本稿の目的は,義務教育修了時以前に父親が不在であること(早期父不在)によって,地位達成にどれほどの格差が生じ,その格差が時代とともにどのように変化してきたのかを明らかにすることである.従来の社会階層・移動研究では,地位達成過程の初期段階で父親がいなかった人々は欠損値として分析から除外されることが多かった.しかし近年,そういった人々の地位達成に着目する動きが見られる.
「社会階層と社会移動調査」を用いて,早期父不在者の教育達成と初職達成を分析したところ,以下の点が明らかになった.(1) 早期父不在者が高学歴化の流れに取り残される形で,短大以上の高等教育機関への進学格差は拡大傾向にあった.(2) 安定成長期以降,早期父不在を経験した人はそうでない人々と比較して,ブルーカラー職として労働市場に参入する傾向が強まり,専門職や大企業ホワイトカラー職に初職で入職できる割合も低かった.(3) 早期父不在者の初職達成上の不利は低い教育達成によって引き起こされていた.
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