社会学年報
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最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集『地域での支援』を考える
  • 板倉 有紀
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 1-3
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー
  • 在宅療養支援診療所による在宅緩和ケアの取り組みから
    相澤 出
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 5-15
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     緩和ケアは死を医療化した一方で,苦痛も医療化した.トータルペインの緩和を志向する緩和ケアは,地域や在宅で,適用範囲を積極的に拡大し,支援の新しい取り組みを創出している.そうした事例のひとつである医療法人心の郷 穂波の郷クリニックは,在宅緩和ケアを提供するなかで,終末期の患者のケアを担うだけでなく,地域のなかで多様な活動を展開している.その活動のひとつが「おっぴさん倶楽部」である.おっぴさん倶楽部は,軽度の認知症を患った,元気な高齢者をメンバーとしていた.そのおっぴさん倶楽部は,ボランティア活動の担い手として,在宅緩和ケアのケアチームの一員として活躍していた.こうしたおっぴさん倶楽部の事例を見ると,在宅緩和ケアを行うチームの多様な活動を可能にし,支える医療のあり方が見て取れる.こうした事例が示唆するのは,患者を病人役割に押し止め,管理する医療のあり方とは異なる,医療の論理の働き方がありうる可能性である.こうした,在宅緩和ケア的な想像力を伴った医療が,今後,地域のなかで人生・生活の質(Quality of Life)に関わる多様な支援を可能にする支えとなりうると考えられる.

  • 保護司が「居る」ことをめぐって
    高橋 有紀
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 17-28
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     日本の更生保護制度は,ボランティアである保護司がその「地域性」と「民間性」を活かして罪を犯した者やその世帯の地域生活を包括的にケアする特長を持つ.

     2016年に成立した再犯防止推進法の下では,「国,地方公共団体,民間」が一丸となって,罪を犯した者の立ち直りを支えるべきことが示された.これを背景に,ここ数年,罪を犯した者の「生きづらさ」への共感を求める国の啓発活動も盛んであるが,そこには限界もある.罪を犯した者の不遇な生育歴や疾病・障害,貧困,孤立といった「生きづらさ」に共感する者は確かに存在するものの,類似した「生きづらさ」を抱えるがゆえに,それでも罪を犯さない自らと,罪を犯した者とを線引きしようとする反動も生じうるからである.

     これに対して,自らが暮らす地域に「居る」ボランティアである保護司の存在は,罪を犯した者を包摂する社会の意義を「共感」とは別の形で示す側面があり,それ自体が保護司の「ケア」性でもある.こうした保護司の存在は「地域共生社会」の実現が目指される地域福祉にも示唆を与えうる.

     また,多様な「生きづらさ」に対する専門的なケアやセラピーは都市部に偏在しがちであるところ,保護司は「地方」を含む全国各地に「居る」.ケアやセラピーの担い手が保護司と同様に,あるいは保護司とともに地域に「居る」ことができる社会の仕組みを構想することが,誰もが生きやすい地域を作ることにつながり得る.

  • 地域に根差した性的マイノリティ団体のダイナミズム
    前川 直哉
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 29-39
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では筆者たちが東北地方で行ってきた団体スタッフへのインタビューをもとに,地域に根差した性的マイノリティ団体に見られる活動のダイナミズムの一断面を記録し,分析した.団体の活動は「当事者のエンパワメント・居場所づくり」と「地域社会に対する発信・啓発」の二つに整理できるが,実際には両者は截然とは区別できず,発信・啓発の「活動」が「居場所」として機能していたり,「居場所」から「活動」が生まれたりといった循環が存在することが明らかになった.またクラフティヴィズムという概念を用い,「活動」と「居場所」をつなぐ存在としての「手作業」に注目する重要性も指摘した.

     地元での「顔出し」が難しい当事者に代わり,アライが発信や啓発などの活動を行うことが「広義の支援」となることも指摘した.その上で,アライにとっても性的マイノリティに関わる活動が「居場所」となるケースがあり,単純な「支援する/される」とは異なる,「ともに戦い,抗う」関係性が存在することを明らかにした.

  • まだ見ぬ当事者の生を支える実践
    大森 駿之介
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 41-54
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,「地方」とされる地域の内部にある違いが,性的マイノリティの生活を支える活動といかなる関係にあるのかという問題意識のもと,東北地方で活動する団体――性と人権ネットワークESTOとColor Calibrationsの「地方周辺地域」での活動に着目する.大都市や地方中核都市とは異なり,LGBTQの人権課題への関心の希薄さや当事者の不可視化が強まる当該地域で,各団体がいかに性的マイノリティ当事者のニーズの発見,充足に関わり,特定の性のありようで排除されない支援の場を作りあげようとするのかを考察する.

     中核都市を拠点とするESTOでは,主に啓発活動から周辺地域の当事者にアプローチする方法がとられ,それまでの活動実績や県内施設などの資源を使用しつつ,当事者を取りまく「支援者」を「支援」する実践がなされていた.これらは,当事者がニーズを表明しやすい地域の創出につながりうる,SOGIに配慮した支援の場の形成を促していた.一方,周辺地域を拠点とするColor Calibrationsでは,交流会など居場所の可視化によって当事者のニーズに直接働きかける実践が確認された.団体の認知度が低く資源が少ない条件下で,戦略としてなされた地域事業への「相乗り」的な活動は,市民団体や専門職との意図しない出会いにつながり,時には当事者のニーズを満たしつつ,心的安全性が保たれる場をLGBTQ団体以外でも作り出す効果をもたらしていたことが明らかになった.

