芝草研究
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38 巻, 2 号
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総説
研究論文
  • 大木 歩美, 小笠原 勝
    2010 年 38 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    宇都宮大学農学部附属農場の果樹園由来のスズメノカタビラ種子をガラス室内のポット条件下で育成し, 1花序/1個体として, 花序の先端に位置する小穂について以下に示す4つの項目を調べた。結果は以下の通りに要約される。
    (1) 小穂を構成する小花数と小花の種類
    小穂の多くは頂生する1雌性小花と2〜3両性小花とから成るが, 両性花だけから成る小穂や2雌性小花を有する小穂もわずかに含まれた。
    (2) 小穂内における小花の開頴順序
    雌性小花を有する小穂では, 雌性小花が最初に開頴し, 続いて第1両性小花が開頴したが, 両性小花から成る小穂では, 一定の開花順序は認められなかった。
    (3) 小花の開頴および閉頴時刻
    大部分の小花は深夜に開頴したが, 雌性小花の中には早朝から日中にかけて開頴したものもあった。また, 雌性小花および両性小花ともに, 早朝から日中の間に閉頴した。
    (4) 小花の開頴から閉頴までの時間
    開花時間は雌性小花および両性小花で約44時間および8時間と, メヒシバやイネなどのイネ科植物に比べて著しく長かった。また, 両性小花では開頴〜葯抽出および葯抽出〜閉頴に1時間未満および7時間を, 雌性小花では, 開頴〜柱頭展開および柱頭展開〜閉頴に21時間および23時間を要した。
短報
  • 石井 伸明, 涌井 史郎, 佐藤 忠継, 飯島 健太郎
    2010 年 38 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は, 外壁 (セメント板) 面と基盤設置型壁面緑化を対象に, その表面温度, 近傍気温, 室内内壁接触温度とその時間推移から暑熱環境緩和効果の可能性を探った。
    その結果, 第一に, 24時間温度推移で見たときに外壁面は30℃を越える日変動を示したが, 緑化ユニットでは9.1℃に留まっていたので, 壁面緑化が表面温度の安定性に貢献することが明らかになった。
    第二に, 本実験の近傍気温の約12 m2の露出セメント板に対して, その約半分の面積の壁面緑化する程度では, 日中際立った近傍気温低減効果をもたらすことが確認できた。
    第三に, 緑化パネル面によって, 植物の蒸散や基盤からの蒸発による潜熱効果とともに低木植栽による基盤への木陰による断熱効果があったと考えられる。
    第四に, 緑化室内内壁表面は外壁面室内壁面表面よりも約21時間低かったので, 断熱効果が大きかった。
    以上のように近傍気温の暑熱環境緩和効果については, 緑化による飛躍的な気温低減効果は認められないものの, 冷却面としての存在時間数を長期化させる効果が認められた。この点については, 気温の平面分布の推移での分析で詳細な検証を行っていこうと検討している。一方, 断熱効果についても緑化パネルの植物の蒸散や基盤からの蒸発による潜熱効果とともに低木植栽による基盤への木陰による断熱効果が建物外壁面に対する熱の流入を抑制し結果として非緑化面よりも室内内壁温度を数℃であるが長時間にわたって低く推移する効果が認められた。
    なお, 今回の灌水条件では余剰水があったので, 余剰水を減らすために灌水条件の様々なパターンと暑熱環境緩和効果との関係を検証することが今後の課題である。
  • 宇城 正和
    2010 年 38 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    芝草に極少水量 (30~40 ml/m2) の葉面施肥を行う際, 栄養素は気孔あるいは孔辺細胞気孔側面上部クチクラ層等より吸収されるため, 気孔の分布や状態を知ることは重要な課題である。また, 葉表面の状態を観察して, 芝草活力の指標となる構造的特徴を探ることも意義深いものがある。芝草クリーピングベントグラス (Agrostis stolonifera) 7品種とヒメコウライ (Zoysia matrella) の葉部表面を蛍光顕微鏡を用いて観察した。UV照射により孔辺細胞および葉脈は自家蛍光を発したが, 微弱な場合でも増感によって画像処理すると明瞭にこれらが認められた。気孔が葉の表裏に多数見られ, 葉面吸収が効率的に行われる要因と推測された。葉表面の観察では, 細胞壁が青く自家蛍光を発し, 表皮細胞がやや凸状に隆起していること, また, 葉表面の各所には棘状小突起が観察された。さらに, 芝草刈り取り後, 5日目の残存葉身切断面には, 強い自家蛍光が観察された。これら葉表皮からの自家蛍光による観察は, 芝草活力の判定を行う際, その指標となる可能性が考えられた。UV照射による自家蛍光の観察法は, 前処理の必要がなく, 小さな細葉を持つ芝草葉部の観察には非常に有効な方法であると考えられた。
  • 松山 倫也, 井戸田 幸子, 堀元 直樹, 大田原 鉄秀, 野村 泰生, 笹本 博彦, 明石 良
    2010 年 38 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    植物において必須微量要素の一つである鉄は, 葉緑素の生合成に関与する重要な元素である。本研究は, 植物が利用吸収しやすい2価鉄イオンを含む鉄材の施用がシバ (Zoysia japonica Steud.)の成長および萌芽に及ぼす影響について調査した。その結果, 鉄材施用区における草丈, SPAD値 (クロロフィル含量), 地上部乾物重および施用翌年の春先の萌芽数は, 対照区と比較して有意に増加した。また, 鉄材施用区において, 地上部の鉄およびマンガン含量は増加する傾向が認められた。しかしながら, 施用2年目の萌芽数については, 対照区との間に有意な差は認められなかった。
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