山国立公圏内に設定されている2 つの1 ha 調査区(Plot 2 とPlot 3) で調べた. Plot3 よりもPlot 2 のほうが緩傾斜で、土壌含水率の平均値が高かった。ショウガ科草本の幹数及び種多様性ともPlot3 よりPlot2 のほうが高かった.優占種はPlot 2, Plot3 とも集中分布を示していたが,その集中斑の大きさはPlot3 のほうがPlot 2 よりも大きかった.調査地において最も優占していた種であるAlpinia scabra は両調査区ともに,他の優占種と負の分布相関を示した.ショウガ科草本種の分布は、上述の物理的な環境要因と関係しているようであった.優占種の主とする生育環境がそれぞ、れ異なっているために,ショウガ科草本の優占種はそれぞれ独自な地上及び、地下部構造を持っていた.形態的な可塑性が低いと,個々の種は生存と成長に最も適した限定された生育地にのみ分布するようになる.その結果,過度の種間競争が避けられ,多様なショウガ科の群集が維持されているのであろう.
  • Abu S. EDET, 高橋 英紀, 関 太郎
    原稿種別: 原著論文
    2000 年 9 巻 2 号 p. 117-132
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    ナイジエリア南東部を南北に貫流するクロス河流域の34 の地域に玄武岩を主な母材とした総数450 以上におよぶ石像が分布する遺跡群がある。石像は高さ0.3-2m ,重さ200-800 kg の円柱状で,表面には人面あるいは人体を抽象化した美しい彫刻が施されている。住民はこの石像を祖先の象徴として崇めており,現在でも地域社会において重要な役割を担っている。この石像遺跡群の成立については不明な点が多いが,文化遺産としても人類学・考古学的にもナイジエリアあるいは中・南アフリカにとって極めて重要である。この遺跡群は熱帯雨林地域の縁辺部に分布するため,森林の耕地化にともなう急激な微気象の変化にさらされている。本研究では,熱帯雨林地域(Old Nkrigom 地区)と森林伐採後に草原となった地域(Alok 地区)に存在する各1 ヶ所の石像遺跡を対象に,微気象観測を行うとともに,石像の表面に付着繁茂する多様な微生物と,それらが遺跡の劣化に及ぼす影響について研究を行った。その結果, Old Nkrigom において蘇類6 種,苔類2 種,地衣類、4 種を, Alok では蘇類1 種,地衣類3 種が同定された。また,石像表面における微生物の生長や堆積を調査し,石像劣化との対応についても検討した。その結果は各種の微生物が代謝作用で分泌,渉出する有機物質あるいは化学物質による石像表面における複雑な生化学的風化作用の存在を示唆するものであった。
  • 久保田 大輔, 増永 二之, HERMANSAH, 堀田 満, 若月 利之
    原稿種別: 原著論文
    2000 年 9 巻 2 号 p. 133-145
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    インドネシア西スマトラの熱帯雨林に設置された2 つのlha 生態調査用プロットにおいて,樹木種の多様性に関わる土壌環境特性を研究した。両プロットに設定した30 × 30m サイズのサブプロットにて,詳細な土壌化学及び物理性を評価した。安山岩/石灰岩由来の1ha プロットと,1.2 km離れている頁岩由来の1haプロットの両プロットにおいて,土壌特性を調査した。我々の主要目的は,土壌特性と樹木種多様性の聞に類似した関係が認められるか決定することであった。より種多様で,個体数の多かったのは,肥沃度の低いプロットであった。このプロットでの土壌特性のバラツキは,より大きかった。樹木種の多様性と様々な土壌特性因子による空間分布の相関度を特徴づけるために,巌のオメガ値を計算した。30 × 30m サイズのサブプロットでの種数と各種の土壌特性との比較結果は,全炭素・窒素含量だけでなく,抽出態Ca, Mg, Al, Si, Mo, Sr, S, Zn濃度でもまた,マイナスのオメガ値を示した。一方,主要な土壌特性のバラツキは,抽出態Ca, S, Znを除いて,樹木種数との間で,より高い正の相関を示した。これらの結果は,土壌の不均一性が,ガド山域の数km程度のスケールの数ha程度のプロット面積における樹木種多様性を支える,多様な土壌由来のニッチを創り出すことに貢献していることを示している。さらに,この不均一性は,この地域で見つかった非常に多様な樹木種の栄養特性の結果と関係あるものと思われる。
Short communication
  • 湯本 貴和, 百瀬 邦泰, 永益 英敏
    2000 年 9 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    マレーシア国サラワク州ランビル国立公園の熱帯雨林で,新しい送粉シンドロームであるリス媒が発見された。Madhuca sp.(アカテツ科)の花は,雄蕊と花弁が合着して,肉質な果実様の花筒を形成する。この花筒は甘く,ショ糖換算で15 %の糖度があった。また,この花筒は雌蕊や子房とは簡単に外れる。3 種のリスと1 種のムササビが花を頻繁に訪れては,花筒を手にもって食べる行動がみられ,その際に花粉が口のまわりや手についたのが観察された。植物個体間での花粉の移動は確認できなかったがリスやムササビが送粉に大きく関与していることが考えられる。
  • 市榮 智明, 二宮 生夫, 荻野 和彦
    2000 年 9 巻 2 号 p. 153-163
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/02/28
    ジャーナル フリー
    We studied the resource allocation process of a large viviparous seed species, Bruguiera gymnorrhiza, during seedling establishment, to clarify the ecological significance of large storage resources in the propagule in mangrove forest. The propagule contained high content of starch in the hypocotyl (51.6 % of the total 7.25 g mean dry weight of the hypocotyl) and a little glucose and fructose. The starch content was evenly distributed in the hypocotyl, except the top and bottom ends, where the content was lower. The hypocotyl starch was gradually consumed after they start rooting. By the time the first pair of leaves appeared (the 30 days after planting) 1/3 of total starch disappeared. The dry weight of the roots and leaves increased consistently and the weight of the both organs seemed almost same. The hypocotyl starch was completely exhausted by the 120 days after planting. The dry weight of new organs did not stop increasing throughout the experiment. Although only 1/3 of hypocotyl starch was necessary to initiate first pair of leaves, consumption of the storage reserves were continuously consumed for the development of leaves and roots. This suggests that the large amount of storage resources in the propagule of B. gymnorrhiza is necessary for the growth during rather long after they start rooting, and help a seedling to recover from herbivory and physical damage, which are frequent in mangrove environment.
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