調査の対象となった特殊のり面保護工は冬季, 寒冷地における施工, 急斜面あるいは転石多いのり面における施工がその被覆材の接着力, 耐水性などから優れているといえる。しかしその一方で1次植生に依存しているため在来種による植生の遷移が停滞しているなどの問題点もある。これらのことをふまえて本研究で明らかになった点をまとめると次のようになる。
○本工法におけるのり面では一般の植生工よりもより急傾斜まで植生が維持できる。
○しかしその内容としては, O.G., K.31F.などの吹き付け植物が主体であり, ススキ, イタドリなどの多年性草本の出現は10%前後にとどまり, 在来稲の侵入は全体としてもそれほどは進んでいない。
○またのり面の部位別に見てみると植被率は下部が高かったが木本類の侵入は上部が一番多く, また吹き付け植物では特にヨモギの上部での生育が悪いことがわかった。
○侵入植物のうちその出現頻度が高いススキ, イタドリ, クマイチゴ, ヤマハギについてみてみると, ススキ, イタドリは1次植生の植被が大きいところで比較的生育しており, クマイチゴ, ヤマハギなどは一次植生とは無関係に生育していた。
以上のようなことが今回明らかとなったが, 本工法は一般の植生工と比較して, 侵入植物による多様性に貧弱な面がある。しかしこれまで植生工が不可能だったのり面に植物を定着できたことも事実である。今後その特性をいかし, のり面緑化工法の一つとしてよりよく活用されることが望まれる。
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