芝ソッド生産に空気整根法区を導入するために, ペンクロスを供試芝とし, 空気整根法及び慣行法による芝ソッド栽培実験を行った。栽培法による生育環境 (温度, 湿度) の違いを明らかにしたうえ, 育苗中及び移植後の芝草の生育, 特に根の生育状況を調査し, 空気整根法の効果について検討した。その結果は次のとおりである。
(1) 培地温度については, 冬期では, 慣行法区が一日中, 終始, 空気整根法区より高かった。しかし, 晩春初夏では, 夜間の培地温度は慣行法区の方が高かったが, 日中の培地温度は空気整根法区は慣行法区以上であった。育苗箱底面の温度は, 培地温度とほとんど同じ変化傾向を示した。
また, 育苗箱底面の湿度平均値では, 慣行法区の方が82.44%で, 空気整根法区の63.78~66.72%より高かった。
(2) 発芽については, いずれの季節においても, 空気整根法区が慣行法区より1日程度遅れたが, 最終の発芽率には両栽培法の間で顕著な差はなかった。しかし, 発芽速度では, 慣行法区の方が速く, その差は晩春初夏において顕著ではなかったが, 冬期において明らかであった。
(3) 冬期では, 地上部生育は慣行法区の方が空気整根法区より1.4~2.0倍ほど良好であった。晩春初夏では, 慣行法区と空気整根法区の間の芝草の地上部生育の差はほとんどなかった。
(4) 芝ソッド収穫時の芝ソッドの最大根長については, 冬期の実験1と晩春初夏の実験IIにおいて, 慣行法区はそれぞれ4.1cmと4.4cmで, 空気整根法区の2.7~2.9cmと2.9~3.0cmより1.4倍程度長かったが, 芝草1本当たり根数では, 空気整根法区は慣行法区の1.4~1.6倍の値であった。
(5) 移植後の根数の変化は, 両栽培法区間の差が顕著ではなかった。しかし, 生長するにしたがい, 最大根長は育苗段階では根の短かかった空気整根法区の芝草の根が慣行法区よりも長くなった。
冬期では, 育苗段階の芝ソッド地上部の生長は空気整根法区と慣行法区はほとんど同程度であった。しかし, いずれの時期でも地下部の根数は空気整根法区の方が多く, 移植後の活着も慣行法区の芝ソッドより速かった。つまり, 空気整根法区の芝ソッドは空気整根効果により根の二次分枝が速く, 根の徒長がないことが示された。
芝ソッドの生産・造成システム化を進めるうえで, 芝ソッド生産において空気整根法を導入することは様々な利点があると考えられる。具体的には, まず, 空気整根法は導入が容易であり, 特別な管理も必要としない。そして, 現在芝ソッドの多くは畑地で栽培されているが, 育苗箱を利用して空気整根法を導入すれば, 集約的管理が出来るようになる。さらに, それに適した管理機械を開発すれば, 作業や管理が効率的になり, 省力化も可能となる。また, 芝ソッド生産を施設化することで, 環境条件が制御しやすい利点もある。
なお, 今後は健全な芝ソッドをより迅速に供給するためには, 管理方法 (刈り込み, 転圧, 目土など) , 日照条件等の検討が必要であると思われる。また, 規模を拡大した場合に設備, コストの点も検討する必要がある。
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