芝地におけるヒメムカシヨモギおよびオオアオレチノギクの発生の様相を調査するため, 1999年および2000年に宇治カントリークラブ (京都府宇治市) において播種実験を行った。コース外の2種の自然集団の結実最盛期と思われる個体から8月および9月に採種した種子を, 1999年は, 刈り高12mmの芝地 (ナーセリー) および隣接する裸地に播種し, 発生状況を調査した。また, 2000年には芝地においてサッチ上層を除去したバーチカル処理芝地を加えて同様の調査を行った。
全調査を通じて発生率や発生までの日数に種間差異は認められないか, あるいは軽微であった。8月採取種子の播種調査では, 芝地は裸地に比べて発生が遅くなり, 発生率も低い傾向にあった。この高温期に見られる芝地と裸地との差異は年次間で大きく異なっていた。これは, 種子散布後の降雨の量および時期の違いや芝生の生育状況あるいはサッチの状態の差異によるものと推察された。一方, 気温が低下した9月採取種子の播種調査では, 発生率や発生まで日数は両年ともに播種場所間差異が認められず, 芝地では秋期に入ると気温の低下によってサッチ層の乾燥緩和など発生抑制要因が解消されることが示された。
芝地で発生した個体の多くは出芽直後に枯死したが, 裸地やバーチカル処理芝地では個体数の減少が緩やかであったことから実生の生存にもサッチが影響することが推察された。芝地では, 発生翌年まで生き残った個体が夏期高温期に再度高い枯死率を示し, 繁殖に至る個体はほとんど認められなかった。
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