(1) 近年シパットガによる芝草の被害が大きく, わが国の各地で問題になっているが, これまで種名が不明であったため発生の原因がつかめず, 芝草の管理上の重要な害虫となっていた。
(2) この虫はカナダ農林省の六浦晃博士および米国農林省のFerguson博士によれば, 学名を
Pediasia (Crambus) teterrellusZINCKEN, common nameをbluegrass webwomという芝草や牧草の重要害虫で, 米国の中・東部に分布しているものである。今度わが国に侵入して芝草に大害を与えているので, シバツトガの和名を提案しているものである。
(3) この虫による芝草の被害は実に巨大であるから, 被害を受ければ誰でもそれに気付くので, この虫のわが国における侵入の時期およびその経路を考える場合は, 被害の歴史について調査する必要があろう。
(4) わが国における最初の被害は三田ゴルフ場 (兵庫県三田市) のコウライシバで起った。三田市の千刈ゴルフ場では1964年に日本で最初にティフトンシバ (328・419) を, 米国ジョウジア州のティフトン市から輸入している。
(5) 著者らがこの虫の同定に使用した標本は, 浜松シーサイドゴルフ場のティフトンシバから採集したものである。この芝は米国から千刈ゴルフ場に輸入したものを, その翌年の1965年に移入して繁殖させたものである。
(6) したがって, この虫がわが国に侵入した経路として, 米国のSouthern Turf Nurseries社 (Ga.Tifton, USA) →千刈ゴルフ場→浜松シーサイドゴルフ場という線が確認される。
(7) その後ある会社によるティフトンシバの大量の輸入が始まり, これらの芝が他の芝のNurseryに混植されるようになって, シバツトガはわが国に伝播したようである。生芝のような植物を輸入する場合は, 各方面にわたって充分に調査研究したうえ慎重に行う必要があろう。
(8) ティフトンシバ (328・419) の繁殖力は旺盛であるので, 耕土が深く散水と施肥を充分にすれば, この虫の加害を受けても被害は現れにくいが, コウライシバの被害は顕著である。
抄録全体を表示