半島マレーシアにおいて,低地に成育するフタバガキ科25樹種を含めた46 種の熱帯樹種を対象に,陽葉における最大純光合成速度(Pn
max) ,最大水蒸気拡散コンダクタンス(Gw
max) ,両者の比である水利用効率のWUE, Water-UseEfficiency, Pn
max⁄GW
max) ,およと飽水時の浸透ポテンシャル(ψs
0) を明らかにした。さらにPn
max , Gw
max, WUE およびψs
0による熱帯樹種の特性評価を試みた。熱帯樹種のPn
maxは約3-16 μmol CO
2 m
-2s
-1の範囲で,その分布中心は約7 μmol CO
2 m
-2s
-1, GWmax は約30-750mmolH
2O m
-2s
-1で,その分布中心は約200 mmolH
2Om
-2s
-1であった。いずれも温帯樹種に比べて低かった。しかし, WUEでは熱帯樹種と温帯樹種の問に大差はなかった。また,ψs
0は温帯の樹種にくらべ高い(絶対値の小さい)樹種が多かった。これらのことから,熱帯樹種は温帯樹種に比べ光合成速度が低い傾向があるがこれは主としてガス拡散コンダクタンスが制限要因となっているためで,水利用効率に差はないこと熱帯性樹種の旺盛な成長は光合成能力ではなくほぼ一年を通して光合成生産が可能な熱帯の温度環境によること,および熱帯樹種は植栽時などにしおれやすい性質を持つことが明らかになった。以上の結果をもとにして樹種特性評価を試みた結果, 7 つの樹種特性に区分した。
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