本研究は, 外壁 (セメント板) 面と基盤設置型壁面緑化を対象に, その表面温度, 近傍気温, 室内内壁接触温度とその時間推移から暑熱環境緩和効果の可能性を探った。
その結果, 第一に, 24時間温度推移で見たときに外壁面は30℃を越える日変動を示したが, 緑化ユニットでは9.1℃に留まっていたので, 壁面緑化が表面温度の安定性に貢献することが明らかになった。
第二に, 本実験の近傍気温の約12 m
2の露出セメント板に対して, その約半分の面積の壁面緑化する程度では, 日中際立った近傍気温低減効果をもたらすことが確認できた。
第三に, 緑化パネル面によって, 植物の蒸散や基盤からの蒸発による潜熱効果とともに低木植栽による基盤への木陰による断熱効果があったと考えられる。
第四に, 緑化室内内壁表面は外壁面室内壁面表面よりも約21時間低かったので, 断熱効果が大きかった。
以上のように近傍気温の暑熱環境緩和効果については, 緑化による飛躍的な気温低減効果は認められないものの, 冷却面としての存在時間数を長期化させる効果が認められた。この点については, 気温の平面分布の推移での分析で詳細な検証を行っていこうと検討している。一方, 断熱効果についても緑化パネルの植物の蒸散や基盤からの蒸発による潜熱効果とともに低木植栽による基盤への木陰による断熱効果が建物外壁面に対する熱の流入を抑制し結果として非緑化面よりも室内内壁温度を数℃であるが長時間にわたって低く推移する効果が認められた。
なお, 今回の灌水条件では余剰水があったので, 余剰水を減らすために灌水条件の様々なパターンと暑熱環境緩和効果との関係を検証することが今後の課題である。
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