社会学年報
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40 巻
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特集「地域社会の再生をめざして」
  • 吉原 直樹
    2011 年 40 巻 p. 1-5
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
  • 阿部 晃士
    2011 年 40 巻 p. 7-9
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
  • ―持続可能な生計アプローチから見た佐渡―
    佐藤 康行
    2011 年 40 巻 p. 11-21
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     日本は財政再建や社会保障改革という大きな政治課題を抱えている.地方自治体は国に先行してすでにこうした問題の解決を迫られている.たとえば佐渡市は,人口減少に加えて生産高と財政が縮小する社会になっている.また,環境に優しい福祉の充実した地域づくりをしている点で持続可能な社会を構築している.こうした点で,まさしく佐渡市は日本の縮図を成していると言える.
     初めに,佐渡市の人口,世帯数,高齢化率,生産高,財政規模の推移を概観し,トキが生息できる環境に優しい島づくりと福祉社会の形成を進めてきた経緯を見る.その後,2つの集落を取り上げ,持続可能な生計アプローチの観点から地域づくりを比較考察し,地域再生の条件を検討する.その結果,2つの地区のあいだで経済資本や人的資本が相違していることに加え,文化資本の性質の相違と社会関係資本の質と量が相違していることを示す.
  • 大堀 研
    2011 年 40 巻 p. 23-33
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     東京大学社会科学研究所の希望学プロジェクト釜石調査グループは,地域活性化に必要な条件の一つとして,「ローカル・アイデンティティの再構築」を掲げた.しかし,調査グループが2009年に調査成果として発刊した書籍では,ローカル・アイデンティティという用語は,地域の個性・らしさという言い換えが示されている以外に,明確な概念規定はなされていなかった.またそれが地域活性化をもたらすという論理は,釜石の事例に関しては検討すべき点が残されている.後者の論点については,筆者の考えでは,岩手県葛巻町,福井県池田町の事例でみてとることができる.葛巻町ではクリーン・エネルギーのまちという新しい要素が導入されたことにより,交流人口が増大している.池田町では,従来の「能楽の里」という自己規定に加え,農村という特性に基づき環境のまちづくりを推進したことから,NPO など各種環境団体が形成されるようになっている.これらの事例を踏まえ,本稿では「地域(社会)」を自治体と規定し,ローカル・アイデンティティは,自治体のキャッチフレーズ等に表示されるものとして捉えた.これを敷衍すれば,ローカル・アイデンティティの再構築とはキャッチフレーズの更新に象徴されるようなものとなり,自治体戦略の一環となる.ただしこの再構築は,自治体行政だけでなく,企業や住民など多様な主体が関与しうるものであり,その意味で偶有的である.
  • ―北海道夕張郡長沼町JN区の事例―
    松岡 昌則
    2011 年 40 巻 p. 35-42
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     今日の農業・農村をとりまく状況は厳しさを増している.本報告は,自らの農業の維持のために,水田単作の従来型農業からの脱却を目ざす農業経営の改革の事例を取り上げる.
     北海道夕張郡長沼町は水田の生産調整面積が5割を超え,農業経営の改革が余儀なくされている.JN区は畑作,酪農,直売所,グリーン・ツーリズム,観光農業等の多様な経営を展開させ,それにともない社会関係は変化する.しかしそうした変容する社会関係に対して,人々は将来の生活の展望を見据えて,村落内社会関係を組み替えながらも区のまとまりを維持しようとしている.北海道においても,村落は居住集団として大きな役割をもっている.
  • 細谷 昂
    2011 年 40 巻 p. 43-45
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
  • 佐久間 政広
    2011 年 40 巻 p. 47-49
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
論文
  • ―アジア的空間編成への視座―
    大井 慈郎
    2011 年 40 巻 p. 51-61
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     本稿は,インドネシア首都ジャカルタ郊外のブカシを事例に,首都郊外の形成過程を検討することで,従来の都市研究における郊外ニュータウンの形成という枠組みでは捉えられない東南アジアの都市化への視座を提示する.例えばアメリカでは,郊外化は都市の過密化などから逃れ,理想の生活を求めた中間層以上の人々の移動により展開された.これに対して東南アジアの諸都市では,特に70年代後半からの新国際分業に組み込まれていく過程で,首都郊外に工業団地とニュータウンが造成され,アジア・メガシティとよばれる巨大都市が形成された.つまり,インドネシアやマレーシアなどにおいては,世界都市システムのなかで海外輸出の拠点として整備された工業団地を単一の核として,そこに隣接する形で働き手を収容する郊外ニュータウンが形成されるのである.加えて,ニュータウン内に整備されたゲーテッド・コミュニティだけでは労働人口を収容できず,カンポンや周辺の村(デサ)も受け皿となっている.工業化の過程で都市-農村両者は分断されるというよりもむしろその関係性を強め,同一の社会関係のネットワークを介してヒト,モノ,カネ,情報,文化の循環移動が促進され,労働力も流動し,都市と農村の社会関係が共時的に複合化しつつ変化を遂げている.デサコタやカンポンという空間編成は社会関係のネットワークとあわせ,世界都市システムを下支えするアジア的な空間編成を形成しているのである.
