インドネシア西スマトラの熱帯雨林に設置された2 つのlha 生態調査用プロットにおいて,樹木種の多様性に関わる土壌環境特性を研究した。両プロットに設定した30 × 30m サイズのサブプロットにて,詳細な土壌化学及び物理性を評価した。安山岩/石灰岩由来の1ha プロットと,1.2 km離れている頁岩由来の1haプロットの両プロットにおいて,土壌特性を調査した。我々の主要目的は,土壌特性と樹木種多様性の聞に類似した関係が認められるか決定することであった。より種多様で,個体数の多かったのは,肥沃度の低いプロットであった。このプロットでの土壌特性のバラツキは,より大きかった。樹木種の多様性と様々な土壌特性因子による空間分布の相関度を特徴づけるために,巌のオメガ値を計算した。30 × 30m サイズのサブプロットでの種数と各種の土壌特性との比較結果は,全炭素・窒素含量だけでなく,抽出態Ca, Mg, Al, Si, Mo, Sr, S, Zn濃度でもまた,マイナスのオメガ値を示した。一方,主要な土壌特性のバラツキは,抽出態Ca, S, Znを除いて,樹木種数との間で,より高い正の相関を示した。これらの結果は,土壌の不均一性が,ガド山域の数km程度のスケールの数ha程度のプロット面積における樹木種多様性を支える,多様な土壌由来のニッチを創り出すことに貢献していることを示している。さらに,この不均一性は,この地域で見つかった非常に多様な樹木種の栄養特性の結果と関係あるものと思われる。
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