近年, チャイロコガネの成虫が芝草地に潜土して土壌を排出する被害が続出した。一方, この虫の幼虫は芝草の根部を食害する芝草害虫である。チャイロコガネの防除に関する知見を得るため, この虫の生活史や東海地方における発生経過を明らかにする目的でこの虫の飼育実験を行った。
(1) 予察燈に成虫が誘殺されるようになったのは5月上旬からであり, その発生は10月上旬まで続いた。発生のピークは9月中旬であった。5月下旬に採集された成虫から発生した個体は, 最も早いもので8月上旬から1化期の成虫として羽化した。予察燈における成虫の発生は年1回と推察された。
(2) 飼育実験の結果からすれば, 1化期の成虫から発生した個体は10月下旬から2化期の成虫となった。この虫は1化期の成虫で越冬するものが大部分であると考えられるが, 2化期の成虫または, 幼虫で越冬するものもあると推察される。
(3) 成虫は昼行性でクリ, カキ等の葉を摂食して交尾, 産卵を続け, その寿命は非常に長い。越冬した成虫と1化期におけるそれぞれの卵期間, 幼虫期間, 蛹期間には大きな相違は認められなかった。ふ化率および羽化率はいずれ80%前後であった。産卵されてから成虫が羽化するまでに要する期間は約60日であった。
(4) 1令幼虫は12日間でふ化し, 3令を経て蛹になるが, その発育は非常に早く30日前後で3令に達する。また, 20, 25および30℃の各飼育温度においては幼虫は休眠することなく, 12月上旬まで随時成虫が羽化するのが観察された。
(5) この虫の成虫, 幼虫とも飼育が比較的容易であり, 今後, 冬期における成虫の人工飼料が開発されれば, 年間を通して, この虫の飼育力河能であると推察されるので, 土壌殺虫剤の試験昆虫として重要と考えられる。
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