  • ―社会ネットワークによるスクリーニング機能―
    石田 賢示
    2011 年 40 巻 p. 63-73
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     本稿では,若年労働市場における入職経路と就業先の職場環境との関連を検討した.分析の結果得られた知見は以下の通りである.(1)個人的なネットワーク,とりわけ家族・親戚を通じて仕事に就く場合,職能形成機会,生活に合わせた仕事の調整可能性,職場の安定性に対して,ポジティブな効果が示された,(2)学校経由の就職による直接効果は観察されず,学校経由の就職の効果は大企業への就職,正規雇用での就職を介した間接的なものであることが明らかになった,(3)転職をする場合や学歴の低い者について,個人的なネットワークの影響がより強い.
     日本の若年労働市場において血縁関係は,職場をスクリーニングする機能を果たしている可能性がある.また,制度的連結論にもとづく予測とは一致しない結果から,学校経由の就職では媒介されない情報やサポートに関する検討の必要性も明らかになった.社会ネットワークや制度的連結の構造と機能に関する,さらなる調査研究が求められる.
  • ―意味の変容としてのストラテジーに着目して―
    坪田 光平
    2011 年 40 巻 p. 75-85
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     外国人児童生徒に対する教育支援の制度化は,現代日本において着目される論点の一つである.そして制度化のための検討課題であるボランティアの学校教育への参入とその人材を活用した職業化の構想は,これまで理念的に語られてきた.本論文では,こうした制度構想を批判的に検討するために,意味の変容としてのストラテジーというミクロな見地から,ボランティアが教師との関係構築の局面で編み出したストラテジーを析出し,学校教育現場におけるボランティア定着のプロセスを明らかにした.これまで学校教育においては,専門性の侵害と捉える教師によって,ボランティアは周辺的な地位を与えられてきた.しかし構造的に見落とされがちな外国人の支援ニーズを収集・伝達するなかで教師との関係構築を果たすボランティアは,安価な労働力として使役されないサバイバルな性質に加え,教師の認識にも変化をもたらすペダゴジカルな性質の両輪によって定着を可能としていた.これは一面において,ボランティアの地位確保志向の帰結を意味する.しかし教師との関係構築におけるボランティア行為には,外国人に対する教師の「特別扱いしない」認識枠組みを再検討させ,他の子弟との教育実践を差異化させる点において,ボランティアの主体的行為である〈意味の変容〉機能を指し示すものである.
  • ―祭りの背後にある商業経営と生活に着目して―
    深澤 あかね
    2011 年 40 巻 p. 87-97
    発行日: 2011/07/16
    公開日: 2014/02/07
    ジャーナル フリー
     「日本の祭の最も重要な一つの変り目」は「見物と称する群の発生」であった(柳田 1998: 382)と柳田國男が述べた時代から,祭りは「近代化」が指摘されてきた.そして今日では,「『自己充足的な価値』を追求して『楽しむ』」(松平 1990: 345)ことを目的とした「よさこい祭り」のような,自発的結合に基づく人々の動きが顕著となっている. だが一方で,人々が生業と生活を営んできた旧来の地域社会においても,祭りは営まれ続けている.地域社会を取り巻く状況の変化により,衰退の方向に向かっている祭りも多いが,そのような中でも形を変えながら存続する祭りは,新旧の社会関係を重層的に保持する地域社会のあり方を示している. 本稿では,「商業町の人々にとって祭りとは何か」という問題意識に基づき,商業町を構成する世帯を,商業経営と生活の両方を営む「商家」として捉えながら,近代以降の地方都市で行われてきた祭りの分析を行った.具体的には,東北岩手の商業町花巻を取り上げ,町そのものの変容と祭りの変遷を概観した上で,商店街を構成する一つの町内に焦点をしぼり,そこで行われてきた山車運行の歴史を追った.そして,「近代化」の進展過程として掌握されがちな祭りの歴史は,実際には堆積する新旧の社会関係の表出から成ること,また,商業町の人々にとって祭りは複合的な意味を持つ場であり,人々はそこに今日的な意義をも見出していることを実証した.
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