  • 「迂回」することの可能性
    庄司 知恵子
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 55-59
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー
  • オルタナティブ・ストーリーを発見し共有する
    泉 啓
    原稿種別: 特集論文
    2024 年53 巻 p. 61-64
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー
論文
  • 動機の分類と背景の分析
    安達 智史
    原稿種別: 論文
    2024 年53 巻 p. 65-76
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     イスラームへの改宗は,ムスリム・コミュニティの拡大を経験する欧米社会で,1990年代以降,関心を集めるテーマとなっている.日本では,2000年代に入り,国内のムスリムを対象とする研究は増えているが,改宗を詳細に検討した研究はわずかである.そこで本稿は,改宗者ムスリム女性へのインタビュー・データに基づき,改宗へと至る動機とそれに影響を与える個人的背景の分析をおこなう.分析の結果,知的,神秘的,関係的,便宜的という4つの改宗動機が確認できた.加えて,改宗のあり方は,個人的危機,家族の宗教,留学経験などと関連がある点が明らかとなった.今後は,共生社会やジェンダーといった視点を取り入れつつ,事例の比較を通じて,改宗動機やプロセスのさらなる解明が求められる.

  • 弘前女学校の事例による検討
    片瀬 一男
    原稿種別: 論文
    2024 年53 巻 p. 77-88
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿は,明治後期の国家形成が,日本の近代化の一翼を担ったキリスト教教育とどのような文化衝突を生んできたか検討することで,日本の近代化の一断面を地方の宗教史・教育史の観点から明らかにすることを目的とする.そのために,津軽地方にあった弘前女学校の事例をもとに,同校が文部省訓令や教育勅語に対してどのように戦略的な対抗をしたかについて,新制度学派の「脱連結」概念をもとに検討した.

  • 雑誌『家の光』(1955~79年)の記事分析をもとに
    小林 博志
    原稿種別: 論文
    2024 年53 巻 p. 89-100
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,雑誌『家の光』を通し,農村地域における「食の外部化」過程について考察した.則ち,1950年代に入り,生活改善運動により「調理の共同化」が促され,1960年代に入り拡大した共同炊事に,1960年代後半から農協の生活購買事業が利用されることで,「食の外部化」が本格化した.その背景には,兼業化が招く過重負担の軽減を求める農家女性側の主体的要因と,一方,その外的要因として,生活改善運動の展開と結びつくことで供給量拡大を意図する同購買事業の企業論理的展開が存在した.更に,1970年代に入り,農家女性における農外就労の増加を背景に,民間スーパーの出店による購買環境の整備と,モータリゼーションの進展を更なる外的要因として,この外部化が進展していった.

  • 鳶島 修治
    原稿種別: 論文
    2024 年53 巻 p. 101-112
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施している親子パネル調査のデータを用いて,子どもの性別や親の学歴による違いに注目しながら親子間の会話頻度と子どもの学業成績との関連を検討した.パネルデータ分析により観察されない異質性を統制し,親子間の会話と学業成績の関連を厳密に把握することを試みた.「学校での出来事」「友だちのこと」「勉強や成績のこと」「将来や進路のこと」「社会のニュース」の5項目に関する父子間および母子間の会話頻度のうち,勉強や成績に関する母子間の会話は子どもの学業成績とほぼ一貫して正の関連を示したが,親が大卒の中学生女子や母非大卒層の小学生男子の学業成績とは関連していなかった.勉強や成績に関する父子間の会話は小学生女子や中学生男子の学業成績との正の関連が見られたが,小学生男子や中学生女子の学業成績とは関連していなかった.小学生のサンプルでは母非大卒層の女子に限り友だちに関する母子間の会話が学業成績と正の関連を示しており,学業達成の高さに結びつく親子関係のかたちは階層やジェンダーによって異なることが示唆される.また,学業成績が低いと将来や進路に関する会話が多くなる傾向は親が非大卒の中学生女子に関してだけ見られ,この知見は教育達成の男女間・階層間格差と関係している可能性がある.

  • 「新しいアートの社会学」におけるベッカーの概念的影響
    松田 大弘
    2024 年53 巻 p. 113-123
    発行日: 2024/11/25
    公開日: 2026/02/17
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,H. S. ベッカーの『アート・ワールド』(Becker [1982] 2008=2016)に対する批判を検討しながら,彼のアートの社会学の特徴を明らかにし,「新しいアートの社会学」におけるその貢献可能性を示すことである.『アート・ワールド』は,アートを「人々の活動の産物」として位置づけ,「社会的」に構築されたものとして認識する.ベッカーは,こうしたアートの社会学の基本的視座を示した一方で,その議論は,「ポスト批判的」アプローチに基づく立場から批判的に検討されてきた.批判の焦点は,彼はアート作品やその制作における物質的資源などの「非人間」の行為者性を「人間」と同様の注意を払わず分析しており,さらに,その説明は社会還元論に陥っているのではないか,ということである.それに対して本稿では,『アート・ワールド』だけではなく,その後の彼の研究を考察し,彼の社会学は,アート作品や人工物などの「非人間」を分析の中心にする可能性をもっており,彼の議論に単純な社会還元論をみるべきでないことを示した.

     ベッカーの「アートの社会学」の特徴は,人間の活動と生成過程への一貫した関心と「プロセス」に注目するところにある.本稿では,これらを明らかにすると共に,新しいアートの社会学に共通する課題への概念的返答を試みることで,新しいアートの社会学におけるベッカー社会学の意義を提示した.

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